リリカルクロスSEEDW_第13話

Last-modified: 2008-03-17 (月) 10:27:26

「最終段階やな・・・・・・これで・・・・最後や」
はやては詠唱に入る、名を与える詠唱だ。
「夜天の主の名に於いて汝に名を送る。
 優しく包み込むもの、幸運を運ぶ風、祝福のエール。
 リインフォースⅡ」
リインフォースⅡは夜天の書を少し参考にして作られているため詠唱が少し違っている。
「蒼天の光よ、我が手に集え。祝福の風、リインフォースⅡ」
淡い光がはやての周りを包み込んでいく。その中心にはやては両手を差し出す。
「おいで、リインフォースⅡ」
その瞬間、はやての両手のひらに小さな女の子がおさまっていた。
やがて目を開けたリインフォースⅡは周りを見て泣きそうな顔をする。
無理もない、知識はあるが生まれたばかりは不安が大きい。
「大丈夫やで」
そんなリインフォースⅡにはやては優しく語り掛け、はやてを見上げるリインフォースⅡ。
「私ははやて、分かるよな?」
「はい、マイスターはやて」
その言葉にはやては嬉しそうに頷いた。どうやらやっと成功したようだ。
後の問題は融合に関してだが、はやてはリインフォースⅡを見て感じた。この子なら大丈夫だと。
「リインフォースⅡ・・・・・・う~ん、リインフォースもおるしリインでえぇか?」
「はい、マイスターはやて」
「早速やけど、リインの力を貸して欲しいんや」
「はいです!」
はやての言葉に元気に返事をするリインⅡにはやては優しそうに頭を撫でる。
「そんなら行くで、リイン!」
「了解です!」
「はやてちゃん!忘れ物!」
部屋を出て行こうとするはやてにマリエルはシュベルトクロイツを渡す。
「多分、これで最終的に完成したわ」
「ありがとうございます!」
「頑張ってね」
「はい!」
はやては嬉しそうに頷くとリインフォースと共に部屋を出ていった。
「まずは行くところがあるんや」
そう言うはやてをリインⅡは不思議そうに見ている。
「リインに会わせたい人がおるんや」

 

「倒しても倒しても沸いてくるな」
色々な世界でテロが起こせるほどだ当たり前だろう。
飛んでいるリインフォースとザフィーラの下の地面には傀儡兵の残骸で埋め尽くされている。
しかし、その数は減ることはなくむしろ増える一方だ。
「ちぃ」
巨大な傀儡兵の砲撃を防御魔法で防ぐ。
『Blutiger Dolch.』
「穿て!」
巨大な傀儡兵の関節部分に血色の短剣が突き刺さり爆発し、傀儡兵が崩れる。その下にいた傀儡兵が何体かが巻き込まれる。
「分かっている!くらぇ!」
白い魔力が地面から何本も現れ、下の傀儡兵を串刺しにしていく。
2人はもう何体破壊したか覚えていないほどだった。
「魔力を温存しながら出来る限り同士討ちを狙うぞ。敵が集まったときまとめて潰していく」
「分かった」
リインフォースとザフィーラは攻撃の回避に集中する。
同士討ちを狙わなければこちらの魔力が先に尽きてしまいかねない。
リインフォースたちの魔力が尽きるのが先か、傀儡兵たちが尽きるのが先か。
先の分からない長期戦となった。

 

「はぁっ!」
「くっ!」
アリシアの一撃を避けきれず、騎士服が斬れてしまう。ギリギリだった。
「シグナム!」
シグナムは未だアリシアを捉えきっていなかった。
フェイトの速さに慣れていたがそれ以上とは戦ったことはない。
攻撃は防ぐことが出来るようになってきたがまだまだだ。その証拠にこちらの攻撃が当たらず避けるのもギリギリだ。
アリシアのスピードはシグナムの戦いの記憶の中で最も速いだろう。
「だが・・・・・・・」
シグナムはそういうとレヴァンティンと鞘を構える。
先ほどと同じようにスピードを活かした攻撃を仕掛けてくるアリシアのハルバードをシグナムは鞘でそれを受け流す。
そして、そのままレヴァンティンの斬撃を繰り出す。
「くぅ!?」
どうにか自動防御によりレヴァンティンの一撃を防ぐアリシア。
「お前は速い。だが、テスタロッサより戦い慣れていない。故に攻撃がパターン化しているぞ」
シグナムが飛び込んでくる。アリシアはそれを右に避けてすれ違いざまにハルバードを大きく振りぬいた。
しかし、そこにシグナムの姿はなかった。
「っ!?」
アリシアはハルバードの先端に乗りレヴァンティンを大きく振り上げているシグナムを見て目を見開いた。
『Explosion.』
レヴァンティンのカートリッジが1発消費される。レヴァンティンの刀身が赤く燃え上がる。
「紫電一閃!」
『Barrier jacket, Iron form.』
ハルバードはアリシアのバリアジャケットを甲冑へと換え、自動防御を展開する。
しかし、自動防御を貫かれ直撃を受けたアリシアは吹き飛ばされてしまう。バリアジャケットの甲冑にヒビが入っている。
ハルバードがバリアジャケットを換えていなければアリシアは負けていただろう。
すぐにアリシアはハルバードを持ち、飛び出す。
少しでも止まってしまえばアルフのバインドに捕まってしまう。
(負けられない)
プレシアのためアリシアはハルバードを持つ力を強める。
フェイトたちはプレシアを助けてくれるだろうか。ふとそんなことを考えてしまうが、首を振った。
(今はそんな事考えるな。戦いに集中しないと、私は今やることをやるだけ!)
そうして、アリシアはハルバードを構え、2人へと突っ込んでいった。

 

戦いは砲撃戦となっていた。ヴィータでさえシュワルベフリーゲンを使って戦っている。
「キラ・ヤマトはどうしたのかね?」
「今はキラくんは関係ありません」
「ふむ、残念だな。彼はここで私が倒すつもりだったのだがね。どうやらその必要もないようだ」
クルーゼはアリシアから聞いた話からキラの復活は難しいと考えていた。
今の彼は彼女たちと会ったことで全大戦以上に生に対しての考えを強く持っていた。
そして、人を殺すことを誰より恐れていた。
そのため自分が殺したということに対しての反動が大きい。
また前の傷などもあり精神的・肉体的にも限界だろう。
「キラぐらいいなくてもあたしらでてめぇらに勝ってやるよ!」
「ならば、やってみるがいいさ!」
ドラグーンのスピードが上がる。なのはたちはそれを防御、またはギリギリ回避して防いでいるしかなかった。
なのははタイミングを待っていた。そのために自分の周りをアクセルシューターが飛び回っている。
ヴィータはすぐに飛び出してグラーフアイゼンを叩き込める位置でタイミングを計る。
ドラグーンが一瞬止まり、クルーゼのほうへと戻っていく。
((今っ!))
なのはは周りのアクセルシューターをクルーゼへと飛ばし、ヴィータもグラーフアイゼンを構え、一気に突っ込んでいく。
(((捉えた!)))
3人がそう思ったときだった。
「甘いな、私に君たちの考えが分からないと思ったかね?」
クルーゼがそう言うとドラグーンがクルーゼのところに戻らず、方向を変えヴィータへと砲撃を浴びせる。
「うわっ!?」
突然のことでヴィータは何発かを直撃してしまう。ヴィータから赤い血が流れてくる。
なのはのアクセルシューターも撃ち落されていた。
「ほぉ、それだけしか当たらないとは」
「伊達に長い間戦ってるわけじゃねぇんだよ!」
そう言うヴィータだが、左手が痛む。どうやら全力で叩き込めるのは後数回くらいのようだ。
「ヴィータちゃん!」
「今、回復を!」
ヴィータの元へ向かおうとするなのはとユーノをヴィータは手で制し、グラーフアイゼンを構える。
「あたしのことはいい、今はこいつを倒すことだけ考えるんだ!」
「だけど」
「ユーノ君、ヴィータちゃんの言う通りにしよう」
ユーノを制したなのははレイジングハートをクルーゼへと向ける。
「一瞬でも隙を見せたらダメ、あの人はそういう人・・・・・」
キラがいた世界でスーパーコーディネーターであるキラを一番苦しめた人物。
コーディネーターでもない彼がキラと対等に戦ってきたのは彼がそれだけ強いという証拠にもなる。
「分かった」
ユーノは頷くと戦闘のサポートに集中した。

 

「来た・・・・・か」
「ファントム、テロ行為ならびに時空管理局襲撃の首謀者、その他多くの罪状がある。管理局はお前を逮捕する」
「・・・・・・・・」
「抵抗する場合あなたを殺しても構わないという指示も受けている」
その言葉にフェイトは驚いてクロノを見る。だが、ファントムがやってきた行為はいくら管理局とはいえそういう判断になってしまうだろう。
「ふん、人を殺したことのないような子供が言うセリフではないな」
「それはどうかな」
その瞬間クロノのスティンガーレイがファントムのローブを切り裂き奥の壁を爆発させる。
どうやら本当に非殺傷設定を解除しているようだ。
「フェイト、君は解除するな」
「え?」
「君は殺しなんかしたらいけない。もしもの場合は僕があいつを殺す」
「そんな!クロノ!」
フェイトがクロノに何かを言おうとするがクロノはそれを制して少し笑った。
「言っただろう、もしもの時だって。僕は最初から捕まえるつもりさ。だから、手伝ってくれ」
「うん、頑張ろう」
そう言って頷き、バルディッシュを構えるフェイトを見てクロノは口の端を持ち上げた。
「来るがいい、幼き魔導師よ」
ファントムの周りに黒い魔方陣が現れ、一気に魔力が膨れ上がった。

 

一方、アースラでは・・・・・・
「皆の現状は?」
「皆、未だに戦闘中です。力が拮抗していてどちらが強いとも分かりません」
4つのモニターにはそれぞれが戦っている様子が映し出されている。
「リインフォースさんとザフィーラさんのほうは魔力が保つかどうか、怪しいところね」
モニターではあまり魔法を使っていないリインフォースとザフィーラが同士討ち狙いで攻撃を避けるばかりだった。
傀儡兵の数が分からないため精神的疲労も大きいだろう。
「シグナムのほうは何とかなってるみたいですね」
もう1つのモニターにはシグナムとアルフ、そしてフェイトの姉のアリシアの戦いの様子が映っている。
アリシアの攻撃をうまく受け流しているシグナムの姿が見て取れる。
「このままいけば勝てるかもしれませんね」
「えぇ」
エイミィの言葉にリンディも頷いた。どうやら戦闘の経験の長さが勝因になるだろう。
そして、3つ目のモニターにはなのは、ヴィータ、ユーノ、そしてクルーゼの姿がある。
こちらはシグナムたちとは違い、かなりの苦戦を強いられている。クルーゼのドラグーンに3人とも翻弄され攻撃できない。
「一瞬でも隙ができればなのはちゃんたちなら勝てるのに」
「だけど、その隙を与えない。さすがというべきね」
敵ながら隙を作らず、攻撃を仕掛けるクルーゼにリンディも感心してしまう。
「ちょ、ちょっと艦長!」
エイミィの言葉にモニターから視線を戻し、エイミィを見るリンディ。
「どうしたの、エイミィ」
「あの・・・・・クロノ君たちのほうが・・・・・」
その言葉にリンディはクロノたちの映像へと目を向ける。クロノたちはファントムと戦闘を開始したはずだ。
「何てこと・・・・・・」
リンディはその映像に息を呑んでしまった。

 

キラの病室にはシャマルがいた。そこにはやてが駆け込んできたのでシャマルはビックリしてしまう。
「あ、はやてちゃん・・・・・あら?」
シャマルははやての腕に隠れているリインⅡを見つける。
「誕生したんですね」
「うん。リインフォースⅡ、リインフォースの妹にして八神家の末っ子や」
恐る恐るシャマルを見上げるリインⅡにシャマルは優しく笑いかける。
「よろしくね、リインちゃん。私はシャマルよ」
リインはその言葉に頷くが、途中でリインの視線がある一点で止まっている。その視線の先にはキラが眠っている。
するとリインⅡははやての腕の中から飛び出し、キラの顔の近くまで飛んでいく。
「リイン?」
そして、キラの額に手を当てながら悲しそうな顔をする。
「泣いてる・・・・です」
「「え?」」
「この人・・・・・泣いてる・・・です」
リインⅡは優しくキラの額を撫でる。
「大丈夫です、大丈夫ですよ」
最初、はやてがリインⅡに言ったように優しくキラに語りかける。
すると、リインフォースとキラを淡い光が包み込んでいく。その光は部屋中を淡く照らした。
「こ、これって・・・・・・」
はやてとシャマルはその光景をただ見ているしかなかった。