第四話 

Last-modified: 2014-03-07 (金) 22:59:12

「…っとと…」

 

着地した瞬間、機体が少し傾く。ハルトはできる限り冷静に安定を取り戻す。

 

「メインスラスターの切り替え…? やっておいた方がいいのか?」

 

機体の各所の確認をしていると「メインスラスターの切り替え」という機能があるのを見つける。
専門用語はよく分からないがどうやら重力下とそれ以外の時でメインスラスターのモードを切り替えられるようだ。

 

「一応やっとくか…これだな」

 

コンソールのスイッチを押す。
メインスラスターが可動する。翼が地面に対し平行になる。
そしてメインスラスターが元あった位置から二基のバーニアが展開される。

 

「重力下飛行形態『type-α』…?飛べるのか?」

 

早速試してみようとするが、それより先にレーダーに友軍機の反応を見つける。

 

「GAT-X105…本当に味方なんだろうな。」

 

シグナルは味方でも、もしかするとザフトに強奪されたものかもしれない。
そのような不安を抱きつつ反応のある方向へ向かった。

 

その頃、一機の「ジン」を撃破したGAT-X105「ストライク」の方でも「アドヴァンス」の反応を確認していた。
「GAT-X104…これも敵なのか!?」
ストライクを操縦しているキラ・ヤマトは身構える。

 

「『アドヴァンス』…何で動いているの?」

 

一方、シートの後ろの女性兵士、マリュー・ラミアスは驚きを隠せないでいた。
「アドヴァンス」の存在は計画に初期から携わっていた彼女も知っている。
それゆえに「アドヴァンス」の欠陥も、もう既に機密保護処理が済んでいることも、
それが解凍プログラムなしでは解除できない事も知っている。

 

「――あの機体…「アドヴァンス」に呼びかけてみて。
もしかすると敵ではないかもしれない。」
「えっ?」

 

マリューの言葉に驚いたキラだが、すぐに無線の通信回路を開き、アドヴァンスに呼びかける。

 

「こちら『ストライク』…『アドヴァンス』応答せよ…」

 

「キラ!?」
無線から入ってきた聞き覚えのある声に思わず驚く。

 

「キラ…キラ・ヤマトなのか!?」
<え!? ハルト…ハルト・カンザキなの!?>
<カンザキ!?>

 

向こうもこちらの声に気がついたらしく、驚いた声を上げる。ついでに後ろから女性のような声も聞こえる。

 

<何でハルトがそんな機体に…?>
「それはこっちのセリフだ…お前こそどうして?」

 

だが、再会を喜んでいる暇はなかった。

 

――ドォン……!
爆発音と共に大地が揺れた。

 

「何だ!?」
頭上を振り仰ぐ。すると、新たなモビルスーツがシャフトを破壊し、舞い降りてきた。
「ジン」よりすっきりした形の白っぽいボディ、背中の翼の形も違う。
「あれは…『シグー』?」

 

うろ覚えだが、スグルのファイルにあった機体だ。その後に地球軍のモビルアーマーが続いた。

 

<「アドヴァンス」聞こえる!?>
無線から女性の声が聞こえる。

 

<『モルゲンレーテ』に戻って! バッテリーを換装しなければ!
電力の供給が止まればフェイズシフト装甲も無効になってしまう!>

 

「まだ70%はあります!」
<そう? ならいいわ。後、「type-α」の時は絶対にバーニアの推力を限界まで出しては…きゃあ!?>
<うわああっ!>

 

「シグー」のライフルが連射され、ストライクに数発が直撃される。ストライクがバランスを崩して倒れる。

 

「くそっ…こいつ!」

 

バーニアを吹かし飛び上がる。そして「シグー」に向かいマシンガンを連射する。

 

「――速いっ!」
しかしマシンガンの弾は一発も「シグー」に当たらない。マシンガンの弾が尽きた。

 

「弾切れ!?…なら接近戦で!」
マシンガンを投げ捨て、左腕のビームサーベルを抜く。そしてバーニアを吹かし、一気にシグーに向かい突撃する。強烈なGがハルトを襲う。

 

「―――そこだっ!」

 

一気に間合いを詰め、ビームサーベルで斬りつける。
ビームの刃は、回避行動をとったシグーのライフルを真っ二つに切り裂いた。
だが、そこでアドヴァンスに隙が生まれた。

 

「ぐああっ!」
シグーの蹴りをもろに食らう。フェイズシフト装甲により機体にダメージはないが、衝撃は否応なく伝わってくる。

 

慌てて態勢を立て直すが、シグーはサーベルを抜いてこちらに突っ込んでくる。

 

「――っ!」
スモークグレネード砲を撃ち、一気に上昇する。
ジャミング効果のある白い煙幕がシグーを覆う。

 

(――なんて奴だ。技量の差が大き過ぎる…これじゃ機体に助けられてるようなものじゃないか…。)

 

その時、凄まじい轟音と共に鉱山の岩盤が崩れ落ちた。
もうもうと立ち込める土煙をかき分けるように現れたのは

 

「―――戦艦!?」

 

白く輝く巨大な戦艦だった。

 
 

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