大陸深部の目標

Last-modified: 2013-12-26 (木) 00:03:19

2004年11月23日

コンベース港 湾内

駆逐艦"ヴェサリウス"艦橋

ブリッジの窓から見える範囲の友軍艦は全て沈黙していた。
煙を上げているもの、完全に活動を停止し、海に沈み行くもの。
このヴェサリウスも例外ではなく、敵戦闘機の攻撃を受け損傷していた。
そのISAF機(F-16だった)は爆弾投下後こちらの機銃を食らったが、撃墜にはいたらなかった。
放たれた爆弾は船首脇に命中し、航行は不可能になった。
この艦の艦長、アデスは思う。また負け戦になったと。
だが幸いにも損傷で済んでおり、うまくいけばまた戦線復帰できる。
そして、今も部下が修理を行っている。もうすぐ港までは帰れるだろう。そして報告は来た。

「艦長、応急処置は完了しました!航行可能です」
「うむ。では港へ向かおう」

修理をしている間に救助は完了していた。今港へ向かっても攻める者はいない。
かくして、ヴェサリウスは修理ドックへと向かいだす。

 

第7話『大陸深部の目標』

 

「フェイスパークまで飛べって?」

ハイネが素っ頓狂な声を出す。理由は今度の作戦が行われる位置だ。
フェイスパーク地方は俺たちが今いるアレンフォートからすれば大陸のかなり奥地になる。

「そうだ。作戦目標はフェイスパークにある発電所。この発電所はエルジアの軍需工業地帯の電力の60%を担っている。
 作戦の狙いは敵の生産能力の低下だ。作戦名は『ブラックアウト』、決行日時は12月16日1640時。
 俺たちは発電所の奥、管制室とタワーがあるエリアの攻撃を担当する。護衛はヘイローだ。
 メビウス1も攻撃に参加して、オメガとレイピアは発電施設を狙う。作戦エリアはかなりの高地だ。高度計だけに頼るなよ」

こうして前日の打ち合わせは終了。当日、ブリーフィングを行う。
そのブリーフィングによれば、今回の狙いは生産能力の低下だけでなく、近々行われる作戦の陽動でもあるらしい。
ニコルが質問をする。

「ストーンヘンジの砲撃は予想されますか?」
「・・・・・おそらくないだろう。我々だけに高価な弾を使う必要もあるまい」

司令はそう答えるが、隊長は顔を険しくしていた。隊長の予想は違うらしい。
そして、その隊長の予想は見事に当たる。

「全機給油完了!幸運を祈る!」

給油機のパイロットの通信を受け、俺たちは増速する。
すでに作戦エリアには入っているので、いつ攻撃が来てもおかしくはない。

「ヴァイパー1より各機。俺たちの目標は奥にある。迎撃を抜けていくぞ。・・・・・何があっても傍を離れるな」

隊長から通信が来る。隊長らしくないことを言っている。やはり隊長が懸念していることは・・・

「こちらヘイロー1。スカーフェイス、心配しすぎだ。砲撃は来ないよ」

ヘイロー1が隊長に呼びかける。でも、そういいきれる根拠はあるだろうか。

「スカイアイより全機。迎撃機を確認した。ただちに迎撃に入れ」
「レイピア1了解。よし、行くぞ!」

まだ発電エリアの手前だ。担当はレイピアだ。俺たちも速度を上げ、目標のエリアに向かう。
発電施設の上空。高射砲が撃ってくるが、すぐにオメガにつぶされる。目標を視認する。

「こちらヘイロー1。敵戦闘機を攻撃する!」
「ヘイロー1、頼んだ。ヴァイパー各機、目標の攻撃に入れ」
「ヴァイパー7了解!」
「2、了解!」

ヴァイパー2と7はソーラーパネルの破壊に移る。
俺は隊長と管制室周辺、ハイネはタワーを狙う。メビウス1もトーチカを狙う。

「ヴァイパー6、ライフル!」
「ヴァイパー7、投下!」

ハイネの機体から発射されたAGM-65はタワーの上部に命中。機能を完全に奪う。
ヴァイパー7が投下した爆弾はパネルいくつかを吹き飛ばす。
俺も管制室を狙う。ロックオンし、発射する。

「ヴァイパー3、ライフル!」
「ヴァイパー1、ライフル」
「メビウス1、投下!」

隊長も機銃を攻撃。相手を完全にスクラップにする。俺が撃ったミサイルも管制室を吹き飛ばす。
メビウス1もトーチカに爆弾を投下。破壊する。
2や7はパネルを攻撃し続けている。

「ヴァイパー3、俺と敵機を攻撃する。2、6、7、パネルを破壊しろ」
「ヴァイパー3、了解!」
「こちらメビウス1。俺もOKだ」

ヘイローはうまく敵機を押さえているが、相手の数が多い。隣に並んだメビウス1のイーグルから
アムラームが発射される。こっちにはサイドワインダーが4発。この距離では撃てない。

「スプラッシュ1!」
「こちらヴァイパー1、これより攻撃に入る」
「こちらヘイロー1、助かる!」

敵機は残り5機。目の前を横切った敵機―トーネードだった―を追尾する。
サイドワインダーをロックし、発射する。

「ヴァイパー3、フォックス2!」
「ヘイロー2、スプラッシュ2!」

サイドワインダーは命中、パイロットは脱出した。
ニコルも落としたから敵は残り3。メビウス1も並んで飛行する2機を狙う。
旋回しようとする敵機に対し機銃を発射。まず1機が撃墜される。さらにそのまま左急旋回。
敵機の後ろを取り、機銃を撃つ。エンジンに被弾したのか黒煙をふきながら降下。そのまま落ちて行く。

「メビウス1、スプラッシュ2!」
「ヴァイパー1、フォックス2・・・スプラッシュ1」

隊長も落とし、これで全機を落とした。施設えの攻撃も終わったようで、編隊を組み帰還しようとする。
そのとき・・・・・・

「こちらスカイアイ、警告!ストーンヘンジの砲撃を確認!弾着予想30秒後!全機高度を2000フィート以下に落とせ!」
「2000フィート!?地面にはもぐれねぇぞ!」

スカイアイの叫び声とヴァイパー7の罵声。このあたりは高度が高い。2000フィートはちょうど
地面あたりだ。隊長の指示が飛ぶ。珍しく叫んでいる。

「谷だ!全機谷へ飛び込め!」
「そんな狭いところを!?自殺行為だ!」
「弾数4。弾着まであと20秒!」
「くそ!仕方ない!全機谷へ飛び込め!」
「ヴァイパー全機、俺について来い!離れるなよ!」

俺たちは谷に入る。高度を一気に下げ、隊長にピタリとつく。隊長はぐんぐん速度を上げていく。
メビウス1やニコルも谷に入り、全速力で南へと向かう。
その間にも悲鳴は続く。

「ヘイロー10、高度を下げろ!下げろ!!」
「弾着まで後10秒・・・・・5、4、3、2、弾着!」

すさまじい衝撃が機体を襲う。思わずうめき声を上げてしまう。機体に異常はない。

「ヘイロー10がやられた!」
「レイピア7の反応が消えた!」
「くそ!オメガ6がやられた!」
「高度を下げろ!早く!」
「新たな砲撃を確認!弾着まで15秒!」
「くそったれ!敵機が追尾してきやがる!」

オメガ11が更なる危険を告げる。後方から追尾されているらしい。

「青と黄色のトーネードがきやがる!くそ、やられた!イジェクト!」
「オメガ11!」
「弾着まで5、4、3、2、弾着!」

衝撃波がまた飛んでくる。ハイネも大きく揺さぶられている。

「畜生!オメガ8がやられた!」
「くそが!しつこいんだよ!誰か敵機を!頼む!」
「もうすぐ射程外だ!急げ!」
「畜生!畜生!」

何を思ったのかイーグルは急減速。谷の中をめいいっぱい使い旋回、逆へ向かっていく

「メビウス1!?何を・・・隊長!?」
「先に行け。敵を食い止める」

隊長とメビウス1は後ろへ向かう。
俺たちはもうすぐ射程外に出る。今から旋回しても間に合わない。

「ヴァイパー1、フォックス2!」
「メビウス1、フォックス2!」

レーダー上で敵機の表示が消える。隊長たちはさっきと同じように旋回。
アフターバーナーに点火したのかすぐに距離をつめてくる。

その後すぐに射程外に出、砲撃はやんだ。
編隊を組みなおす。後ろのほうにいた機は攻撃を食らって損傷していた。
撃墜された奴もいたらしい。
黄色中隊に襲われて以来の被害。こんな兵器はC.Eにはなかった。

帰投した後も、皆の気分は重い。ストーンヘンジにやられた奴は厳しいかもしれないが、
オメガ11のように敵機に襲われた奴は助かっていて欲しい・・・・。皆がそう思っているに違いない。

後日、オメガ11と8、ヘイロー5は救助され、帰ってきた。
敵地にもかかわらず勇敢にも救助ヘリが出動してくれたらしい。
ヘリのパイロットに感謝だ。

あのストーンヘンジを何とかしなくてはこの戦争は勝てない。
ここまで巻き返してきたのにこのまま負けるわけには行かない。
俺は気を引き締めた。

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