日記の人 ◆WzasUq9C.g 02

Last-modified: 2016-03-22 (火) 01:21:07

ティファの日記
 
 
木炭を走らせ、真っ白なキャンバスに想いを描く。

私はガロードを撃ってしまった。不本意とはいえ、変えがたい事実。けれど、彼は私を拒絶しないだろう、それが一層辛い。
ガロードは太陽の様な人だ。彼の前では、みんな明るく、強く、楽しく生きていける。私は月になりたい。彼の光でうっすらと輝く月に…

ガロードの絵を描くのはこれで何枚目だろうか。逢いたい…こんな偽りのガロードではなく、あの燦々と輝くガロードに…
涙が溢れる。今まで囚われたことはたくさんある。だけど、こんなに寂しいのは…きっと恋をしているから…

ガロード…逢いたい…

ノックの音が鳴り響く。私は涙を拭って、ドアを開けた。
「ご機嫌はいかがでしょうか?ティファ?」
包帯で顔中を覆った青年、ニコルと青毛の少年、アウルが訪問してきた。
本来なら憎むべき対象なのだろうけど、私はあまり憎むことができなかった。
知ってしまったから…
彼等も深い傷を負っていることを…

「また、絵、描いてるのか。いつも同じ絵じゃ飽きないか?」

アウルにはきっと悪気は無いのだろう。
実際、ここに来てからガロードの絵ばかり描いている。

「では、今日はお二人の絵を描いてみましょうか?」
少し冗談混じりに言うと、二人の表情が曇った。
「お断りですね。それより、次の出撃は、コントロール無しで出て貰いたいですねぇ。」
ニコルの発言は許せなかった。私は彼を睨みつけていたと思う。
「冗談ですよ。迷惑をかけて済まない。
許して貰おうとも思わない。」
ニコルはそう言うと、部屋を去っていった。
アウルもそれについていった。

私は再び木炭を走らせた。
真っ白なキャンバスに命を宿らせる。

一瞬だけ垣間見た、ニコルとアウルの優しい笑顔が消えないように…

「ご機嫌はいかがかな?」

今日も彼は来た。
描き上げた絵を渡した。すると彼は淋しそうな目をして、絵を眺めていた。
「前はこんな顔だったのか?あんたって。」
アウルが聞いても返事をしない。少しだけ、体を震わせていたように見えた。
「いや、僕はこんないい笑顔を見せたことは無い。これは受け取れないな。」
そう言って、部屋を去っていった。しかし、アウルはまだ部屋にいた。
何かもじもじとしながら、恐る恐る聞いてきた。
「僕の絵は…無いのかな?」
私はくすっと笑って、彼の絵を渡すと、アウルは満足気に部屋を去っていった。

部屋に残ったのは、ピアノを楽しそうに弾く少年の絵。貰われていったのは、お母さんに甘える少年の絵。

ガロード…この世界にも哀しみが多いようです…
私達にも哀しみが訪れるのでしょうか?
ううん…貴方なら、きっと哀しみから救ってくれる、私達だけじゃなくて、この世界も…

〜つづく?〜