伊達と酔狂_第02話

Last-modified: 2007-12-26 (水) 23:52:55

キラとシンは怪我が完全に完治するとはやてが用意してくれた住居(比較的なのはやフェイト達とも近い局員の寮)に引っ越した。
その後ヴォルケンリッター達と顔合わせをした。ちなみにシンはそのときヴィータを見て
「なんだこの生意気そうな子供は」と言ってヴィータにボッコボコにされた…
それから魔法をザフィーラやシャマルやリイン、そして仕事がない時はなのは、フェイト、はやて、シグナムやヴィータから教わった。

 

そうしてしばらく経ったある日
管理局の食堂
「こっちの生活には慣れたか?」
「おかげさまでだいぶ慣れてきましたよ、シグナムさん」
「そうか、それはそうとシンはどうした?」
「ああ、彼なら多分ヴィータと魔法の訓練してますよ」
「一緒にしないのか?」
「誘ったんですけど…断られて。それでヴィータに教わってるみたいなんです」
「そうか…」
シグナムはここ数日二人の訓練を見てきたが特にキラの成長は著しかった、教えたことをまるでスポンジが水を吸収するようかのような
スピードで成長していった。それに対してシンはキラに劣るがそれでも驚異的なスピードには変わらなかった。
「これからどうするつもりだ?」
シグナムの質問にキラは
「まだ決めてません、少し迷ってます」
キラは何処か遠くを見ながら答えた。
「自分達の人生だ、よく考えることだな」
そこへなのはとフェイトとはやてが現われて
「キラ君こんにちは、シンは何処かな?」
「多分外でヴィータと一緒にいるはずだけど」
とそこへ
「お前が飛翔魔法であたしに勝とうなんて10年はえーんだよ」
「ちっくしょ~あともう少しだったのに」
丁度シンとヴィータがやってきた。
「お疲れ様、シン、ヴィータ。二人して何してたの?」
「シンの奴が飛翔魔法の練習したいっていうから付き合ってたんだよ。それで空中で鬼ごっこしてあたしを捕まえたら何か奢るってことでな」
「それで結果は?」
フェイトの問いにシンは
「負けたよ。しかもそれで俺が奢らせられるって…」
それを聞いたはやては
「でも凄いな~、飛翔魔法は初級の最後くらいの魔法やんか」
ヴィータは
「凄くねえよ、キラなんてもっと先までいってるし。で、はやてとなのはとフェイトはどうしてここにいるんだ?」
それを聞いたシンは少しムッとしたが堪えた。
なのはとフェイトはここに来た用事を思い出した。
「色々ゴタゴタしていて忘れてたけど、シンの私物があったの忘れててね、それを届けに来たんだ」
そういってフェイトはピンク色の携帯をシンに渡した。
「ピンクって…何かお前に似合わないな、オイ」
ヴィータの言葉にシンは
「別にいいだろう、これは妹の形見なんだから…」
それを聞いたキラは視線を落とした。
「別にアンタ等が悪いわけじゃないんだからそんな顔するなよな、あれは元々連合が仕掛けてきてそれをあんた達が迎え撃っただけなんだからな」
「…うん」
「あ、あのよ、シン。その…悪かったな」
ヴィータは言ってはならない事に触れてしまったことを素直に謝った。
「別に悪気があった訳じゃないんだからいいよ、お前らしくもない」
そこへフェイトはあることを思い出して
「そういえば二人のことでちょっと気になることがあってね。検査の結果ちょっと、というかかなり常人離れした数値が出てきたからね
その事を聞きたくて」
シンは
「俺達ははコーディネイターって言って…」
それからしばらくコーディネイターについて説明した。

 

「何かすげえな…」
ヴィータはそう呟いた。
「それが原因で戦争になったからね…」
キラの言葉にシンも俯いた。
「あと、ちょっと聞きたかったんだけどいいかな?」
「何や、キラ」
「三人はどうして管理局に入って戦ってるのかなって?」
なのははは少し考えて
「私は始めは成り行きだけだったけど、今は自分の技術や力で自分の好きな空と地上を守りたいからかな?」
「凄いね…」
「そうでもないよ」
その後フェイトとはやてもそれぞれの理由を語ったが、そこへ恐る恐るリインがはやてに
「あの~はやてちゃん達、そろそろお時間が…」
「ん、そうやね」
三人は立ち上がったのを見てシンは
「なんだよ、もう行っちまうのかよ。もっとゆっくりしていけば良いのに」
それを聞いたはやては
「そうしたいのは山々やけど…どこも人手不足でな」
苦笑いしながら答えた。
「人手不足か…」
シンは呟いた。
「あ、ゴメンな。こんな所で愚痴ってもうて」
「ううん、構わないよ。仕事頑張ってね」
キラは三人に向かってそう言った。

 
 

その日の夜寮の食堂でシンはキラの方を見ずに
「さっきのはやての話を聞いて考えたんだけど、俺時空管理局に入ろうと思う」
キラは少し驚いて
「いきなりだね」
「そういうアンタはどうなんですか?実はもう決めてるんじゃないんですか?」
「何でそう思うんだい?」
シンは少し笑いながら
「アンタ考え事してる時すぐ顔に出るからな」
「参ったね」
シンはそのまま
「俺の力でも誰か助けられるんじゃないかなって思ってさ。柄じゃないけど」
それを聞いたキラは
「そうだね、奪った命の償いになるとは思わないけど…それでも助けられるなら…」
こうして二人は新天地で新たな決意をしたのであった。

 

次の日二人はその旨をはやてに伝えた。それを聞いたはやては驚いたが少し考えてすぐに了承してくれた。
取り合えず二人は嘱託魔導師として管理局に入局した。(はやての裏工作によって面倒な書類等はパスした…)
「まあしばらくは今まで通り魔法の特訓やね」
というわけで特訓は続いた。
指導する人間が超一流、しかも教わるのはキラとシンなのだからもの凄いスピードでデバイスを使った戦闘を覚えていった。
そんなある日はやては
「悪いんやけど、二人とも魔導師昇格試験を受けて欲しいんや、あったほうが何かと便利やし。ちょっと飛ばしてBランクからやな」
それを聞いたキラは
「確か魔導師昇格試験ってDランク位からだよね?」
「二人ならいきなりBランクでも全然OKやし…大丈夫大丈夫、裏技とかでバレへんようにしとくから」
「アンタ大丈夫かよ、マジで」
シンはそれを聞いて心配になったが、しかし試験は難なく合格した。

 

そんなある日なのはとフェイトは本局からマリーを連れて二人に会いに来た。
「はじめまして、本局第四技術部精密技術官のマリエル・アテンザです。マリーって呼んでね。二人のことはなのはちゃん達から聞いてるわ」
「はぁ、それで一体?」
シンは何がなんだかわからない顔をしたのでなのはが
「それで今日はね、マリーさんに頼んで二人のデバイスを作ってもらおうと思ってね」
今まで二人は管理局からデバイスを借りていたのであった。
「そういうこと、二人はデバイスについてどのくらい知ってるのかな?」
マリーの問いにキラは
「デバイスはインテリジェントデバイス、ストレージデバイス、ブーストデバイス、アームドデバイス、融合型デバイスがあって、
役割は魔法を制御するための演算をしてくれたり、直接的な武器となったり、魔法のプログラムを溜めこんでおいたりですよね」
「はい、大正解。今管理局はそのデバイスの開発に力を入れててね」
マリーの言葉にシンは
「デバイスに…ですか?」
「今管理局は蔓延的な人手不足でね、どうしても即戦力が欲しいけど、魔導師が成長するのを待っていられない状態なの。
それでデバイスで底上げして即現場で使おうってプロジェクトがあるの、私個人としてはあまり賛成出来ないけどね…」
マリーは苦笑して続けた
「それでデバイスについて色々調べていたら30年くらい前ので中々面白いデータを見つけてね。キラ君、インテリジェントデバイスの特徴は?」
「えっと、インテリジェントデバイスは発動の手助けとなる処理装置をしたりその場の状況判断をして
魔法を自動起動させたりする人工知能があることですよね?」
「よく出来ました。つまり使用者とデバイスの二つで一つみたいなものなの。で!私が二人のデバイスに選んだのが「人とデバイスとの真の融合」ってコンセプト」
「「人とデバイスとの真の融合?」」
キラとシンは二人して言った
「そう、そうすれば今まで以上に強力な力を手に出来るってね」
「強力な力…」
シンはポツリと呟いた。あの時のアスランの言葉が甦った。
「ちょっと質問いいですか?」
「はい、キラ君」
「30年も前の話だから今までに実例とかあったんじゃないですか?」
キラの質問にマリーは
「それが色々と曰く付きでね、失敗とか多くて実用的でないって事でお蔵入りになったの。具体的にはコストの問題や危険性の問題だったりでね」
それを聞いたシンは
「大丈夫なんですか?そんな危険なもの使って」
「使用者に大きな負担がかかってとても並みの人間じゃ使えなかったの、それでなのはちゃん達から君達の話を聞いて二人ならって思ったの…
ってゴメンなさいね、二人で実験するみたいで」
「それは構いませんよ、僕達でお役に立てるなら」
それを聞いたマリーは二人の手を握って感謝した。
「で、コストの問題は?」
「それも概ね大丈夫、出資者がいてね。それでね、これは二種類あってどちらも同じコンセプトで開発されたの。
シン君用に選んだのが学習成長型。人とデバイスが理解し合い、いずれは真の融合に辿り着くってコンセプト。
でキラ君用のは高度な人工知能搭載型デバイス。これは高度な人工知能を使うことによってすぐ究極の完成系にするってコンセプトなの」
「はい、は~い」
シンは手を挙げた。
「この人だけずるいですよ、いきなり完成系なんて。俺もそっちがいいです」
その質問にマリーは
「適材適所です。キラ君演算とか得意みたいだし。でもね…」
マリーは続けた
「このデバイスのテストで過去二人の魔導師が大怪我を負ったの」
「大怪我?」
「このデバイスは確かに使用者の力を最大限まで引き出せるわ、でもそれは理論上の話なの。このデバイスの人工知能が自分の意思のようなものがある、
それはどのデバイスにもあるけど…二人のレイジングハートやバルディッシュとの大きな違いはここからなの。
このデバイスは状況を読み取りそれに応じてベストと思われる設定を自らし、使用者がその設定に合っている行動を瞬時に選択すれば最高の状態になれる、
でももし違う行動をしたらデバイスに振り回されたり暴走してしまうの。簡単に言えば使用者がその時一番合理的な行動を取ることが出来ればデバイスは
この上なく強い味方になってくれるってこと」

 

それを聞いたシンは
「じゃあデバイスが直接使用者に設定を教えれば良いんじゃないですか?」
「状況が変わる度に設定が変わるからいちいち教えてたら間に合わないの、だから使用者が即座に判断しないといけないの」」
「それって欠陥品なんじゃ…」
「だから採用されずにお蔵入りになったのよ」
マリーはキラの方を向いて
「キラ君はこういった計算とかが得意って聞いたからどうかなって?嫌ならシン君と同じデバイスにするけど…」
キラは
「そっちの方が得意分野なので多分大丈夫だと思います」
その答えにマリーは
「ありがと~私も是非この目で見てみたかったんだ~」
とキラの手を取って感謝した。
「マリーさん、私も質問」
そう言ってなのはが挙手した。
「シンのデバイスって私達のデバイスとどう違うんですか?」
「シン君のデバイスはさっき言ったとおり学習成長型でね?従来のデバイスよりもさらに人格を強くしてコミュニケーションをより取れるようにしてあるの
そうすることによって人とデバイスを超えた新しい関係になり、共に成長していけば限界なんてなくなる、っていうデバイスなの」
「へぇ~、じゃあこれは何で採用されなかったんですか?」
「専用デバイスみたいなものだから大量生産出来なかったのとデバイスがうるさいって評判が悪くてね…でもね無限の可能性を秘めてるのよ」
「はぁ…」
後者の理由は聞きたくなかったがシンはこのデバイスを使う決意を告げた。

 

「二人の承諾も取れたし、それじゃあさっそく仕事に取り掛かるわ」
椅子から立ち上がったマリーにキラは
「あの、マリーさん。デバイスの作り方僕にも教えてもらえませんか?」
「それは一向に構わないけど…どうしたの?」
「自分のデバイスですからね、よく知っておきたいし…あと彼にも手伝ってもらいたいんだ」
キラに指名されてシンは驚いた。
「え?俺かよ?そういうことあまり得意じゃないんですけど…」
そういうシンにキラは笑いながら
「大丈夫だよ、デバイスに僕らのMSのデータを使いたいから君の機体の事を聞きたいんだ」
その提案にシンは
「へぇ~まあ良いですけど」
素っ気なく答えた。

 

こうしてマリーと二人のデバイス作りが始まった。