起動魔導士ガンダムR_03話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:04:50

なのはとの戦闘があった次の日、
「か…体が…、」
前日の戦闘の消費が激しく、シンはずっとソファーで横になっていた。ちなみにフェイトとアルフはプレシアの元へ報告にいっておりアジトにはシンとディスティニーしかいなかった。
「でも昨日のやつすごかったなー、頭の中で種が割れたーとか思ったら急に力が沸いたんだもんなー。そんな機能も付いてるんだな、お前。」
『えっ?私は知りませんよ?主がもともと持ってる能力なんじゃ…』
「へ……?まいっか、これでフェイト達の力になれるぞー。」
『そのためにはまず慣れなければなりませんね。使う度にへばってたら宝の持ち腐れですから。』
「うん…そうだな…。」

 

数時間後。
「やっと本調子になってきた、そろそろフェイト達帰ってくる頃かなー?」
すると玄関から物音がした。
「あっ!帰ってきた!」
玄関のほうへ駆けるシン
「おかえり……!?」
そこには全身傷だらけでアルフに支えられているフェイトの姿があった。
「ど…どうしたの!?敵に襲われたの!?」
「シン…今はフェイトを休ませるのが先だよ。訳はその後話すから…。」
「う…うん……。」
アルフはフェイトを寝室に運んでゆく、シンはその光景をただ呆然と見つめていた。

 

「プレシアさんに…!?」
シンは居間でアルフの話を聞いていた。
「ああ…そうだよ、あの女ジュエルシードの集まりが悪いって言ってフェイトに……、あの子は…フェイトは頑張っているのに…!!」
アルフは悔しさと怒りが入り混じったような顔をしてシンに先程の出来事を話した。
「それなのにあの子は…自分は大丈夫だって…あんなに辛そうなのに…私もう嫌だよ…フェイトがあんな目に遭うのは…。」
目には涙が流れている。
「アルフ。」
二人は声がした方を向く、そこにはひどく疲れた様子のフェイトが壁に寄りかかって立っていた。
「フェイト!!まだ寝ていなきゃ…!」
フェイトのもとに駆け寄り体を支えるアルフ。
「私は大丈夫だよ…。」
力なく答えるフェイト。
「ごめんねアルフ…私達は精神がリンクしているから…私はもう悲しまないよ。」
「…!私は…ただフェイトに幸せになって欲しいんだよ…それなのに…何で判ってくれないんだ…!!」
その場でアルフは泣き崩れてしまう。
「ごめんね…ごめんね…アルフ…。」
ただひたすら、フェイトは謝り続けた。
シンは黙ってその場を離れ、別室に移動する、そこで黙って壁に拳を何度も叩きつけた。
『主…顔が鬼みたいになってますよ。』
ディスティニーの問いかけに、シンは何も答えなかった。

 

次の日の夕刻、三人はビルの屋上でジュエルシードの探索を行っていた。
「フェイト…。」
「うん。目覚める子がいる…、いこうか。」
そして三人は飛び立っていった。
飛んでいる最中の事、
「シン。」
フェイトは昨日から口数が少ないシンに話しかける。
「なんだよ。」
「シン…どうしたの?もしかして怒ってる?私は大丈夫だよ、だから…。」
「解っているよ、無茶はしない。」
「そう…?」
そしてフェイトはシンより少し前方にでた。その彼女の後姿を見てシンは、
(大丈夫な訳無いだろ…このバカ…)
そう思うのだった。

 

「この結界…またアイツらか!!」
ジュエルシードの反応がした海鳴臨海公園にやってきた三人、そこにはジュエルシードにとりこまれた樹木の怪物と戦っているなのはとユーノの姿があった。
「苦戦しているみたいだね…。」
すると怪物はフェイト達に気付いたのか、こちらにも攻撃を仕掛けてきた。
「さっさと終わらせよう…フラッシュエッジ!」
放たれたフラッシュエッジは怪物の根を深く切りつけた。
「あれはフェイトちゃん達…、レイジングハート!もっと高く飛んで!」
フェイト達に気付いたなのはは隙をみつけ、上空に高く飛びレイジングハートを構える。
「フェイト!今だ!!」
「うん、アーク……」
バルディッシュを構えるフェイト
「ディバイン…」
なのはも唱える。
「セイバー!!」
「バスター!!」
金色の刃と桜色の光線が同時に放たれ、怪物は断末魔と共に消滅した。怪物がいた所には、ジュエルシードがぽつんと浮かんでいた。
「フェイト…。」
「シンは手を出さないで…。」
そういってフェイトは飛び、なのはと対峙した。
「フェイトちゃん…私がただの甘ったれた子供じゃないってことを…証明してみせる!」
構えるなのは。
「フェイト…。」
「シン、私は大丈夫、大丈夫だから…。」
そしてフェイトも構える。
そして両者は猛スピードで突撃していく、振り上げたデバイスがぶつかりそうになるその刹那。
「「!?」」
見知らぬ少年が二人の間に入りデバイスを受け止めていた。

 

「ここでの戦闘は危険すぎる、時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか。」
三人は地上に降りる。
「まずは二人とも武器を下ろすんだ、このまま戦闘行為を続けるなら……!?」
そのときクロノめがけて炎の魔法の矢が飛来し爆煙が巻き起こる。
「アルフ!?なんで!?」
「訳は後で話すよ!それよりもフェイト!」
アルフの声に呼応して、フェイトはジュエルシードに手を伸ばす、だが突如爆煙から青い魔法の矢が放たれ、フェイトに命中する。
「きゃあ!」
「「フェイト!!」」
落下するフェイトをアルフが受け止め、シンは二人に駆け寄る。
「フェイトは!?」
「大丈夫、気絶してるだけだよ。」
そして魔法が放たれた方を睨むシンその先にはデバイスを構えたクロノが立っていた。
「アルフ、フェイトを連れて先に行け…。」
「シン!?アンタ…。」
「大丈夫、絶対もどってくるから…。」
アルフの瞳をじっと見つめるシン。
「…わかったよ。でも無茶はするんじゃないよ…。」
アルフはフェイトを抱え飛び去っていった。
「させるか!」
クロノは二人を追いかけようとする。だが、
「何!?」
シンのビームライフルによる牽制で進路を妨げられてしまう。クロノはシンを睨みつける。
「君は何をしたのか解っているのか!?これはれっきとした犯罪…」
「うるさいっ!!」
「!?」
クロノの警告を一蹴するシン。
「あいつは…フェイトはただお母さんのためにやっているのに…どうしてどいつもこいつも邪魔ばっかりすんだ…もしこれ以上あいつを傷つけるなら…。」
次の瞬間、シンの右手からビームライフルが消え、かわりに背丈よりも長い大剣が現れる。
「オレが薙ぎ払ってやる!!すべてを!!」

 

その時シンの頭の中に種が割れるイメージが現れ、シンの瞳は光を失う。そして、
「なっ!?早い!?」
一瞬でクロノの後ろに回りこみ、大剣を振り下ろす。
「く!」
自分のデバイスで大剣を受け止めるクロノ。シンは右手に大剣をもったまま左手でクロノの襟を掴み。
「なっ…!?」
一本背負いの如くクロノを地面に叩きつける。
「ぐっ…!」
大の字になって倒れるクロノ、シンは大剣を逆手に持ちクロノの喉目がけて突き刺そうとする。
「まずい!バインド!」
あわててユーノはシンの両手にバインドを掛ける。その隙にクロノはその場から離れる。
「なのは!今だ!」
「う…うん、ディバイン…」
レイジングハートの先端に光が収束される。
「バスター!!」
放たれた桜色の光はシンを丸々飲み込んだ。
「す…すまない、助かった…。」
「いいんですよ…それよりもシン君生きてるかな?思わず全力でやっちゃったけど…。」
そして煙が晴れると、そこには四つんばいになったボロボロのシンがいた。
「くそっ…!!こんなことで俺は…。」
シンはそのまま意識を失い、その場で倒れてしまう。
二人と一匹は倒れたシンに駆け寄る。
「とにかくアースラに運ぼう、君たちも来てくれるか?」
「あ…はい…。」
クロノに運ばれていくシンを見てなのはは、
(シン君のあの眼…なんだったんだろう…すごく怖かった…)
先程のシンの戦いを思い出していた。

 

そのころアジトで目を覚ましたフェイトは、
「シンが…連れて行かれた!?」
「う…うん。ごめんよ…。」
すぐさま部屋を出ようとするフェイト、だがアルフに止められてしまう。
「無茶だよ!フェイト怪我してるし相手が管理局じゃ…。」
「でも…でも…!」
「とにかく今はゆっくり休もう、考えるのはそれからだ。」
「…わかったよ、ごめんアルフ…。」
そしてフェイトは心の中で、
(シンのバカ…嘘つき…無茶しないっていったのに…)
目に涙を浮かべ、そう思うのだった。