起動魔導士ガンダムRSG_08話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:19:18

シンとスウェンの衝撃的な再会から数日後。
時空管理局データベース、無限書庫。
ユーノはそこでクロノからの依頼で、闇の書について調べていた。
そこに、
「おーい、ユーノー。」
「あれ?シン、なんでここに…?」
ここにいるのは珍しい人物に話しかけられ、ユーノは振り向く。
「いや、暇だから俺も何か手伝おうかなって思って…。」
シンは先日の出来事を通じて、もっと闇の書の事を調べる必要があると思い、ユーノを手伝いに来たのだ。
「そっか…でもシンが見てもちんぷんかんぷんだと思うよ…。」
「なっ!?ばかにすんなよ!俺だって…!」

 

5分後
「やっぱりちんぷんかんぷんだわ。」
あまりに膨大なデータの量のうえ、ユーノ程魔法に詳しくないのでシンは数分でギブアップしてしまった。
「あはははは…やっぱりね。」
そんなシンを見て、ユーノは苦笑いをする、その時だった。
「とりゃ!捕まえた!」
突然シンは何者かに背後から抱きつかれた。
「うわっ!?なんだ!?」
突然の事に驚くシン。
「ロッテったら…ごめんなさいね、驚かせて。」
するともう一人、シン達の下に人影が近づく。
「あれ…?リーゼロッテさん?リーゼアリアさん?」

 

「じゃああんたら、クロノの魔法のお師匠の使い魔なんだ。」
ユーノから猫耳と尻尾をつけた双子の女性…アリアとロッテについて説明を受けるシン。
彼女らはクロノの師匠、グレアム提督の使い魔で今回の闇の書事件の手伝いをしているのだ。
「へえ~、君がクロノをコテンパンにしたシン君か~!」
「クロノったら相当悔しかったらしくて、あの後私達のもとでまた修行し直してたんだから。」
「ははは…負けず嫌いだね彼も。」
「それにしても…。」
ロッテの目が怪しく光り、シンを捕らえる。
「な…なにか…?」
思わず身構えるシン。
「シン君ってさ…クロノやユーノとはまた違って美味しそうだよね…食べていい?」
「うおえ!?ちょっと!?」
「いただきにゃんにゃん!!」
シンが返答するよりも前にロッテは彼に飛びつき、彼の顔中に何回もキスをする。
「うあわあああ~~!!あんたはいったいなんなんだ~!?」
「うおおう、よいではないかよいではないか。」
「あーあ、シンもロッテさんの毒牙に…。」
「でもいいんじゃない?彼もまんざらじゃなさそうだし。」
アリアは呑気に答える。その時だった。
「やあ、楽しそうだね。」
無限書庫にもう一人来客が現れる。

 

「あ、お父様。」
「え!?グレアム提督!?」
ユーノはその貫禄のある老紳士の姿をみて驚く。
「あー!お父様!」
「えっと…確かクロノのお師匠さんだよな、なんでここに…?」
シンは顔中キスマークだらけになりながらグレアムを見る。
「いや、コズミックイラから来た少年がいると聞いてね…顔をみたいと思ったんだ。」
「コズミックイラを知ってるんですか?」
シンは自分の故郷の事を知っているっぽいグレアムに興味を抱く。
「ああ、実は昔ね…11年程前だったか、私達は事故でコズミックイラから飛ばされた人物を保護したことがあるんだ。」
「「えっ!?」」
「そうそう!確か彼女科学者だって言ってたね~、コーディネイターを研究しているとか。」
「コーディネイター…。」
シンはその単語を聞いて、ユーノのほうをチラリと見る。
「コーディネイターって、たしかコズミックイラで苛烈な宇宙環境に適応するために遺伝子を調節した人達ですよね。その人はその研究者だったんですか?」
ユーノは興味深そうにグレアム達に質問する。
「うん、彼女はそれゆえに命を狙われていたらしいのよ、そしてとある事故が原因で彼女はミッドチルダに飛ばされてきたんだ。」
「中々いい人だったよね、リンディやクライド君とすぐ仲良くなっていたし…でも、あの事件のあと、忽然と姿を消しちゃったんだ…。」
「「あの事件?」」
シンとユーノはいつのまにかグレアム達の話に聞き入っていた。
「うん、あの事件は…闇の書が原因で引き起こされたんだ。」

 

11年前、クロノの父でありリンディの夫クライドはグレアムと共に、艦隊を率いて闇の書を護送していた、だがその途中闇の書は暴走してしまいクライドはクルーを全員避難させた後、闇の書に取り込まれた戦艦と共に他の戦艦の砲撃に飲み込まれたのだという。

 

「クロノ…だからあんなに張り切っていたのか…。」
「………。」
グレアム達の話を聞いて、シンとユーノは黙り込んでしまう。
「その直後だったかな…彼女が姿を消したのは…。」
「一生懸命協力してくれたんだよ、こんなものまで作って…。」
アリアはポケットから一枚のフロッピーを取り出す。
「なんですかこれ?」
「これはね、闇の書…いや、夜天の書の修正プログラムだよ。」
「夜天の書?」
「闇の書の本当の名前だよ、その子が調べてくれたんだ、それを使えば闇の書の暴走を抑えられるはずなんだけど…闇の書の防御プログラムが邪魔で使えなかったんだ、もっとも、防衛プログラムを避ける方法なんて今のところないし、なにより特殊なロックがかかっているからこれは使えないんだけどね。」
「ふーん…。」
シンとユーノはそのフロッピーをまじまじと見つめる。
「あの…有難う御座いました提督、アリアさん、ロッテさん。」
「おかげで色んな事が解りました。」
「いや…いいさ、君達はクロノの大切な友人だからね。」
「それじゃ、私達はこれで。」
「ばいばーい!また味見させてねー。」
そしてグレアム達はその場から去っていった。
「彼らのおかげで色々な事が解ったね。」
「けど…もうロッテさんのほうは会うのはごめんだ…顔がベタベタする…。」
『フェイトさんがみたら卒倒しますね。』
「なんで?」
「はあ…なんで君はそんなにもにぶいのかな。」

 

「お父様…。」
「ああ、計画に多少のイレギュラーは付き物だ、だが私達は立ち止まれない、たとえ…多くの人に罵られようとも。」

 

次の日、放課後の聖祥小学校。
シンは誰も居ない屋上でベンチに仰向けに寝転がっていた。
「まさかここでコーディネイターの話を聞くなんて…。」
シンは昨日のグレアム達の話を思い出し、空を見上げながら深く溜め息をつく。
どこまでも続く青空、12月の肌寒い風がシンの体に当たる。
「問題が山積みだな…。」
呟いたその時、
「シン。」
突然ひょっこりと、シンの視界に何者かの顔が入る。
「うわあ!?なんだフェイトか…脅かすなよ。」
「なんかその反応傷付くな…隣座ってもいい?」
シンは黙って身を起こし、少しスペースを空けてベンチに座る。フェイトはその空いているところに座った。
「探したよ、いったいここでなにしてたの?」
「ん…何でもないよ。」
シンは適当にはぐらかしたが、
「シンは嘘を付くのが下手だね。」
いつぞやみたくすぐ見破られてしまった。
「昨日無限書庫に行ったみたいだけど…ユーノが心配してたよ。シンの様子がおかしいって。」
「……。」
「ねえ、前から聞きたかったんだけど…。」
フェイトは前からシンに聞きたかったことがあったのだ。
「シンって…コーディネイターなの?」
そのコーディネイターという言葉の意味を、フェイトは知っておかなければならない気がした。
「……誰から聞いた?」
「プレシア母さんがちょっと呟いていたのを聞いて…。」
「そっか。」
「コーディネイターって何?よかったら…教えて欲しいな。」
シンはしばらく考え込む。そして意を決して口を開く。
「コーディネイターは遺伝子を調節した人のことを言うのは知ってる?」
「コズミックイラで使われている技術だってリンディさんが言ってた。」
「うん…俺もそのコーディネイターだよ。」
「そうなんだ…でもどうして黙ってたの?」
とたんに、シンの顔が悲しそうに歪む。
「みんなに…嫌われたくなかったからかな…。」
「嫌う?私達はそんな事しないよ。」
「……これはさ、俺の世界での話しなんだけど…。」

 

俺の世界ってさ、おおまかに言えばコーディネイターと普通の人、俺らは“ナチュラル”って呼んでいるんだけど、その二つの人種が暮らしているんだ。

 

うん。

 

お父さんが言うには、ナチュラルの人ってなんでもかんでも簡単にこなしちゃうコーディネイターが嫌いなんだって。

 

…え?

 

それが原因でテロとかが起こって沢山のコーディネイターが死んだし…おれ自身も結構ナ
チュラルの子達に『空の化け物』って言われてたんだ。

 

………。

 

それで…ここで暮らしてみてやっぱり自分は普通の子と違うんだなって実感したんだ、そ
れでもしここでも同じ事が起きたらどうしようって思ったんだ。

 

シン………。

 

「やっぱり…なんにも努力していない奴が魔法をひょいひょい使ったら…怖いよな。」
「!」
フェイトはシンと会って間もない頃、自分が数年掛けて会得した魔法を数日で難なく体得したシンに、少なからず自分たちは彼に恐れて距離を置いていたのを思い出した。
(シン…!あの時の私とアルフの会話…聞いていたんだ…!)
あの直後に自分達はジュエルシードの怪物に襲われて、シンに助け出されてわだかまりは消えたが、彼にはその事が今でも心の中に残っていたのだ。
「ごめんね…私ったらシンを傷つけてたんだね、でも…。」
フェイトはシンの手をやさしく握る。
「アルフもなのはもクロノもユーノも…シンのこと大切な友達だと思ってるよ、勿論私も。生まれ方なんて関係ないよ。」
「フェイト…。」
シンはフェイトの優しく包まれるような眼差しに見つめられ、顔を赤らめる。
「……やっぱり俺ここに来てよかった、だってこんな大切な友達が出来るんだもん。ありがとう。」
普通とは違う自分を、フェイトは受け入れてくれる、シンはそれがうれしくてたまらなかった。
「で、でも私はシンの友達より、こ、こいび……。」
フェイトが何か言いかけていたその時だった。
『シン君!フェイトちゃん!聞こえる!?』
突然エイミィから通信が入る。
「どうしたんですかエイミィさん?」
『闇の書の守護騎士が見つかったんだよ!いまなのはちゃん達に向かってもらっているから、二人も早く来て!』
「は、はい!」
(あいつら…こっちの目が届かないところでやれって言ったのに…。)
返事の後、シンはエイミィとの通信を切った。
「よし、いこうかフェイト!」
「うん………。」
(せっかく勇気を振り絞ったのに~!)
心の中で悔しがっているフェイトの手をとり、シンは急いで本部のあるハラオウン家に走っていった。

 

その道中での事
(なあ、デスティニー…。)
シンは自分の相棒に話しかける。
(なんでしょう?)
(ヴィータ達も…俺達みたいに大切な人を守りたくって戦っているんだよな。)
(はい。)
シンは迷っていた、自分は大切な人達を守るために戦っているが、それは彼女達もおなじなのだ。
『私達はそれでもやらなきゃいけないんだよ!じゃないと…はやてが死んじゃうんだよ!』
あの時のヴィータの叫びが、シンの心に突き刺さる。
(俺達は一体…何と戦えばいいんだ……。)
(主、今は目の前の事に集中しましょう。考えるのは後にしましょう。)
(…わかったよ。)
そしてシンとフェイトはハラオウン家に到着する。