リリカルクロスSEED_第09話

Last-modified: 2007-12-27 (木) 16:33:15

(僕は・・・・このまま死ぬのかな?)
キラは暗闇の中にいた。
(守りたいもの・・・・・守れなかったな・・・・)
キラの頭の中にはなのはやフェイト、アルフにユーノ・・・他にもたくさんいた。
事情を話せない自分に暖かい手を差し伸べてくれた人たち。
(僕は結局・・・・・あの頃のままなのかな?)
自分の力不足で友達の親が死んだ、友達が死んだ、親友の仲間を殺した、親友と殺しあった。
(あの頃のまま・・・・・何も守れず、何と戦えばいいのかも分からず、ずっと・・・・弱いままなのかな?)
この暗闇に聞いても返事はない、当たり前だ。
(でも・・・・それでも・・・・僕は・・・・・?)
キラは闇の奥に何かを見つけた。
 
「次元震発生。震度、徐々に増加しています!」
「この速度で震度が増加していくと、次元断層の発生予測値まで後30分足らずです!」
「あの庭園の駆動炉もジュエルシードと同系のロストロギアです」
エイミィはモニターを見ながら状況の説明に当たる。
「それを暴走覚悟で発動させて足りない出力を補っているんです」
「初めから、片道の予定なのね」
その説明にプレシアの考えを口に出す、リンディ。
その頃、クロノはなのはたちと通路で会っていた。
「クロノ君、どこへ?」
「現地へ向かう、元凶を叩かないと!」
「私も行く!」
「僕も!」
同行を希望する、なのはとユーノ。
「わかった」
「アルフはフェイトに付いていて上げて」
隣でフェイトを抱えたアルフにユーノは言った。
「う、うん」
そして、なのは・ユーノ・クロノは現地に向かった。
「クロノ、なのはさん、ユーノ君。私も現地に向かいます。あなたたちはプレシア・テスタロッサの逮捕を!」
「「「了解!」」」
 
フェイトは闇の中にいた。
(母さんは最後まで私に微笑んでくれなかった)
フェイトが生きていたいと思ったのはプレシアに認めて欲しかったから。
(どんなに足りないと言われても、どんなにひどいことをされても・・・・だけど、笑って欲しかった)
あんなにはっきりと捨てられた今でも、フェイトはまだプレシアにすがりついていたい気持ちだった。
フェイトは自分の頭に浮かんでくる人の名前を呼んだ。
(キラ)
最初は敵だった。けれど、彼は敵だった私に手を差し伸べた。
私のために本気で怒って、心配してくれた。
(アルフ)
ずっと傍にいてくれたアルフ。言うことを聞いてくれないフェイトにきっと随分と悲しんだ。
(何度もぶつかった、真っ白な服の女の子)
初めてフェイトと対等に向き合ってくれたなのは。何度も出会い、戦い、何度もフェイトの名前を呼んだ。
(生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらいたいからだった)
それ以外に生きる意味がないと思っていた。
(それが出来なきゃ、生きていけないんだと思ってた)
逃げればいいってわけじゃない。捨てればいいってわけじゃもっとない。
なのはの言葉が浮かんできた。
(私は・・・・私は・・・・)
(そこまで分かっていれば、大丈夫だね)
暗闇の中から声が聞こえた、知っている声だ。
(キラ・・・?)
(フェイトちゃん、始めるんだ。今から君を)
(私を・・・・始める?)
(そう、僕も・・・もう一度・・・始めるから・・・・だから)
暗闇から手が見えた、それは自分が知っているキラの手より大きかった。
(一緒に始めよう)
フェイトはその手を取った、それを引き上げる。
そこには、知っている少年に良く似た、青年の姿があった。
 
「!?」
フェイトは目が覚める。
モニターにはなのはたちが戦っている映像が映し出されている。
ベッドから下り、手の中にあるボロボロのバルディッシュを見る。
「私の・・・・私たちの全ては、まだ始まってもいない」
バルディッシュがデバイスモードになる。ボロボロの姿、まるで今の自分の様だった。
「そうなのかな?バルディッシュ。私、まだ始まってもいなかったのかな?」
『Get set.』
それに答えるバルディッシュ。
「そうだよね、バルディッシュもずっと私の傍にいてくれたんだもんね」
フェイトの目から涙が零れる。
「お前も、このまま終わるのなんて嫌だよね」
『Yes, sir.』
それにいつも通り答え、輝くバルディッシュ。
「うまく出来るかわからないけど、一緒に頑張ろう」
フェイトの手から光があふれ出し、バルディッシュを包み込む。
そして、光にひびが入り、割れた瞬間。バルディッシュは元に戻っていた。
『Recovery.』
私たちの全ては・・・・まだ始まってもいない。
黒いマントがフェイトを包むと、バリアジャケットに変わっていた。
「だから・・・・ほんとの自分を始めるために」
フェイトの足元に魔方陣が発生する。
「今までの自分を・・・・終わらせよう」
そう言った瞬間、フェイトは向かった。
終わらせるために、そして始めるために。
 
(そうだよ、フェイトちゃん)
自分も始めなくてはいけない・・・・・もう一度。
キラのボロボロの体を白と青の光が身を包む。
『Please call my name. My master. It is possible to still fight.』
手の中のストライクが呼ぶ。
「うん、そうだね。いくよ、ストライク」
キラの手にライフルが握られ、服も白と青のバリアジャケットに変わる。
『Final mode. Set up.』
「ファイナルモード・・・・セーーット、アーップ!!」
 
キラの周りをさらに赤と緑と青の光が包み込む。
現れたキラの背中には赤い翼、そして青い大太刀シュベルトゲベール、緑の大型砲アグニ。
左肩にはマイダスメッサー、右肩にはガンランチャー。
左腕にはパンツァーアイゼンを付け、両手にはライフルとシールド。
ストライクの全ての装備を換装した姿がそこにあった。
そして、キラは自分の体の視線が高く、腕や足も長くなっていた。
「元に戻ってる・・・・・それにこの装備・・・・これなら!」
キラの魔力に気付いた傀儡兵たちがキラに向かってくる。
それを見ながらキラは静かに目を閉じる。
キラの中で何かが弾けると同時にキラは目を開ける。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
シュベルトゲベールを抜き放ったキラは傀儡兵たちの中に突っ込んでいった。
 
「なのは!」
ユーノの声になのはが振り返ると傀儡兵が斧を振りかざしていた。
(間に合わない!)
なのはがそう思い目を閉じた時だった。
『Thunder rage.』
雷が傀儡兵の動きを止める。
『Get set.』
なのはが上を見るとバルディッシュを構えたフェイトがいた。
「サンダーレイジーー!」
フェイトの雷が傀儡兵を破壊する。
「フェイト?!」
アルフが上を見上げ驚く。
フェイトはなのはのところまで下りてくる、フェイトを嬉しそうに見つめるなのはとそれを正面から見れないフェイト。
すると、壁を突き破りさっきの傀儡兵の倍以上の大きさの傀儡兵が現れ、両肩の砲台が二人を狙う。
「大型だ、バリアが強い」
「うん、それにあの背中の・・・・」
「だけど・・・・二人でなら」
その言葉にフェイトを見るなのはの顔が笑顔になって首をたてに振る。
 
「うん!うんうん!」
「いくよ!バルディッシュ!」
フェイトがバルディッシュを構える。
『Get set.』
「こっちもだよ!レイジングハート!」
なのはもレイジングハートを構える。
『Stand by. Ready.』
「サンダーーー!バスターーーー!!」
「ディバイン!バスターーーー!!」
「「せーーのっ!!」」
その瞬間、二人の攻撃が大型の傀儡兵のバリアを破り、傀儡兵を粉砕し、時の庭園に大穴を開ける。
二人が下に下りる。
「フェイトちゃん!」
「フェイト!フェイト!フェイトー!」
アルフがフェイトに泣きながら抱きついてくる。
「アルフ、心配かけてごめんね。ちゃんと自分で終わらせて、それから始めるよ。本当の私を」
 
そして、四人は奥へ向かう。
扉を破り、中に入るとそこにはたくさんの傀儡兵とさきほどの大型の傀儡兵が待ち構えていた。
「数が多過ぎるよ!このままじゃ間に合わない!」
四人が戦闘体勢に入った時だった。
大型の傀儡兵が縦に真っ二つになり、周りにいた傀儡兵も次々と魔力弾や魔力のブーメランに寄って破壊されていく。
傀儡兵を真っ二つにした青年がなのはたちに背中を向けて浮いていた。
「ここは僕が引き受ける!今のうちに皆は行って!」
なのはやフェイトたちにとってその声は聞き覚えがある声だった。