リリカルクロスSEED_第08話

Last-modified: 2007-12-27 (木) 16:32:18

キラはフェイトとアルフと一緒に転移し、見たことない場所に着いた。
「ここは?」
「時の庭園・・・・・フェイトの母親のところさ」
「え?」
「キラはここにいて、アルフ・・・・行こう」
フェイトは立ち上がると奥へ向かう、アルフはそれを支えるように隣に付いていった。
「・・・・・・」
キラはそれを見送るしかなかった。
数分が経った頃だったろうか、何かが聞こえてきていた。だが、何かは分からない。
キラは迷ったが、その音の方へ向かっていくことにした。
大きな扉の前に来たときはもう何の音か、そして何が行われているか理解できていた。
すぐに中に入ろうとしたところでアルフに止められた。
「キラ、あんたじゃプレシアには勝てない。殺されるよ」
「でも!フェイトちゃんが中にいるんだろ!苦しんでいるんだろ!!だったら!!」
「キラ・・・・あんたがやらなくていい」
「え?」
そう言うと音が止み、アルフは扉の中へと入っていった。
数分後、ズーーンと何かが壊れるような音がしたのでキラも慌てて中に入る。
そこにはフェイトがアルフのマントを掛けられ眠っていた。
「フェイトちゃん!」
すぐにフェイトに駆け寄るが気絶をしているようだった。
フェイトの至るところに鞭で打ったような痕があった、母親にやられたのだろう。
奥を見ると、壁が崩れているのが分かった。多分アルフの仕業だろうとも・・・・。
そして、アルフは・・・・・・。
「!?・・・・・アルフさん!!」
嫌な予感がしたキラは急いで奥へと向かって走った。
 
「あんたは母親で!あの子はあんたの娘だろう!」
キラが最初に見えたのはアルフが黒髪の女性の胸倉を掴んでいるところだった。
フェイトの家で見た写真の女性だ。
「あんなに頑張ってる子に!あんなに一生懸命な子に!何であんなひどいことが出来るんだよ!・・・・・・!?」
アルフはプレシアの表情を見て一瞬止まってしまう、その時だった。
プレシアの放った魔法の矢がアルフを貫き、吹き飛ばした。
「アルフさん!」
キラは吹き飛ばされたアルフを受け止めようとしたが、止めきれず一緒に壁に激突し、煙を上げる。
「あの子は使い魔の作り方が下手ね。余分な感情が多すぎる。それに・・・・・」
煙の中から青い魔力の弾がプレシアに向かい飛んでいきそれをプレシアは障壁で防ぐ。
「友達みたいなものまで作るなんてね」
「みたい・・・・・じゃない。僕は彼女の友達だ!!」
キラはバリアジャケットに身を包み、赤い翼を展開してライフルを構えていた。
「キ・・・・ラ・・・?」
「アルフさんは逃げてください」
「何・・・言ってるんだい!あんたは!」
「あの子を助けるなら、今あなたが死んじゃいけないんです!」
その言葉にハッとしたアルフは悔しそうに転移魔法を発動させる。
「やらせると思って?」
プレシアの魔法の矢がアルフに向かうが、キラが間に入りシールドで防ぐ。
「やらせると思ってるんですか?」
同じ言葉をプレシアに返すキラ、アルフは転移魔法を発動しどこかへ飛んでいった。
「全く、いらない使い魔を殺すだけだったというのに」
「あなたは・・・・・・あなたって人は!!」
キラはサーベルを抜き放つとプレシアに突っ込んでいった。
 
一体どれくらいの時間が経ったんだろうか。
「逃げればいいってわけじゃない。捨てればいいってわけじゃもっとない」
キラはなのはの声に気付き目を開けるとそれはなのはとフェイトの戦闘映像だった。
だが、体も口も動かせないくらいボロボロだ。
プレシアとの戦いはキラが優勢に見えた。
ある一室に吹き飛ばされ、そこで見たものに固まってしまった。その隙を付かれた。
その後キラは散々痛めつけられ、動くことも出来ない。
そして、戦いは熾烈を極めたが、なのはのスターライトブレイカーによりなのはの勝利。
しかし、プレシアはそれに怒り、次元魔法を用いてフェイトからジュエルシードを奪い去っていた。
どうにか動きたくても痛みがひどく動かせない。キラは悔しそうに唇を噛むことしか出来なかった。
 
その後、キラはまた気を失っていたようだ。しかし、周りがうるさく感じ目を覚ます。
「おい、子供だ!子供がいるぞ!」
アースラの武装局員が時の庭園に着き、玉座の間でキラを発見する。
(キラくん!)
なのはの声が聞こえ、うっすらとキラは目を開ける。
(なのは・・・・ちゃん?)
(そうだよ、なのはだよ)
(フェイトちゃんは?)
(大丈夫、ここにいるよ。アルフさんも一緒)
(そっか・・・・良かった)
キラは微笑んでみるが、その顔で笑っても一層辛そうに見えるだけだった。
(すぐに回収を!)
リンディが指示を出したが、すぐに局員の声が聞こえた。
「こっちに何かあるぞ!」
その声にみんなの意識がそちらへ向く、キラは声がしたほうに何があるか知っていた。
「こ、これは!」
そこには大きな水槽の中にフェイトと瓜二つの子が眠っていた。
 
「え!?」
「・・・・・・・」
なのはもフェイトも驚きを隠せず、目を見開いてアースラの映像を見ていた。
『うわぁ!?』
武装局員がプレシアに吹き飛ばされる。
『私のアリシアに近寄らないで!』
武装局員が杖を構え、魔力の矢を放つが、プレシアの障壁に打ち消されてしまう。
『うるさいわ』
プレシアの手に魔力が集中する。
「危ない!防いで!」
リンディの声も虚しく、武装局員全員がプレシアの雷に打たれ悲鳴を上げながら倒れる。
『フフフフフッ』
「いけない!すぐに局員たちの送還を!」
「りょ、了解です!」
エイミィはすぐにパネルを叩き座標を調べに掛かる。
「アリ・・・・シア・・・?」
フェイトは未だ母と自分に良く似た少女を見つめていた。
「座標固定:0120 503!」
「固定!転送オペレーション、スタンバイ!」
 
映像でプレシアは水槽に手を触れ、愛おしそうにそれを眺める。
『もう駄目ね、時間がないわ。たった九個のロストロギアではアルハザードに辿り着けるかどうかは、分からないけど』
すると、なのはたちを見るように後ろを振り返る。
『でも、もういいわ。終わりにする、この子を亡くしてからの暗鬱な時間を』
『この子の身代わりの人形を娘扱いするのも』
それを聞き、息を呑むフェイトたち。
『聞いていて?あなたのことよ、フェイト』
『せっかくアリシアの記憶を上げたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない、私のお人形』
その話を聞いてエイミィは顔を伏せながら言う。
「最初の事故の時にね。プレシアは実の娘、アリシア・テスタロッサを亡くしているの」
「彼女が最後に行っていた研究は、使い魔とは異なる・・・・使い魔を超える人造生命の生成。そして、使者蘇生の秘術」
それに驚く、アルフとユーノ。
「フェイトって名前は当時彼女の研究に付けられた開発コードなの」
『よく調べたわね。そうよ、その通り。だけど駄目ね、ちっともうまくいかなかった』
『作り物の命は所詮作り物、失ったものの代わりにはならないわ』
そして、もう一度こちらを振り返る。まるでフェイトを見るように。
『アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。アリシアは時々わがままも言ったけど、私の言うことをとても良く聞いてくれた』
その言葉にフェイトは顔を落とすのを見てなのはは言った。
「やめて」
『アリシアはいつでも私に優しかった。フェイト、やっぱりあなたはアリシアの偽物よ』
『せっかく上げたアリシアの記憶も、あなたじゃ駄目だった』
「やめて!やめてよ!」
悲痛ななのはの叫びも虚しく響くだけで、プレシアは止まらない。
『アリシアを蘇らせるまでの間に私が慰みだけのために使うお人形。だから、あなたはもういらないわ』
『どこへなりと・・・・・消えなさい!!』
「お願い!もうやめてーーー!!」
フェイトは目に涙をため、なのはは叫ぶ。
プレシアは顔に手を挙げると高らかに笑った。
『フフフフ、良いことを教えてあげるわ。フェイト。あなたを作り出してからずっとね、私はあなたが・・・・・』
『大嫌いだったのよ!』
その一言でフェイトはバルディッシュを落とし、そして、それが砕けた。
それと同時にフェイトの目から光がなくなり倒れる。
「フェイトちゃん!」
「フェイト!」
 
その瞬間、轟音と爆風を上げてプレシアに向かっていく影があった。
ソードモードになり、シュベルトゲベールを構えたキラだった。
「キラくん!?」
その映像になのはは驚いて声を上げる。
『プレシア・テスタロッサアァァーーーッ!』
キラの目は光がなくなり怒りと憎しみしか映っていない。
振り下ろされたシュベルトゲベールはプレシアの障壁に阻まれて止まる。
『死に損ないが』
『彼女は人形なんかじゃない!ただの・・・・・優しい女の子だ!!』
『全く、あの人形にどうしてそこまで怒れるのか、分からないわね』
『何を!・・・・・あ・・・・』
「え?」
怒りで周りが見えない状態では冷静な判断は出来ない。
そのため、いとも容易くプレシアの魔法の矢がキラを貫いていた。
「キラくーーーーん!!」
なのはの悲痛な叫びが木霊する中。キラは膝を折り、そして倒れ動かなくなった。
「そんな・・・・・キラが・・・・・・」
アルフは信じられないように映像を見つめた。
 
「局員の回収、終了しました」
「えぇ、急いで彼の回収も・・・・・・」
リンディがキラの回収もさせようとしたときエイミィの声が響いた。
「た、大変大変!ちょっと見てください!屋敷内に魔力反応多数!」
「何だ!?何が起こってる」
リンディの隣にいたクロノも声を上げる。
モニターに多数の傀儡兵が現れ始めていた。
「庭園敷地内に魔力反応、何れもAクラス」
「総数、60・・・80・・・まだ増えています」
「プレシア・テスタロッサ!一体何をするつもり?」
プレシアはアリシアが入った水槽を魔法で持ち上げ玉座に戻りながら言った。
『私たちの旅を邪魔されたくないのよ』
玉座に戻りプレシアは手を広げた。
『私たちは旅立つの!』
フェイトから奪った九個のジュエルシードが円を作り宙を舞う。
『忘れられた都・・・・・アルハザードへ!』
「まさか!?」
その言葉にクロノが反応する。
『この力で旅立って・・・取り戻すのよ!全てを!!』
その瞬間、ジュエルシードが光り、巨大な力が発動した。
 
「次元震です。中規模以上!」
「振動防御!ディストンションシールドを!」
局員の声にリンディが指示を出す。
「ジュエルシード九個発動!次元震、さらに強くなります!」
「転送可の距離を維持したまま、影響の薄い場所に移動を!」
「りょ、了解です!」
「このままだと次元断層が!」
なのははフェイトを抱きしめながら叫んだ。
「キラくんがまだ!!」
キラは仰向けに倒れたままピクリとも動かない。
「今は無理よ、もう少し待って!」
なのはの叫びにリンディは悲しそうに言葉を返す。
「アル・・・ハザード」
「馬鹿なことを!」
「クロノ君!?」
「僕が止めてくる!ゲート開いて!」
エイミィの言葉にクロノは強く答えて、ゲートへと向かう。
(失われし都・・・・アルハザード。もはや失われた禁断の秘術が眠る土地。そこで何をしようって言うんだ)
クロノはゲートに向かい走りながら考えた。
(自分がなくした過去を取り戻せると思ってるのか)
クロノはデバイスを取り出す。
「どんな魔法を使ったって、過去を取り戻すことなんて・・・・出来るもんか!!」
高笑いを続けるプレシア。
それを睨むリンディ。
崩れ落ちたフェイト
それを支え・・・・・そして、プレシアを睨むなのは。
「私とアリシアはアルハザードで全ての過去を取り戻す・・・アーッハッハッハッハッ」
プレシアはもう正気ではなかった。