艦内点景11
(炒飯男編)
グゥレィト!
俺はディアッカ。
裏切りが得意技のグゥレィトで炒飯なナイスガイさ。
今日、3月29日は俺の誕生日だ。
どうせ、イザーク達が内緒で誕生パーティを準備しているだろう。
ここ何日か、気が付いて無いフリをするのに苦労したぜ。
それにしても遅いな。
催促するのもなんだが、ちょうどシホが来た。聞いてみるか。
「グゥレィト。パーティは何時からだい?」
シホが怪訝な顔をしている。どういう…?
忘れられてる!?
その時、部屋の隅の暗がりから『餌マスター』ウイッツが手招きしているのが見えた。
——「部屋の隅で膝を抱えると落ち着くな…」
「だろ?忘れられた時には一番だ」
(おわり)
(サウンドノベル化記念編<1>)
『X運命』のゲーム化が決定し、狂喜する1人の男がいた。
天下に隠れなきエロゲ魔神、アーサー副長その人である。
「エロゲといったら私。私といったらエロゲ。ゲーム化なら私に任せなさい」
逆に不安になる発言だが…。
「エロゲにはならないわよ」
タリヤ艦長の冷徹な声がエロゲ魔神の希望を打ち砕く。
「か、艦長をはじめとする美女や美少女達と、私とのウッフンやアッハン、嬉し恥ずかし、ハーレム状態が無いのですくぁあ〜!!!」
「営倉、入りたい?あるわけないでしょ」
「フォンドゥヴァオゥ!エロゲの神は我を見放したかぁ〜」
身も世も無く泣き叫ぶ、アーサー副長。
その時、部屋の隅の暗がりから『餌マスター』ウイッツ、『炒飯男』ディアッカの2人が、アーサー副長を手招きしているのが見えた。
———それから3人、仲良く並んで部屋の隅で膝を抱える姿が、良く目撃されるようになったとか、ならないとか…。
「「「落ち着くな〜」」」
(おわり)
(ノロケ編<1>)
「そういやガロード。お前、ティファのどこが好きなんだ?」
聞きにくい事をズバリ聞くのはハイネだ。
「好きなとこ?全部だけど」
ガロードもこいつはこいつで、サラリと即答である。
その場にいた、当のハイネとガロード以外の全員が、ため息をついたり、アホ毛を旋回させたり、肩をすくめたり、各々の気持ちを十分に表現する。
「何かあるだろ?顔が可愛いとか?アノ時の相性が抜群とか?ケツの形が最高とか?…ひへへっはひをふふ(痛ててっ何をする)」
少々、品の無い表現に隣に座ったアビーがハイネの頬を『ビョーン』と、つねる。
「そんな考え方、したこと無いなぁ」
ガロードはハイネの発言の際どさに気付かず、言葉を続ける。
「プレゼントした花を見た時や、アイスを『アーンして』と言った時の、ティファの優しい表情を見ると『守りたい』って、オレ思うし
〜中略〜
時々『ガロード』って言ってくれた時の…モガッ」
「わかった!ガロード」
アスランが、このメガトン級に純真なノロケに耐えかね、ガロードの口を手で塞ぐ。
見れば、周囲で大半の人間が悶え苦しんでいる。
「お姉ちゃん。アタシ、いつの間にか、汚れた大人になっちゃってたよぉ」
メイリンは半分パニックで泣き出す。
「落ち着いてメイリン。汚れたら石鹸で洗えばいいのよ」
ルナマリアも混乱して発言が変だ。
アーサー副長が、小声でエロゲのヒロインの名とザンゲの言葉を繰り返す。
「『ノロケ』が凶器に使えるなんて、始めて知ったぞ」
アスランが食いしばった歯の隙間から言葉を絞り出す。
「…ガロード」
そんなタイミングでティファがやって来た。
「皆さん…どうしたの…ですか?」
彼女は不思議そうに周囲の惨状を見渡す。
「ティファちゃんの魅力に皆、感激してるのさ」
ハイネの言葉に、ティファは目を白黒させる。
「モガ、モガガッ」
口を塞がれたままのガロードが何か言う。
「なんでもいいから、どこかに行ってくれ」
アスランが懇願する。
2人が去った後、テクス医師が呼ばれ、自分を失った連中を介抱する。
「艦長、原因は何かな?」
テクスがアスランに問い掛ける。
「ガロードの『ノロケ爆弾』ですよ」
「…そうか」
テクスはその一言を聞いて、深入りしないことに決めた。
それに対し、ハイネはお気楽なものだ。
「今度のガロードの異名は『ユニウスの悪魔』ならぬ『ノロケの悪魔』ってとこかな」
1人元気なハイネを見て『何故こいつはガロードのノロケに平気なんだ?』と、半ば八つ当たり気味にアスランは思う。
「…ひへへっはひをふふ(痛ててっ何をする)」
調子に乗り過ぎた発言に、アビーがハイネの頬を『ビョーン』と、つねった。