リリカルクロスSEEDW_第14話

Last-modified: 2008-03-17 (月) 10:31:13

何で泣いてるのですか?

 

悲しいことがあったんだ

 

悲しいこと?

 

人を殺してしまったんだ

 

どうして殺したのですか?

 

分からない。知らない間に・・・・気が付いたら殺していたんだ

 

知らない間?

 

うん、そうなんだ

 

じゃあ、あなたの所為じゃないんじゃないですか?

 

そういうわけにもいかないよ。今になって分かる、あれは僕が暴走したんだ

 

暴走?

 

僕には力がある恐ろしい力が。それを僕が使いこなせなかったから

 

今から使いこなせるようになればいいです

 

無理だよ

 

何故ですか?

 

僕の力だから分かる。僕1人じゃ抑えきれない。次は僕の大切な人たちを傷つけるかもしれない。それが怖い

 

1人じゃ駄目なんですよね?

 

え?

 

それなら私が・・・・あなたの大切な人たちがあなたを支えます

 

・・・・・・・

 

その人たちが支えてくれるならまたあなたはあなたの戦いを出来るはずです

 

君は・・・・・誰?

 

私は・・・・・・

 

その瞬間、キラの目の前に光が広がっていった。

 

「ぐぅっ!」
シグナムがアリシアの攻撃に当たり、吹き飛ばされてしまう。
この光景をアルフはサポートしながら見つめるしかなかった。
こんな光景が先ほどから何度も起きるようになっていた。
シグナムがアリシアのパターンを読んで優勢だったのがひっくり返されている。
(一体どうして?)
そんな疑問を抱いているとシグナムが口を開いた。
「子供は飲み込みが早い・・・・お前は実戦で伸びるタイプのようだな。
 テスタロッサとは違うが良い攻撃だ」
「ありがとう、シグナムさん」
「だが、私は負けんぞ!」
そう言うとシグナムはアルフへと目配せをする。アルフもそれに気付き小さく頷いた。
『Explosion.』
レヴァンティンはカートリッジを1発分ロードする。
『Schlangeform.』
レヴァンティンはカートリッジを1発消費すると、刃が連結刃と変化しアリシアへと向かい、渦を作り飛んでいく。
アリシアはそれをうまく回避していき、シグナムとの距離を詰めていく。
右へ、前へ、上へ、左斜め、着々進んでいるアリシア。しかし、シグナムは連結刃を振るう。
『Load Cartridge. Ax from.』
アリシアとシグナムとの間がなくなる。ハルバードを構えたアリシアはシグナムに向けて縦に振りぬいた。
シグナムはそれを鞘で受けるとそのまま下に落ちていく。
(?)
しかし、振りぬいたアリシアには違和感があった。
(ジャストミートしてない、まるで攻撃に合わせて降下したような・・・・・っ!!)
そのことに気付いた時にはアリシアの目の前には拳があった。
「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」
アルフの魔力を溜めた渾身の一撃がハルバードの自動防御を突き破り、アリシアを吹き飛ばしていった。
アリシアは油断していた。サポートのアルフが攻撃を仕掛けることを失念していたのだ。
シグナムの連結刃もそれに注意を引き付けて、アルフへの注意を逸らすためのオトリでしかなかった。
「なんていうか・・・・・フェイト殴ったみたいで嫌な感じだね」
「だが、これで終わりだ」
アルフは拳を撫でながら嫌そうな顔をした。
下を見れば地面に叩き付け気絶したアリシアをシグナムが抱え上げていた。
とりあえずこちらの戦闘は終わった。

 

クルーゼの回避能力にはなのはは驚きの連続だった。
動きはあまり早くない。しかし、いくら不意打ちを仕掛けてもすぐにそれに気が付かれてしまう。
なのははディバインバスターを使うことが出来ない。ドラグーンの攻撃により使う暇すら与えられないのだ。
それにバスターでは零距離くらい出ないとクルーゼに当てることは出来ないだろう。
(一瞬でも隙があれば・・・・・)
なのはの念話にヴィータも同感だった。一瞬でもあれば捉えることが出来るが、その一瞬がないのだ。
(一瞬だね)
ユーノが何かを決心したような顔をした。それをなのはとヴィータが見る。
(僕が隙を作るから攻撃を!生半可な攻撃じゃだめだ、一撃必殺くらいでないと)
「分かった。いくよ、レイジングハート!」
『All right. my master.』
「レイジングハート、エクセリオンモード!ドライブ!!」
『Ignition.』
レイジングハートが変形し、エクセリオンモードへと変わるのをユーノはそれを見るとクルーゼへと突っ込んでいった。
クルーゼはドラグーンでユーノを撃墜するために狙いを定める。
(あれが魔力を補充するまで後数発は撃ってくる。僕がそれを耐え切れれば!)
ユーノへとドラグーンの砲撃が浴びせられる。
ユーノは避けることをせず一直線にクルーゼへと向かっていく。
(この砲撃は急所さえ当たらなければやられるような威力はもってない、最後まであきらめるもんか!)
ドラグーンの砲撃が直撃、防御魔法は極力使わず急所を守るくらいだ。
ユーノから血が流れ落ちていく。それでもユーノは止まらない。
そして、遂にクルーゼとの距離がかなり近くなるとユーノが魔方陣を展開する。
「ストラグルバインド!」
「ちぃっ!」
ユーノの魔方陣から現れた鎖がクルーゼを捕まえる。
「えぇい!こんなもの!」
クルーゼはその鎖をドラグーンで壊して動こうと思った。
しかし、体に巻きついた1本が硬くクルーゼに大きな隙が生まれた。
『A. C. S., standby.』
「アクセルチャージャー起動、ストライクフレーム!」
『Open.』
先端に半実体化する魔力刃「ストライクフレーム」を形成する。
「エクセリオンバスター、A.C.S!ドライブ!!」
クルーゼが見たのは6枚のピンクの光の羽根を大きく広げたレイジングハートを持ち、突貫するなのはの姿だった。
避けられないと悟ったクルーゼは防御魔法を展開する。
しかし、ストライクフレームはその防御魔法を突き抜け、先端とクルーゼとの距離がゼロになった。
「ブレイク・・・・・シューーーーーット!!」
巨大なピンクの光の一閃がクルーゼを飲み込んでいった。
「がっ・・・・・はっ・・・・・」
やがて、バリアジャケットがボロボロになりながらも立っているクルーゼの姿があった。
その光景になのはは目を見開いた。あの威力の魔力攻撃でも倒れないのはリインフォース以来1人もいなかったのだ。
そのままクルーゼはなのはへとライフルを向ける。
『Explosion.』
クルーゼの上空からカートリッジが1つ消費される音が聞こえた。
『Gigantform.』
上空には赤い光を放ち、ハンマーヘッドが巨大化したグラーフアイゼンを持つヴィータの姿があった。
「轟天爆砕!」
一振りするとそれはもっと巨大になる。
「ギガント!シュラーーーク!!」
その質量と込められた魔力による、単純ゆえに強力無比な一撃をクルーゼに叩きつけた。
地面にヒビが入り、床が抜け大きな穴が出来た。
クルーゼはそのまま下に落ちたようだ。戻ってくる様子がない。
どうやら勝負はついたようだった。
「あの人、大丈夫かな?」
「大丈夫だろ、少し休んだら捕まえに下りるぞ」
そう言うとヴィータはその場に座り込んでしまう。なのはもユーノもだ。
3人は怪我や体力と魔力を大きく消費し疲れてしまっていた、動けるようになるのに時間がいるようだ。

 

病室の光が解けていく。
そこには青年が目を瞑り、立っていた。
髪がウッドブラウンに変わり、いつも以上に白を基調としたバリアジャケットに身を包んでいた。
「キラ・・・・・君?」
はやての声にキラはゆっくりと瞼を開ける瞳がロイヤルブルーへと変わっている。
「ごめんね・・・・・心配かけて」
そう言って微笑むキラをはやてたちは驚いてみているしかなかった。
リインフォースⅡとユニゾンしていたのだ。
「これって・・・・リイン?」
(はいです、マイスターはやて)
リインⅡが念話で元気にはやてに語りかける。
(僕はもう大丈夫、はやてちゃんのところに戻っていいよ。リインちゃん)
(分かりました)
そんな会話をするとまたキラが光に包まれるとキラは元の子供の姿に戻り、リインⅡが傍に飛んでいた。
「なんや・・・色々言いたいことあるけど・・・・・おはよう、キラ君」
「うん、おはよう。はやて」
「えらい寝ぼすけさんやったな~、遅刻やで?」
「そうだね、早く追いかけないと」
キラはそう言って脇に置いてあるフリーダムを掴むと強く頷いた。

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・・」
戦闘が始まってから10分。クロノとフェイトの息が上がっていた。
「全く・・・・こんな化け物が貴様らの記憶にあるとは」
「これも・・・・お前の魔法・・・・アルハザードの秘術か」
クロノたちの目の前には2年前に戦ったあの闇の書の防御プログラムの姿があった。
「だが・・・・・完璧にコピーできているわけではないみたいだな」
クロノたちの攻撃が通っている複合のバリアはないようだ。
しかし、それ以上に厄介な再生機能がある。再生スピードは本物より遅いとはいえ面倒なのは確かだった。
「こ、これって!」
なのは・ヴィータ・ユーノが最下層に辿り着くとその光景に息を呑んでいた。
クルーゼを追って下へ降りるとフェイトたちがいる層まで降りていたのだ。
しかし、クルーゼは見当たらずその代わりフェイトたちと戦っている闇の書の防御プログラムを見つけたのであった。
「2人とも大丈夫?」
フェイトとユーノに3人が駆け寄る。ユーノに少し回復してもらったとはいえなのはたちもボロボロだった。
「援軍か、ありがたい・・・・戦えるか?」
「大丈夫」
なのはと同じようにヴィータとユーノが頷いて答える。
「あれは奴がアルハザードの秘術で僕らの記憶から生み出された劣化コピーだ」
「劣化コピー?」
「その通りだ。その証拠にあれにはバリアはなく攻撃はほとんど当たる」
クロノはスティンガーレイをコピーへと放つ。
スティンガーレイによりコピーはダメージを受けるが、段々再生していった。
「だが、あの通り。一番厄介な部分が残ってるんだ」
「だけどね、あの劣化コピーの再生機能も完璧ってわけじゃないんだ」
そう言ってフェイトが指差す方向を見ると先ほどの場所が少し欠けている。他の部分も今までの攻撃を受けた所為か欠けている部分が多い。
完全に再生できているわけではない証拠だ。
「とにかく、再生機能の限界まで今は攻撃するしかない」
そのクロノの言葉に4人は頷いた。
長い戦いになりそうだった。