くーくー
かもめが飛ぶ大海原で3人の海賊が倒れていた。
「「はらへった」」「おなかすいた」
麦わらの少年と腹巻した青年、そして金髪の少女。
名はルフィ、ゾロ、ステラ。
前の島で調達した食料は1日で尽きた。正確にはルフィが食い尽くした、だが。
その後、湿気によって生えたキノコや海から襲ってくる海獣を捕らえて食ったりと、はたから見たらすごいギリギリの生活をしていた。
しかもこの3人、航海者のくせに3人とも航海術をもっていない。
なのでいうまでもなく3人そろって遭難者である。
もはやここまでくると無謀を通り越して自殺行為だ。
それはともかく、空腹で倒れた一行は大空を見上げる。
大きな鳥が飛んでいた。
「あ、大きな鳥」
「お、ほんとだ」
「デケエな」
と、突然ルフィが起き上がっていった。
「食おう! あの鳥!」
「……どうやって?」
「まかせろ! “ゴムゴムのロケット”!」
ギュン!
飛んでいったルフィがなかなか落ちてこない。よくみると、
「ルフィが鳥につれていかれた」
「あのアホーーーーーー!!!」
ゾロが鳥が飛んでいった方に向けて船をこいだ。
島についたゾロとステラ。
ルフィなら飛んでいった方向に島があればなんとかしてるだろう、という考えだった。
「で、あのバカはどこいんだ?」
「まって。……くんくん……こっち」
「なんでわかる」
「におい」
気になるゾロだったが、ステラの言う通りに進んでいった。
「女1人に何人がかりだ」
ナミを救ったゾロ。
「ゾロ! ステラ!」
「ルフィ!」
「お前なぁ、何やってんだアホ」
ルフィはなぜかロープで縛られてオリの中にいた。
大鳥にさらわれてから何がどうなってこうなったのかはステラとゾロには分からなかった。
そこへ一人の男が動いた。
1500万の首、『道化のバギー』だ。
バギーはゾロ達を見て興味深そうに笑った。
「貴様、ロロノア・ゾロか。俺の首をとりにきたのか?」
「いや、興味ねえな。海賊狩りはやめたんだ」
「俺は興味あるねえ。おまえを殺せば名があがる」
「やめとけ、死ぬぜ」
ゾロの忠告を無視しバギーはナイフを抜いた。
「本気で来ねぇと血ぃ見るぞ!」
「そっちがその気なら……」
スパスパスパッ!!
ゾロの刀がバギーを切った。
「「「「「ヘヘヘヘヘヘ……」」」」」
部下達は笑い出した。
「……? おっかしな奴らだな……」
異変に一番早く気づいたステラが叫んだ。
「ゾロ!! 後ろ!!!」
その瞬間、
ドスッ
宙に浮かんだ手に握られたナイフがゾロの腹を刺した。
もう片方の手が今度は命をとろうと動くのが見え、ステラは腕の長さ程あるナイフを抜き、
「はあ!!」
バギーのナイフを叩き落とした。
「……手が……浮いてやがる……!?」
「私たちと同じ……能力者……!?」
そこに悠然とバギーが立ちはだかった。
「バラバラの実……それがオレの食った悪魔の実だ!! 切っても切れないバラバラ人間なのさ! 急所は外しちまったが、その深手では勝負あったなロロノア・ゾロ!! そこの小娘もだ!!!」
確かにゾロの出血はひどい。
大勢の部下にバラバラ人間、こっちは深手のゾロにオリの中のルフィ、戦闘力の期待できないナミという女。
いくらステラでもこの状況を打破するのは辛い。
と、
「後ろから刺すなんて卑怯だぞ!! デカッ鼻!!!」
一瞬、空気が止まった。
部下達はみんな「「「「「なんてこった!!!!!」」」」」という顔になり、ナミは顔面蒼白、当のバギーは、
「誰が、デカッ鼻だぁーーーーー!!!」
激怒していた。
バギーはルフィに向けてナイフを飛ばした。
「「ルフィ!!」」
ゾロとステラが叫んだ。
ナイフはルフィの顔に当たった――ように見えたが、口で受け止めていた。
恐るべき反射神経。
「お前は必ずぶっとばしてやるからな!!」
ルフィは不敵に言った。
すると、バギーたちは大声で笑い出した。
「このおれをぶっ飛ばす……? ギャハハハハハ!! この状況でおれはどうぶっとばされたらいいんだ? 野郎ども、笑っておしまい!!」
笑い声を無視してルフィは叫んだ。
「ゾロ! ステラ! 逃げろ!!」
「何ぃっ……!?」「え……!?」
二人はルフィを見た。そして、
「何言ってんのよ! せっかく助けに来た仲間に向かって――」
「了解」「わかった!」
「あーもう! わけわかんない! これだから海賊って嫌い!」
頭を抱えるナミ。
「逃がすか!」
大砲に向かって走るゾロに襲い掛かる手、ステラはそれを難なくはじいた。
「お前の相手はわたしだ!!」
「おもしろい……死ねっ小娘!!」
キンッキンッキンッキキンッ
ナイフの攻防。
ステラは向かってくるナイフを次々とはじくが相手は浮かんだ手、何度も向かってくる。
しかし、ステラは焦らなかった。
ガコンッ
砲口がこちらを向いた。
ステラが戦ってる内にゾロが向きを変えたのだ。
「「「「「大砲がこっち向いたぁーーーーー」」」」」
「何~~~~!? あれにはまだ『特性バギー玉』が―――」
バギー達の悲鳴を聞きながら、ゾロはナミに言った。
「早く点火を!!」
「は、はい!」
「よせ―――ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「はっ!」
ステラは高く跳躍して避け、バギー達はまともに食らった。
ルフィ達はうまく逃げ切ったようだ。
ステラはその事実に安堵しながら見つからないようにしてルフィのにおいを辿って追いかけた。