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機動戦士ガンダムSEED True Destiny PHASE-46.5

Last-modified: 2007-11-17 (土) 18:52:36

 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……

 『そいつ』は、石壁の裏でじっと、息を潜めていた。

 『戦闘』が一段落するのを待つ──金色のモビルスーツが大地に降り立ち、襲撃部隊をひ

と薙ぎした。

 相手をただのテロリストと侮るからこうなる。自由都市の中でMSを駆ることなど、自身の信

義の為なら何一つ躊躇しない連中なのだ。

 “ラクス・クライン”が、そのMSの手のひらの上に載る。連中の注意が其方に移った!

 ライフルの引き金に手をかける。

 キラ・ヤマトが手を伸ばす、しかし直線上に遮蔽物は無い!

 引き金を絞る。

「あぶない!」

 同時に、ターゲットが突然動いた!

「なんだと!?」

 その時にはもう遅い。

 ライフルから発射された高速弾は、限りなく直線に近い弾道で────



「なっ!?」

 飛び出したミーア、そして、ほんの一瞬遅れて、ラクスが、各々血飛沫を上げながら仰け反

る。

 一同はその光景に、一瞬、呆然としてしまう。

 一番最初に、アスランが我に返った。

 彼が手にしたハンドガンが、乾いた音を立てて、サラの持っているそれを弾き飛ばした。

「そこか!」

 ネオがアカツキのビームライフルで、石壁を撃ち抜いた。

「ちっ!」

 ビームライフルの銃口を上に上げる。木っ端微塵になった石壁だが、人が、否、ハッキリ言

ってしまうなら人であったものが、混ざっている気配は無い。

「ラクス! ラクス!」

 キラが、ラクスを抱えて取り乱している。ミーアは、2人に背を向けた格好で、うずくまってい

たが、意識ははっきりしていた。苦痛に表情をゆがめている。

「ムウさん! なにしてるんだよ、早くラクスをアークエンジェルに!」

 キラはアカツキを見上げて言う。だが、ラクスを襲った高速弾は、あえて表現するなら、綺麗

に──ラクスの胸郭を貫通していた。

「あ、ああ……」

 ネオは、キラの気迫に押され、少し間の抜けた返事をした。

「ミーアも乗れ!」

 アスランが、銃をいつでも撃てるように構えながら、ミーアに手を伸ばす。ミーアは歯を食い

しばりながら、アスランの腕に体重をかけながら立ち上がる。

「それと、そっちのお嬢さんもな」

 ネオの言葉に、アカツキのツインアイの先が、倒れているサラに向かう。

「何を言ってるんだ、そんな奴、ほっとけよ!」

 キラが乱暴に言う。

「だが、何か聞き出せるかもしれない」

「わかった!」

 キラが二の句を告ぐ前に、ミーアをアカツキの手に押し上げたアスランが、一旦飛び降りて、

サラのもとに寄る。アスランはサラを抱えると、走って、アカツキの手のひらに飛び乗った。





「なんてこった……ここまで来て、お姫さんが……」

 ネオは呆然と、呟く。

 寝台の上に寝かされたラクス。しかし、もう目覚めることは無い。凛とした言葉で喋ることも、

美しい声で歌うことも、二度とない。

 そして、その正面で呆然とする、その映し身。

 ミーアは右上腕を撃ち抜かれていたが、骨への損傷は少なく、弾丸も貫通していた。白い患

者衣に、右腕を三角巾で吊っている。

 自分の為に歌え、その言葉がミーアの頭をリフレインする。そして、罪の意識がその胸を締

め付ける。

「あたし……どうして……取り返しのつかないこと……しちゃった……」

 震えながら、声に出す。

「そうだ!」

 真っ先に反応したのは、キラだった。

 ミーアに駆け寄ると、突き飛ばすようにして方向を変えさせてから、胸倉を掴む。

「君が呼び出したりしなければ、こんなことにはならなかった! 君さえいなければ、ラクスは

死ななかった!」

 キラはミーアを殺さんばかりの勢いで締め上げる。だが、ミーアはそれに抵抗もしない。

「やめろ、キラ!」

 アスランが割って入り、2人を強引に引き離す。そして、ミーアを庇うように立った。

「ミーアはサラの弾丸からラクスを庇ったんだ! そして撃たれた!」

 アスランが怒鳴る。キラはミーアを掴んでいた腕を反対側の手で握ると、ぎりっと、歯を軋ま

せるほど食いしばった後、ラクスの寝かされた整備室を飛び出して行った。

「…………キラ」

 アスランも歯を食いしばる。

「…………」

 ミーアはまだ、呆然としていた。

 キラが出て行ってから2分と経たない内に、今度はネオが入ってきた。

「キラはいない……か」

 ネオはあたりを見回すような仕種をした後、呟くように言う。

「さっきまでいたんですが……」

「無理もないだろう。今はそっとしといてやることしか、できないな」

 ネオはそう言って、ため息をついた。

 しばらく、沈黙が流れる。アスランはミーアを庇う位置から離れ、壁に寄りかかった。

「あたし」

 気まずい沈黙が流れた後、ミーアが独り言のようにいい始める。

「ザフトの慰問ライブで、いろいろなところへ行きました。もちろん地上のザフト基地へも」

「お嬢ちゃん?」

 ネオが声をかけると、ミーアは彼の方を向く。

「行く先々で、疲れた表情の人たちばかり見てきました。地上からの攻撃に怯えるプラントの

人達、電気さえろくに無い生活を強いられている地上の人達。だから……あたしは……」

 それまで淡々としていたミーアの表情が、だんだんと激情を帯びてくる。

「デュランダル議長は戦争を終わらせてくれる人だと思った。だから……あたしは議長の為に、

ラクス・クラインになったんです。戦争を終わらせるために、誰もが怯えないで、過ごせる未来

の為に、あたしはラクス・クラインじゃなければならなかった……!!」

 ボロボロと泣き出すミーア。しかし、ネオやアスランが何かを言い出すより早く、彼女は首を

横に振った。

「……でも結局、あたしは自分のエゴでラクスでありたかったのかもしれない。それは否定で

きない……だから……こんなことに……なってしまったのかも……知れない」

 嗚咽交じりにいい、涙を流し続ける。

「どうやら、お嬢ちゃんにも少し、時間が要るみたいだな」

 肩を竦め気味に、ネオが言う。アスランはそれに沈黙で答えた。






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