スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED_第12話

Last-modified: 2012-07-08 (日) 16:53:51
 

 スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED
 第12話「地球人」

 

 ここはとある研究施設内の格納庫。
 その中をこつこつと靴音を響き渡らせながら、暗い施設内を二人の男が歩いていた。
 人の気配は彼ら二人以外には無く、壁面に光る電気系統の赤い線状の光が薄ら明滅を繰り返しているのが見えるのみ。
 彼ら二人のうち一人は若く軍服を着た軍人で、もう一人は初老の男だ。
 とても厳格そうな表情をした初老の男は、前方にそびえる巨大な構造物の前に立つと近くのコンソールを操作した。
 すると、その構造物にスポットが当てられ、全貌が明らかになる。

 

「……ほぅ、これが」
「……まだ開発されたばかりの技術だが、元々我々が作ったものだ。動作は保証する」
「ということは、使うのですか?」
「……無論だ。でなければ、君をここに呼びはしない」

 

 初老の男は一息溜息を吐くと、コンソールを弾く。
 端末のモニター上にはこの構造物の名称や、詳しい仕様についての情報が表示されていた。

 

「……動作を保証するということは、何が問題なんです?」
「まだMSでの実証実験をしていない。
 動く事を念頭に置いて広範に指定しているが、唐突に抑制が働く可能性も無いわけではない。
 そして、装備だが……設計上予定しているXM1は省いた。あれはまだ掛かるからな。
 それに平行開発中の素体が採用するEEQ7Rも無い。有るのはビームサーベルのみだ。
 その代わり試作のフェイズコーティングしたシールドを持たせる」
「……ふむ、ぶっつけ本番の実証実験ですか」

 

 若い男は顎に手を当てて思案顔で構造物を見ていた。
 その姿は彼が知るこれまでのものとは明らかに違うスマートさが見て取れた。
 それは装備が足りないという単純な理由もあるが、それ以前に無駄な物が削ぎ落とされたことや、これが試作段階であることも大きいだろう。
 初老の男はそんな彼を見る事も無く、ひたすら指を動かしながら話した。

 

「……まぁ、そうだ。だが、突然止まる事は無い。装備が無い分はバッテリーに充てている。
 機関が停止してもなお動けるだけの力があるだろう。スピードで困る事も無い」
「ほほぉ、それは凄い。他に問題は?」
「……試作のため宇宙専用だ。しかも、速度は出るが……相当のGも掛かるだろう。
 ……本来であれば実戦投入するのも許可の出ない機体だ。
 だが、奴らを降ろすわけにはいかん。必ず仕留める気で行ってもらう」

 

 初老の男の厳しい視線が若い男を睨む。
 そのいけ好かない仮面の向こうにどのような表情を浮かべているのかは定かじゃないが、現在の軍部で彼以上のパイロットは居ない。
 この男を信頼出来なかろうが、彼にはもはや選択肢を選んでいる余裕等ないのだ。

 

「ほぉ、それはそれは。……また随分な話ですな。
 それでは復帰のための口実の様でいて、お払い箱の理由ともなりかねない」
「……出すからには勝って貰わねば話にならん。お前が乗るのはそういう代物だ」
「……ふぅ。国防委員長殿も人が悪い。まぁ、私も軍人です。
 出るからには勝ちに行かせてもらいますよ」

 

 彼の視線は、スポットライトの光で白く輝く機体の瞳に向けられていた。

 
 

 その頃、遠い宇宙の上では、

 

「本艦隊のランデブーポイントへの到達時間は予定通り。
 合流後、アークエンジェルは本艦隊指揮下に入り、第八艦隊への合流地点へ向かう。
 後僅かだ。無事の到達を祈る!」

 

 アークエンジェル艦橋のスクリーンには、先遣艦隊旗艦「モントゴメリー」艦長コープマンと、ジョージ・アルスター連邦事務次官が映っていた。

 

『私は大西洋連邦事務次官、ジョージ・アルスターだ。
 まずは貴君等が民間人の救助に尽力を尽くしてくれたことに礼を言いたい。
 あー、それとそのー……救助した民間人名簿の中に我が娘、フレイ・アルスターの名があったことに驚き、喜んでいる』
「え!?」

 

 唐突な話にラミアスは驚いた。
 まさかあのフレイが彼の娘だとは思いもしなかったからだ。

 

『出来れば顔を見せてもらえると有り難いのだが……』
『はは、事務次官殿、合流すればすぐに会えますよ』

 

 コープマンがアルスターのはやる気持ち押さえる様促すと、通信を切った。
 その脇ではサイ・アーガイルがアルスター次官の個人的印象を語っていた。
 彼の話の内容はあまり意味が無い様にも感じるが、現状で次官の事を客観的に知っているのが彼だけに、ラミアスもバジルールもただ相槌を打つ他無い苦しい物を感じつつ聞いていたのだった。
 勿論、フレイ・アルスターに聞く手もあるが、彼女ではダイレクト過ぎる。

 

 その頃ハンガーでは、

 

「……よっ!ん?ほぉー」

 

 マードックがコックピットで熱心にシステムを調整しているキラに声をかけた。
 彼は額に汗しながら集中していた所に突然声を掛けられ、不機嫌に答える。

 

「……なんですか」
「いや、どうかなぁって思ってな」
「……オフセット値に合わせて、他もちょっと調整してるだけです。
 ……あっ。でも、もういいのかなぁ」

 

 キラは集中して作業していた為考えもしなかったが、冷静に考えてみれば第八艦隊とランデブーが成功すれば、もう自分が乗る必要は無かった。
 そう考えると自分のしている作業が急に無意味に感じられた。
 そんな彼の心中を見透かす様にマードックが唐突に笑う。

 

「はっはっはっは。やっとけやっとけ。無事合流するまではお前さんの仕事だよ。
 何ならその後志願して、残ったっていいんだぜ。俺は歓迎するぜ。
 なんたって坊主は優秀だからなぁ」
「……冗談じゃないですよ。動かすのでも精一杯なんです。
 ……あ、でも、MSを設計するのは面白いかも……あ、いや、でも、軍艦で働くなんて嫌ですよ!」
「およ、つれねぇなぁ。そんなに毛嫌いしないでくれよ。
 まぁ、降りるまでは宜しく頼むな!」
「……はい」

 

 渋々返事をするキラだが、その時マードックの背後から声がした。

 

「ちょっといいか」

 

 その声はこの場の女神ともてはやされている、長身でスタイル抜群の女性、セブン(ハンセン)のものだった。
 彼女の声にマードックが場所を譲ると、彼は自分の持ち場に帰って行った。

 

「……どうした?」

 

 少年は無言でセブンの顔を見ていた。
 そんな彼を彼女は首を傾げて見ていた。

 

「OSの書き換えについてのことですか」
「そうだ。お前の乗るこの機体のOSの調整を始めたいと考えていた。
 時間のある内にした方が良いだろう」
「……あの、僕が乗る必要はもう無いですよね」
「……あぁ、そうだな。しかし、それにはOSを我々の物と書き換える他に方法は無い。
 だが、それについてだが、私はお前のシステムを消すのは惜しいと思っている」
「惜しい?」
「そうだ。システムと機体の有機的統合による親和性の向上……私の考えたシステムは以前話した通り、論理的プロセスによる合理的統合を目指していたが、お前のシステム理論を伸ばしてみたいと考えた。だから、これを見て欲しい」

 

 セブンはハッチからコックピット内部に入ると、手に持っていたパッドを彼に手渡した。
 それは丁度彼女の胸元が大写しになる様な屈んだ姿勢で、思わず顔が赤らむ。
 いや、胸だけじゃない、顔も近い。
 狭い内部を考えれば仕方のないことだが、男の性とは悲しいもので、多感な年頃の少年には内心気恥ずかしいものがある。
 とはいえ、彼女の提案を受け入れ難く感じていた彼にとって、彼女のパッドの中身を読むのは苦痛でしかない。
 それでもこの状況で読まないという選択を取れる程に彼は我が侭なわけでもなく、とりあえずパッドの情報を暫く読んでいた。そして、その内容は彼が想像した通りの内容だった。

 

「……これは、僕のシステムコアにハンセンさんのOSをプラグインする様な構造。
 ……これじゃ、まるで……」

 

 そう、それは彼が組み上げたストライクのシステム構造を維持しつつ、VST製のシステムとの統合をより洗練された形で無駄無く押し進めた物だ。
 元々キラが組み上げたシステムは「不完全な情報」を元に突貫工事の様な形で作ったものだ。
 VSTのシステム情報のダウンロードは52%で、その内実際に使ったのは半分程度。
 後は殆どが不完全な情報で切り捨てる他無く、組み上げられる物に関しては暇を見て自分で補完して使用している様な状況だった。

 

「不満か?我々はお前のシステムを高く評価している。
 この提案は我々の技術的アプローチをお前のシステムをベースに組み込む事で、両者の利点を統合する最良の物だと思っている。
 それに、この実装をすればお前の負担もかなり軽減されるはずだ。どうだ」

 

 確かに彼女の言う通りの結果が待っているだろう事は想像に難くない。
 だが、問題はそこじゃないのだ。

 

「……これじゃ、僕はまだこれに乗って戦わなくてはならないわけですよね」
「……そうなるな。だが、現実に今すぐ交代可能な話ではない。
 将来的には交代できる汎用性は必要だが、現段階での必要は最大級の効率だ。
 それがお前は勿論、我々をも守ることになる。それでは、嫌か?」

 

 彼女の真っ直ぐな視線が注がれる。
 まともに彼女の目を見たら抗し切れる自信がない。

 

「……僕は兵隊じゃないんですよ。ただの、学生です」
「あぁ、そうだな。そして、私は民間人であり、今はこの艦の付属物だ。
 ここに居る限り、皆平等に死を考える。無論、可能性の上ではお前の方が危険だ。
 だが、お前に全ての負担を負わせたいとも考えていない。
 だからこそ、これをお前が受け入れて欲しいと思って持ってきた。それでもダメか?」

 

 キラは彼女の話を聞く前は自分だけが大変な思いをしていると感じていたが、この艦には沢山の民間人が働き、彼の友人も沢山従事していることに思い至った。
 ハンセンも分かっていてあえて話している。……実際に話すのは相当に気の滅入る事のはずだ。
 それを自分の事ばかりで頭がいっぱいで、彼女や周りの気持ちに気が付かないでいたのだ。

 

「……すみません。僕が弱虫で」
「良い。気にするな。お前はよくやっている」

 

 セブンはキラの頭をそっとなで、微笑んだ。
 キラは突然の行動に再び頬を赤らめた。
 彼女はそれに構わずシステムの調整方法を簡潔に説明すると、その場を離れて行った。
 彼は身を乗り出して彼女の去る姿を目で追う。
 彼女の去り姿は相変わらずのプロポーションだった。

 
 

 ザフト軍ヴェサリウス作戦室では、
 テーブル上のディスプレイに航路図を表示して今後の作戦を練っていた。
 ここに居合わせているのは作戦指揮官クラスであるアスランの他にアデス、そしてキグナスからはグラディスとアーサーが居た。

 

「地球軍艦艇の予想航路です」

 

 アデスは作戦室のテーブル上に表示されている予想航路図に地球軍の予想航路を出した。
 連合の艦隊3隻の艦影を確認しており、それらはユニウス7の暗礁宙域と月の間の機動を辿っている。
 アデスは宙域図にこちら側の艦艇の動きを重ねた。それを見て、

 

「司令部より近傍宙域からの応援として、ラコーニとポルトが向かっているという連絡が来ていますが、合流は予定より遅れています。しかし、もしあれが足付きに補給を運ぶ艦であるとすれば、このまま見逃すわけにはいかないでしょう」

 

 アスランは航路上の味方艦の到達予定時刻を表示し、現状の判断を端的に述べた。
 いずれも到達にはもう1日程度の差があり、今すぐ無理に呼べるという距離ではない。

 

「仕掛けるんですか?……しかし、我々には……」

 

 アーサーが満足に戦力の揃わない状態での作戦に不安を漏らす。
 何より相手側は三隻。中に何が搭載されているかも不明だ。
 しかも、この先に現れるかもしれない足付きは手強い相手だと聴かされている。
 だが、グラディスは溜息を吐くと部下の発言を嗜める。

 

「アーサー、我々は軍人よ。司令部がやれと言えば、それが例え不足があったとしても立ち向かわなくてはならないわ」
「それは……そうですが」

 

 アーサーが恐縮する。
 その時、グラディスは航路図をみて疑問が過った。

 

「……でも、彼らの航路、ユニウス7へ向かっているということは、彼らはユニウス7を経由して向かってきている……ということかしら。
 それとも、別の作戦……もしかしたら、ラクス・クライン失踪と関わっているのかしら。
 確か、クライン嬢が失踪したのはユニウス7慰霊中よね」
「その可能性もあるでしょう。宙域到着にはおよそ8時間。軌道予想から推測すると、月艦隊宙域とユニウス7の間三分の一程度を進んだ距離を目指している。
 場所としては中途半端な場所ですが、いずれにしろここに何らかの目的物があるのかもしれない。
 ……暫くは遠くからの監視に留め様子を見ましょう」

 

 アスランは予想図上に目印を表示し、その宙域までの間は潜行を決め込む事にした。
 相手側の動きがハッキリしない事も有るが、足付きが現れるならばそれに越した事は無い。
 無駄に動いて戦力を浪費するよりは、潤沢な物資を待ちつつ月艦隊との本戦に備える方が得策と考えた。

 

「では、ツィーグラーへは先行させ、艦隊決戦へ備える方向で連絡を取ってはどうでしょう。
 無駄に大艦隊ではこちらの動きに気付かれます」

 

 アデスの進言をアスランは了承する。
 この後、司令部とも連絡をとったアスランは、作戦合流ポイントを月周辺宙域と定め、現有戦力は表向きはラクス捜索に当たっていることとした。

 
 

 ―艦長日誌補足―
 私はアークエンジェルに格納されたシャトル・アーチャーよりヴォイジャーとの通信を試みた。
 しかし、宙域に散らばるデブリ内に含まれるマグネサイト等により干渉が大きく断念した。
 仕方なく我々は今後の方針を話すべく、アーチャーにそれぞれ菓子を持ち寄り集まった。
 表向きは小さな同窓会である。

 

「現状ではこの暗礁宙域を抜けるまではヴォイジャーとの通信は難しいでしょう。
 それより、差し当たっての問題は、我々は連合に与し過ぎではないかと危惧します」

 

 トゥヴォックはそう言い、持ってきた水の入ったポットからカップへ注いでいた。
 私は注がれたカップを受け取ると答えた。

 

「貴方はそう言うと思ったわ。
 でも、状況的にはこうする他に私達が危機的状況から逃れるのは難しかった。
 彼らは経験不足により指揮能力を欠いていた。
 あのまま彼らに任せていたら、たぶん私達も彼らと一緒にこの世には無かったわね」
「社長の言う通りだ。我々は取り得る最善の選択をしていると考える」

 

 セブンの同意にトゥヴォックは眉間に皺を寄せて沈黙した。
 しかし、彼のこの表情は別に腹立たしくてそうしているわけではない。
 彼独特の普段の表情とでも言うべきだろうか。
 大抵この表情の時は、見た目とは裏腹に冷静に判断している。

 

「でも、トゥヴォックの指摘は重要な要素ではある。私達はどこまで彼らと共にすべきか。
 その前に幾つか不確定な想定をしなくてはいけないわ。
 それは、我々は本当に『我々だけ』なのか……ということね」
「我々だけ?」

 

 セブンが不可解と言いたげな表情だ。
 隣で配給の乾パンを食べているイチェブも気になる様子だった。
 それについてはトゥヴォックが私の代わりに説明した。

 

「社長は……我々以外のワープ以降の文明の存在を想定されている。
 ここは我々の時代でいえば、ゼフラム・コクレーンが活動していた時代に近い。
 であるならば、我々のワープサインを目当てに何らかの文明が、地球人にコンタクトを取りにくる可能性を想定出来る。
 しかし、実際は……この地球にワープ文明は存在しない」
「……ならば、地球文明は無視されるだろう。ボーグは無価値な生命体を同化しない」

 

 セブンの指摘は尤もだ。
 ボーグに限らず、連邦に加盟した恒星文明は全て「ワープ未満の文明への干渉をしない」という暗黙の誓いがあった。それはあの獰猛なクリンゴンですらである。
 この宇宙の文明も我々とそう変わらない文明が栄えていると想定すれば、実際の地球にワープサインを発生させる明確な証拠が見つからない限り、何もせずに立ち去るのが普通だろう。

 

「セブン、確かに地球にはワープ船は存在しないわ。
 それでもいつかは作る事になる。しかし、今問題なのは……私達よ。
 私達にはヴォイジャーがある。あの船にはワープドライブが存在するのよ」
「……つまり、他の恒星文明がこの未開な地球へと来る様、我々が誘き寄せる手引きをしている……と言いたいのか?」
「……そうね。その言い方は気に入らないけど現状を正しく言い得ている。
 今の状況は私達に都合良く言えば、いわば地球をワープ文明にしようとしているとも言えるわ」
「……そんなことが可能なのか」
「……不可能よ。でも、何かは来るかもしれない。それがバルカンなら良いわ。
 歴史の流れは違えども、同じ道を辿らせるように導く事はできる。
 だけど、それがクリンゴンやロミュランの様な獰猛な文明だったら」
「……最悪、地球は壊滅するだろう」

 

 セブンの言葉は大袈裟な話ではない。
 ワープ文明の力を持ってすれば、地球を破壊することなど雑作も無い話だ。
 そこに、先程まで黙々と乾パンを食べていたイチェブが話しかけてきた。

 

「あの、社長、良いですか?」
「なぁに、イチェブ。どうぞ」
「僕が考えるに二つの道があると思います。
 一つはヴォイジャーを遠ざける。もう一つは地球人にワープ技術を教える。
 先程の話からすれば合理的なのは一番ですが、たぶん、時間は稼げますが無駄でしょう。
 ワーププラズマの痕跡を撹乱する事は困難です。
 恒星文明があるならば、それらはその足跡を辿れます。
 ……とすれば、二番目の選択肢もまた取る他無いと考えます」
「いや、もう一つの選択肢があるぞ」

 

 イチェブの話を聴いてセブンが言った。

 

「我々が地球人となるのだ。そうすれば問題無い。
 いや、我々は地球人……だったな?」

 

 私はセブンの話に首を傾げた。
 そんな私の反応に彼女は微笑んで答えた。

 

「……珍しいな。あなたでも分からないことがあるのか。
 我々が地球のカウンターパートをやれば良い。
 勿論、地球人もある程度知る必要はあるがな。
 だが、短期的にファーストコンタクトに必要な準備を整える時間は作れる」
「つまり、私達が恒星文明の地球側代表として応対し、彼らとの交渉を纏め危機を回避する……ということね。
 確かに、それが一番合理的ではあるわね。
 フフ、まるで私が地球の提督みたいな話ね」
「フッ、忘れたか。貴方は時期に提督だ」
「……そうだったわね。
 予行演習……というには随分と無理な状況だけど。
 ……となると、これまでの状況はそれほど悪いポジションじゃないわね。
 このまま私達の地球でのポジションを確立する行動を進めましょう。
 その方が後々やり易くなる。でも、飽くまで私達は『ただの』地球人よ。
 では、会議終了。皆さん、持ち場に戻って頑張りましょう」

 

 私の言葉に皆が頷いたその時、突然船体が大きく揺れた。
 セブンが素早くコンソールのセンサーで外の状況を確かめる。

 

「左舷後方からZAFT艦。船種はナスカ級2隻。前方には3隻の連合艦艇が見える。
 ランデブー直前で仕掛けている所を見ると、つけていたのだろう」
「私はブリッジに、イチェブはデュエルへ、トゥヴォックは船内の民間人が不安がらない様に保安をお願い。
 セブンはここで待機して私に情報を頂戴」
「了解」

 

 ボイジャーのクルー達はそれぞれの役割を担う為にシャトルを出て行った。

 
 

 ―つづく―

 
 

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