機動戦士ガンダム00 C.E.71_第47話

Last-modified: 2012-01-26 (木) 01:30:17
 

ミサイルによる砲撃が収まった頃、ザフト艦隊はMS隊との通信可能領域まで接近していた。
既に艦隊まで後退している連合機動部隊の光を見、クルーゼはヴェサリウスへ無線を繋ぐ。
「アデス、この戦闘も終幕だ。ここに来て、観客に笑われる様なヘマはするなよ?」
『はっ、しかし中々派手にやられましたな。勝算はあるので?』
アデスの心配性な言葉にクルーゼは笑みを濃くした。
「こちらも疲弊しているがあちらの疲弊も激しい。
 機動部隊の過半数を失い、艦隊の弾薬も殆ど残ってはいまい。
 だからこそ、完全な戦闘力を保持したこちらの艦隊が力を発揮するのだよ」
作戦は最終段階、想定よりも損害は出たが作戦進行に支障は無い。
『MS隊が突入した後も我が艦隊は連合艦隊に砲撃を続行、で宜しいですか?』
「構わん。何、味方の弾に当たる様な間抜けもいないさ」
MS隊が連合艦隊へ突入した後も、ザフト艦隊による砲撃は緩めず続けられる。
弾薬が心許無いMS隊では、艦船攻撃まで担当するのに無理があるからだ。
MS隊は機動部隊攻撃に集中し、弾薬が豊富なザフト艦隊で艦船を叩く。
本来ならここでMS隊に補給させたい所だが、
それで手間取ってはアークエンジェルが大気圏突入に入ってしまう可能性が高い。
多少無理をしても進軍を選ぶべき局面だった。
『了解しました。30秒後に砲撃を開始します。続いてMS隊は突入を開始して下さい』
「艦隊の指揮、引き続き頼むぞアデス」
『はっ、各砲座、照準合わせっ!』
アデスの号令と共に、各艦の砲座が決められたターゲットへ狙いを定める。
『てっ!』
一瞬の静寂の後、砲撃が開始された。
堰を切った様に、一斉に放たれたそれは敵艦隊に吸い込まれる様に飛んでいく。
「MS隊も出るぞ、最後の仕上げだ」
クルーゼの合図と共にMS隊も砲撃の中、突入を開始した。

 
 

既に追い込まれた形となった第八艦隊に後退してきた機動部隊が到着した。
「こんなにも少ないのか・・・」
アークエンジェルの操縦桿を握るノイマンが、帰ってきた彼らを見て茫然と呟いた。
本来ならクルーの士気を下げかねない注意せねばならない発言だったが、
ナタルもまたそれを事実として認める他無く、今では大分姿もはっきりしたザフト艦隊を見やった。
敵艦はナスカ級が1、ローラシア級が3の計4隻。
対するこちらはネルソン級2、アガメムノン級1にアークエンジェルの計4隻。
同数の艦隊とはいえ、上位艦ばかり集まったこちらの艦隊の方が本来の火力では勝る。
通常なら正面切っての砲撃戦をザフトが避けるべき戦力差だ。
しかし敵艦隊は正攻法での砲撃戦の構えを崩さない。
恐らくこちらの残弾数の少なさを考慮しての事だろう。
無駄弾を使えないとなれば、自然砲撃は少なくなる。そこにザフト艦隊の勝機があった。
加えて機動部隊の戦力差を考えると心が折れそうになる。

 

「メネラオスより通信です」
「繋げろ」
ミリアリアの声にナタルは我に帰ると、軍帽を被り直して受話器を取った。
『しっかりしとるか?まだ諦めるのは早いぞ』
「は、はっ!」
『よし』
顔も見合わせていないというのに、
ハルバートンの第一声はまるでナタルの心情を見透かした様な物だった。
『これよりメネラオスはアークエンジェルの前面に展開する。
 両翼はカサンドロス、プトレマイオスが担当する』
「・・・しかしそれでは!?」
ハルバートンの言う配置にナタルは狼狽えた。
アガメムノン級の巨体が前面に展開すれば、アークエンジェルの砲戦能力は殆ど機能しなくなるからだ。
『貴官も分かっている筈だ。我が方の勝利条件はアークエンジェルを無事地球に降ろす事』
「それは承知していますが・・・納得出来ません!
 アークエンジェル1隻を降ろす為に第八艦隊を犠牲にするなど・・・」
ハルバートンは、アークエンジェルが地球に降りるまでの時間稼ぎに第八艦隊を盾にしようとしている。
どう考えても釣り合わない、そうナタルは感じた。
何より、第八艦隊所属に所属する2千名以上の将兵の命を背負える自信はナタルに無い。
『貴官はアークエンジェルにそれだけの価値は見出せないと?』
「・・・・・・はい」
共に戦いたいという強い意志によって出た答えに、
しかし受話器からは呆れた様な、茶化す様な声が返ってきた。
『貴官は高々少尉だろう?准将の私がアークエンジェルにそれだけの価値を見出したのだ。
 上官の価値観、命令には大人しく従うのが軍人の努め、君が普段言っている事では無いのかな?』
「・・・・・・」
唖然とした。今まで何の疑問も持たずに従っていた軍人としての教えに、
自分は知らず知らず逆らっていたのだ。
無言のナタルに、先程とは打って変わって真剣な調子でハルバートンは続けた。
『アークエンジェルは降下準備を開始せよ。
非戦闘員用のシャトルもだ。今ならオーブにも降下出来よう』
「・・・了解しました」
何も言い返す事は出来なかった。
ナタルは受話器の向こうにいる上官に敬礼すると、通信を終えクルーに命令を下した。

 

ハルバートンからの命令は直ぐにムウ達アークエンジェル所属の部隊にも伝わった。
「じゃあ、もう戦闘には参加出来ないんですか?」
『しっかり聞け。俺達にはギリギリまで戦闘許可が出ている』
『だが、アークエンジェルから送られてきたタイマーが
 0になるまでに帰投出来なければ、THE・ENDって訳だ。
 ストライクには大気圏突入能力があるらしいが、戦闘後にそれは不安だしな』
「了解しました。必ず時間内に帰投しましょう」
自分が生きて帰らねば、正確には無事ストライクを届けなければ、
今までの犠牲が無駄になる。キラは自分が背負う荷の重さを再確認し、静かに頷いた。
『曹長もだぞ。ジンなんて大気圏じゃ消炭だ。絶対無理するな』
『・・・了解した』
ムウの話が終わると同時に、向かい合うザフト艦隊が瞬いたかと思うと閃光と共に砲撃が開始された。
ミサイルや砲弾、ビームが惜しげも無く放たれ、第八艦隊に迫る。
それに対し、第八艦隊はミサイル砲撃を開始した。
放たれたミサイルはザフト艦隊のそれとは異なり、近接信管の迎撃用である。
砲撃の方向が特定出来るなら、このミサイルだけでもかなりの迎撃になる。
有効射程内に入ったと言っても、この距離は艦隊同士の戦闘でも遠距離戦に当たる。
砲弾にとっては命中精度に不安の残る距離であるし、
ビームは少なからず減衰し互いに張ったアンチビーム爆雷によって効果は薄い。
弾薬の少ない第八艦隊は今脅威となるミサイル迎撃に集中したという訳である。
刹那達の見守る中、迎撃用ミサイルが爆発し、
その爆発に呑まれたザフト艦隊のミサイルや砲弾が次々と誘爆を起こした。
モニターが焼付くのではないかと思う程の爆発にキラが目を細めると、
その爆発の後から次々と人型の機影がこちらに向かってくるのが分かる。
『敵MS隊接近、各機動部隊は現在位置を維持せよ。
 アークエンジェルには指一本触れさせるな』
生き残った砲撃が降り注ぐ中、ハルバートンの落ち着いた声がコクピットに響く。
更に1回砲撃の応酬を経て、遂にザフトのMS部隊が機動部隊の防衛線に侵入した。
『迎撃開始だ!』
『ここまで来て死ぬなよ』
「了解!」
ムウの掛け声と同時に各機が戦闘機動に入る。
この会戦最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

 
 

ミサイルの爆発が作り出す幕を抜けるとそこは戦場だった。
クルーゼに率いられ先んじていたジンの部隊がメビウスの相手をしている。
アスランはイージスをMA形態からMS形態に戻し、
アロー隊形で自機の後ろに付くデュエルASとバスターの状態をチェックした。
2機ともバッテリー残量、弾薬ともに心許無かったが、それはイージスとて一緒だ。
寧ろ主兵装に実弾武装の無いイージスが1番不味い状況と言える。
しかしそんな事を考えていられる程今の戦況は甘くない。
今はただ、機体が持ってくれる事に賭けるしかない。
出撃時より2機減った僚機に向かって、アスランは当初の目標通りの作戦を伝える。
「我々の目標はあくまで脚付きだ。他の敵は適当にあしらえ、弾薬を無駄にするな」
『ふん、貴様に言われなくとも』
『今日こそ沈めてやるぜ!』
幸いイザークとディアッカの士気は高い。
ここを突破すれば、降下準備に入っている
丸裸のアークエンジェルを確実に仕留められるからだ。
アスランは躊躇無く、戦闘が繰り広げられている第八艦隊のど真ん中に機体を向かわせた。

 

「おかしい・・・」
戦闘している機体を見、アスランは首を傾げた。
前面に迎撃に出ているのはメビウスだけで、アークエンジェルの部隊が見当たらない。
第八艦隊の陣形からしてアークエンジェルは降下準備中だろうから、
彼らも出撃していない可能性も十分あり得る。
しかしアスランの中に、そんな甘い見通しは無かった。
この戦局で、今まで散々手古摺らされたあの部隊が出撃していな筈は無い。
「隊長、アークエンジェルの部隊を見ていませんか?」
『いや見ないな』
「分かりました。我が隊はこれからより深く侵攻します」
『了解した。因縁の終止符、君に預けよう』
「はっ!」
カサンドロスを攻撃しながら言うクルーゼの言葉にアスランは敬礼を返した。
「イザーク、ディアッカ、隊長に任されたからには、終止符は俺達の手で打つぞ」
『望む所だ!』
全く、最後まで自分に友との戦いを強いるとは、神がいるなら余程意地の悪い奴に違い無い。
アスランは威勢良く吠えるイザークの声を聞きながら暗い気持ちになった。
いくら口で吹っ切ったと言っても、アスランはまだ16歳の少年である。
友をこの手で討つ事が可能だとしても、やはり気持ちの良い物では無かった。
キラは、どう思っているのだろう。
別れの台詞を裏切った事に対する失望、故郷を滅ぼされた怒り。
アスランとは違い、キラには引き金を引く理由がいくらでもある。
明確に決別を宣言した今でも、アスランはキラに銃口を向けるのも向けられるのも、
全て夢だったらと思わずにはいられなかった。
それでも、今自分は部隊を預かる隊長である。
アスランは度々出てくる少年の貌を今は自分の奥底に封じ、
隊長としての自分に気持ちを切り替えた。

 

他の敵をクルーゼ達に任せ更に侵攻すると、第八艦隊中央、アークエンジェルを守る様に立ちはだかる
アガメムノン級がその圧倒的な巨体を露わにする。
それと同時に巨体全体に配備されたイーゲルシュテルンが弾幕を展開し始めた。
アスランは回避機動に移りながら部下に指示を出す。
「こいつには手を出すな!この巨体、沈めるには時間がかかり過ぎる!」
対空砲火が多いとはいえ、アガメムノン級も戦艦には違いない。MSで沈める事は出来よう。
しかし、並外れた耐久力を持つ事はデータから分かっている。
今これを相手にしても弾薬と時間の無駄だ。
「一気に突破する!」
イーゲルシュテルンの弾幕の方にシールドを向けながら、
3機のMSが全長300Mに及ぶ船体を一気に横断しメネラオスの後ろに回ろうとした、
その瞬間。3発の榴弾がザラ隊を襲った。
回避の間に合わない3機はそれぞれイージスとデュエルASがシールドで防御、
バスターはコクピットへの直撃を避ける為に肩で受け止める。
「やはり、か・・・」
そうだろうという思いと、淡い希望が消えた悲壮感をもってアスランは呟いた。
メネラオスより後ろは、今までの雑踏の様な乱戦状態とは違い酷くすっきりとしていた。
視界には極々少数の機体しかいない。
最後方で予想通り降下準備に入っているアークエンジェルと、
それの前に立ち塞がる3機の機体。アークエンジェルが艦砲射撃をしてこない今、
この空間は地球を大写しにした美しい決闘の場であった。因縁の敵同士が暫し睨み合う。

 

「この戦いに勝てば、連合のMS開発は大幅に遅れる事になる」
『戦略性の高い戦いだ、そう言いたいんだろう?こんな時まで、長い訓示は止めてくれよ』
『そうだ!俺達パイロットにそんな事は関係無い。ストライクを墜とす、それだけだ』

 

自分に言い聞かせる様に口を開いたアスランだったが、
ディアッカとイザークに言葉の続きを攫われてしまった。
確かに、MSパイロットという戦闘単位には、
目の前の敵を倒す事以外の目的はいらないのかも知れない。
そんな諦念を感じながらも、アスランはザラ隊隊長として再度口を開いた。
「第一目標、脚付きの撃沈。第二目標、敵試作MSの撃墜だ。行くぞ!」
『了~解!』
『おう!』

 

戦場とは思えない静かな空間の戦いは、ザフト側から口火が切られた。
バスターが後方に下がり、イージスとデュエルASが左右から回り込む様に前へ出る。
「来た・・・!」
相も変わらず、デュエルASは自分にしか興味が無いらしい。
デュアルアイを光らせながら迫ってくる姿は正に復讐者のそれであった。
『キラ、そいつは任せるぞ!俺と曹長は残りの2機とやる』
「分かりました!」
デュエルASはこの戦闘では対艦装備を持つイージス、バスターよりも脅威度は1つ下がる。
それを見越しての分担なのだろう。

 

「ここは通さない・・・!」
文字通り自分達が最後の砦である。
モニターの脇でカウントダウンを続けているタイマーが0になるまで、
アークエンジェルには指一本触れさせない。
迫るデュエルASは先程の様に弾幕を張らず、丁寧に狙いを定めた射撃に専念していた。
手にはエネルギー消費が激しいビームライフルでは無く 刃を発振していないビームサーベルを持ち、
何時でも格闘戦に移行出来る様にしている。
弾をばら撒いて突進してくる以前の戦い方よりもずっと戦い辛いといえた。
「それでも!」
キラに時間制限一杯まで攻撃を凌ぐという考えは無い。
例え上手く牽制出来たとしても、長引けば長引く程
ラッキーパンチがアークエンジェルを襲う確率は高くなる。
1発のラッキーパンチがブリッジを破壊でもしたら、それで終わりなのだ。
デュエルASを撃墜する、その決意が、今まで頭に掛かっていたノイズをクリアにした。
ストライクにビームライフルを両手でしっかり保持させると、キラは狙撃用スコープを引っ張り出した。
導かれる様に、スコープの中を動くデュエルASより少しズレた位置に照準を持っていく。
深呼吸を1回、トリガーを引き絞る瞬間、再び偵察型ジンを撃墜した時の感覚を感じ、
キラの動きが一瞬鈍る。
「くそっ!」
発砲。放たれた光の矢はデュエルASの構えたシールドを掻い潜り、
左肩のミサイルポットを直撃した。
積載されていた残り僅かなミサイルの誘爆も加わり、
デュエルASが爆風に大きく体勢を崩した。
しかしデュエルASは被弾する直前に左肩の追加装甲をパージした様で、
機体自体にダメージは入っていない。本来なら、コクピットを穿つ一撃だった筈だ。
それでも、やはり敵機の動きを予測出来るのは大きい。
「これなら・・・行ける!」

 

突然の直撃に焦ったのか、デュエルASは積極的な機動でストライクに接近してくる。
しかし単純な機動力ならこちらが上だ。
技量で近付かれるだろうが、それまでにもう一発お見舞いする事が出来る。
追加装甲を失った左腕を庇う様にシールドを構えているので、もう同じ所は狙えない。
ならば―――
「そこだ!」
嫌な感覚はコクピットを狙うと襲ってくる。
キラは経験則からそれを学び、コクピットの次に大切な頭部に狙いを定める。
しかしそれは、彼方から迫るビームによって阻止された。
直前にそれを感じ取ったキラが回避機動を取ると、
一瞬前までストライクがいた位置を黄色いビームが通り過ぎる。バスターからの砲撃だ。
デュエルASの被弾に気付いたアスランの指示であった。
刹那とムウとの戦闘で易々と行える物ではない。
しかし絶妙なタイミングで来た援護に、デュエルASも期を逃さず動いた。
砲撃に気を取られたキラの隙を突き、ビームサーベルを発振させて一気に距離を詰める。
「しまった!?」
回避が間に合わないと踏んだキラは斬撃をシールドで受けた。
ビームサーベルとシールドの対ビームコーティングがぶつかり合い、激しい火花が散る。
ストライクが反撃の為にビームサーベルを抜こうとするも、 デュエルASのシヴァの砲が一瞬早い。
ストライクがビームライフルを腰に保持させた段階で紫電を帯び、
至近距離で炸裂した超音速の弾丸がストライクに命中した。
「かはっ!」
実弾な為にPS装甲を貫く事は無かったものの、
榴弾など目では無い程の凄まじい衝撃にキラは一瞬意識を飛ばした。
一瞬動きが止まったストライクに追撃の斬撃が迫る。
しかしそれは、両機の間を縫う様に飛来した榴弾によって阻まれた。

 

『すまない。封じ切れなかった』
「カマル・・・さん」
バスターに援護の隙を与えた事を謝罪したカマルは、キラが視線を移す頃にはイージスの射撃を回避し、
重斬刀を抜いてバスターに斬りかかっていた。
『坊主、前だ!』
間髪入れず、ムウの怒声がキラの鼓膜を叩いた。
被弾の衝撃から完全に目覚めたキラは、モニターに大写しになったデュエルASに悲鳴を上げそうになる。
その勢いで咄嗟にフットペダルを踏み込んだのが幸いしたのだろう。
エールの爆発的な推力を使い、ストライクがデュエルASに強烈な体当たりをお見舞いしたのだ。
突然の事に、デュエルASはビームサーベルを振る事も出来ずに
ストライクの体当たりをまともに受ける結果になった。
「おおおおおおおっ!」
絡み合う様に衝突した両機だが、こちらから体当たりした分キラの行動の方が早かった。
素手のままのストライクが、がむしゃらに操縦桿を動かすキラに
呼応するかの様にデュエルASを殴る殴る殴る。
『この・・・邪魔だ!』
接触回線からパイロットの声が響いたかと思うと、同時にビームサーベルがストライクを襲った。
間一髪でそれを避けたストライクが距離を取る。
「はぁはぁはぁ・・・」
泥沼な格闘戦に、キラの体は酸素を求めて荒い呼吸を繰り返した。
それはデュエルASのパイロットも同じ様で、一定の距離をとって互いに睨み合う両機は、
まるで最後のラウンドを闘う疲労困憊のボクサーの様だった。

 
 

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