リリカルクロスSEEDW_第12話

Last-modified: 2008-03-17 (月) 10:23:38

「どうやって居場所を見つけたの?」
アースラの会議室にはキラ以外の全員が集合していた。
その中を代表してなのはがリンディやクロノに質問をする。
「実はアースラに通信があったんだ。そこには特定の座標と亡霊って文字が書かれたデータだった」
「亡霊?」
「多分、ファントムを指す単語じゃないかな」
なのはの疑問にフェイトが答える。クロノもフェイトの言葉に頷いた。
「僕もそう考えた。だとしたらこの座標は・・・・・・」
その言葉で全員が理解する。この座標がファントムの居場所を記していることを。
「でも、それって罠じゃねぇのか?」
ヴィータの言葉は誰もが思ったことだ。
今まで見つからなかった場所が簡単に通信で送られてくるはずがないのだ。
しかし、あのクロノが見つかったというならそれなりの理由があるのだろう。
「僕も最初はそう思ったさ。差出人の名前を見るまではね」
「差出人?」
「これを送ってきた差出人の名はA.T」
その言葉を聞いてフェイトはハッと顔を上げてクロノの顔を見る。クロノもそんなフェイトの顔を見て頷く。
察しがいいメンバーもそれが誰なのかどうやら気が付いたようだ。
「アリシア・テスタロッサ。彼女が送った可能性が高いってことだ」
「それも罠の可能性があるぞ」
シグナムの言うことも最もである。アリシアを利用されている可能性もないわけではないのだ。
クロノもその言葉に頷く。
「だが、今のところ情報がないのも事実だ。罠なら罠で情報を手に入れることが出来るかもしれない」
それに、とクロノは言葉を続けながらフェイトを見る。
「僕としてはこの情報を信じてみたいんだ」
「あ・・・・・・うん、ありがとう。お兄ちゃん」
フェイトはクロノの言葉に心から感謝した。その言葉にクロノは顔を赤くしてしまう。
「か、勘違いするな。僕としては少しでも情報が欲しいから言ってるんだ」
そんなクロノを全員が面白そうに笑っている。
「クロノくん、ちょっと変わったね」
「うん、多分キラやなのはのおかげだと思う」
「こら、そこ!ちゃんと話を聞け~!」
クロノの言葉になのはもフェイトも笑わずにはいられなかった。

 

そして、クロノが落ち着いてから話が再開する。
「ここが敵の拠点と考えると今回はやはり少数精鋭で落とそうと思う」
つまりここにいるメンバーのみということになる。
「大量の傀儡兵、アリシア、クルーゼ、ファントム。この4つに部隊を分けることにする」
「皆でやったほうが早いんじゃないかな?」
なのはの質問にクロノは首を振って答える。
「今回は奇襲を行う。全員で一人を倒すと敵に準備の時間や逃げる時間を与えてしまう可能性がある」
奇襲からファントムのところまで向かうのに必ず傀儡兵やアリシア、クルーゼは出てくるだろう。
最大の目的はファントムの確保だ。そのためできるだけ早くファントムのところへ向かう必要があるのだ。
「そのための部隊編成か」
シグナムの言葉にクロノは頷くと部隊編成を決める。
「まずは傀儡兵だ。数がかなりいると考えられる。そう考えると広域魔法に特化しているリインフォースが一番だ。サポートはザフィーラ」
「分かった」
「了解だ」
リインフォースとザフィーラは頷きながら答える。
「アリシアの相手はシグナム。サポートはアルフ」
「いいだろう」
「まかせな」
シグナムとアルフが頷く中、フェイトは心配そうに2人に話しかけてくる。
「シグナム、アルフ・・・・・・アリシアを・・・お姉ちゃんをよろしくね」
フェイトの言葉にシグナムは口の端を持ち上げながら頷き、アルフもニッコリと笑って親指を立てた。
「次はラウ・ル・クルーゼにはなのは、ヴィータ。サポートはユーノ」
「分かったよ」
「まかせろ」
「分かった」
3人ともが頷くがなのはが心配したようにクロノとフェイトを見る。
「でも、クロノくん。そうなるとファントムは・・・・」
「僕とフェイトで行く。いいな、フェイト」
クロノの問いかけにフェイトは力強く頷くが、心配そうななのはの顔を見ると真剣な顔でなのはを見つめる。
「大丈夫だよ、なのは。私は負けない。ううん、負けられないんだ」
「フェイトちゃん」
フェイトは目を閉じながら手を自分の胸に当て誓うように答える。
「守ってくれたキラのために、私を待ってるアリシアのために、母さんにもう一度会うために」
そして、目を開いたフェイトの瞳には静かに、そして力強く燃える炎が宿っているように見えた。
「私は負けないよ・・・・・絶対に!」
なのははその言葉を聞くとしっかりと頷いた。どうやら心配しすぎたようだ。
今のフェイトは何者にも屈しないだろうとなのはは感じた。
それならば自分のことに集中すべきだと判断する。
「はやてはデバイスが完成次第合流する、ということでいいな?」
クロノの言葉にはやてはしっかりと頷いたが、横のリインフォースが心配そうにはやてを見る。
「大丈夫なのですか、主はやて」
「大丈夫や、私も今までしっかり戦えてなかったし、皆を守りたいんよ」
リインフォースの言葉にはやては笑って答える。それにリインフォースは頷いた。
「分かりました」
はやての強い意思を感じ、リインフォースやシグナムたちはもう何も言わなかった。
「それじゃあ、各人準備を始めてくれ。これで終わりにするぞ」
クロノの言葉に全員がしっかりと頷いた。

 

「キラ君、なのはちゃんたち行ったみたいよ」
病室で眠り続けるキラを見ながら先ほどなのはたちが出発したことを告げるシャマル。
しかし、キラに起きる気配など全くなかった。その方がいいとシャマルは思った。
もし、今キラが起きてしまえば、なのはたちを追って戦い、また大怪我をしてしまいかねないのだ。
「はやてちゃんのデバイスが出来たら私も行くから大人しく寝ていてね」
そう言うとシャマルは病室を出ていった。
静かになった病室にキラは目を覚ますことなく眠り続けていた。

 

「どうやら見つかってしまったようだ」
「隠れていてもいずれは見つかるものですよ。管理局とて無能というわけではないのですから」
ファントムの言葉にクルーゼは首を横に振る。
「さて、リヴァイヴァー。君には今回はちゃんと戦ってもらうよ」
クルーゼは2人から離れたところに立っているアリシアを見ながら言った。
「もし、お前が本気で戦っていなければ・・・・・分かっているな?」
「・・・・・・はい」
「この戦いが終われば管理局を本格的に叩く。魔道のない世界にあれほど必要ないものはない」
「管理局に対する不満も高まってきているようですしね」
「魔導など必要ないのだ」
ファントムはそう言いながらモニターに映るアースラを見ていた。

 

「あれは・・・・・・」
モニターに映るファントムの居場所は次元空間に浮かぶ物体になのはとフェイトは目を見開く。
2年前のプレシア・テスタロッサの時の庭園に良く似ていた。
「どうやらビンゴのようね。皆さん、準備はいい?」
リンディの言葉に転送ポートにいるなのはたちは頷く。
「何かあれば私も出ますからあまり無茶はしないでくださいね」
「分かりました」
その言葉にフェイトはしっかりと答えた。
そして、なのはたちはファントムの隠れ家へと転送されていった。

 

「って、いきなりご大層なお出迎えだな。おい!」
転送されてきたなのはたちを出迎えたのは傀儡兵たちの砲撃の嵐だった。
ユーノ、アルフ、ザフィーラがすぐに防御に回り、砲撃を防ぐが数が多過ぎる。
「全員、私の近くにいろ」
リインフォースの言葉に全員リインフォースを中心に輪を作り、防御魔法を展開する。
「遠き地にて、闇に沈め」
『Diabolic emission.』
リインフォースは夜天の書を開き、詠唱をする。リインフォースの高く掲げた右手に黒い魔力が集束、圧縮していく。
「デアボリックエミッション」
圧縮された巨大な魔力の広域魔法周りの傀儡兵を一気に飲み込んでいった。
「今だ、行け!」
リインフォースの言葉に全員が奥へと走り出す。
「道を開く、縛れ!鋼の軛!でぇぇぇいっ!」
目の前にいる道を塞ぐ傀儡兵たちをザフィーラは薙ぎ払っていき1本の道を作りそこをなのはたちが走っていく。
それを追いかけようとする傀儡兵たちに血の色の短剣が突き刺さっていき爆破する。
「ここから先は行かせん」
道を守るような形でリインフォースとザフィーラが前へと出る。
「一つ忠告しておこう」
リインフォースは傀儡兵たちを見ながら右手を上に掲げる。
「先ほど高町たちがいたからな。威力を下げていたが・・・・・・」
リインフォースの右手にはさらに密度の高い魔力が固まっていく。
「ザフィーラ」
「大丈夫だ、それくらい防ぎ切れる」
ザフィーラは自分の周りに魔方陣を展開し、リインフォースの魔法に備える。
リインフォースはそれを確認し、頷くと集束した魔力を一気に解き放った。
「デアボリックエミッション!」
それにより周り全ての傀儡兵を破壊する。ザフィーラは防ぎ切ったのを確認する。
しかし、傀儡兵はどんどん沸いて出てくる。
「ふん、面白い」
「ここから先へは行かせない・・・・・行くぞ、ザフィーラ!」
「応っ!」
傀儡兵の大群にリインフォースは翼を広げ、ザフィーラは狼の姿に変わり突っ込んでいった。

 

「・・・・・・アリシア」
なのはたちが奥に進むと広場に出るまるで庭だ。そこには甲冑を着たアリシアが立っていた。
「行け、テスタロッサ」
シグナムはレヴァンティンを構えながらフェイトに告げる。
フェイトは頷くとなのはたちと共に奥へと進む。アリシアがそれを阻もうとするがシグナムが前へと出る。
「お前の相手は私だ!」
「アリシア、フェイトが助けてくれるから心配しなくていいんだよ?」
「・・・・・・・・・」
しかし、アリシアはシグナムと鍔迫り合いを続け止まる様子はない。
明らかに動揺しているがそれでも戦っている。
大方脅され、戦わなくてはいけない状態になったことをシグナムは予想する。
「戦うというのなら迷うな。お前は母親を助けるために戦っている。ならば今はそれだけを考えろ」
「あ・・・・・・・」
シグナムの言葉に一瞬びっくりしたような顔のアリシアだが、次の瞬間顔つきが変わった。
今ここで本気でこの人を相手にしなければプレシアが危ない。そして、今はそのことだけを考えよう。
(フェイト、お願いね)
最後に妹のことを思ったが、次の瞬間には戦いに意識を沈めた。
「悪いが、あいにく手加減など私は出来ん!全力で来い!」
アリシアは口の端を少し持ち上げるとハルバードを構え、シグナムとアルフへ向かう。
シグナムの一撃は重く鋭いのはこの前の戦いで分かっている。
「バリアジャケットパージ」
『Yes, ma'am.』
アリシアの甲冑が外れ、フェイトと似たようなバリアジャケットを着た姿で現れる。
2年前のフェイトに瓜二つだ。
「いくよ」
そういうとアリシアのスピードがさらに増して一気にシグナムとの間合いを詰める。
(速い!)
甲冑を脱ぎ、空気抵抗がなくなりスピードが先ほどより格段に上がっている。
アリシアの速さを活かした攻撃をシグナムはどうにか防ぐのが精一杯だ。
アルフもアリシアのスピードに付いていけずサポートが難しい状況だ。
シグナムに防御魔法をかけることしか出来ない。防戦状態になってしまった。

 

「アクセルシュター!」
『Accel shooter.』
なのはは何かを感じ取るとすぐに魔法を放つ。ピンクの魔力の弾はドラグーンの砲撃全てを相殺していた。
「ほぉ、すぐにドラグーンに気付き、さらに即座にそれを防いだ・・・・・・・腕を上げたようだね」
「上!?」
フェイトの言葉に全員が上を見ると飛んでいるクルーゼの姿があった。
「クロノ君、フェイトちゃん!」
なのはの言葉にクロノとフェイトは走り出す。しかし、クルーゼはそれを追おうとはしない。
そのことになのはたちは不審に思う。
「どうして追わないんですか?」
「ふむ、どう考えても追ってあの2人も戦いに参加すれば私でも勝つのは難しいからね」
「じゃあ、この人数なら負けることはないって言いてぇのか」
ヴィータはグラーフアイゼンを構え、今にも飛び掛らんばかりの様子だ。
クルーゼは肩をすくめると首を横に振る。
「別にそういうことを言っているわけではないさ。この人数でも私は大変だと思っているよ」
その言葉には勝つとも言っていないが、負けるとも言っていない。
「クルーゼさん、少し・・・・・いいですか?」
「何だね?」
「何でこんなことに手を貸すんですか?」
なのはの言葉にクルーゼは不思議そうになのはを見る。
「私のことは彼に聞いたのではないかね?」
「聞きました。聞いた上で尋ねているんです」
「どうやら君は本当に彼に似ているな。彼もあの時同じことを言った」
クルーゼは昔を思い出していた。あの時のキラは自分に何度も語りかけてきた。
メンデルの時もそうだった。彼は自分の生まれを聞いても立ち直るのが早かった。それが謎だった。
「なるほど、彼はこの世界に来て君たちに会ったことがあったわけか」
「!?」
「ふむ、それなら彼が自分の生まれをすぐに受け止めた意味が分かる。
 フェイト・テスタロッサ、彼女が原因か」
キラにとってフェイトは自分と似たような存在。そして、クルーゼはもっとそれに近い存在だ。
「ふん、そういうわけか・・・・・・クククッ、ハハハハハハハハハッ!どうやら私は運命にも見放されていたらしい」
自分にも語りかける人間がいればもっとマシな人生だったかもしれない。
しかし、あの世界にはそんなものなかった。
そして、キラはここで語りかける人間を得ていた。
「クルーゼさん」
「だからこそ、私は彼が、あの世界が、憎い。そして、この世界も!!」
ドラグーンが一斉になのはたちを狙い砲撃を始める。なのはたちは散開し、回避する。
なのはのアクセルシューターとドラグーンが入り乱れる戦いとなる。
「ストラグルバインド!」
ユーノがドラグーンを捉えようとするが、ドラグーンはバインドの合間をうまく縫って飛ぶとユーノへ砲撃をする。
「ユーノくん!」
爆発が起き、煙が晴れるとユーノは防御魔法を展開している。
「なのはは僕のことは気にしないで戦いに集中して!」
「彼の言う通りだ」
なのはとの距離を一気に詰めてきたクルーゼが長い魔力刃がなのはの首を狙う。
『Explosion. Raketenform.』
クルーゼの真横からカートリッジを消費される音が聞こえる。
「ラケーテンハンマーーッ!!」
「ちぃっ!」
クルーゼは魔力刃をしまい、シールドで防御し後方へと下がる。
「ぼさっとすんな、なのは!」
「ご、ごめん。ヴィータちゃん」
ヴィータに一括され、レイジングハートを握る手を強める。
「あたしが突っ込むから援護頼むぞ」
「うん!」
「クルーゼだったか、あたしはなのはやキラみてぇに甘くねぇぞ!てめぇは敵だからぶっ飛ばす!!」
そう言ってヴィータはグラーフアイゼンを構え、クルーゼに突っ込んでいく。
なのははその後ろを飛び、ヴィータの後に続いていった。