日記の人 ◆WzasUq9C.g 08

Last-modified: 2016-03-22 (火) 01:32:07

アウルの日記
 
 
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「うっうっ……」

ただただ悲しかった。偽りとはいえ仲間だった人間が消えたのだから
パイロットスーツも着替えずにへたりこんでいると、ニコルがやって来た

「何を泣いているんですか」
「だってさぁ……ティファ、いなくなっちゃったんだぜ……あんたは悲しくないのかよ……?」

ニコルは溜め息をつきながら呆れたように肩をすくめた

「僕はレジェンドがなくなったことの方が悲しいですけどね」
「……くっ……おまえぇぇぇ!!」

立ち上がって襟首を掴み上げた
なんて奴だ、こんな奴に着いていったら、自分も塵屑のように棄てられると感じた

「割りきってくださいよ。所詮我々はあの娘を無理矢理戦わせていたんですから」
「……」

掴みかかった腕を下ろし、外に向かって駆け抜けた
その場にいたくなかった——

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こんな時には女の肌に触れるしかなかった。捌け口になるものが欲しかった

「ねぇ、これなんの絵?」

一糸纏わぬままの女が、いつぞやに描いてもらった絵を見上げた

——いつ見ても優しい絵だ

「いいだろ……何の絵でも……」
「この男の子、アウル?こっちは……」
「やめてくれ!!」
「……なにそれ?……ふんっ……帰る」

怒鳴ったのに気に障ったのか、女はそそくさと服を身に付けて帰っていった
——母の影を追っていたのかもしれない。あの慈愛の固まりのようなティファに
だからこんなにも寂しく、心が裂けそうなのだろうか

「元気にやってるかな……?」

ベッドに倒れこんで絵を見つめ続ける

「部屋……行ってみようかな……」

ティファが『仲間』だった時に使っていた部屋——今はも抜けの空だが、無性に足を運びたくなってしまう

「……僕は……マザコンだな……」

服を着て、部屋を後にした

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扉の前に立ち尽くしながら、自分は何をやっているんだろうと、自嘲する
そんな感情を押し殺しながら、ノブに手をかける
——そこで手が止まった
声が聞こえたのだ。中にいる誰かに悟られぬように静かにノブを回し、隙間から中を伺った

「絵……受けとればよかったですね……」

ニコルが絵を抱えながら呟いていた

そうだ……ニコルも寂しくないはずがない
ニコルは冷徹な印象の反面、母想いで人間らしいと気付くと、自分が恥ずかしくなった
一言謝ろうとドアを大きく開けた

「あんたも来てたのか……」
「アウル……」
「……その……ごめんな……」
「何がです?」
「……あんたも……本当は悲しいんだろ?」
「……というより、謝りたいですね。無理に戦わせて悪かったと」
「じゃあさ、戦争終わったら、一緒に謝りに行こうぜ」
「ははっ、彼氏に殺されちゃいますよ」
「あっ……そうか」
「……それに、僕らも生きられるか、分かりませんしね」
「……」

「さあ、帰った帰った。これからも戦うんだから休みなさい

……それと、女子クルーにみだりに手を出さないように」
「げっ!」
「何でもお見通しですよ、なんならリストが……」
「あははは、ごめんね」
「……アウル、お願いがあります」

急にニコルの顔が真剣になった

「僕が死んだら、母さんを……頼みます……」
「……じゃあさ、俺が死んだら……
おばさんに名乗り上げてやってくれよ」
「……約束は出来ませんね」
「ちょwwwおまwww」
「大人の都合ですよ」

笑いながらティファの部屋から二人で出ていく
自分たちのやっていることは正義ではないが、強かに生き残ってやろうと心に決めた

つづく?