Seed-Ace_794氏_第08話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 00:05:52

第8話『ソラノカケラ』

前回の作戦はストーンヘンジの砲撃によって大きな被害がでたが、一応は成功した。
ここの所続いているISAFの勝利。それは士気の面にも現れている。地上部隊も編成を終了し、
ある仕官いわく、「俺たちを早く出撃させろ!そうでなけりゃ俺たちも飛行機に乗せやがれ!」だそうだ。
その要望にこたえるように、大陸上陸作戦の計画が立てられた。そしてその上陸作戦支援のための衛星を、
コモナ諸島から打ち上げる。以前に何度か失敗している打ち上げなので、俺たちには防空任務が与えられた。

「作戦名は『カウントダウン』決行日は12月31日1335時。
任務内容は簡単、敵機を1機でも多く撃ち落し、制空権を確保しろ。今回はどこかの隊と組むということはない。
うちの中でもばらばらになるかもしれないが、帰るとき一緒ならそれでいい。以上だ、質問は?」

もちろんそんな物はない。単純明快な作戦だから、頭を使って考える必要もない。
もしあるとすれば、

「大晦日にまで出撃かよ?勘弁してくれよ・・・」

こんなボヤキだ。ちなみに発言者はヴァイパー7である。

「もし向こうで打ち落とされたら、年末年始は向こうで過ごすことになるな」
「んなことがあったらたまんねぇ。こっちで他のやつらと騒いでやるぜ!」

ハイネも俺も同じ気持ちだ。こっちに着てから2回目の年越しだ。仲間と一緒に過ごしたい。

「油断せずに行けば大丈夫さ。皆、気を引き締めていこう」

隊長がまとめて、当日、俺たちは作戦空域に飛び立った。

《おいおい、マジかよ?》

ヴァイパー7がぼやく。確かに、目を疑うほどの敵機が飛び回っていた。
スカイアイからの通信も、どこか管制を放棄したように感じる。

《こちらスカイアイ。すでに戦闘は開始されている。直ちに参戦し、制空権を確保せよ》
《ヴァイパー1、了解だ。ヴァイパー全機、自由に行動しろ。落とされずに帰って来い》
《ヘイローも聞いたな?ばらばらに行動していい!》
《ヴァイパー6、了解!》
《ヘイロー2、了解です!》

俺もスロットルを上げ、増速する。早速目の前の敵機に食らいつく。
この数じゃ無駄にミサイルを撃てない。機銃を撃つ。敵機―ホーネットだった―は爆散する。
攻撃している間に後ろに付かれていたのか、コクピット内に警告音が響く。
速度、高度に余裕はある。俺はサイドスティックに力を込め(圧力感知式なのでスティック自体は動かない)、
パワーダイブ。さらにそのまま逆ハーフループ。先ほどの敵かはわからないが目の前にいる機体をロック、 ミサイルを発射する。

《ヴァイパー3、フォックス2!》

ミサイル自体は外れたように見えたが、近接信管が作動し、右主翼を吹き飛ばす。

《スプラッシュ1!》

このような戦闘がある程度続いていた。そのなか、このような通信が飛び交っていた。敵の通信も混線している。

《ヴァイパー6、スプラッシュ1!》
《赤4、ブレイク!右だ!》
《くそったれ!誰か後ろ頼む!》
《OKだ。メビウス1、フォックス2!・・・・スプラッシュ!》
《今、黄色い飛行機が見えたぞ》

そう、この空戦にはあの黄色中隊も参戦していたのだ。俺はこの通信にわずかに動揺し、機動を乱してしまう。
その隙をつかれ、敵機に攻撃されてしまった。機銃が機体のすぐそばを過ぎる。手を伸ばせば届きそうだ。
とっさにエアブレーキを開き、減速。動きについて来れなかった敵機は目の前に。
―今度はこっちの番だ―。そう思い、トリガーを引く。敵に吸い込まれるように飛んで行き、相手を爆散させる。

《ヴァイパー3、スプラッシュ4!》
《青2、フォックス2!》
《くそ、被弾した!離脱する!》
《メビウス1、スプラッシュ7!》
《黒7、命中!敵を落とした!》

《レイピア1、フォックス2!・・・よし!落とした!》
《こちらオメガ11。敵機は対空ミサイルしか装備していないぞ》
《こちらスカイアイ、別働隊の可能性もある。警戒せよ》
《ヘイロー2、左急旋回!敵機がつこうとしてるぞ!》
《確認しました。大丈夫です!》
《ヘイロー7が黄色にやられた!》
《くそ、食らっちまった!イジェクト!》
《オメガ11が黄色にやられた!おい、応答しろ!》

また、オメガ11が落とされたようだ。脱出したコールが聞こえたのでまた無事なのだろう。
無事に帰ってくるのが"タフガイ"らしいが。
それにしても、黄色もいる以上油断はできないな。そう思ったとき、

《ヴァイパー7が黄色にやられた!》

うちの部隊がやられた!?辺りをうかがえば、それらしき機体が火をふき落ちていく。
―畜生!―  怒りに任せて目の前を横切った機体に機銃を放ち、撃墜を確認しないまま他のやつにも撃つ。
ここで上がってしまったのがいけなかった。

《ヴァイパー3、後ろに黄色だ!》

オメガ1の声に反応し、機体を旋回させながら後ろを見る。
確かに黄色いフランカー。こちらが限界まで使い逃げても余裕の表情―戦闘機に感情はないがこのときばかりはそう見えた―
で追いかけてくる。機首が光っている。機銃だ。
―やばい!―そう思ったときには機体に衝撃を感じた。やられる!と思って最後にデスティニーに乗っていたときのように身を硬くし、
目をぎゅっと閉じる。しかし、その先に予想していた衝撃は来なかった。
ハッとして後ろを見る。青いイーグルにメビウスの輪。そのイーグルがフランカーを追い掛け回していた。
機銃を発射しているのであろう、主翼の根元が光っている。イーグルとは思えない機動で打ち続けながら旋回。
曳航弾の軌跡が黄色と交差する。黄色が被弾した。
その事実を半ば信じられない思いで見ていると、通信が入った。

《シン!平気か!》
《ヴァイパー3、こちらメビウス1だ。機体に異常は?》
《え、ああ、大丈夫だ!すまない!》
《この野郎!!心配させやがって!》
《気にするな。気をつけろよ!》
《黄色が煙を吹いてるぞ!!だれがやったんだ!?》
《くそ!どいつがやったんだ!今俺を撃ったやつを確認してくれ!》
《リボンのエンブレムだ》

首を限界までひねって機体の異常を確かめる。尾翼に穴が開いているが、飛行に心配はなさそうだ。
そのとき、スカイアイから連絡が入った。

《こちらスカイアイ、緊急!B-2が6機西から侵入してきた!迎撃しろ!》
《こちらレイピア4、ネガティブ。レーダーには映ってないぞ!》
《B-2はステルスだ!よく確認しろ!》
《こちらメビウス1!俺・・・いや、俺とヴァイパー3で迎撃する!俺たちが一番近い!》
《こちらスカイアイ、許可する》
《こちらオメガ1!頼んだぜ!》
《こちらヴァイパー3、任せておけ!》

イーグルと共にアフターバーナーに点火。西へと向かう。
すぐに薄っぺらい機体が見えてきた。

《ヴァイパー3、左3機を!俺は右側をやる!》
《了解!》

いったん追い越し、後ろを取る。

《おい!敵機がまだいるぞ!護衛はどうした!》

そんな通信が聞こえた。もう遅い!なけなしのアムラームを同時発射。

《ヴァイパー3、フォックス3!!》
《メビウス1、フォックス3!》

敵機6機は同時に火の玉になった。

《敵機全滅を確認。メビウス1、ヴァイパー3両機は補給に向かえ》

スカイアイからの命令。お言葉に甘えて前線基地へと向かう。

《ヴァイパー1だ。よくやった》
《畜生!いいとこ取りしやがって!》

そんな声を背に受けながら、基地へと到着した。
補給(俺だけ尾翼の応急処置)を受けながら待っていたら、良かった気分をさらに上げるニュースを整備員が持ってきた。

「少尉、ヴァイパー7の無事が確認されました!」
「え!ほんとか!」
「えぇ。他にもオメガ11が。他にもいるそうです!」
「補給完了だ!」
「いってらっしゃい!良い狩りを!」

再び飛び立つ。戦闘エリアは先ほどと変わらない空戦が繰り広げられていた。
先ほどの即席編隊のまま、作戦を続行する。

《こちらコモナコントロール!発射まであと4分!》
《こんな大規模な空戦は初めてだ!》
《こちらメビウス1。ヴァイパー3、あの派手なホーネットを追い込む。そっちがやってくれ》
《了解!》
《発射まで後3分!》

そのとおりに追い込みをかけ、目の前に白と赤のホーネットが飛んでくる。
ミサイルを放つ。

《フォックス2!》

命中する。もう何機落としたかも覚えていない。

《スプラッシュ!》
《発射まであと10秒!・・・5、4、3、2、1、発射!》
《おぉ!いいぞ!》

歓声が通信の中を飛び交う。

《こちらスカイアイ!よくやった!帰還してくれ》

帰投後、俺たちはいつも以上の大騒ぎをした。
俺は組んでいたメビウス1と話をしながら遠巻きにハイネがニコルをヘッドロックしているのを見ていた。

「そういえば、」

メビウス1が話題を変える。

「お前とは組みやすかったよ。もし俺が隊を率いるなら、お前に2番機をやって欲しいな」

そんなうれしい言葉をかけられた。現状だとメビウス中隊は幽霊部隊とよばれることもある。
年が開け、1月3日。向こうで年明けを迎えた連中が帰ってきた。
他のみんなに、向こうで美女と過ごしたんだろうとか、うまい酒を飲んできたんだろうとか、いろんなことを言われながら迎えられた。
連中が帰ってくるまで延期だった新年会を、それから盛大にやった。 

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