起動魔導士ガンダムRSG_04話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:16:29

十二月二日の夕方、スウェンとはやてとノワールは図書館に来ていた。ちなみにノワールは一般の人に見られる訳にはいかないので、「ノワールボックス」と名付けられたカバンの中に入っている。
(よかったッスね~、お目当ての本返されてて~。)
「ああ。」
「次私も読んでええか?ちょっと読んでみたい。」
お目当ての本が見つかりご満悦の様子の一行、ふと、
「あ……あの子は……。」
はやては紫のウェーブのかかった髪をした女の子を見つける。
女の子は自分の手の届きそうで届かない本を取ろうとして悪戦苦闘していた。
「う~ん、もうちょい……。」
「どうやらお困りのようや……頼めるか?」
「ああ。」
スウェンは少女が取ろうとしていた本を取り、そのまま渡す。
「これでいいか?」
「あ……ありがとうございます…あれ?あなたは……」

 

数分後、はやて達はその少女とすっかり仲良くなっていた。
「そっかぁ、同い年なんだ。」
「うん、ウチも時々見かけてたんよ、同い年ぐらいの子やなって。」
「実は私も……そちらの方も。」
「俺か?」
「はい!いつもお星様の本を読み漁っている方ですよね~、本当に本が好きなんですね~。」
(アニキ人気者ッスね~。)
(少し違う気がするが…。)
「ウチ八神はやて言います。平仮名で「はやて」って変な名前やろ?」
「そんなことないよ。綺麗な名前だと思う、私は月村すずかって言います。」
「俺はスウェン・カル・バヤンだ。」
「わ~外国の方なんですね~、スウ.…スヘ…スエ…スウェンさん……すいません……。」
(かなり咬みましたね彼女。)
「いや……気にするな。」

 

その後シグナムとシャマルが迎えにやって来て、はやて達はすずかと別れ帰宅の路についていた。
その帰り道での事、
(スウェン……私達今夜蒐集に向かうから……。)
(わかった……今夜ははやてと留守番している…こちらはまかせとけ。)
「そういえば今日もヴィータはお出かけかいな~。一体ドコいってるんやろ?」

 

その日の夜の事、はやてはスウェンとノワールと共にシチューを作っていた、するとはやての携帯電話に着信音が鳴る。
「はーいはやてです。ああシャマルか………うん……うん……そうか……わかった、でもあんま急がんでええよ、ほな。」
そしてはやては携帯を切る。
「シャマル姐さんからっすか?」
「うん、買い物ついでにみんなを拾って帰るそうや。」
「………そうか。」
(みんな闘ってるっぽいッスね。)
(ああ、だがここを任された以上俺達はここでやるべきことをやるぞ。)
(へいッス。)
「二人ともー、味みてくれへん?」
八神家においしそうな匂いが漂っていた。

 

その数時間前、アースラ食堂
そこでフェイト、アルフ、ユーノ、クロノがテーブルを囲んで会話していた。
「いやあ、思ったより早い時期に裁判が終わったね。」
ユーノは置いてあったコーヒーをすする。
P.T事件から数ヶ月、事件の重要参考人であるフェイトとアルフはこれまでずっと裁判を受けており、数日前にそれが終わったばかりなのだ。
「うん。フェイトの嘱託試験の合格も効いてるし…なによりプレシア本人の証言もあるから……あ!!」
クロノは慌てて自分の口を自分で塞ぐ。
「……気にしなくていいよ。私は大丈夫だから……。」
自分を拒絶していなくなった母の名前を耳にし、心なしか少しテンションが落ちるフェイト。
「あんたはあ…なにやってんだい……!?」
フェイトの死角になるところで、アルフはクロノの太腿を抓る。
「いでででで!!ごめん!!」
「とっ…とにかくこれからなのはに連絡入れるんだよね!楽しみだねー!フェイト!」
「う……うん。」
慌てて話題を変えるユーノ。
「そういえばさ、あさっては本局からシンも戻ってくるんだよね。楽しみだね……。」
アルフはどこか懐かしそうに物思いにふける、クロノを抓ったまま。
「うん……///」
なぜかフェイトはもじもじしだし、気になってユーノが声を掛ける。
「どうかしたの?」
「うん……久しぶりにシンに会うと思うとなんだか恥ずかしくなってきて…なに話せばいいんだろう……。」
「「あー。」」
一発で納得したアルフとユーノ
「いいな……シンは…こんなカワイイ子に想われてて……。」
「シンが好きなのはいいけどさー、夜中に寝ぼけて私をシンと間違えてキスを迫るのやめてくれないかい?」
「ちょっ!!皆!!」
からかわれて顔を真っ赤にして怒るフェイト。
「いだだだだ!!アルフ!!いい加減離してくれ!!」
その時、ブリッジにいるエイミィから通信が入る。
『クロノ君、ちょっといい?』
「ど……どうした?エイミィ?」
『今なのはちゃんに連絡をいれたんだけど……なんか強力な結界が張られていて連絡がとれないんだよ…。』
「なんだって?」

 

ビルが並ぶ夜の町並、その一角に張られている結界の中で二人の少女による魔法合戦が行われていた。
白いバリアジャケットを着た少女…なのはは突然襲ってきた赤い髪に赤い服を着た少女に光弾を放つ、だが赤い少女はそれを掻い潜りハンマー状の武器をなのはに叩き込む。なのはは魔力障壁でソレを防ごうとするが、レイジングハートごと砕かれ、遥か後方に吹き飛ばされビルに激突する。
瓦礫のなか、必死に立ち上がろうとするがダメージが大きすぎて立ち上がれない。
(いやだ……こんなところで終わるなんて……)
赤い少女が追いかけてきた、そしてなのはに対してハンマーを振り上げる。
(ユーノ君…クロノ君…アルフさん…シン君…。)
次々と浮かぶ仲間達の顔。そして赤い少女はハンマーを振り下ろす。
(フェイトちゃん……!!)
だがそのハンマーはなのはに当たることはなかった。突如割って入ってきた黒衣の少女に防がれたのだ。
「なんだてめえ……そいつの仲間か?」
赤い少女は不機嫌そうに黒衣の少女を睨みつける。
「友達だ……!」
対峙する二人、その後ろで、
「なのは!大丈夫!?」
「フェイトちゃん……?ユーノ君……?」
ユーノに抱き上げられるなのは。
「ちい!!」
後退する赤い少女、
「ユーノはなのはをお願い!私は…!」
「わかった!こっちはまかせて!」
そしてフェイトは赤い髪の少女を追いかけていった。

 

「ユーノ君……どうしてここに……?」
「フェイトの裁判が終わったからなのはに連絡を入れようとしていたんだ、そしたら異変に気付いて……。」
そう言いながらユーノはなのはに治癒魔法をかける。
「アルフも来てくれたし……アースラのスタッフも全力で対処している、もう安心だよ。」
「そっか……。」
そしてなのはは上空で戦っている友の姿を見守っていた。

 

「クソッ!なんなんだよコイツ等!」
ヴィータは焦っていた、高い魔力を持つ白い服の少女を襲っていたら、彼女の仲間らしき者達に反撃を喰らい、今空中で対峙しているのだ。
「このぉ!!」
ヴィータは魔力を込めた鉄球を黒い服の少女に向かって打ち出す。だが少女はそれを軽やかにかわす。そして、
「なあ!?」
彼女の使い魔らしき女に束縛魔法を掛けられた。
「終わりだね、名前と出身世界を言って貰おうか。」
ヴィータは少女の持っていた武器を突きつけられる。だがヴィータは臆することは無かった。
「誰が降参なんかするかヴァーカ!!」
「……!?なんかやばいよフェイト!!」
その瞬間、黒い服の少女はポニーテールの女剣士…シグナムに吹き飛ばされ、
「きゃあ!?」
悲鳴と共に真下のビルにコンクリートの砕ける音とともに叩きつけられた。
「フェイトォ!!」
使い魔はすぐに少女を追いかけようとしたが、犬耳をつけた大男…ザフィーラに阻まれてしまう。
「こ……このお!!邪魔すんな!!」
「………。」
男は何も答えず、ただ拳を力強く握り締めた。
「苦戦していたようだな、ヴィータ。」
「うっせーよ!!こっから逆転するとこだったんだよ!!」
ヴィータはシグナムに束縛魔法を解除されながら子供じみた(見た目は子供なのだが)言い訳を言う。
「フッ…まあいいさ、私はあの少女のリンカーコアをいただく。」
「ならアタシはあのザフィーラが女になったみたいなヤツを……。」
そして二人はそれぞれ目的の場所へ飛び立っていった。

 

「大変だ……!!助けなきゃ…!!」
なのはとユーノはビルの屋上でフェイト達が苦戦しているのを見て、救援に向かおうとする。
『ちょっとまった!!』
だが通信でクロノに止められる。
「なんでだよ!?このままじゃ皆が……!!」
『今そっちに救援を送った、彼に任せて君はなのはを守っててくれ。』
「彼……!?」
『全く、さっきいきなり帰ってきたと思ったらすぐそっちに飛んでいってしまったよ。』
「え……まさか!?」
なのはとユーノは顔を見合わせる。

 

「くう……!」
襲撃者に吹き飛ばされたフェイトは叩きつけられたダメージで動けなかった。
バルディッシュは先程の攻撃で柄の部分がポッキリ折られている。
そこに、先程彼女を吹き飛ばした女剣士が降りてくる。
「他愛もない……コアは貰っていくぞ。」
抵抗しようにも身動きが取れない。
(このままじゃ……やられちゃう…!)
恐怖で身を強張らせる。
このままなのはも守れず、自分自身も守れない、そんな自分がむしょうに悔しかった。あの事件から七ヶ月、強さに磨きを掛けてきたはずだったが、目の前の女剣士はそれ以上の強さだった。
ふと、いつも自分がピンチになったら駆けつけてくれる彼の事を思い出す。だが今は彼は遠い所におり、自分を助けには来れないのだ。
それでも、フェイトは固く目を閉じて、祈りを込めるように彼の名前を口にする。
「シン……!」
そして女剣士の手が、フェイトの胸に触れようとした、その時だった。
「ムッ!!?」
突然女剣士はその場から退く、次の瞬間、コンクリートの天井を突き破って斜め上から巨大な赤い光線が降り注いだ。
「「!!?」」
二人は光線の来た方角を見る。すると、
「うおおおおおおおお!!!」
一つの人影が雄たけびをあげてこちらに向かって来る。
「え……!?」
フェイトはその人影に見覚えがあった。そして驚愕で目を丸くしていた。
「どおらあ!!」
その人影は轟音を立ててフェイトと女剣士の間に着地する。
歳は九歳ほどの色白で黒い短めの髪をした少年、左脇には深緑の細長いランチャーのようなものを抱えており、背中にはどこか機械的な骨組みをした赤い翼が光る粒子をばら撒きながら羽ばたいている。
「デスティニー!アロンダイト!」
左脇のランチャーが消え、代わりに右手に大剣が現れる。少年はそのまま野球でいう右打ちの体制に入り、
「はあああああ!!!!」
左足を踏み込んで大剣…アロンダイトをホームランバッターの如く思いっきり振る。
「くう!!!」
女剣士は自分の剣でそれを受け止めるが、
「ぬううううっ!!!」
パワー負けして足元がすれる音と共に後ろに下がってしまう。
「いっけえええええー!!!」
少年の瞳から光が消え、そのままアロンダイトを女剣士ごと振りぬいた。
「あああああああっ!!!?」
女剣士はビルの壁を何枚も突き抜け、そのままビルの外へ吹き飛ばされていった。
少年の瞳に光が戻り、動けないフェイトのほうを見る。
「大丈夫か?フェイト?」
フェイトは目を見開いて驚く、なぜなら眼前にいる彼は明日帰ってくるはずで、今ここにいる筈はないのだから。
「どうして……ここに……?」
フェイトの疑問にその少年は、
「言ったろ?みんながどうしようもなくピンチだったら……超特急で駆けつけるって。」
笑顔で答えた
フェイトは七ヶ月前から変わらない彼の笑顔を見て、嬉しさのあまりその少年の名前を叫んだ。
「シン!」

 

「な……!?どうなってんだよこれ!?」
ヴィータは酷く狼狽していた、ザフィーラと共に黒い少女の使い魔と戦っていたら、高速で何かが通り過ぎシグナムのいるビルに突っ込んで言ったかと思うと、突然シグナムが吹き飛ばされて隣のビルに激突したのだ。そこにシャマルから念話が入る。
『大変よみんな……誰かが結界を破っちゃったみたい…!』
「な……なんだと!!?」
恐らく先程シグナムを吹き飛ばした人物の仕業だろう。その時、ヴィータに向かって数発の光線が放たれた。
「!!」
ヴィータはそれを魔力障壁で防ぐ。
「この攻撃……まさか!?」
ザフィーラと戦っていた使い魔が光線が放たれた方向をみる。
「ちっ……!外れたか……。」
そこには黒いライフルを構えた赤い翼の少年がいた。
ザフィーラに目もくれず、使い魔はその少年のもとに近づく。
「シン…!?なんでここに!?」
「レティさんから最近ここら辺で魔導師が襲われているって聞いたんだ、それで気になって早めに帰ってきたんだよ、ちょうどよかったなこれ。」
「ああ!まったくだ!」
使い魔はうれしそうにおしりの部分にある尻尾を振る。
それを見ていたヴィータ達は悔しそうに歯を食いしばる。
「クソッ……!!なんだよアイツ……!」
「どうやらこちらが不利のようだ、白い少女も黒い少女も結界で完全に守られていて手出しが出来んそうだ。」
『シグナムは回収したわ!撤退しましょ!』
「くそっ……スエンも連れて来るんだった…!」
その時、少年と使い魔の射撃がヴィータとザフィーラに襲い掛かり、二人はすんでのところでそれをかわす。
「逃がすと思ったのかい!?」
「観念しろチビ!」
「な……!おいコラァ…!!いまなんつった……!!」
“チビ”という言葉にカチンときたヴィータ。
「“チビ”つったんだよヴァーカ!耳遠いんじゃねぇのー?」
子供特有の悪口を言われ、完全に頭に血が上ったヴィータは、
「こんガキャア……!!叩き割ってやる!!」
「ヴィータ!!熱くなるな!!」
ザフィーラの制止も聞かず、ヴィータは突進しグラーフアイゼンを少年の脳天に叩き込もうとする
「…かかったな。」
少年は避けようともせず、アイゼンを両手で受け止めた。
「な……!?」
「パルマ……!!」
少年の両手に青い色の篭手が現れ、その手のひらに光が収束される。
「フィオキーナ!!」
次の瞬間大爆発が起こり、アイゼンは粉々に砕かれてしまった。
「ア……アイゼン!!」
ヴィータは信じられないという表情で自分の相棒を見る。
「………逃げるぞ。」
「あっ!こら!……くそう……!」
ザフィーラに襟首を掴まれたヴィータは、彼と共にシャマルによって転移していった。

 

「あっ!逃げんなコラ!」
『なんて逃げ足の速い……ロストしちゃった……。』
通信からエイミィの悔しそうな声が聞こえた。
「とにかく一旦アースラに行こう、なのはもフェイトもケガしてるみたいだし……。」
「ちぇっ、しょうがないな。」
シンとアルフはなのはとフェイトとユーノがいるビルの屋上に降り立った。
「シン君……。」
「大丈夫かなのは?仇はちゃんととってやったからな。」
「うん……ありがとう。」
「シン……助かったよ、君が来てくれたおかげで被害を抑える事ができた。」
「でもレイジングハートとバルディッシュが……。」
シンはメチャクチャに壊されてしまった彼女達のデバイスを見る。
「とりあえずアースラにもどろう…フェイト、立てるかい?」
「大丈夫だよ……痛っ!」
先程の戦いで足を痛めたのかフェイトは顔をしかめる。
「コラッ!無茶すんなよ。」
「だ……大丈夫だよ、これくらい…。」
「あーもう!強情なのは変わってないのな!!」
そう言うとシンは、無理矢理フェイトを抱き上げた。
「へ?や!ちょっと!?」
フェイトはなのは達の視線を気にしてシンの腕の中で暴れる。
「は……恥ずかしいよ…ホントに大丈夫だから……!」
「はいはいなんにも聞こえませーん、さっさとアースラ行こ。」
「うー……///」
フェイトは顔を真っ赤にして急に大人しくなった。
その光景を見ていた他の三人は
「あーあ、見せ付けてくれるじゃないか……シンも全然変わってないね。」
「というか私のほうが重傷なんですが……。」
「なるほど、あれぐらい積極的にいけば……じゃあ僕はなのはを…。」
「ほらなのは、おぶってやるよ。」
「すいませんアルフさん。ユーノ君なんか言った?」
「………………。」
12月の夜は(一部を除いて)とても寒かった。