リリカルクロスSEEDAs_第08話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 10:31:23

キラは司令部がアースラに戻ってもなのはたちのマンションにいることになった。
フェイトの学校の様子を見守ってくれとリンディに頼まれたのだ。
キラはリンディがフェイトを本当の子供のように心配する母親のように見えた。
そして、フェイトより先に戻ると病院に行くように言われていたので行くことにする。
病院の入り口まで来ると救急車がやってきた。
「急患かな?」
そんな疑問を浮かべながら道を譲ろうとして驚いた。
タンカーに乗っていたのがはやてだったのだ。
「はやてちゃ・・・・・・え?」
そして、その付き添いで救急車から出てきた人物たちを見てキラは絶句した。
シグナム、ヴィータ、シャマルがはやてのタンカーと共に入っていく。
「はやて!はやて!」
ヴィータが泣きそうになりながらはやてに呼びかけていた。
「今のは・・・・・・」
キラはすぐに後を追った。
幸いすぐに回復したようだったはやてが病室に移されるのを確認した。
シグナム、シャマル、ヴィータも部屋に入っていった。
「もしかして・・・・・闇の書の主は・・・・・」
キラは嫌な予感がしてならなかった。
すると、はやての担当の医師のような人とシグナムとシャマルが出てきた。
「今回の検査では何の反応も出てないですが攣っただけ、ということはないと思います」
「はい、かなりの痛がりようでしたから」
「麻痺が広がり始めてるのかもしれません、今までこういう兆候はなかったんですよね?」
「と、思うんですが。はやてちゃん痛いのとか辛いのとか隠しちゃいますから」
「発作がまた起きないとも限りません、用心のためにも少し入院してもらったほうがいいですね。大丈夫でしょうか?」
「はい」
そんな会話を聞いてキラは段々混乱してきた。
いきなり色々な謎が解け、分からないことも増えたのだ、そしてキラは気になった。
もしこのままだとはやてがどうなるのかと。
そう思うと自然と足が三人のところへ向かっていた、幸い自分は彼女たちとは元の姿でしか会ってない。
子供姿ならバレる心配はないだろうと安易な考えだった。

 

「あの・・・・・」
キラは三人に話しかけた、三人がこちらを向く。
「あら?どうしたの?」
医者の人がキラに優しく話しかける。
「僕、はやてちゃんの友達なんですけど・・・・今の話」
シグナムとシャマルは少年の顔を見ていた、どこかで見た顔だがこんな少年は見たことがない。
しかし、魔力があの青年と似ている。
そう考えるとこの少年があの青年に似ているのが分かるが、魔力量も違う。
(同一人物・・・・・じゃないわね)
(そのようだな、ならば肉親か?)
念話でそんな会話をしているのをキラは聞いていないように振る舞うしかなかった。
「シグナムさん、シャマルさん。何をこの子を怖い目で見てるんですか?」
医師の咎めるような声で我に返る二人。
「いや、すまなかった。知り合いに似ているものがいてな」
「そ、そうなんですよ。ところで君」
「何ですか?」
「君にご兄弟はいるかな?」
「いえ、姉ならいますけど・・・・・それが?」
キラは内心ひやひやしながら答えた。嘘は言っていない。
「ところでさっきの話ですけど、はやてちゃん・・・・・どうなるんですか?」
「大丈夫よ、ちょっとした検査入院だか・・・・」
「嘘を言わないでください!」
キラはキッパリと医師の言葉を遮断して言った。
その言葉に三人とも黙っていたが、やがてシグナムが口を開いた。
「このままでは・・・・命の危険もあるのだ」
その言葉はキラが予想していて一番当たっていて欲しくないものだった。
「治る見込みは?」
「まるで原因不明の病気なの、全力は尽くしているのよ」
「そんな・・・・・そんなことって・・・・」
医師の言葉にキラの目から涙がこぼれた。
それを見てシグナムとシャマルは涙を流すキラをじっと見つめていた。
悲しすぎる、そして理解も出来た。彼女たちが闇の書の完成を望む理由がはやてを助けるためだ。
そして、もっと分からなくなった。自分の道が。

 

はやてに挨拶がしたいと言ったキラをシグナムたちは面会を許した。
はやてのために泣いてくれる人物だったからだろうか、疑いの目で見られなかった。
「あ、キラ君や。どないしたん?」
「えっと、僕が病院に着いたときにはやてちゃんが救急車で運ばれてきたところ見たから」
「そうだったんや、でも大丈夫やで」
そう言ってキラに笑いかけるはやてを見て泣きそうになるが我慢する。
「そっか、良かった。心配しちゃったよ」
「ごめんな~、シグナムたちが慌てすぎたからなんや」
キラは何も知らないという風に話をする。
「はやて、コイツ誰?」
ヴィータがキラを指差しながら聞いた。
「ほら、この前話したやろ。ウチの友達のキラ・ヤマト君や」
「えっと、初めましてキラ・ヤマトです」
「キラか、呼びやすくていいな。あたしはヴィータだ」
「私はシグナムだ」
「私はシャマルって言います」
「皆ウチの親戚なんよ」
「そうなんだ、賑やかでいいね」
キラははやてと話をしながら心のうちでは迷っていた、これからのことを。

 

シグナムたちが帰るというのでキラも途中まで一緒に帰ることにした。
彼女たちともう少し話がしたかったのだ。
「シグナムさんたちはいつからはやてちゃんのところに?」
「半年ほど前だな、主の誕生日を祝うためにここに来た」
シグナムは半年前にはやてが言った嘘を使うことにした。
「じゃあ、今はなんでここに?」
「主を守るためだ」
シグナムはキッパリと答えた。
彼女の目はやはり自分に似ていた。守りたいもの守ろうとする目だ。
そんな目をじっと見ているとシャマルが口を開く。
「どうしたの、キラ君。シグナムをじっと見て」
「まさか、シグナムに惚れたのか?」
ヴィータが冗談を言って冷やかしてくる。
「ち、違うよ」
キラは慌てて否定する。
そんなキラをシャマルとヴィータはおかしそうに笑う、シグナムも口の端を持ち上げている。
彼女たちもこんな風に笑うのか、キラはそう思っていた。
「何故だろうな、キラ・ヤマト。お前は私たちに似ている気がする」
「似ている?」
「あぁ、どこがとはいえないが似ている」
「そうね。だからこんな風に自然と話せるのかもしれないわね」
シャマルもシグナムの言葉に同意する。誰かを守りたいという心が共感しているのかもしれないとキラは思った。

 

「あの・・・・シグナムさん」
「何だ?」
「もし・・・・守りたい人が二人いてどちらかを見捨てなきゃいけなかったらどうしますか?」
「急に何だ、その質問は?」
「あ、ごめんなさい。でも答えて欲しいんです」
「私の場合は主を守れればそれでいい」
シグナムらしい意見だ。やはりどちらか一方を選ぶしかないのかそう思ったが。
「二人とも守ればいいじゃんか。まぁ、あたしもはやて優先だけどな」
ヴィータが当たり前のように言った。
「ヴィータ、どちらかって言ったじゃない」
シャマルがそんなヴィータに注意するが、ヴィータは無視してキラに言った。
「どちらかじゃねぇ、どっちも助けるんだ。守りたいほど大切ならそうしろ!男だろうが!」
「あ・・・・・」
キラはヴィータの言葉に胸を打たれた気分になった。その瞬間、涙が溢れてきた。
その選択を真っ先に捨ててしまっていた。無理だと思っていた。だが、ヴィータの言葉に気付かされた。
そうだ、なのはたちもはやても大切な友達だ。会った時間は関係ない、どちらも自分は守りたいんだと。
「わ、バカ!泣くんじゃねぇよ!男だろ!!」
キラが泣き出したことに慌てるヴィータ。
「うん、ありがとう」
「ん?何で泣かしたあたしがお礼を言われるんだ?」
キラは涙をぬぐいながら言った言葉に不思議な顔をするヴィータ。
「決まったか?」
「はい」
シグナムの言葉にキラは頷いた。
「お前が選ぶ道は険しい道だ、あちらに付いた方が一番楽だぞ?」
「そうですけど・・・・・知ってしまいましたから」
「そうか、ならば止めはしない。私は私の道を進むだけだ。お前も進むがいい」
シグナムも守りたいものという質問でキラの正体が分かったようだ。
(あの、出来ればはやてちゃんの病気の本当の原因を教えてください)
キラはシグナムのみに念話で話しかける。
(主の体の異常は闇の書の悪影響によるものだ)
その質問に素直に答えてくれるシグナムに心から感謝した。
しかし、シグナム自身も今は何もしようとは思わなかった。キラはそのことに感謝した。
戦ったもの同士、何かを守ろうとするもの同士、惹かれるものがあったのだ。
「やっぱり想いを言葉で伝えるってことは良い事ですね」
「そうなのかもしれんな」
キラの言葉にシグナムも少なからず同意してくれたようだ。
「また、会いましょう。シグナムさん、シャマルさん、ヴィータちゃん」
「あぁ、また会おう」
「・・・・・・・・」
「おう、キラ。またな~」
キラはシグナムたちとは違う道を歩いていく。
「シグナム、やっぱりあの子」
シャマルがシグナムに話しかける。
「好きにさせてやれ。いい目になった、もしかしたらあいつなら・・・・・いや、よそう」
そう言うとシグナムは先を歩き出す。
「?」
シグナムとシャマルの会話は聞きながらヴィータは?マークを出すしかなかった。

 

キラは帰っても今回のことを話すことはしなかった。
ただ闇の書について分かっていることをユーノに教えてもらうなど色々調べることにした。
彼は決意した、力の限り守りたいものをどんなに難しくても守ることを
「それじゃあ、闇の書は完成すると無差別破壊のために主の魔力を使い続けるの?」
『うん、それで闇の書・・・・夜天の魔導書の主は完成するとすぐに・・・・』
「破壊以外で使われるってのは?」
『ううん、今のところそんな記述はないよ』
「そっか、ありがと。ユーノ、忙しいのに通信くれて」
『大丈夫、それじゃまた連絡するね』
「うん、また」
キラは通信を切ると考え込む。
このことをシグナムたちは知っているのだろうかと、だが夜天の書の守護者たちが知らないわけがない。
だったら本当にはやてを助ける方法が、夜天の書が完成すればあるのかもしれない。
だが、もしそうじゃなければ夜天の書によって無差別破壊が起こってしまう。
今の状況では早々打開策を講じることは出来なさそうだ。

 

キラはもう一つの気掛かりの事を考えることにした。
分からないこと、仮面の男の存在だ。
彼はシグナムたちに夜天の書を完成させたいようだが、理由が分からない。
はやてが主である以上、その力を使うことも出来ないだろう。
どんなに考えても理由は分からないままだった。
そして、仮面の男にはもう一つキラは疑問に思っていることがある。
「戦っているとき、違和感があったんだよね」
キラは呟くとモニターを操作しながら男の映像を見ている。
なのはがいた世界からフェイトのいる世界までの移動時間は最速三十分、それを九分で。
かなりの使い手だとエイミィやクロノ、ロッテも言っていたがどうにも腑に落ちない。
「くそっ、思いつかない」
キラは頭を掻きながら考え直す。
「あの仮面の男なら夜天の書について何か知っているはずなんだ」
それを聞き出せば夜天の書で魔力を蒐集しないではやてを助けることが出来るかもしれない。
キラはモニターを切り替えながら夜中まで色々と調査していた。
そして、キラは一つのデータを見つける。
「これは・・・・・クロノ君に少し相談すべきかな」
もし、クロノから許可が下りればここからは自分の得意分野を活かさせてもらおう。
キラはクロノに連絡を取った。
そして、クロノの許可が下りたため調べることにした。
ギル・グレアムとリーゼ姉妹の行動記録についての情報を本局からハックしていた。

 

フェイトが本局から戻ってきた、どうやら学校には行けるようだ。
なのはとフェイト、キラは当面呼び出しがあるまではこちらで待機らしい。
キらはなのはとフェイトが仲良く前を歩いているのを見ながら大きなあくびをする。
「うわ、キラくん。大きなあくびだね」
「もしかして、あれからまだ調べてたの?寝ないとダメだよ」
なのはの言葉を聞いたフェイトから非難の言葉が出てくる。
「うん、ちょっとね」
キラはそれを苦笑いで返すしかなかった。
「何を調べていたの?」
「夜天の書とこの前の仮面の男について、あんまり分からなかったけど・・・・・」
そして、またあくびをする。
「あんまり根詰めないほうがいいよ?」
「・・・・・うん、分かった」
フェイトの言葉にキラは素直に頷くことにした。しかし、やめる気はなかった。
またまた大きなあくびをするとなのはとフェイトは笑っていた。

 

学校に行くとすずかがどうやらはやての入院のことを知っているらしい。
それにしても本当に世間が狭いものだとキラは思ってしまう。
自分たちが必死で探していた夜天の魔導書の主が友達なのだから
「キラくんもどうかな?」
「え?」
考え事をしていた所為で何を話していたか聞いていなかったのだ。
「もう、聞いときなさいよね。お見舞いよ、お・み・ま・い!」
アリサが少し怒りながらキラに言った。
「・・・・・皆で?」
「うん、皆で行こうと思うの」
キラは少し考える。はやてには魔力を感じることはなかった、だからはやてに会ってもなのはたちは気づかないだろう。
しかし、シグナムたちと鉢合わせした時、どう考えても戦闘になるだろう。
「・・・・・それだけは避けないとな」
キラは小さく呟いてた。
「ん?キラ、どうしたのよ?」
「あ、いや・・・なんでも・・・・」
どうやら聞かれてはいないようだ。
「あのさ、ちゃんと行くってメールしておいたほうがいいんじゃないかな?」
「そうだね、連絡しておいた方がいいね」
フェイトがキラの意見に賛成する。
「それじゃあ、メールするね。あ、写真撮って添付しようよ」
すずかの意見に皆が賛成する。
もしこのメールを守護騎士たちが見れば見舞いの時間に鉢合わせはないだろう。
キラはそう判断した。
なのはたちがお見舞いに持っていくものを考えている中キラは空を見る。
「もうすぐ・・・・・クリスマスか」
カレンダーを見ればもう二週間を切っていた。