リリカルクロスSEEDW_第08話

Last-modified: 2008-03-17 (月) 09:38:25

「あ、危なかった」
「あぁ」
ユーノとアルフは局員がやられたのをすぐに気付き、どうにか広域結界を張ることができた。
もし今、元に戻ってしまったらなのはたちの姿が見られてしまう。どうやら結界の外にも敵がいるようだ。
「なのはたちは無事かな?」
「大丈夫さ、全員かなりやる気だったんだよ。久しぶりだね、あんなに怒った顔を見たのはさ」
そう言いながらユーノとアルフはキラを見る。
キラが自分たちにとって一番中心にいるということが良く分かる。
全員がキラに助けられた人ばかりだ。今度はキラを自分たちが守る番だった。

 

低空飛行を続けるリヴァイヴァーを上空からフェイトは追いかけていた。
バルディッシュはカートリッジを1発消費する。
『Thunder Blade.』
雷の剣が連続でリヴァイヴァーへと落ちていく。リヴァイヴァーは一つずつうまく避けていく。
しかし、それもフェイトは読んでいた。
「!?」
いつの間にかリヴァイヴァーの周りを雷の剣が取り囲んでいた。
「ブレイク!!」
フェイトの大きな一声で雷の剣が爆発し、雷の魔力が爆散しリヴァイヴァーに命中する。
爆煙が晴れていくと、そこには魔方陣を展開したリヴァイヴァーの姿があった。
ハルバードがカートリッジを1発消費し、リヴァイヴァーが構える。
『Plasma Lancer.』
その瞬間、いくつもの雷の矢がフェイトに向かって飛んでいく。
「負けない!」
『Load Cartridge. Haken Form.』
バルディッシュは大鎌に変形し、フェイトは雷の矢をまずは避けた。
『Turn.』
雷の矢がハルバードの発言にターンしようと止まったところにフェイトはバルディッシュを大きく構える。
「ハーケンセイバー!」
『Haken Saber.』
フェイトが大きく振り、三日月型の魔力刃が回転しながら一瞬だけ止まった雷の矢を全て叩き壊した。
「!?」
この前戦った時よりフェイトが強くなっていることにリヴァイヴァーは少し驚いているようだった。
「キラに守られるんじゃなくて、キラと同じくらいに私は強くならないといけない」
フェイトはバルディッシュ構え、リヴァイヴァーを見据える。
「だから、私は負けられない」

 

リインフォースとアッシュは血の色をした光の粒子が舞う結界の中にいた。
「ちっ、てめぇにもウイルスが効かねぇのか。まぁ、いい。丁度いいハンデだ」
そう言いながらアッシュは笑いながらハンドガンを構える。
それに対してリインフォースは悠然と構えながら口を開く。
「ハンデか、それは有り難いな。終わる時間がもっと短縮できそうだ」
「ほぉ、中々・・・・!?」
アッシュはすぐにその場から退避した。
そして、その直ぐ後にさきほどまでアッシュがいた場所で爆発が起こる。
リインフォースのブラッディダガーがアッシュを狙っていたのだ。
「これはこれはさっきよりは楽しめそうな相手だな」
アッシュは先ほどまでの攻撃を気にもせず嬉しそうに笑っている。その顔にリインフォースは顔をしかめる。
『Triceros Improvement.』
背中の翼、トリケロス改が大きなクローとなり右手に装着される、左手にはハンドガンが構えられる。
夜天の書がリインフォースの横で開かれる。
『Photon lancer, genocide shift.』
銀色の雷の魔力弾がリインフォースの周りにいくつも集まっている。
「いけ!」
リインフォースの掛け声と同時に魔力弾が飛散していき、アッシュを狙う。
アッシュはハンドガンでいくつかを撃ち落すが、全ては無理だと判断する。
トリケロス改を横に大きく振り、全ての魔力弾を叩き落していた。
「今度はこっちの番だな!」
トリケロス改が大きくクローを開き、リインフォースを捕らえようとアッシュが突っ込んでくる。
『Panzerschild.』
防御魔法により激しいぶつかり合いが起こり、クローとの間に火花が散る。押し合いとなり、わずかにリインフォースが押される。
しかし、リインフォースは冷静にそれを判断する。
『Blutiger Dolch.』
一瞬にしてアッシュの周りをブラッディダガーが囲み、直撃する。アッシュは全てを防ぎきれず後退する。所々バリアジャケットが破けている。
しかし、アッシュはそんな状況の中で笑い出した。
「ハハハハハハ!面白い、面白いぞ~!」
そのままもう一度突撃を仕掛ける。リインフォースはブラッディダガーを放つが避けられ、距離を詰められる。
「この男・・・・どこまで楽しむつもりだ」
リインフォースはアッシュの攻撃を避けながら次の攻撃の用意をした。

 

「くそっ!うぜぇ!」
ヴィータとシグナムはドラグーンの攻撃を避け続けてた。攻撃をする暇がなく、集中が途切れれば死角に入り込んだドラグーンによって落とされる。
ヴィータもシグナムも近接戦に長けているが、ドラグーンの攻撃により間合いを詰めることもできない。
2人にとっては相性が悪い相手かもしれない。
「・・・・・・・」
シグナムは回避を続けながら、冷静にクルーゼとドラグーンを観察する。確かにドラグーンは動き回り、砲撃をしてきてやっかいなものだ。
しかし、どんなものにも弱点はあるはずなのだ。シグナムはそれを見つけ出そうとしていた。
「どうしたのかね?キラ君やこの前の女性のほうが強かったと感じるのだがね」
「この野郎!」
「ヴィータ、落ち着け」
ヴィータはこういうタイプの人間との戦いには向かないだろう。ヴィータは感情的になりやすい、そこを責められれば危ない。
シグナムがヴィータを落ち着かせ、冷静に判断を下す必要があった。
しかし、ヴィータも攻めあぐねていることに焦りを感じ始めているのだろう。
早めに相手に一撃を加えなければいけない。
「っ!?」
ドラグーンの1つをどうにか避け、それを目で追った。
それは数発の攻撃をして飛び回った後、クルーゼの背中へと戻っていく。
「・・・・・」
そこでシグナムはあるひとつの仮説を立てる。
(あれは一定量の魔力を消費すると自動的に補給するために戻るのか?)
シグナムは他のドラグーンも見ることにした。他も数発を撃つとクルーゼの背中へと戻っていく。
やはり予想通り、ドラグーンは消費した魔力を補充するために一度、クルーゼの背中に戻らなければならないようだ。
(ヴィータ、やつに一撃くれてやるぞ。思い切り叩き込めるか?)
その念話にヴィータは一瞬、驚いたような顔をしたがやがてニヤリと笑う。
(あぁ、ぶっとばしてやる!)
そして、ヴィータはグラーフアイゼンを強く握った。
出来るだけ多くのドラグーンたちがクルーゼの背中に戻る瞬間・・・・・・。
『Schlangeform.』
レヴァンティンはカートリッジを1発消費すると、刃が連結刃と変化し長く伸びる。
それと同時にヴィータはクルーゼに向かい一直線に突進していく。
もちろんクルーゼはそれを許すことはなく戻っていないドラグーンでヴィータを撃ち落そうとする。
「何っ!?」
シグナムの連結刃がヴィータの周りを螺旋状に囲い込み、ドラグーンの攻撃を防いでいたのだ。
撃ってくるドラグーンの数が少ないおかげでもあるが・・・・・。
この状態、少しでもお互いがずれてしまえばヴィータに危険が及んでしまう。
しかし、2人は共に戦ってきた騎士同士、息が合うのは道理である。
「ちぃっ!?」
すぐにヴィータから距離を取ろうとするが、加速してきたヴィータを振り切ることはできない。
連結刃の螺旋の中からヴィータが回転しながら姿を現した。
「ラケーテン、ハンマーーー!!」
クルーゼはシールドでグラーフアイゼンを受け止める。しかし、勢いとパワーがヴィータのほうが勝っていた。
「うおおぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁ!!」
ヴィータはクルーゼのシールドに大きなヒビを作らせると、力の限り振り抜いた。
クルーゼはシールドを破壊され、近くの建物へと突っ込んでいった。
ヴィータは小さくガッツポーズをするとグラーフアイゼンを向ける。
「あたしはキラより強いぞ!覚えとけ!」
シグナムは連結刃を戻しながら煙を上げる建物を見ながら思った。
(まだ終わっていない)

 

「!?」
キラは何かを感じ取るとハッと目が覚める。
体を確認する、怪我はまだ中途半端で治りきっていないが魔力は十分回復している。
戦える。キラはそう判断すると起き上がる。
「キラ、ダメだよ。まだ怪我が治ってない、寝てないと」
アルフがキラを抑えようとするが、キラはそれをやんわりと断った。
「アルフさんもユーノ君も皆の援護に行って、僕は大丈夫だから」
そう言って、キラはフリーダムを取り出し、語りかける。
「やれるね、フリーダム」
『Yes, sir.』
「ちょっと、キラ!」
「嫌な予感がするんだ。何か・・・・強くて嫌な気配が・・・・それを確かめる!」
そう言うとキラはバリアジャケットに身を包み、翼を広げ飛び出していってしまった。
その様子をアルフとユーノは呆然と見ていたが、次の瞬間キラの感じたものが正しいと感じた。
結界の中に何者かが侵入してきたのだった。

 

黄色の魔力刃と青紫の魔力刃がぶつかり合い、火花が散っている。
『Ax Saber』
『Haken Saber』
2人同時に放たれた魔力刃がぶつかり合い、相殺される。どちらの魔法も同等な強さである。
フェイトとリヴァイヴァーの強さを比べれば、魔力量はリヴァイヴァーがフェイトの上をいっている。
しかし、魔法の精度や身のこなしなどの戦闘に対する動きはフェイトが上である。
(まるで昔のなのはみたいだ)
フェイトはそんなことを思った。どうやら戦闘経験が少ないと考えられる。
しかし、昔のなのはと違うところは思い切りの良さだ。
フェイトが驚くほど踏み込んでくることがあるほどだった。
リヴァイヴァーは一気にフェイトと距離を詰めるとハルバードを高く振り上げると一瞬にして振り下ろしてくる。
フェイトはそれを受けずに後ろに数歩下がるだけで回避する。
そして、すぐに大鎌の横薙ぎをリヴァイヴァーへと繰り出すが、それをどうにか受け止めていた。
『Halberd From.』
大斧から元の状態に戻し、受け止めていたバルディッシュを横に受け流した。
「!?」
一瞬のことでバランスを崩しかけるフェイトにリヴァイヴァーの蹴りが入る。
「ぐっ!?」
そのまま数メートル吹き飛ばされてしまう。
(この人、戦いながら強くなってる)
バリアジャケットのおかげで蹴りのダメージはない。少し痛むくらいだろう、戦いに影響はなかった。
(早めに倒さないとやっかいかな)
フェイトはフルドライブを使うことを頭に入れた。

 

「バルディッシュ、ザンバーフォーム・・・・いくよ?」
『Yes, sir.』
「ドライブ」
『Ignition.』
バルディッシュは変形し、大剣のザンバーフォームへと変わる。
『Zamber form.』
そして、フェイトはバルディッシュを構えると一気に飛び出していく。
そのスピードは落ちることなく、むしろ上がっていた。
「!?」
リヴァイヴァーは咄嗟にハルバードでバルディッシュの魔力刃を受け止めるが、叩き折られてしまう。
それと同時にリヴァイヴァーの右腕の鎧が砕け散った。
「え?」
それを見たフェイトは目を見張ってしまう。手首から先がないのだ。
しかし、よく見ると右手はしっかり付いている。だが・・・・・。
「何で・・・・・小さいの?」
理由は簡単だ、鎧の中身が子供だということだ。自分より小さい子だろうか。
それを見たフェイトには怒りがあった、こんな小さな子供が戦わされていたのだ。
その理不尽さに怒りを覚えた。
「何であなたみたいな子供が戦わなくちゃいけないの!」
フェイトはまるで昔の自分を見ているようで我慢できなかった。
「・・・・・・・」
「答えてくれないんだね」
リヴァイヴァーは動揺しているのが分かるが、それでもハルバードを構えてフェイトと向き合った。
「ハルバード」
『Yes, ma'am』
「ドライブ」
『Ignition.』
「なっ!フルドライブ!?」
ハルバードが変形し、バルディッシュのように巨大な魔力刃が現れて大刀となった。
『Slash form.』
フェイトは一瞬驚いたが、すぐにバルディッシュを構え直す。リヴァイヴァーもハルバードを構える。
「はぁ!!」
「っ!!」
2人が同時に飛び出して空中で交錯し、お互いが飛び出した場所に着地する。
リヴァイヴァーはハルバードを落とし、片膝を付いた。
動揺した状況で決着を付けようとリヴァイヴァーの負けだった。
リヴァイヴァーの鎧が全て砕け散る。
「君の負けだ、大人しく・・・とう・・・こ・・・」
フェイトは振り向きながらリヴァイヴァーに向けて投降を呼びかけようとした。しかし、鎧が砕けたリヴァイヴァーの姿にフェイトは言葉を失った。
「そんな・・・・どうして」
フェイトはリヴァイヴァーの姿を見てそう言うしかなかった。