伊達と酔狂_プロローグ

Last-modified: 2007-12-26 (水) 23:51:56

コズミック・イラ74年
一つの戦いが幕を引こうとしていた。
「…ン、シ・・、シン!」
「ル・・・ナ?」
「シン・・・あぁもう」
アスランに撃墜されて月面に墜落していたシンは、ルナマリアに膝枕をされる形で意識を取り戻した。
「アレ?」
「レクイエムよ、オーブは・・・討たれなかった」
「う・・・ううう・・う~!っ~!」
シンとルナマリアは声を枯らして泣いた。
「メサイアは?」
涙を流しながらシンはルナマリアに聞いた。ルナマリアはあそこと言って指を指した。
何故だかシンはあそこに行かなければならない気がしていた。
「ルナ、インパルス借りるぞ」
「無茶よシン、今から行っても間に合わない!」
既にメサイアは攻撃されていた。インパルスもアスランの攻撃でとても戦闘には耐えられる状態ではなかった。
それでもシンは静止するルナを振り切ってインパルスのコクピットに乗り込んだ。少し前まで自分の愛機に懐かしさを感じたが
今はそれどころではなかった、今は一刻も早くメサイアに向かう。ただそれだけだった・・・

 

メサイアの格納庫に着いたシンは急いで機体から降りた。
シンは考えるよりも先に体が動いた、ただ無心に心の赴くままに進んだ。
メサイア自体何時爆発してもおかしくない状態だったがそんなことは気にならなかった。
途中で誰かがこちらに向かってくる影があった。
(逃げ遅れか?いや、違う)
シンは本能的にその人物は敵だと感じ、故に躊躇せず銃を向けた。
パイロットスーツはザフトのものでも連邦のものでもなかった。
(オーブか?歳は俺より少し上くらいか)
「ここももうすぐ爆発する、はやく逃げるんだ!」
オーブのパイロットは声を荒げて叫んだ。
それと同時にメサイアは大爆発を起こした。
それがキラ・ヤマトとシン・アスカがこの『世界』から消滅した瞬間であった。

 
 

新暦74年4月
この日ミッドチルダ北部で強大な魔力と空間湾曲が観測され、本局武装隊航空戦技教導隊第5班所属の高町なのはが
緊急出動した。幸い人は誰も住んではいない地域だったので人的被害はなかったが周辺一体は焼け野原だった。
「高町教導官!ちょっと来て下さい」
消火活動をしていた局員が何かを発見したようだ。
「どうしたんですか?」
「これを見てください」
そこには巨大な魔力フィールドが張ってあった。
「レイジングハート」
「All right」
バリアブレイクでフィールドを消滅させるとそこには重症を負った二人の青年がいた。
「すぐに医療班を、はやく」
なのははすぐに近くの治療が出来る施設を手配させるようにも指示した。

 

「・・・っ、ぅ!」
キラは痛みで目を覚ました。
「まだあまり動かないで下さい。まだ安静にしてなきゃいけないんですから」
「こ・・・こ・・は?」
「ここはミッドチルダ北部の聖王医療院です」
「ミッド・・・チルダ?」
キラはまだ夢でも見ている状態だった。寧ろ自分は生きているのか?しかし痛みは現実のものだ。
そこへ病室になのはが入ってきた。
「あなたも目を覚ましたんだ?体の状態は大丈夫?」
「それより戦争はどうなったの?オーブは?ラクスは?それに・・・ぐぅっ!」
キラは興奮するあまり傷口が開いてしまったのだ。
「だ、大丈夫?とりあえず落ち着いて。ここはあなた達がいた世界じゃないの」
キラは苦痛に顔を歪めながら
「じゃあ、違う世界・・・?ってこと?」
「そういうことになるね」
キラは頭がぐちゃぐちゃになった。なのはがで言ってることはかなりぶっ飛んでいるのだ。
「私は高町なのはって言います。それでね、まずあなたの名前を教えてくれる?」
「キラ、キラ・ヤマトです」
「はい、それじゃあキラ君あなたの出身地を教えてくれる?」
「オーブですけど…」
「あなたもオーブっと」
キラはさっきから気になっていたことを聞いた。
「あの高町さん」
「なのはでいいよ」
笑顔でなのはは答えた
「それじゃあなのはさん。さっきからあなたも、とかあなた達、とかって・・・」
「キラ君ともう一人倒れてた人がいてね、シン・アスカ君って言うんだけど知らないかな?」
まだ頭がはっきりしていないので、キラは取り合えず首を横に振る
「そうなの?それでねシン君の方がキラ君より軽傷で先に意識取り戻して色々とお話聞かせてもらったの」
そしてなのはから現状とこの世界のことを説明してもらった。

 
 
 

「・・・・・・」
「まぁいきなり魔法とかを信じろって無理だよね、私もそうだったし」
そこでなのはは病室でも使える簡単な魔法をキラの目の前で見せ、
これにはキラもビックリして開いた口が塞がらなかった。
とりあえずまだ怪我が治っていないのでなのははこの世界についてと魔法についての簡単な資料を
置いてまた明日来ると伝えその日は帰った。

 
 

次の日
検査や診察が済んだキラはベットで昨日なのはが置いていった資料に目を通していた。
(でもまだ信じられないよな。でも実際魔法は存在するわけで・・・)
「キラ君、こんにちは。体の具合はどう?」
「こんにちは、なのはさん。体は・・・まぁまぁかな?」
「なのはで良いって言ったよね?」
キラはじゃあと言って改めて
「じゃあなのは」
「はい、よろしい」
キラは少し恥ずかしかったが
「それで今日はどうしたの?」
「今日も色々と質問したいんだ」
キラはコズミック・イラについて詳しく話した。
「キラ君の世界にも地球があるなんて・・・」
「も、って?」
「私が生まれたの地球だもん。地球の日本」
「日本は・・・確か東アジア共和国の国だったな・・・」
そこでインターホンが鳴り
「なのは、私だけど大丈夫?」
「フェイトちゃん、うん大丈夫だよ?

 

そう言ってフェイトはシンを乗せた車椅子を押して病室に入ってきた。
同じ世界の人間同士の方が色々と安心するだろう、となのはとフェイトは考えたのだった。
「はじめまして私はフェイト・T・ハラオウンです。キラ・ヤマトさん」
フェイトはキラにまず自己紹介をして次にシンのことを紹介しようとした瞬間、
「キラ?キラ・ヤマト?」
それを聞いたシンは烈火のような瞳を見開きキラに殴りかかろうとした。
フェイトは止めに入ったがとても怪我人とは思えない力で振り払われたので、急いでシンにバインドを掛けた。
「アンタがステラを殺したんだ!アンタのせいでレイも、アンタが、アンタがぁ!!」
バインドを掛けられてもシンは今にもキラに噛み付かん勢いだった、が所詮フェイトのバインドには敵わずしばらくしたら大人しくなり、
騒ぎを聞きつけた医師らによってシンの病室に連れ戻された。

 

「キラ君大丈夫?」
なのははキラの方を向くとキラは俯いたまま小さな声で大丈夫と言ってベットに横になった。
なのはは何と声をかけたら良いのかわからず、医師達に任せて複雑な表情で病室をあとにした。

 
 

その日の夜なのははフェイトに連絡を取った。
「フェイトちゃんその後シン君の様子はどうだった?」
「あの後また暴れてね、結構大変だったよ・・・」
フェイトは苦笑いしながら答えた。
「何か、あの二人訳アリだね・・・どうしたら良いかな?」

 
 

「あんなのがキラ・ヤマトかよ・・・」
キラのせいでステラが死んだ
キラの為にレイは作られた
「くそっ!」
シンは思い出すだけでも腹が立つので目を瞑って眠りについた。