起動魔導士ガンダムR_02話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:04:10

シンの初の実戦から数日たったある日のこと
「ただいまー。」
買出しを終えたシンは遠見市のとある高層ビルにあるアジトにもどってきた。だが、
「あれ……?だれもいないのかな………?」
いつもはアジトにいるフェイトとアルフの声がしない、だがでかけたわけではないようだ。
「フェイトの部屋かな…?最近のフェイト具合が悪そうだから寝ているのかも。」
シンは台所に荷物を置きフェイトの寝室に向かう、すると
「……?なんか話をしている?」
ドア越しにフェイトとアルフの話声がした。
『わたしはフェイトが心配なの!広域探査魔法はすごく体力使うのに…、フェイトってばろくに休まないし食べないしその傷だって軽くはないんだよ!』
(なんか言い争ってる…?)
『平気だよ。私強いから、母さんを待たせたくないし…』
『フェイト……。』
『それに…シンを早く家族のもとに帰してあげたいから…』
(フェイト…。)
シンはドアにもたれ掛かり、ディスティニーに話しかける。
(ディスティニー、俺ってもしかしてフェイトに負担かけてるのかな…?)
(いえ、むしろフェイトさんが頑張りすぎなんでしょ、優しい御方ですし…。)
(でもなぁ…。)
(そんなに心配ならこの前のようにしっかり守ってあげましょうよ、私もがんばりますから。)
(……ありがとう、ディスティニー。)
シンとディスティニーが話をしてる間、寝室では…
『わかったよ、とりあえず怪我の治療をさせてよ。』
『うん…わかった。』
『ほら上着脱いで、薬ぬれないよ。』
そんなこととは露知らずシンは
(……とにかく入ろ、あ、こんな暗い顔してたら心配するか、笑顔笑顔っと。)
そして扉を開け、
「ただいまー!」
元気良く挨拶。だが
「「………。」」
そこにはアルフに背中の傷に薬を塗ってもらうため上半身裸のフェイトがいた。
凍りつく空気。そして、
「きゃあああああああああ!!!」
「なに見てんだアンタはぁああああ!!!」
大爆発(シンが二人に吹き飛ばされたことによって。)

 

数時間後、とあるビルの屋上、そこに三人はジュエルシード捜索のためきていたのだが、
「……。」
場の空気は重かった、ちなみにシンは先程の大爆発(アルフによる)でぼろぼろだった。
『このラッキースケベ』
「なんだと!」
「うう…、もうお嫁にいけない…。」
真っ赤な顔のフェイト。
「だ…大丈夫だよ!俺が責任とるから!!」
シンは漫画とかでよくみるセリフをそのまま言った。
「え!!それてプププロロロロポポポ」
ボンッッ!!
「うわっ!?フェイトの頭が爆発した!?」
『許容範囲を超えたか……。』
「アンタにうちのフェイトはやらないよ!!」
そしてアルフは狼形態になって広域探査の魔法をかける。
「……はあ~。」
しばらくして溜め息をつくシン。
「シン…?どうかしたの……?」
フェイトはなんとか立ち直りシンの顔を心配そうに覗き込む。
「いや…こんな調子でやっていけるのかなって思っちゃって…、結局俺、フェイトに迷惑かけてるよな……。」
シンはうつむいてしまう。
「そっ…そんなことないよ!」
慌ててシンを励ますフェイト。
「シンが来てくれて本当に助かってるよ!迷惑なんかじゃないよ!」
「そ…そうか?」
「それにあの時だってシンが来てくれなかったら…。」
フェイトは助け出された時にされたお姫様抱っこや、頭を撫でられた時に見たシンの優しい笑顔を思い出し、また顔を赤くする。
「あれ…?フェイト、また顔が赤くなってるぞ?」
今度はシンがフェイトの顔を覗き込む、二人の顔の距離は近い。
「ふひゃ!!?なんでもないよ!」
『二人とも!』
そこにアルフから連絡が入る。
『ジュエルシードの反応だ!近いよ!』
「う…うんわかった、行くよバルディッシュ!」
「こっちもいくぞ!ディスティニー」
とりあえず二人はジュエルシードに集中することにした。

 

ジュエルシードの反応を追って夜の繁華街にやってきた三人、
「結界が張られている…フェイト、この感じ…。」
「うん…、あの子も来ている…。」
「あの子って?」
「私達と同じようにジュエルシードを集めている子がいるんだ。今…近くに来ている…。」
ジュエルシードを目視で確認できるところまで来た三人。
「いくよ、バルディッシュ。ジュエルシード封印!!」
ジュエルシードに向けバルディッシュから黄色く細長い光が放たれる、だが、
「あの光は!?」
反対方向から桜色の光が放たれるぶつかり合う光と光。
「封印できなかった!?」
ジュエルシードはそのままだった。
「やっぱりアイツか…。」
「フェイトちゃん!」
桜色の光がきた方角から白い服を着た少女が飛来する。
「あの子がさっき言ってた子?」
「ああ、名前は…アレ?」
「そういえば聞いてなかったね。」
「知らないのかよ。!?」
「なのはだよ。」
白い服を着た少女が名乗る。
「この前は自己紹介できなかったけど、私高町なのは、私立聖祥大附属小学校三年生!」
次々と自分の事を話すなのは、だがフェイトは何も応えずバルディッシュを構える。
「おい!?フェイト!?」
「シンはジュエルシードをお願い、私達は急がなきゃいけないんだ。」
「わ…わかったよ。」
ジュエルシードに向かうシン、だが突然シンは何も無いところでころんでしまう。
「うわあっ!……なんだよこの輪っかは!?」
「バインド…!?アイツの使い魔か!」
シンの体に複数の光の輪が巻きつき、動きが封じられてしまう。
「待ってな、それをかけた術者を探してくる。」
そう言って何処かへ去っていくアルフ。
「私はあの子と…。」
なのはの方へ飛んで行くフェイト
「くそっ!はずれろよ!」
地面でじたばたともがくシン、だがバインドが外れることはなかった。

 

「フェイトちゃん!」
上空で対峙するフェイトとなのは。
「話し合うだけじゃなにも伝わらないって言ってたけど、言葉にしなきゃきっと伝わらないこともあるよ、奪い合ったり、競い合ったりするのは、それは仕方の無い事かもしれないけど。だけど!」
なのはは必死に訴えかける。
「なにもわからないままぶつかり合うのは私、嫌だ!私がジュエルシードを集めているのはユーノ君のお手伝いのため!でも今は自分の意思でジュエルシードを集めている、自分の周りの人達に危険が降りかかるのがいやだから!」
一呼吸おいて
「これが私の理由!フェイトちゃんは!?」
なのはの言葉で迷いが生じるフェイト。
「私は…。」
「フェイト!答えなくていい!!」
二人の会話にユーノを追いかけていたアルフが横槍を入れる。
「私達の最優先事項はジュエルシードの鹵獲だよ!優しくしてくれる人達のところでぬくぬく暮らしているガキンチョになんか、何も答えなくていい!!」
フェイトはその言葉に答えるようにバルディッシュを構える、そんな彼女を、なのはは悲しそうに見つめていた。
「…ごめんなさい。」
そういってフェイトはジュエルシードへ向かう。
「やらせない!!」
後からなのはも追う。そしてなのはのレイジングハートとバルディッシュがジュエルシードの上で交差し、ヒビが入る。
「「!?」」
次の瞬間、ジュエルシードから放出された魔力の光が辺りに広がった。
「きゃあああああ~!」
「くっ……!」

 

「なんだよこの光…!?フェイト…!」
このままじゃフェイトが危ない、だが自分は動けずなにも出来ない、そんな歯痒さがシンをイラつかせる。
「こんなことで…オレはー!」
その時、シンの頭の中に種が割れるイメージが浮かんだ…。

 

光が晴れ、二人は数十メートルジュエルシードから距離を置く。
「ごめんね…バルディッシュ…もどって。」
フェイトはバルディッシュをしまう。
「ジュエルシードを…!」
フェイトはジュエルシードのもとへ飛びつき、両手でそれを包み込む。
「フェイト!!」
「!!」
指の隙間から大量の光が漏れだす、ジュエルシードは暴走しかかっていた。
「止まれ…!!」
だが光は収まらない。
「フェイト!無茶だよ!」
アルフの声が辺りに響く。
「止まって…!」
それでも光は収まらない、フェイトは膝を着いてしまう。
「止まれ…!止まれ…!止まれ…!止まれ…!」
グローブが裂け、血しぶきが飛ぶ。
「くっ…!」
このままじゃフェイトの体が持たない、そう思いアルフが駆け寄ろうとしたその時、横に凄まじいスピードで何かが通り過ぎた。
「いまのは…シン…!?」

 

「フェイト!大丈夫か!?」
「シン…?その目…!?」
フェイトの目の前にはバインドで縛られていたはずのシンがいた、彼は傷だらけのフェイトの手を自分の手で包み込む。そして、
「止まれーーーーー!!!」
力の限りさけぶ、するとジュエルシードは徐々に光を弱め、沈黙した。
「や…やった…。」
息を切らしながらフェイトのほうを見るシン、だが
「う…。」
「シ…シン…。」
二人とも力を使い果たし倒れてしまう。
「フェイト!シン!」
アルフは二人の下に駆け寄り、なのはを一瞥したあと二人を抱えその場から撤退していった。

 

「なのは!大丈夫!?」
一人その場に残ったなのはのもとに一匹の喋るフェレットが近づいてくる。
「私は大丈夫だよ、それよりもレイジングハートが…。」
「これぐらいなら自己修復機能で明日には治っているはずだよ。」
「そう…よかった…、でもあの男の子、一体なんだったの?」
なのははフェイト達と一緒にいた見知らぬ男の子のことを思い出していた。
「さあ…?でも油断しないほうがいい、さっきの力…、暴走したらかなり危険なものになる。」
「でも…悪い子には見えなかったな、シン君って言ってたっけ…。」
なのはは夜空を見上げ、
(あの子のお話も…聞いてみたいな。)
そう思うのだった。