赤い翼のデモンベイン05

Last-modified: 2013-12-22 (日) 20:06:50

 ここはあるジャンク屋の宇宙船リ・ホーム。

 世界の害悪、お茶の間をにひと時の安らぎを与える、危険物質ドクターウエストが間借りしている船でもある。

 そこでギターをかき鳴らす、精神障害者。バカとキ○ガイは紙一重を地で行く変態科学者が、なにやら機械の部品を造っていた。

 いや実際動いているのは、無人の組み立てロボットなのだが。



「なあドクター今度のロボットはどんなモンになるんだ」

「ふ、この設計図を見るが良い。それは我輩の最高傑作となるであろう、究極絶対にしてまさに神域にまで達した 無敵のロボットになる。

 その名もスーパーウエスト無敵ロボ28号DX、通称「DEMONPAIN」と呼ばれるものになる予定である」

「すげえ、でも勝手にアメノミハシラから借りた資金流用していいのか?」

「問題ナッシングなのであーる、この大天才に資金を出せるのであるから、まさに天上の幸福と呼ぶべきなのであーる」



 騒がしい機械オタク共の濁った声が、今日も響くリ・ホームであった。







 核の閃光が消え去った時、宙域の誰もが戦闘の終結を願っていた。

 人類の持つ忌まわしくも強力な兵器、核の力を持って打ち倒せぬならば、他にどんな手があるというのか───

 だがその閃光からソレは生き延びていた。

「──────」

 その在り得ざる光景に誰もが声を失った。

 フリーダムはもはや以前とは別物の形態に変化していた。

 八つの砲台らしきものが中空にふわふわと浮いており、

 武装も更に強化され、とげとげしく無骨な外装をしている。両手にビームライフルを装備し、光輝く盾を腕に装着し、腹には極大のビーム口が取り付けられている。

 その威容はフリーダムを上回る禍々しさを醸し出し、まさに小さな要塞といえる。



「グレイトゥ、どうすりゃいいだよ」

 ディアッカが全員の意見を代弁した。



 静寂の中、あの邪神の高笑いが響いてくる。

「あははははは、いやあ、愉しいねえ。

 こう頑張って、頑張って、報われずに絶望する人間の顔っていうのは格別だね。

 これだから人間は最高なんだ。

 しかしこのフリーダムがこれほど強力に化けるとは予想外だったよ。

 さすがはキラ君の模倣だ、まさにスーパーコーディネイターにふさわしい育成者だったよ。

 さっきまでのフリーダムとは格が違うしネーミングも変えた方がいいかな?

 スーパーコーディネイターにちなんでスーパーフリーダム、うーん安直過ぎるかな。

 そうだなあ、キラ君の乗ったモビルスーツということで、ストライクとフリーダムで、

 ストライクフリーダムでいいや。

 ちょっとダサい名前を付けるのスーパーロボットのお約束らしいからね、あははは」

「イザーク、ディアッカ、無事か!?」

「「アスラン」」

「状況はどうなっている?」

「見ての通りだ、くそ、核兵器を使ってもあれは消滅しなかった。

 挙句強力に再生して、今飛んで来た何かと合体した。あれは何だ」

 頭を飛ばされたデュエルから返答がある、イザークらしくも無く意気消沈している。

「再生するモビルスーツなど分からん、分かりたくも無い。

 だがドッキングしたのは分かる、あれはミーティア。

 フリーダムとジャスティスに用意されていた戦略用支援機だ」

「戦略用?」

「小さな戦艦だよ、核動力機に連動して大量のミサイルと戦艦並みのビーム砲を乱射する支援機だ」

「つまりフルバーストの威力が跳ね上がるって訳ね、どう落とすアスラン」

 楽観的そうな台詞とは裏腹にディアッカの声は掠れている、本当にどうしていいのか分からないのだ



「……ZAFTには核を超える兵器などない。精々このジャスティスを自爆させるくらいだ」

「無駄だな、核ミサイルに楽に耐えるんだ、焼け石に水だ」



「ローエングリンを使う、ZAFT兵にはドミニオンが射程内に近づくまでの時間稼ぎをしてもらいたい」

「ナタル!?」

 発言したのはドミニオン艦長ナタル・バジルールだった。

「正気なの、戦艦でアレに近づいたところで一息で落とされてしまうわ、アレはモビルスーツは四肢を奪うけれど、戦艦には容赦なく砲撃を加えてくるわよ」

「他に手はありません、連合にも今の核ミサイルを超える兵器は無い。

 ならば、この陽電子砲に全てを賭ける他ありません」



 戦域に沈黙が流れる、フリーダムは様子を窺っているのか停止している。



「分かったわナタル、アークエンジェルの全乗組員に告ぐ。

 最小限の人員を残し、全員ランチにて退避せよ、

 繰り返す、最小限の人員を残し、全員ランチにて退避せよ。」

「マリュー艦長」

「二門のローエングリンより、四門のローエングリンよ、確率は倍になるわ」



 ナタルも同じマリューと同じ指示を出し、アズラエルに向き合った。

「アズラエル理事、至急退避して頂きたい。この艦はこれより決死の攻撃に移ります」

「降りる? 冗談はよして下さいよ艦長。

 僕はね、引く必要の無い賭けから降りる気なんてさらさら無いんです。

「必ず勝てるとでも?」

「違います、この世には分が悪くとも賭けねばならない時があるんです。

 それを理解できない愚民は一生地を這う。

 僕はそうやって若輩の身でここまで成り上がった。

 この作戦が失敗したら人類がどうなるか分かったものじゃありません。

 だったら、一番前で勝利の結末を見届けたいじゃないですか。

 ああそれと、コーディネイターに背を向けるのはもっと嫌いですし」

「最後が一番大きい理由ですね、理事。

 あなたは我が儘で手のかかる上司でしたが、私の知る中で一番勇敢な上司です」

「酷い評価ですねえ艦長。僕はいつだって素直で謙虚なのに」

「ノイマン、チャンドラ、悪いけど命を頂戴」

「了解です艦長」

「右に同じです」

「悪いわね、駄目な艦長で」

「いいえ、甘いところも多かったですが、おおむね良い艦長でしたよあなたは」

「そうですよ、今まで生き残ってきたじゃないですか、今度も大丈夫ですよ」

「ミリアリア、もういいわあなたは」

「イヤです、私も最後まで見届けさせて下さい。

 アークエンジェルは不沈艦なんです、沈むことなんて無いんです。

 だから、だから」

「ミリアリア」

「まさかオレまで降りろなんて言わないよね、マリューさん」

「ムウ、貴方怪我してるのに」

「モビルスーツに乗れなくたって、惚れた女を支えることぐらいはできる。

 勝つときも負けるときも一緒だぜ」

「ムウ……」



 全ての通信装置にナタルの声が伝わっていく。

「この戦域に居る全てのモビルスーツパイロットに告ぐ、これよりアークエンジェルとドミニオンは敵機に接近し、ローエングリンを以って殲滅する。

 全てのパイロットはこの二艦を死守せよ!」



 最初に答えたのはアスランだった。

「こちらZAFT、ジャスティスのアスラン・ザラだ。

 貴艦の意図を了承する。

 これよりジャスティスはドミニオンとアークエンジェルを死守する。

 勇猛にして誇り高きZAFT兵士よ、我に続け!」

「了解」

 全てのZAFTパイロットが唱和する。



 それを受けてカガリの扇動が入る。

「連合、オーブ兵士諸君。敵対するはずのZAFT兵士がこれほどの勇気を示した。

 我々は、これを看過すべきか、否。

 我々は、質で劣っているかも知れない。

 だが、その勇気は一片も劣ることはない。

 諸君、ZAFTに遅れを取るな!

 我等の勇気をこの一戦に示すのだ!」

「了解」

 全ての連合、オーブ兵士が唱和する。



「アークエンジェル機関最大、目標ストライクフリーダム!」

「ドミニオン機関最大、目標ストライクフリーダム!」

 二艦の主機関が全力で運行され、最大戦速で目標へ向かう。

 人類の最後の攻撃が始まった。



続く



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