パトリック・レポート◆ヴァンダムセンチネル氏 04

Last-modified: 2016-03-04 (金) 01:15:32

『その4』
 
 
跳んだ先では、金色のMSがフリーダムを捕まえ、DXが仲間ごと撃っている。

「あのMS…シン・アスカが乗っているのか?」

ザフトの赤服であり、フリーダムとそのパイロットに憎しみを抱いた少年。
血気盛んでとるに足らない存在と私は思っていた。

『な・・・・味方ごとやるつもりなのか!?』
『物覚えが悪いな、キラ・ヤマト!』
「アカツキはビームを反射するんだぜ! くらぇぇぇ!!」

フリーダムのみにダメージを負い、それ以外は反射している。
2人がかりとはいえ、あのフリーダムを倒すとは……

『これで終わりだ、フリーダムッ!』

フリーダムの戦闘能力は奪われた。
これであの少年は彼の命を奪うことで復讐は幕を閉じるのだろう…
だが……トドメをさす事はなかった。
金色のMSはビームサーベルを収納した。

「シン、わざとコクピットを外したのか?」
『・・・・・家族の復讐は、これで終わりだ。わざわざキラ・ヤマトを殺すつもりもない』

私は……あの少年を見誤っていたのか?
それとも……闘いの中で成長したのだろうか?
私は彼の選択が正しいとは断言は出来ない…
だが、これでよかったのかもしれない、そう思える。

「キラ、聞こえるな」
『アスラン・・・! どうして・・・・どうしてアークエンジェルを・・・・!』
「どうして、か・・・・。なら、聞き返そうか。なぜおまえたちはヤタガラスを攻撃した?」
『それは・・・・君たちを止めたかったからじゃないか・・・!』
「陽電子砲をぶつけられて、ヤタガラスが無事だと思うのか? 誰も死なないと?」
『ちゃんと砲門だけを狙った! 誰も死なないはずだ!』
「そんな風にして、カガリの結婚式にも乱入したんだな。誰も死なないはずだと」
『あ・・・・アスラン?』

物思いにふけっているとアスランの乗ったセイバー…いや、インフィニットジャスティスがきていたようだ。

「どうしておまえたちは、カガリに対してごめんの一つも言わないんだ・・・・?
  ラクスもおまえも、カガリの死を簡単に乗り越えて・・・・正義を唱えて
  どうしてそんなに、自分たちが正しいことをやってるって信じられるんだ?
  俺はそんなおまえたちの方が信じられない・・・!」

……ブルーコスモスの我々に対する憎しみからレノアが奪われた。
これは許されないことであろう…だが、まだ理解は出来る、納得はできないが。
だが、アスランはどうだ。
勝手な理屈で式に乱入し、その騒ぎに乗じて他の存在によってカガリ嬢の命は散った。
その存在がなくてもMSが戦う中で命が失われるだろう…。
やりきれない怒りがあるだろう……理不尽であろう。

「くっ・・・・・終わりにしようか、キラ。大好きだったよ、おまえのことは」
『アスラン! やめてくれ! 僕は君と戦うつもりは・・・!』
「友だった。だからさよならだ。キラ」

結局、DXによってアスランの攻撃は阻止された。
見ていている私は辛かった。
あの時、アスランは私に対して同じように感じたのだろう……
だが、今の私は死人で、悲しみを分かち合うことも出来ない。
今のアスランは一人だ…私と同じように憎しみで潰されてしまうかもしれない。

「今の私は……無力だ。
 これが私の罰なのか……」

私は、自嘲気味に呟き、拳を震わせることしか出来なかった。

(続く)