起動魔導士ガンダムRSG_05話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:17:19

なのは襲撃事件から数時間後、八神家。
「ほなみんな、おやすみな~。」
はやては帰ってきたヴォルケンリッターと共に夕食をすませ、風呂に入った後皆に促されて早めに就寝した。
「主は眠ったか……?」
はやての様子を見に行っていたシャマルに問いかけるシグナム。
「ええ……じゃあシグナム。」
「ああ…すまな…い…。」
シグナムは突然緊張の糸が切れたようにその場にへたり込む。
「まったく……このケガで無茶するんだから……。」
「主を……心配される訳にはいかん……。」
シャマルはシグナムを治療するため彼女の服を脱がす、体には先程の戦闘のダメージでいたるところ傷だらけだった。
「ナイスたゆん。」
「突っ込むところはそこではないだろう、ノワール。」
「すいやせん……、結局そいつらが邪魔したせいでその娘のリンカーコアはとれなかったんッスね。」
「ええ……十中八九管理局の人達ね……これからは大変よ。」
シグナムを治療しながらシャマルが答えた。
「しばらくは四人で集めなければならないな……、そういえばスウェンは?」
「ああ、アニキならベランダにいるヴィータ姐さんのとこに行きやしたぜ。」

 

「う……う……。」
ヴィータは一人ベランダで破壊されたアイゼンを抱きしめて泣いていた。そこに、
「ヴィータ」
スウェンが様子を見にきた。
「なっ…!スエン…!」
ヴィータは慌てて涙を拭う。
「………泣いていたのか?」
「な……泣いてなんかねーよバカ!!」
「そうか。」
スウェンは破壊されたアイゼンを見る。
「……アイゼンが壊されるとは……大丈夫なのか?」
「うん、数日で自己修復されると思うけど……そんな暇ねえよ、早くリンカーコアを集めないと……。」
「無茶はするな、それじゃ戦えないだろう。」
スウェンはヴィータを気遣う、だが、
「うるせーよ!よそから来たお前に何がわかるんだよ!!」
ヴィータは苛立ちを募らせており、それをスウェンにぶつける。
「アタシ達は…早く闇の書を完成させてはやてと静かに暮らすんだ!!こんなところで止まってられねえんだよ!!」
いつのまにかヴィータはまた泣いていた、早くはやてを呪いから開放してあげたい、でも自分があの少年に負けたせいで蒐集に遅れを生じさせてしまった、ヴィータはそんな自分が許せないのだ。

 

「チクショウ……!チクショウ……!」
「…………。」
スウェンは何も言わず、ただ泣きじゃくるヴィータの頭を優しく撫でた。
「スエン……?」
「心配するな、お前らが戦えない分俺が頑張ってやる、だからそんなに自分を追い詰めるな、それだとはやてが心配してしまうぞ?」
「…………。」
そこに様子を見に来たシャマルとザフィーラがやってくる。
「あら……大声が聞こえたから何事かと思ったら……心配なかったみたいね……。」
「フッ……はたから見るといじめられた妹を優しく慰める兄のようだな……。」
「……………。」
「なっ!?バカ!離せ!」
ヴィータはスウェンの手を乱暴に振り払い、顔を真っ赤にしてうつむき、
「………ありがとうよ、あとよそ者とか言ってゴメン。」
小さく呟いた。
「さあさあ皆寝ちゃいましょ!明日もがんばらなきゃね!」
そしてヴィータとシャマルは家の中に入っていった。
「我々も行こう……スウェン?」
ザフィーラはスウェンの様子がおかしい事に気付いた。

 

どこかのパーティー会場、そこで幼き日のスウェンは母親に抱きしめられながら倒れていた。
『ママ……何があったの……?』
返事は無かった、辺りを見回すとあちこちで火の手が上がり、展示品やテーブル等は破壊され、パーティーに来ていた人々の屍が転がっていた。
その中に、スウェンの父親の姿もあった。
『ママ……パパが倒れて……。』
返事はない、よく見ると母親は頭から大量の血を流し、体はまるで氷のように冷たかった。
『ねぇママ……返事をしてよ……ママ………!!』

 

「スウェン!一体どうした!?」
ザフィーラの呼びかけでハッと我に返るスウェン。
「す……すまない……なんでもないんだ。」
ザフィーラはそれが嘘だということを、いつもと様子のちがう彼を見てすぐ解った。
「嘘をつけ……すごい汗だぞ、まさか記憶が……!?」
「……今は待ってくれないか?皆に余計な心配はさせたくない。」
「………心得た。」
そしてザフィーラは家の中に入っていった。
その場に残るスウェン。
(……父さん……母さん……。)
星の光は何処か悲しげなスウェンの表情を照らしていた。

 

そのころ、アースラの医務室には、収容されたなのはを見舞っているフェイトとシンがいた。
「でもよかった……なのはが無事で……。」
謎の襲撃者により負傷したなのはだったが、アースラクルーの迅速な対応により比較的早く保護できたのだ。
「うん、みんなのおかげだよ、それにしても……シン君強くなったよね、びっくりしちゃった。」
「ああ、本局にいたときそこの魔導師の人達と模擬戦とかやってたんだ、バインドや治癒魔法も覚えたんだぜ。」
「へー。」
「…………。」
よくみるとシンの隣に座ってるフェイトが、シンやなのはをチラチラ見ながらどこかそわそわしていた。
「ん?どうしたフェイト、さっきから?」
「えっと……二人に会うの久しぶりだから何を話したらいいか判らなくって……。」
「にゃはははは……そっか。」
するとそこにクロノがやってきた。
「なのは、もう大丈夫なのかい?」
「うん……クロノ君、あの人達が誰かわかった?」
「レティさんの話ではなのはの世界を中心に魔導師を襲ってる奴らがいるって聞いたけど……アイツ等なのか?」
「うん、同一犯なのは間違いない、そしてどうやら彼女達は『闇の書』の守護騎士のようなんだ。」
「「「闇の書?」」」
数分に渡ってクロノから闇の書について説明を受ける三人。
「ふ~ん、じゃあその闇の書っていうのが完成したら世界が滅びるぐらい大変なことになるのは間違いないんだな?」
「事実十一年前にも闇の書による暴走事故が起きている、あれは非常に危険なものなんだ。」
するとフェイトとシンはお互いの顔を見合わせ、こくりと頷く。
「なあクロノ、俺とフェイトも今回の事件を手伝わせてくれないか?」
クロノはシン達ならそう言うだろうと思っていたのか、驚きはしなかった。
「いいのか……?君達は本来関係の無い立場なんだぞ?」
「私達ばっかり遊んでられないよ……アルフだって手伝ってくれる。」
「それにお前らは大切な友達なんだ、あの事件で迷惑をかけた償いって意味も含めて協力したいんだよ。」
「そうか……ありがとう。」
穏やかな笑顔で礼を言うクロノ、一方医務室の外では。
(よい友達を持ったなクロノ……しかしコーディネイター、しかも因子を持っているのかあの少年は……彼女の話は本当だったのだな……。)
初老の男性が医務室のシン達の会話を盗み聞きしていた。

 

数日後、海鳴市のとあるマンション。
「へえ~、今日からここに住むのか~。」
シンはクロノ達とともに引越しの荷物を運んでいた。
あのあとリンディ達はなのはの保護と事件の調査も兼ねて、捜査本部を海鳴市のとあるマンションに移したのだ。
無論、リンディの他にクロノ、エイミィ、フェイト、アルフ、シンも一緒だ。
「シン、ボーっとしてないで荷物を運ぶのを手伝ってくれ。」
「おう。」
そう言って荷物をもって自分達が暮らす部屋に入るシン、そこに、
「あ!シン見て見て!」
動物モードになったユーノとアルフ、そしてそれを愛でるなのはとフェイトが出迎えた。
「ジャーン!こいぬフォーム~。」
「うお!?アルフがちっちゃくなってる!?」
「ユーノ君も久々にフェレットモードだよ~。」
「エヘヘ……どうも……。」
「うわー何度見ても凄いなソレ、どうやんの?」
作業中ということも忘れて、シンはアルフ達を撫でる。
「まったく……。」
クロノはその光景を見ながら荷物を置き、テーブルのイスに座る。
「お疲れ様クロノ君。」
そう言ってエイミィはクロノにジュースを渡す。
「それにしてもみんなああやってると歳相応の子供だよね。」
「そんだな……フェイトも…シンも…。」

 

ピンポーン

 

「あれ?お客さんかな?ハイハーイ。」
チャイム音がして、エイミィは玄関へ向かう。
「誰か来た?」
「あ!もしかして!」

 

「やっほー!遊びに来たよー。」
「おじゃましますー。」
「どうぞどうぞ~あがってー。」
エイミィが連れてきたのは金髪と紫髪の少女だった。
「あ!アリサちゃーん!すずかちゃーん!」
二人に駆け寄るなのは、そのあとをシン達も付いて行く。
「もしかしてこの子達がなのはの言っていた…?」
「はじめまして……て言うのも変かな?ビデオメールで何回も会ってるし…。」
嬉しそうに金髪の少女アリサと紫髪のすずかはシンとフェイトにあいさつをする。
「うん、私も会えて嬉しいよアリサ、すずか。」
「俺シン・アスカ、よろしくな。」
シンとフェイトも挨拶を返す。
「へえ、アンタがシン・アスカね。フェイトの親戚でホームステイに来てるっていう…。」
(そういやこいつらの前ではそんな設定で通すんだったな。)
「私達男の子の友達って初めてだよねー。」

 

「あらあら、賑やかね。」
そこにリンディがやってくる。
「あれ?リンディさんどうかしたんですか?」
「引越しの作業も終わったし、そろそろなのはさんのおうちに挨拶をしに行こうとおもってるのよ、みんな用意しておいてね。」
「「「「「はーい。」」」」」
そしてリンディは台所に向かっていった。
「ねえねえ、今の人フェイトのお母さん?綺麗な人だよねー。」
「えっ!?」
アリサの質問にフェイトは驚き、
「今は……まだ違うよ…。」
顔を赤くして答えた。
(フェイト……。)
シンはその光景をみて、先日のリンディとの会話を思い出していた。

 

『フェイトを養子に?』
『ええ、答えを出すのは裁判が終わってからでいいとは言ってはおいたんだけど……やっぱりまだ悩んでるみたい。』
『俺はいいと思うけどなー、リンディさんがフェイトのお母さんになるのは……。』
『ウフフ…ありがとう、でねシン君…もしフェイトさんが悩んでいるようなら……彼女の相談に乗ってあげてくれない?』
『……いいですよ。プレシアさんのことは俺にも責任があるし……。』
『シン君……。』

 

「どうしたのシン君?考え事?」
心配そうにすずかがシンの顔を覗き込んでくる。
「……いや、なんでもない。それよりも早く行こう、なのはの家ってたしかお菓子屋さんなんだよな。」
「ちがうよ~喫茶店だよ~。」

 

数時間後、引越しの挨拶のため皆はなのはの実家である喫茶店翠屋にやってきた。
「ふーん、ここがなのはの実家か~。」
オープンテラスでシンたちはテーブルを囲んで談話していた。
「わ~ユーノ君久しぶり~。」
「キュキュ。」
「あんたってどこかで見たことあるのよね…。」
「クゥ~ン(汗)」
(……?なんでアリサがアルフのこと知ってるんだ?)
念話でシンはなのはに質問する。
(アルフさんがプレシアさんにやられてケガしてるところをアリサちゃんが助けたんだよ。私もビックリしちゃった。)
(へえ……見た目凶暴そうだけどいいヤツなんだな~。)
(見た目じゃなくてアリサちゃんは本当に凶暴だよ。)
その時アリサの額に閃光(ニュータ○プのアレ)が走った。
「なんだろう……今すごく失礼な事言われたような気がする。」
「いい!?」
「きっ……気のせいなんじゃないかなー?」
「そう……?あやしい……。」
そんなやりとりをしていると。
「あっ、君がフェイトちゃんにシン君だね。」
突然見知らぬ青年が声を掛けてきた。

 

一方リンディ達はなのはの両親に挨拶をしていた。なのはの両親、士朗と桃子はここで子供達と共に喫茶店を経営しているのだ。
「そういう訳でこれからしばらくご近所になりますのでよろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げる。
「いえいえそんな。」
「こちらこそウチの娘がお世話になって……ところでフェイトちゃんとシン君三年生ですよね、学校はどちらに?」
「それはですね……。」
そこに大きめの箱を二つ持ったフェイト達が店の中に入ってくる。
「あのリンディていと……リンディさん、これ……。」
「はい、なんでしょう?」
フェイトは先程の青年から貰った箱を開けてみせる。その中にはなのはが着ている学校の制服と同じ物が入っていた。
「転校手続きは取ってあるから今月から二人ともなのはさんの学校に通ってもらう事になります。」
「二人って……俺も!?」
「ほう聖祥小学校ですか~あそこはいい学校ですよ、な、なのは。」
「うんうん!」
なのははフェイト達が自分と同じ学校に通うと知って、とても嬉しそうに頷く。
「へえ~、よろしくねフェイト、シン。」
「学校でも一緒なんだね~嬉しいな~。」
「学校か……そういえばここに来てからずっと行ってなかったな……。」
様々な反応をみせる子供達、そしてフェイトは、
「あの……その……ありがとうございます……。」
制服が入っている箱を抱きしめながら、頬を赤く染めてリンディにお礼を言った。

 

おまけ
夜、スウェンはいつものようにベランダで星を見ていた。そこに、
「なんだよ…またここにいたのか。」
パジャマ姿にいつもの三つ編みを解いているヴィータがやってくる。
「子供は寝る時間だぞ?」
「バーカ、これでもお前より長生きしてんだよ。にしてもよく飽きないよな、星なんか見てどこが楽しいんやら……。」
そのとき、夜空に一筋の流星が流れた。
「あ、流れ星。」
「なに!?はやての病気が早く治りますように、はやての病気が早く治りますように、はやての……。」
「もう消えてるぞ。」
「うがー!!!願い事言えんかった!!」
くやしそうに地団駄を踏むヴィータ。
「流星が来る確立は低いからな…次はいつくることやら……。」
「チクショウ!こうなったら毎晩ここで張り込んでやる!覚悟しろ流れ星!」
そう言ってヴィータは家の中に入っていた。
「………やはり子供だな。」
その日からスウェンの天体観測にヴィータも加わることとなった。