第1話「ボーイ・ミーツ・ボール」

Last-modified: 2019-04-30 (火) 20:59:27

(※本作は、2016年8月21日に放送された「ガンダムビルドファイターズトライ アイランド・ウォーズ」
  以前に完結した作品です。そのため、内容の一部が当番組によって明らかになった公式設定と
  異なっていることがあります。ご了承下さい。)

 

(転載先・SS投稿サイト「ハーメルン」)

 
 
 

「これカッコいい!」「・・・マジか!?」

 
 

「ただいまー。兄ちゃん、今から畑?」
「ああ、図書館今日も行くんだろ?」
「うん」
 夜も明けきらぬ早朝、新聞配達帰りの純朴そうな少年と、耕耘機に乗った青年がすれ違う。
ここは四国の片田舎、低い山で隔離された集落の一角、古い農家の兄弟の物語。

 

 昼過ぎ、兄の運転する軽トラが丘を越え、下界の町に向かう。
「兄ちゃんは今日は大会?」
「ああ、今回は自信あるぜぇ、もう優勝間違いなしってヤツよ!」

 

 兄の名は里岡 大地(さとおか だいち)20歳、農家の後取りで気さくそうな青年
趣味は「機動戦士ガンダム」のプラモデルを使ったゲーム「ガンプラバトル」
10年前、世界大会会場で初めてガンプラバトルを経験し、それがキッカケですっかり夢中になってしまった。

 

「ほら、着いたぜ」
 町立の図書館に到着する軽トラ、礼を言って降りる弟。
「じゃ、がんばってね」
 兄を見送ると図書館のカウンターで本を返却し、真っ直ぐ(宇宙・化学)のコーナーに向かう。

 

 弟の名前は里岡 宇宙(さとおか そら)14歳、宇宙飛行士を夢見る少年
週末になると図書館に通い、宇宙の図鑑や化学本を読み漁り、宇宙に思いを馳せる。
少年らしい純朴な夢を捨てられない中学二年生。

 
 

 日も傾き始めた頃、借りる本の手続きを済ませ図書館を後にする。
ほどなく兄の軽トラが到着、荷台にはホームセンターで買った肥料や農具と共に一つの派手な紙袋。

 

「兄ちゃん、あの後ろの紙袋、もしかして・・・」
「へっへっへー、やっぱ俺って強運なのよ、ほれ」
 兄が自慢げにかざしたのは、使用済みのビンゴゲームのシートだった・・・
「(大会で勝ったのかと思った・・・)」
 残念ながら、兄がガンプラバトルの大会で勝ったという話は未だ聞いたことが無かった、
ガンプラの出来自体はすごくいいと思うのだけれども。

 

 夕食後、いよいよ派手な包みの開封の時!
「さぁ、このガンプラのパーツで俺のもますますパワーアップってもんだ」
ゼロはいくらかけてもゼロだよ、と言いたいのを抑えて弟も見守る、
「福袋」と書かれた紙袋を開封しておもむろに引っくり返す兄、
プラ板やパテと共に一つの箱が落下する。

 

”1/144 SCALE 連邦軍量産型モビルスーツ 1/250scaleボール付 ボ ー ル ”

 

「 在 庫 処 分 か よ っ ・・・」

 

 がっくりとうなだれる大地。無理も無い、いわゆる最安値モデル、
ベストメカコレクションの最不人気ガンプラ、”丸い棺桶”に大いに落胆する兄。
これではパーツ取りにすら使えない、いや使うと弱体化すらしかねない・・・

 

「なにこれカッコいい!」
 箱を手に取り、目をキラキラさせる宇宙。
「・・・マジか!?」
「うん、だって実際にありそうじゃん、宇宙での作業用メカとかで!」
「・・・あー、なるほどな、確かにお前向きだわ、気に入ったのならやるよ、それ」
「本当?ありがとう兄ちゃん!よーし、早速作るぞー!」

 

-10分後-

 

「兄ちゃん、これ接着剤が要るって書いてる・・・ある?」

 

 後に彼の人生を狂わせ・・・もとい決定づけるガンプラとの出会いの日であった。

 
 

ガンダムビルドファイターズ side B
第1話 「ボーイ・ミーツ・ボール」

 
 

【戻】 第2話「トリック・スター」