スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED_第2話

Last-modified: 2012-05-01 (火) 14:52:46

 スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED
 第2話「起業」

 
 

 艦長日誌
 私達は、この世界の新興のコンピューターメーカーを買い取り、それを元に複数の機械メーカーを吸収し「VST社」と名付けた。
 その社を作るまでの過程で興味深い情報と出くわした。
 買収予定の複数の社の情報を探っている時に、私達はこの世界に幾つかの関連を持っていることを感じさせるものと出会ったのだ。
 その一つが私達が買収した会社の経営者「シャノン・オドンネル」の存在だ。
 ……彼女は、私のご先祖様の名前と同じなのだ。
 いや、名前だけではない。容姿は私と瓜二つだった。

 

 彼女の経歴はとても興味深い。
 なぜなら、彼女は米国空軍に在籍した経歴を持ち、その当時の階級は大佐。
 そして、彼女の働いた偉業は火星への初のコロニー建設計画を主導した功績を持つ。
 ……そう、私が以前勘違いしていた「理想のご先祖様」とほぼ同一の偉業を成し遂げていることだ。
 彼女は若くしてその偉業を達成すると退役し、その後はコンピュータープログラムや機械技術等の開発の為の会社を長く経営していた。

 

 私は彼女の会社を買収した。
 勿論、それはこの世界への足掛かりとなる事は言うまでもない。

 

 社名を命名したのは副長だ。
 Voyager Starship Technologyの頭文字を取ったものだが、この会社がヴォイジャーの技術によって商売をするという意味では、これ以上にぴったりな名前が見当たらなかった。
 この件についてはパリスやキムも必死に提案していたが、彼らの提案した名前は……正直検討に値しなかった。
 この会社が我々の帰還への第一歩となるのかは分からない。

 

 だが、我々は止まる事は出来ない。
 なぜなら、ここは私達の故郷ではないからだ。
 私は必ずクルーを故郷へ返すことを提督と誓った。
 それは紛れも無く「我が誓い」である。

 

「OSを売るより、エネルギーを売った方が儲かるんじゃないんですか?」

 

 作戦室で話し合う私達の前で、パリスがそう提案した。
 そこにトゥヴォックがいつも通りの冷静さで反論する。
 眉間の皺はご愛嬌だ。

 

「君の言うことはその通りだが、我々は商売をしに来たのではない。
 飽くまで帰還までの繋としての仮の姿だ。無闇に技術を売ってはならない。
 何より我々が売った技術が、我々へ牙を向ける可能性も考慮する必要がある。」
「しかし、連合は現実にエネルギー不足で多数の死者を出しているんだろ?
 だったら、核融合炉くらい売っぱらっても罰は当たらないだろ?」

 

 パリスの意見は一理あった。
 私も彼ほど若かったなら、確かにそうした行動を独断でもとるだろう。
 しかし、トゥヴォックの指摘もまた正しい。
 技術は平和的利用をされるとは限らない。
 子どもに新しい玩具を与えたとして、常に大切に扱うとは限らない。
 好奇心は時に残酷な行動となり、我々が意図した遊び方をするとは限らない。
 子どもに正しく教えるには順序が必要だ。
 何より、私達は既にフレンドシップ・ワンという過ちを知っている。

 

「トム、私はあなたの気持ちも分かるけど、ここはトゥヴォックの言う通りにすべきよ。
 でも、そうね、人道的見地で見過ごせない部分があることは確かだわ。
 なら、彼らの身の丈に合ったものを売れば良いわね。
 確かセブンの見つけた謎の電子撹乱技術……ニュートロン・ジャマーを頃合いを見て無効化することが近道になるんじゃないかしら。
 どう、セブン?」

 

「それは可能だ。核分裂反応を抑制するこの技術は正直興味深い。
 この技術があって何故融合炉へ進まないのかわからないが、彼らに作れないということであれば、我々が提供する商品となるだろう」
「では、トムはその方向で動いてくれる?」
「分かりました。やってみます」
「あの、艦長。」
「どうぞ、ベラナ」
「新しいシャトルについてですが、1から建造するより現行のコクレーン型へ、連合規格に合わせた偽装を施してはどうでしょうか。
 デザインは地球人のデザイナーに依頼して予め作らせてみました。これを」

 

 トレスは手に持っていたパッドを私の元へ渡した。
 私はパッドの内容に目を通す。

 

「シャトル・アーチャー?フフ、良いわ。出来るだけ『地球人仕様』で宜しく。
 やだわ、…なんだか私達が宇宙人みたいね。でも予定通りに完成しそう。
 さて、人選だけど、私とセブンとトゥヴォックで行くことに決めたわ。
 艦と社の事は副長に任せます。以上、解散」

 

 会議が終わると食堂へ向かった。
 食堂はニーリックスがいなくなってからは、クルーが交代で持ち回って運営している。

 

 今日はイチェブが担当の日だ。
 彼は元ボーグドローンであったこともあり、優秀に様々な物事を理解する事が出来る。
 そんな彼も最初は試行錯誤の連続だったようだが、最近はその甲斐も有って評判が良い。

 

「ハイ、イチェブ。調子はどう?」
「はい、艦長。今日も見ての通り盛況です。みんな僕の作る料理を褒めてくれます」
「そうね。私もあなたの料理大好きよ。
 ニーリックスがいなくなってからここも暫く寂れていたけど、今はこうしてあなたみたいな新しいスターが生まれて良かったわ。今日の料理も美味しそうねぇ」
「はい、艦長のために特別に濃いブラックコーヒーも用意してあります」
「あらあら、気が利くわね」

 

 彼からカップを受け取り一口飲むと、その味のあまりの濃さに目が覚める思いだった。
 でも、この濃さが堪らない。黒いのが良いの。
 まるでコールタールみたいにドロドロとどす黒いこの液体が。何故かしら。
 ……ドクターなら重度のカフェイン中毒患者とでも言うのだろう。
 頭で分かっていても習慣はやめられない。

 

「艦長、あの、一つ良いですか?」
「なぁに?」
「僕も、……その、上陸任務に一緒に連れて行ってもらえませんか?」
「あなたを?」
「はい。連合の開発しているというモビルスーツに興味が有ります。
 一度見てみたいんです」
「……うーん、そうねぇ。分かったわ。今回はセブンもいるから、学ぶ良い機会かもしれないわね。許可します」
「有り難うございます。艦長」

 
 

 艦長日誌補足
 数日後、我々は連合軍との契約により、スペースコロニー「ヘリオポリス」への上陸任務に向かった。
 このコロニーはオーブという中立国のもので、我々は連合の計らいでロンド・ギナ・サハクという首長の許可を得た。
 我々の出自は、大西洋連邦のアメリカはカリフォルニア州出身ということになっている。
 これらの偽装工作は副長の指示のもと、セブンが完璧にこなしてくれた。

 

「よくいらっしゃいました。
 私は連合軍第八艦隊所属、マリュー・ラミアス大尉です」

 

 彼女は技術士官のラミアス大尉。若いがこのプロジェクトの重要なメンバーだ。
 繋ぎ姿の彼女は穏やかな表情をしており、軍の人間というよりはエンジニアなのだろう。

 

「初めまして、私はVST社のCEOをしています、キャスリーン・ジェインウェイです。
 早速ですが、現在の状況を確認させて頂けませんか。
 私達はハルバートン閣下の直々の要請を受けて参りました。
 システム関係でお困りとお聞きしていますが、詳細は伺っておりません。
 我々がお役に立てる内容なのでしょうか」

 

 この話は本当だ。
 私達はVST社の製品開発を進め、幾つかの汎用的OSを組み立ててオンラインに配布した。
 それらのOSは市場に出回っているデバイスに容易にインストール出来、しかもあらゆる操作性を向上させる高性能振りを発揮した。
 特に低容量/低消費電力であらゆる機械を制御出来るシステム開発力は注目され、様々なメーカーから正式に採用したいと申し出があった。
 そして、その中に連合軍准将デュエイン・ハルバートンの名もあった。
 彼らは我々に対し新しい軍用システム開発で協力して欲しいという申し出をしてきた。
 具体的な開発計画等は全て伏せられていたが、我々は既に彼らの意図は知っていた。
 よって、なるべく手短に済ませたいというのが本音だ。

 

 彼らは我々を連合が使用するコロニー内の施設へ案内した。
 そこは外見上は小高い丘になっている場所だが、中身はなかなか大きな基地施設となっていた。
 中立を謳う国家がコロニーへこれだけの設備を許可する辺り、彼らの中立も相当の圧力が有るのだろうか。
 順当に考えるならば利害が一致しているからだが、なかなかの綱渡り振りと言える。
 施設内部のドックらしき場所へ案内された私達は、遂に問題となっているロボットの前へ来た。

 

「……これが、モビルスーツ」
「はい、GAT-Xシリーズです。
 ボディは既に出来ていますが、問題はOSで……仏作って魂入れず状態なんです」

 

 私は暫く見入っていた。
 このような大きなロボットを実際に目にする日が来るとは思っても見なかった。
 しかも、それが私の知っているはずの「地球の文明」が生み出したというのだ。
 純粋に科学者としての私は……この歴史が作り出した産物について、例えそれが兵器だとしても感嘆の声を漏らさずにはいられない。
 だが一方で、トムが作るホロノベルと同レベルの文明であると考えると情けなくもある。

 

 私達は早速作業に取りかかった。
 予め用意していたデータの入ったロムスティックを、試しにX102-デュエルへインストールした。
 トレスとセブンがホロデッキで幾度も試行錯誤して開発したこのシステムは、我々の連邦のデータベースでも四肢の駆動を前提にした兵器システムは無いため、工場作業用アンドロイド等の駆動システム周りを参考に手探りの作業だった。
 セブンは操縦に神経リンクインターフェースを採用した設計も考えていた様だが、それではあまりにオーバーテクノロジー過ぎた。
 そのためこの開発は如何にローテクで「不自然に高性能ではない」ということが前提であった。
 その結果として生まれたこのOSは、幾つかのモードパッケージというモジュールに分ける事で軽量化し、必要なシステムをシンプルにまとめ、状況に応じて変更して行く学習能力を持たせたものとなった。

 

 そもそも、C.E.年代のシステムはまだ我々の情報を処理しきれる程優秀なプロセッサは勿論、内部ストレージ間のバススピードやバンド幅も足りず、RAMの制限や各種ASICの性能もかなりのロースペックである。
 それらを処理するには全ての命令をコンパクトに纏め、最小限の要素で処理させる必要が有る。
 しかし、連合の採用するシステムは古いシステムの柵に縛られ、それらを最適化出来ていなかった。
 我々が為した処理はそうした非効率を取り除き、全ての命令をシンプルかつコンパクトにすることだった。
 それらは何ら特別な事ではなく、この時代の人間にも充分に可能な範囲の仕事だろう。

 

 操縦周りについては幾つかの作業は自動化し、簡易ボイスコントロールを導入する事で、コマンドラインの変更もキーボード入力以外でも行える様にした。
 これにより完成したX-102デュエルへは、試しにイチェブを乗せて動かす事にした。
 彼はこの日の為に試作したシステムをホロデッキでテストしてくれていた。

 

 事前のテストでは問題無く動作している。
 実機のテストでも問題無く進む事を祈るばかりだ。

 

 -つづく-

 
 

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