起動魔導士ガンダムRSG_06話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:18:00

シンとフェイトがなのはの通う聖祥小学校に転入してから数日後。
昼休みの屋上でシン、なのは、フェイト、アリサ、すずかはお弁当を食べていた。
「でもすごいね~フェイトとシンの人気!二人とも運動神経抜群じゃない!」
フェイトとシンはなのは達のクラスに入っており、クラスの中ですぐに人気者になったのだ。
「えへへ……そんなことないよ、この前のドッヂボールだってすずかに負けちゃったし……。」
「そうだよなー、フェイトのあのボールを投げ返すんだからなー、ホントにナチュラ……なんでもない。」
「……?アンタ今何か言いかけた?」
そんなこんなで話は弾んでいた。ふと、アリサは小声でなのはに話しかける。
(ねえねえなのは。)
(なにー?)
(フェイトってシンのこと好きよね?)
(うん。)
見るとシンがすずかと楽しそうにお喋りしていた。その後ろで、フェイトが嫉妬心から形成された禍々しいオーラを放って二人を見ていた。
「すごいよなーすずかって……どうした?なんか震えているぞ?」
「う………ううん、なんでも……ない。」
ドドドドドドドドドドドド←フェイトが放つオーラの音
(あれだけ殺気を放たれたらいたたまれないわね。)
(でもシン君は全然気付いてないね、鈍すぎだね。)
「そういえばフェイト。」
なにかを思い出したのか、シンはフェイトの方を向く。
「なあに?シン。」
その瞬間、フェイトの後ろの背景がどす黒いオーラから咲き誇る花に変わっていた。
(ぬお!?変わり身早っ!)
(重圧から開放されてすずかちゃん心底ホッとしてるね。)
(にしても……シンのヤツ鈍すぎよ!殺意が沸いてくるわ!)
(しょうがないよ…シン君ってフェイトちゃんのこと、どちらかというと故郷にいる妹さんと重ね合わせているっぽいからね……。)
(うーん……。)
なのは自身はあとから聞いたのだが、シンは違う世界から来た人間で元の世界にはちゃんと家族がいるらしい。(アリサ達には家庭の事情でハラオウン家で暮らしていると教えている。)リンディはシンは家族に会えない寂しさを、フェイトを守る事やこの世界で友達を作る事で紛らわしているんじゃないかと言っていた。
(だから人前でも平然とお姫様抱っこなんて出来るんだね……。)
(でもそれじゃあ……フェイトが気の毒ね……そうだ!)
「ねえシン!」
アリサはフェイトと喋っていたシンに話しかける。
「ん?なんだ?」
「今日さ、私達習い事休みで暇なんだ。それですずかの家で遊ぼうと思ってたんだけど……シンも来ない?色々と話も聞きたいからさ!」
「おう、別にいいぞ。」
「あ…わたしも……。」
フェイトは「私も行く。」と言い掛けたのだが、
「フェイトちゃん、私達今日はエイミィさんのとこでデバ……お話聞く日だったでしょ。」
「うー………。」
なのはに遮られてしまった。
(いよし!じゃあ後はすずかと一緒に…シンにフェイトの恋心をしっかりと気付かせてみせるわ!)
(健闘を祈るよ!)
(まっかせときなさい!!)
なのはとアリサは親指をグッと立てた。
「あ、ちょっといい?」
「どうしたのすずか?」
「ちょっと図書館によってもいい?返さなきゃいけない本があるんだ。あと……はやてちゃんも呼んでもいい?」

 

そのころの八神家サイド
あたり一面海の世界、ここでシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラは巨大な鯨のような化け物を倒し、そのリンカーコアを蒐集していた。
「でもよかったわー、スウェンが頑張ってくれたおかげでページも今五百近く集まったわ。」
「アイゼンも治ったし、シグナムも全快だし、後はあいつらぶっ飛ばすだけだな!」
「ああ……スウェンには本当に感謝だ……そう言えば当の本人は今日は図書館だったな。」
「……おそらく記憶が戻りつつあるのだろう、そこで何か調べているのか……。」
「いいじゃねえか、今まで三人分頑張ってくれたんだから、今日は休みって事で。」
そのとき、シャマルの携帯電話に着信音が鳴る。
「あ、はやてちゃんからメールだ。」
「主はなんと?」
「『今日はすずかちゃんのおうちにお呼ばれしているので晩御飯は作っておきました。皆も気をつけてね。』ですって。」
「そっか、なら心置きなく戦えるな。」
「フッ……そうだな、それでは次は二手に分かれよう。」

 

そのころスウェンとノワールは図書館で過去のテロ事件に関する資料を読み漁っていた。
「………なかなか見つからん。」
(そもそもアニキのお父さんって宇宙関連の仕事についてたんッスよね?バヤンって名前の技術者なんてどこにもいないッスよ?)
「…………。」
あの晩にみた記憶を頼りに自分の正体をネットや書籍で探してみてはいるのだが、手掛かりになるようなものは見つからなかった。
(………一体俺は何者なんだ?また何かきっかけがあれば……。)
そこにはやてがやってきた。
「どうやスウェン?何か見つかった?」
「………いや、なにも。」
「そうか……まあ焦ってもしょうがあらへん、ゆっくり思い出していこうや。」
「そうだな。」
(ぬっふっふ……そう言って姉御は兄貴にずっとそばにいてほしいんスよね。)
はやては無言のまま、両手をノワールボックスに突っ込む。
(ぎいいやああああ!!!雑巾絞りだけはああああ!!!)
ボックスのなかに、絞め殺される鶏のような声がこだまする。
「なにしてるんだはやて?あと顔が赤いぞ?」
「なんでもあらへんよ~?」
そんなはやて達のもとにすずかがやってきた。
「こんにちは~はやてちゃん、スウェンさん、迎えにきたよ~。」
「あ、すずかちゃん!」
「そういえば今日はやては友達の家に行くんだったな。」
「うん、そうや~、スウェンもくればええのに……。」
「いや、俺はまだ調べたい事があるからな……時間がきたら迎えに行く。」
「ほうか……ならいこか、すずかちゃん。」
「そうだね、それじゃスウェンさん、またあとで。」
そしてはやてはすずかに車椅子を押されながらその場を去っていった。
「さて……もう少し調べよう……ノワール?」
(あばばばばばば……。)
ボックスの中を覗くと固く絞られた雑巾みたいになってるノワールがいた。
「………よく生きてたな。」
(でももう虫の息ッス。)

 

そのころシンはマンションの前でアリサの迎えを待っていた。
「そろそろ来る頃かな……。」
そこに一台の高級車がシンの目の前で止まった。そして高級車のドアが開く、そこには、
「やっほー、迎えに来たよー。」
普段着のアリサが座っていた。
「………………!!」
あまりにも高級そうな車の中に友人が入っていてシンは口をポカンとあけ呆然としていた。
「なに?そんなアホ面して……早く乗んなさいよ。」
「あ…ああ。」
アリサに促され、彼女の隣に座るシン。
「じゃあだして、鮫島。」
「かしこまりました、お嬢様。」
そして高級車は月村邸へ走っていった。

 

数十分後、
「着いたわ、ここがすずかのお家よ。」
「……………!?」
シンが見たもの、それはコズミックイラにある自分の家よりも何倍も大きい屋敷だった。そして屋敷からメイドらしき人物がこちらにやってきた。
「いらっしゃいませ。アリサ様、シン様。」
「こんにちはーノエルさん。おじゃましまーす。」
「お……おじゃまします……。」
「すずかお嬢様とはやて様がお待ちです、こちらへ。」
そして二人はノエルに屋敷の中を案内してもらう、その道中。
「………おまえらブルジョワだったんだな。」
「え?言ってなかったっけ?」
(こんなでかい屋敷……父さんの給料じゃ一生無理だな……。)

 

その頃コズミックイラ
「ぶえくしょい!!」
「お父さん風邪―?」
「マユにうつさないでくださいよー。」

 

「やっほーすずか。」
「お邪魔しまーす。」
メイドのノエルに案内され、すずかの私室に入るシンとアリサ。
「いらっしゃ~い。」
「あ、こんにちは……。」
そこには数匹の猫と戯れているすずかと見知らぬ少女がいた。

 

「へえ~、シン君って外国からきたんや~、ウチの子等と同じやな~。」
数十分後、シンは猫と戯れながらすずかの友人八神はやてとお互いの事を話していた。
「はやての家も変わってるんだな……外国人の親戚と暮らしているなんて。」
「そうやろ…でもウチはみんなに囲まれて幸せや。これ以上……なにか求めたらバチが当たってしまうわ。」
「そっか……そうだよな。」
ちなみにここにくるまえに、シンはアリサからはやての両親については言及しないようにといわれていた。
(結構複雑なんだな……なんか病気っぽいし……。)
シンはフェイトとプレシアの事を思い出し、軽く溜め息をついた。その一方でアリサとすずかは、
(そろそろいくわよすずか!)
(うん。)
「ねえシン?」
意を決してシンに話しかける。
「ん?どうした?」
「アンタってさ……フェイトの事どう思ってる?」
「フェイト?フェイトは大切な友達だけど……?それがどうした?」
「う~ん、そうじゃなくて……なんというかフェイトってカワイイよね。」
「……?」
(二人ともなんの話をしてるん?)
はやてはアリサが何をしているのかすずかに耳打ちで質問する。
(実はね……私達の友達のフェイトちゃんがね……シン君のことが好きなんだ、でも当の本人はフェイトちゃんの気持ちに全然気付いてなくて……。)
(ああ、なるほどな……好きな人か……。)
はやての頭の中に銀髪の彼(犬耳が付いてない方)の顔が浮かぶ。
(あ……あれ?なんでスウェンの顔が浮かぶんやろ……?)
そうしているうちにも、アリサとシンのトークは続く。
「フェイトを抱きしめたいとか!撫で回したいとか思わない!?」
「それは散々やったしな……。」
「「「んな!!?」」」
シンの思いもよらない返答にはやて達は目を丸くする。
「なな……いつそんなことしたのよ!!?」
「この前フェイトが怪我したときに……。」
(なるほど……フェイトちゃんが惚れるのも無理ないか……。)
(そういやウチもこの前スウェンに抱っこされたなあ……。)
「アンタ……あんまりそういう事女の子にするんじゃないわよ……。」
半ば呆れながらアリサはシンに警告する。
「………?なんで?」
「惚れ……ゲフンゲフン!とにかく!もうちょっとフェイトの事よく見てあげなさいよ!」
これ以上はシン自身が気付くべきだと思い、アリサはさっさと話をまとめた。
「い…意味がわからん……。」
「失礼します。はやて様にお客様がお見えですよー。」
そこにノエルと同じく月村家に仕えるメイド、ファリンがやってくる。
「あ、スウェンかな?もう用事は終わったんかなー?」
そしてノエルに連れられて、部屋に銀髪の少年が入ってくる。

 

「どうぞ、こちらです。」
「はやて、迎えにきぞ。」
「あ、こんにちはスウェンさん。」
(うわ……ちょっとカッコいい…この人もはやての親戚なのかな……。)
「あ…どうも。」
「あれー?スウェン、早かったなー。」
様々な反応を見せるシン達。
「早めに切り上げたんでな……お邪魔だったか?」
「いえ!そんなことないですよ……アラ?」
よくみるとスウェンの足元に猫達が体を摺り寄せてくる。
「気に入られているみたいやな……。」
「スウェンさん、よかったらお茶でも飲んでいきません?この子達も貴方のこと気に入ってるみたいだし……。」
「……いいのか?」
「ここはお言葉に甘えとき、スウェン。」
その時、スウェンの携帯電話が鳴る。
「ちょっとすまない。」
そう言ってスウェンは部屋から出て電話に出る。
その時、シンにクロノから念話が入る。
(シン、今どこにいる?)
(今すずかの家だけど……どうかしたのか?)
(闇の書の守護騎士達がまた現れた、今なのは達が戦っている。)
(えっ!?じゃあ俺も行くよ!)
(いや……心配はいらない。なのはとフェイトのデバイスはパワーアップしているんだ、君の手を借りるまでも無い。)
(そうか……?)
そのころスウェンは、シャマルと通話していた。
「管理局が……!?」
『うん、この前の男の子の反応はないんだけど……とりあえずスウェンははやてちゃんを守って!』
「了解した。」
そしてスウェンは電話を切り、部屋に戻る。
「すまないな、会話中に。」
「いえ、別にいいんですよ…シャマルさんからですか?」
「そうだ、今日は遅くなるらしい。」
「そっか、ならもうしばらくいても問題あらへんな。」

 

その頃結界の張られたとあるビル街の上空では、なのはやフェイト達が、シグナム達と対峙していた。
「あんだぁ!?この前のガキンチョがいねえじゃねえか!」
「シン君が居なくたって……私達は貴方達に勝ちます!」
「この前のようにはいかない……!」
「ほう……いい目をしているな、だが我々も退く訳にはいかん。」
「ハッ!この前みたいにはいかないよ!」
「……おもしろい。」
「ユーノ、僕らは結界を張っている術者を探すぞ。」
「わかった!」
『シグナム、ヴィータちゃん、ザフィーラ……気をつけてね。』
そして激闘の火蓋が切って落とされた。

 

場所はもどって月村邸。
「にゃー。」
「うわー、みんなスウェンさんによってきますねー。」
「……動けん。」
「なはは、スウェンの膝の上で寝ている子がおる。」
「へー、アリサは犬を飼ってるんだ。」
「そうよ!この前なんてこんなデッカイ怪我したオレンジ色の犬を拾ったんだから!」
家族や友人達が死闘を繰り広げているとは露知らず、シン達はまったりと時を過ごしていた。
「…………。」
ふと、スウェンは膝に猫をのせたまま、シンをじっと見る。
「ん?なんですか、俺なんかじーっと見て?」
「いや………なんでもない。」
「なんやスウェン?シン君に一目ぼれしちゃあかんよ?」
「なにいってんのよ。」
はやてのジョークにアリサとすずかが笑う。
(なんだ……?彼を見ていると……何か思い出せそうな……。)
「あ、もうこんな時間や、そろそろ帰らな。」
はやては掛けてあった時計を見る。時刻はもう七時を回っていた。
「それじゃ俺も帰るかな、フェイト達も帰ってきてる頃だろうし。」
「そっか、じゃあまた明日ね。」
「今度はなのは達も呼ぼう、きっとはやての事気に入ると思うから。」
「そうか……楽しみやなあ。」

 

月村邸の門の前、シンとはやてとスウェンはアリサ家の車で送ってもらうことになった。
「じゃあねーみんなー。」
「うん、また明日学校でー。」
「ほななー。」
そして皆、車に乗り込み帰路に着いた。
その車中での事。
「なあシン君、家族と離れ離れで寂しくあらへん?」
はやてはシンに話しかける。
「んー……確かに寂しいけど……そのかわりフェイト達が居るから、大丈夫かな?」
「そうか……ウチなら耐えられへんな……。」
はやては何処か寂しそうに窓の外を見る。最近病状が少しずつ悪化してきており、弱気になってきているのだ。
「はやて……大丈夫だ、俺達はお前の元から居なくなったりしない、ずっと一緒に居てやる。」
そんなはやてを、スウェンは優しく励ます。
「そ…そうか、ありがとう。」
はやては顔を真っ赤にしてお礼を言う。その光景をみていたアリサは、
「なんかスウェンさんとシンって……似てるわね……。」
「……なぜだ?」
「なんで?」
シンとスウェンは首を傾げる。
「あー…なんでもないわよ。」
そうこうしているうちに、車はシンが暮らしているマンションの前で止まる。
「じゃあな、今日は楽しかったよ。」
シンは車から降りようとする、だが、
「ちょっとまってな、シン君。」
はやてが呼び止める。
「ん?なんだ?」
「もうすぐクリスマスやん…それでな、皆でクリスマスパーティーやらへん?皆を呼んで。」
「あ!それいいわね!なのは達やはやての家族も呼ぼうよ。」
アリサは嬉しそうに賛同する。
「おういいぞ!なのは達には俺から言っといてやるよ。計画は…また今度会ったときにな!」
クリスマスの約束を取り付けて、はやて達を乗せた高級車は走り去っていった。
「クリスマスか……それまでに闇の書の事件、解決できればいいけど……。」
夜空を見上げながらシンは呟いた。

 

一方車内のはやて達は、
「楽しみやなあ……クリスマスパーティー。」
(クリスマスか……父さん達と祝って以来だな……。)
来たるクリスマスに胸を躍らせていた。
さまざまな思惑が絡み合いながら、海鳴の夜は更けていく。

 

おまけ
(あれ?そういえばノワールはどないしたん?)
(ああ、先に帰した、今ごろは晩御飯を作っているだろう。)
(ノワールってシャマルやシグナムより料理が上手いから安心やなあ…。)
(……あのサイズでどうやって調理してるんだ?)
八神家
「小麦粉~♪卵を~♪パン粉でまぶして~♪いや~この体って魔力喰うけど慣れたらいいもんッスね~♪」
ノワールは魔法で自分の体を大きくし、それを利用して皆の晩御飯を作っていた。
そこにシグナム達が帰ってくる。
「ふう、訳わからん仮面の男のおかげでなんとか帰ってこれた……。」
「テスタロッサ……是非もう一度手合わせしたいものだな。」
「あれ?誰かいるわね。スウェンかしら?」
「………!!?何者だ貴様!!?」
ヴォルケンリッターが見たもの、それは見知らぬ長身で色黒の青年が、うさぎさんがプリントされたエプロンを着て台所でトンカツを作っていたところだった。
「え!?オイラノワールッスよ!?この姿見せるの初めてだけど……。」
「バカを言え!ウチのノワールは180センチもないんだよ!!」
「おのれ賊が……人様の家で堂々とトンカツなど作りおって……。」
「ちょうどいいわ、リンカーコアもいただきましょう。」
「グルルルル………。」
「え!?うわ!?ちょっとまって……!」
「「「「問答無用!!!!」」」」
「今日は厄日だああああああああ!!!!!」