魔動戦記ガンダムRF_02話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:46:18

7年前…第97管理外世界「地球」の軌道上に待機していた巡洋艦「アースラ」は、地上から転送されてくる“あるもの”を待っていた。
「コアの転送、来ます。転送されながら生体部品を修復中、凄い早さです!」
「アルカンシェル、バレル展開!」
アースラの前に三つの環状の魔方陣が展開され、中央に青白い光が集束していく。
「ファイアリングロックシステム、オープン!」
リンディの声に反応し、リンディの目の前に鍵穴が着いた球体を立方体で囲んだものが現れる。
「命中確認後、反応前に安全距離まで待避します、準備を!」
転送されながら、禍々しい姿で再生していく闇の書の闇。
それが到達直前まで来る、リンディはアルカンシェルの鍵を鍵穴へと差し込んだ。
立方体が赤く染まり、発射準備が完了し、その瞬間闇の書の闇が軌道上に到着、アルカンシェルの射線上に現れた。
「アルカンシェル!発射!!」
リンディは鍵を回し、引き金を引くと魔力でレンズ状の物体が生成され、それを通して青白い魔力が撃ち出される。
闇の書の闇に着弾し、一定時間を経過すると、発生した空間歪曲と反応消滅で闇の書の闇が消えていき、巨大な爆発が起こった。
爆発が集束していき、映像から闇の書の闇の姿が消えた。
「効果空間内の物体、完全消滅!再生反応、ありません!」
「うん。準警戒態勢を維持。もう暫く、反応空域を観測します。」
リンディの言葉と共に、クルー達は安堵した…。

 

「甘いですよね、反応が消えたからって、この世から無くなった訳ではないのに…。」
数分後、アースラがいた世界とは違う世界に転移した闇の書の闇のコアは、とある研究所にある巨大な透明なカプセルの中に入れられていた。
「ご苦労だったね、さすがは“Gユニゾンデバイス”、私の助手だ。」
「いえいえ、奴らに気付かれないようにコレを回収するのは苦労しましたよ。」
メガネの少年はキーボードを打ちながら金髪オールバックの黒いサングラスの男に答えた。
「あとは…これをどう兵器に転用するかだ、彼女等のお陰でこれからは管理局の眼を気にせず研究ができる。」
「この情報をくれた管理局の方々に感謝ですね。お金を払えばいくらでも情報を提供してくれるなんて。」
「奴らは腐りきっている、アースラのような正しき者達も無能しかいない、だから我々はすべてを変えなくてはならないのだよ。」
「はい…“マスター”」

 

そして7年後、闇の書の闇は、コズミックイラのオーブに放たれる…。

 

「アアアアアアァァァァァァ………。」
『う、うわぁ!なんだこいつは!』
『こちらの攻撃が通らないぞ!』
突如現れた闇の書の闇に、オーブ、ザフト、連合の軍人達は恐れ慄いていた。そこに、
「うおぉぉぉ!!!」
空から現れたソードインパルスが襲いかかる触手を一気に薙ぎ払った。
「今のうちに撤退しろ!こいつに取り込まれたらエライことになるぞ!」
『ザフトの新型…!?すまない!』
そう言ってムラサメ隊はモビルアーマー形態になってその場から離脱する。
「くっそ!なんでこんなもの…!このままじゃ…!」
その時、闇の書の闇の触手が地面に着いていたインパルスの足に絡みつく。
「ええい鬱陶しい!!」
インパルスはそれをエクスリカバーで薙ぎ払った。
「もっと大きな火力があれば…!でも…!」
その時、どこからかインパルスへ通信回線が開かれる。
「?なんだこれ、あそこから…!?」
インパルスのパイロットは通信が来た方角を見て、目を見開いて驚いた。
「フリーダム…!?」
『インパルスのパイロット!聞こえますか!!』
コックピットのモニターにフリーダムからの通信映像が開かれる、そこには蒼いパイロットスーツに身を纏った青年が映し出されていた。
「なんの用ですか…!?今は話をしている暇なんて…!」
『シン!シンなのか!?』
その時、フリーダムの通信映像にしゃべる紺色の子犬が映し出された。
「………!?ザフィーラ!!?ザフィーラなのか!?」
『ああ!やっぱりシンなのか!!こんなところで会うとは!!』
「そ、そんなところでなにやってんだよ!もしかしてアレを追いかけて来たのか!?」
『話せば長くなってしまうが…。』
その時、フリーダムとインパルスに向かって数本の触手が襲い掛って来た。
「アアアアアアァァァァァァ………。」
『『キラ!!』』
そこにムラサメとピンク色のモビルスーツ…エールストライクルージュがビームライフルを放ち、触手を破壊した。
『アスラン!カガリ!』
『余所見をするなキラ!』
『く…兵達が…!オーブが…!』
ルージュのパイロット…カガリは眼下に広がる自国の惨状に苦い顔をしていた。
「アスハ……!?ザフィーラお前!なんでそいつらと一緒なんだよ!」
『い、いや、命を救ってもらったんだが…。』
「はあ!?一体なにがあったんだよ!いや、今はそれどころじゃないな。」
シンはキラ達と共にそこから一旦離れた。
『とにかく…闇の書の闇でしたっけ?あれをどうにかしないと…。』
『だが俺達の攻撃が通らない以上、どうする事もできないぞ。』
『くそ…!なんでこんなことに…!!』
「なあザフィーラ、こっちに来ているのはお前だけか?」
『いや…あとシャマルがいる…。』
「シャマルが…!?なるほど…。」
シンはしばらく腕を組んで考え込み、そして顔を上げた。
「おい、アスハ代表。」
『な、なんだ…?』
「俺に考えがある、うまくいけばあれを倒すことができるぞ。」

 

シンはたった今思いついた作戦をカガリ達に話した。
『シン…本当に今の作戦、うまくいくのか?』
「心配すんなザフィーラ、ここにはフェイトもアルフもなのはもクロノもはやてもヴィータもシグナムもいないけど…変わりにMSがある、コズミックイラをなめんなよ~?」
『だ、だが彼等が協力してくれるかどうか…。』
カガリはシンの提案した作戦に不安を感じていた。
そんな彼女に、シンは少し苛立った声で怒鳴る。
「おいおい…!!奇麗事はアスハのお家芸だな!!そうやってアンタは『戦いたくな~い』
て言って二年前のように国を焼くのかよ!」
『お前!!カガ…代表になんてことを!!』
アスランはムラサメの手でインパルスの肩を掴むが、払われてしまう。
「俺は戦う…!俺の大切な物を傷つける奴がいるなら、腕折られようが全身から血を噴きだそうが戦い続ける!そうだろザフィーラ!」
『……。』
ザフィーラはかつて自分達が主の為に罪を犯してまでも戦い続けたことを思い出していた。
『アスハ…俺からも頼む…アレは元々は我等の一部、こうなったのも我々に責任があるのだ、だから…。』
『……わかった!』
カガリはシンとザフィーラの言葉に心打たれ、闇の書の闇と闘っているMSに号令を出した。

 

「ダガーは下がってランチャーストライカーを着けろだと?」
連合軍の司令部があるオーブ沖のイージス艦、そこで連合軍の指揮官達はカガリからの指示を受けていた。
『ああ、我々が撤退の援護をする、その間にあるだけのランチャーをダガーに装着してくれ、装備が足りなかったらモルゲンレーテの物も貸し出す。』
「………それであの化け物が倒せるのですか?」
『あの化け物を倒したことがある奴が言っているのだ、試す価値はある。』
「…了解した。」

 

数分後、換装を終えたランチャーダガー隊は隊列を組んで闇の書の闇に狙いを定めていた。
『まだだ!まだ引きつけろ!オーブ軍が化け物の目を引きつけてくれている!』
上空ではムラサメが闇の書の闇を牽制し、囮となっていた。
『よし今だ!!1番から20番!!一斉掃射!!!』
司令官の号令で一斉にランチャーダガーの砲撃装備…アグニから一斉にビーム砲が放たれ、複数のビーム砲は闇の書の闇の一層目のシールドにヒビを入れた。
「アアアアアアァァァァァァ………。」
『まだだ!もっと焼くんだ!』
司令官の指示通りビーム砲を当て続けるダガー隊、そしてついに一層目のシールドがガラスが割れるように破壊された。
『や、やった!』
『次は我々だ!化け物め…我々の国で好きにはさせない!』
次にオーブのゲイツやM1アストレイ、ザフトのゲイツが一斉に闇の書の闇へ砲撃を開始する。
「アアアアアアァァァァァァ………。」
『よし!効いている!』
『もっとだ!銃身が焼きつくまで撃ち続けろ!』
そして全軍の奮闘もあってか、二層目のシールドも音を立てて崩れていった。
『やったぞ!あとは…!』
『任せたぞ!アークエンジェル!』

 

その時海岸方面から、白い戦艦…アークエンジェルが現れた。
「ラミアス艦長!ローエングリン一番二番、発射準備整ったぞ!」
「いつでもいけますわ。ラミアス艦長。」
「解りました…!」
そしてアークエンジェルの前方に装着されている主砲…ローエングリンが展開し、闇の書の闇に狙いを定めた。
「目標!闇の書防衛プログラム!ローエングリン一番二番!て――!!!」
マリュ-の号令と共にローエングリンから二対のビームの主砲が放たれ、闇の書の闇の三層目のシールドを粉々に砕き、そのまま本体に直撃した。
「いよっし!」
「や、やった…。」
「あとはキラ達にお任せしましょう。」

 

「シールドはこれで全部壊した、あとは…。」
すると闇の書の闇はローエングリンで損失した部分を生々しく生体部品で覆っていく。
『こ、これは気色悪いね…。』
『本当にこれはこの世のものなのか…!?』
『だらしないぞキラ!アスラン!あとはコアが露出するまで攻撃を加えればいいのだな!』
「そうだ……!?」
その時闇の書の闇から一斉に触手が放たれ、シン達のMSに襲いかかった。

 

「やらせん!でえええい!!!」
その時、上空に浮いていたザフィーラ(人型)は鋼の軛を闇の書の闇へ放ち、触手の動きを光の剣を突き刺すことにより動きを止めた。
「アアアアアアァァァァァァ………。」
「盾の守護獣ザフィーラ!例え世界は違えど、友の為ならこの身が引き裂かれようとも皆を守ってみせる!!!」

 

『す、すごいザフィーラさん…。』
『というか…人間だったんだ…。』
「ボーっとしてないで俺達はアレのコアを掘り出しますよ!ちょうどあいつ等も来たみたいだし…。」
すると彼方から、モノアイのザフト製MS…白いザクファントムと赤いザクウォーリアが砲撃用装備「ガナ-ウィザード」を付けて飛来した。
『シンおまたせー…ってなによあれ!!?気持ち悪!!』
『お前の指示通りガナ-を付けたぞ、それにしてもなんだあれは…?』
「ルナ!レイ!ちょうどいいとこに来たな!これから俺達であれを攻撃する。話はここを切り抜けられたらだ!」
『…わかった。』
『うわっ!あそこ!人が宙に浮いてるわ!!犬耳も付いてる!!』
騒ぐルナを無視してシンはキラ達に視線を移す。
「アンタ等もいいよな。」
『こっちは問題ない。』
『私もだ。皆の健闘を祈る!』
『よし……みんな行くよ!!』
そして六機のMSは散開し、それぞれ攻撃を開始した。

 

『ルナ、行くぞ。』
『オッケー!まかせて頂戴!』
二機のザクは長距離砲「オルトロス」からビーム砲を放ち、闇の書の闇の本体を薙ぎ払う。
「アアアアアアァァァァァァ………。」
『カガリ!俺達も行くぞ!』
『わかった!』
アスランのムラサメとカガリのストライクルージュも闇の書の闇に攻撃を加える。
『くっ…!エールの火力では…!』
その時、彼方から一機の戦闘機がルージュに向けて飛来した。
『カガリ!IWSPを持ってきたぞ!』
『スカイグラスパー…キサカか!助かる!』
カガリはルージュからエールパックを外し、スカイグラスパーから射出されたIWSPを装着する。
『よ~っし!いっけー!!!』
カガリはガトリング砲とビーム砲を駆使して闇の書の闇に攻撃を加える。

 

『この世界で……好きにはさせない!』
フリーダムは空高く舞い上がり、闇の書の闇のちょうど真上に陣取り、背中の羽を砲撃モードに展開した。
そしてコックピットの中から特殊なレーダーが現れ、闇の書の闇の各部分をロックオンする。
『当たれぇー!!!!!!』
そしてフリーダムから5つのビーム砲が放たれ、ビームの雨となって闇の書の闇に直撃する。
(すごいな…これがこの世界の“力”なのか…。)
ザフィーラはMSの戦いぶりを見て感心の声を上げる。
(ああ、たとえ魔法が使えなくったって…俺は大切な物を守る。)
シンはソードインパルスのエクスリカバーを闇の書の闇の中心部分に突き立てる。
その瞬間、触手が一気にソードインパルスに絡み付いた。
「インパルスの体が欲しいか…ならくれてやるよ!」
その瞬間インパルスは四つに分離し、シンの乗るコアスプレンダーのみその場から離脱した。そして残ったパーツは触手に潰され爆発を起こす。
「よし…メイリン!レッグフライヤー、チェストフライヤー、あとブラストシルエットを射出してくれ!!」
『りょ…了解!』
そして彼方から三機の小型戦闘機…レッグフライヤー、チェストフライヤー、ブラストシルエットが飛来する。
コアスプレンダーはそれらと次々合体し、最後にブラストシルエットが合体したとたんインパルスの胸のカラーリングが緑と黒になり、ブラストインパルスになった。
「よし…これでー!!!」
ブラストインパルスは腰に装備した長距離ビーム砲ケルベロスを闇の書の闇に向けて放った。

 

『我々もカガリ様に続けー!』
オーブ軍らも残ったエネルギーを使って闇の書の闇に攻撃を加える。
「アアアアアアァァァァァァ………。」
全軍の怒涛の総攻撃に悲鳴を上げる闇の書の闇。

 

『シャマルさん!!そっちはどうですか!?』
アークエンジェルの甲板の上でシャマルは借りた通信機を片手で持ち耳に当てながら、もう片方の手で“旅の鏡”を発動し、闇の書の闇のコアを探していた。
「マリュ-さん、もうちょっとです、もうちょっと……!!!」
そしてシャマルは、七年前と同じ魔力反応を探しあてた。
「捕まえ…たぁ―――!!!!!!」
シャマルは闇の書の闇のコアを掴み、海の方角へコアを転送させた。
(あの座標でいいのよね!?ザフィーラ!)
(ああ、あとはシン達がなんとかしてくれる。)

 

『グラディス艦長!!今そっちにコアが行きました!!後はよろしくお願いします!』
「シンが指定した座標にエネルギー反応を確認しました…。」
「ほ、本当に来ましたよ艦長!」
「黙りなさいアーサー!……ミネルバは浮上します。」
海上に待機していたザフトの新鋭艦「ミネルバ」はコアが転送された位置に向けて主砲を展開する。
「ターンホイザー起動、目標、闇の書の闇のコア!てー!!!!!」
そしてミネルバから主砲が放たれ、その赤い光はコアを飲み込み、闇の書の闇を完全にこの世から消し去った。
「やっ…たんでしょうか…?」
「一応反応は消えましたけど…。」
「警戒は怠らないで、今はなにが起こっても不思議じゃないわ。」

 

『今ミネルバから通信が入った、コアの反応は消え去ったそうだ。』
レイからの言葉を受け、シンやキラ達は安堵の表情を浮かべる。
『さてシン、今の化け物なんだったの?アンタ倒したことあるって言ってたけど…ていうかあの犬耳の男なに?ドバーって光ってる矢を出したんだけど…。』
ルナの質問攻めを、シンは軽くいなした。
「まあまあ皆、話は…。」
その瞬間、シンは何もない空間にインパルスの頭部に装備されたバルカンを放った。
『あんた、なにして…!?』
そのとき、何も無い筈の空間を通ろうとした銃弾が、何かに弾かれたように逸れていった。
「そこにいんだろ!?出て来いよ!!」
するとその空間から白髪のエメラルドグリーンの瞳の少年が緑色の輪を展開しながら現れた。
『今のは…ミラージュコロイド!?』
「いや…!魔法だ!」

 

『さすがですね、まさか僕達の存在に感づいていたなんて…。』
すると黒いローブを着た仮面の少年が白髪の少年の後ろから出てきた。
『ありがとう“スターゲイザー”、さすがは“あのお方の助手だね。』
『いえいえ。』
『なんなんだ君達は!?まさかあの化け物を放ったのは…。』
『そう、僕達“時の方舟”ですよ。』
キラの問いに仮面の少年が答えた。
『何故こんな事をする!?お前達の目的はなんなんだ!?』
『自分で考えようとしないんですか?回りの状況に流されやすいタイプですね貴方は。』
『……!!!』
仮面の少年の挑発にカッとなるアスラン。だがそんな彼をカガリが制止する。
『落ちつけよアスラン、ここは彼等に任せよう。』
『くっ…!』

 

「その仮面見覚えがある…!我々を罠にはめた男だな…!」
ザフィーラは歯ぎしりしながら少年達を睨みつけた。
『あーあ、だから俺はこいつらも捕まえたほうがいいって思ったのに…見事に墓穴掘ってるよ。』
「議長達を人質に取ったのもお前達か…。」
『うん、ついでにユニウスセブンを消したのもね。』
『『『『『!!!!!?』』』』』
キラ達は仮面の少年の言葉に驚くが、シンとザフィーラは予想していたのか反応無しだった。
「主を…!皆をどうしたのだ!?」
『大丈夫、殺してはいませんよ、殺してはね。』
「「……!!」」
シンとザフィーラは咄嗟に殺気を放ちながら身構えた。
『おお怖…!まあ危害は加えてませんよ、彼女達は色々使い道がありますから、それよりも…。』
その時各機のMSのモニターや戦艦のモニターなどに、仮面の少年と同じデザインの仮面を付けた男が映し出された。
「これは…。」
『僕達の首領の演説を聞いてください。』

 

『えー、コズミックイラの皆さんこんにちは、我々は“時の方舟”、遥か彼方の世界からやってきた魔法使いです。』
その男は機械で加工された声でオーブ全域に演説を始めた。
『なんだこの男は…!?』
『僕等の首領って言ったじゃん、脳味噌筋肉でできてるの?』
『カチ~ン!!!!!』
カガリは仮面の少年の言葉にカチンとし、ガトリング砲を放とうとしたが、アスランに止められた。
『お、落ち着いてくれカガリ!!』
『は~な~せ~アスラン!!こいつだけはー!!』
ショートコントしてるアスカガを放置しながら演説は続く。
『突然このような事をして大変申し訳ございません、今あの化け物を放ったのも、貴方達の世界のお偉いさん達を誘拐したのも、そしてユニウスセブンをとある場所に移動させたのも、全部我々の仕業です。』

 

「なんだこいつ…ふざけているのか!?」
「どこから発せられている!?場所は特定できんのか!?」
「だ、駄目です!どの計器にも反応しません!!」

 

『高官達は我々の手中にあります。返して欲しくばこの世界にあるすべてのMS、MAを我々に献上してください。』

 

「な…なんだと!?」
「無茶苦茶だ!そんなことできる訳…!」

 

『期間と場所は追って報告します。もし拒否するなら…一人一人生身で宇宙空間にポイしますんで。それじゃまた。』

 

通信が切れ、辺りに微妙な空気が流れた。
『はっはっは!さすが僕達のマスターだよ。』
『あーあ、もっと捻ればいいのに……めんどくさがってんな。』
笑い転げるメガネの少年とは対照的に、仮面の少年は恥ずかしそうに俯いていた。
「…………ふざけてんのか?」
シン達は仮面の少年達に尋常じゃないほどの殺気を放ちながら身構えた。
『ふざけて……いますね、少なくとも僕達の首領はこの世界に対して本気でふざけようとしています。世界規模の愉快犯ですね。』
そう言うと少年達は魔方陣を展開し、何処かへ去ろうとしていた。
『また逢いましょう、今度はもっと楽しませてくださいよ。』
「ちょっとまて!!」
その時、どこかへ去ろうとしていた少年達をシンが引きとめた。
『なんですか…さっさと帰りたいんですけど。』
「最後に…これだけは答えてくれ。」
シンは神妙な面持ちで仮面の少年に質問した。
「お前は…お前達はプレシアさんとどういう関係だ?」
『!………………。』
(ふうん、彼中々鋭いかな。)
少年達は何も言わず、その場から姿を消した。

 

『彼等は一体…。』
その時、ミネルバからカガリのほうへ通信が入る。
『アスハ代表、できればそちらにお伺いして今後の事について話し合いたいのですが…。』
『わかった、ザフトの司令官達はあとでオーブ中央司令部に来てくれ、連合軍と共に今後を話し合おう。』
『了解しました。』
『そこのザフトのMS達もいっしょに来てくれ、特にインパルスのパイロット、お前には色々聞きたいことがある。』
「………わかりました、乗れよザフィーラ。」
「あ、ああ…。」
シンはインパルスのコックピットハッチを開け、ザフィーラを中に入れた。
「…シン、大きくなったな。」
「たりめーだろ、もう7年も経っているんだから……なにがあったかは後で聞くよ。」
「うむ…。」
『ねえシン。』
そこにルナとレイから通信が入った。
「なんだよルナ。」
『その人…一体だれ?随分親しいみたいだけど…。』
「ザフィーラか?こいつは…昔の友達だよ。」
すると今度はザフィーラの方からシンに質問してきた。
「シン、彼等は…?というかお前、なんでこれに乗っている?」
「ああ、こいつらは…。」
シンは何ともないといった感じで質問に答えた。
「今の…俺の友達だ、だって俺、今はザフト軍の赤服エリートだからな。」

 

同時刻、第97管理外世界、喫茶店「翠屋」
ここに高町一家を始め、なのは達の家族や友人達が深刻な面持ちで集まっていた。
「…リンディさんの話では、なのは達の行方はいまだにわからないそうだ…。」
翠屋の店主、高町士郎はとても悲しそうな表情でその場にいた者達に先ほどのリンディからの報告を伝えた。
「なのはちゃん…!フェイトちゃん…!はやてちゃん…!」
「すずか…泣くんじゃないわよ、まだ何もわからないじゃない。」
「そーですよ!あの方達はすごく強いじゃないですか!きっと大丈夫ですよ!」
「気をお確かに…お嬢様。」
涙ぐむすずかをアリサとファリンとノエルは強気に励ます。

 

「パパ、ママ…なのはおばちゃん大丈夫なの?」
「ああ、心配ないよ雫。」
「ほらこっちおいで、なにも心配する事ないのよ。」
連絡を受けて外国から帰って来た高町家の長男、恭也とその妻忍、そして4歳になる娘の雫も、不安を紛らわすように家族で戯れていた。
「管理局は調査を続けているのですか?」
「ええ…なのは達は高ランク魔導士、もしなにかあって管理局の仇なす存在になったら大変だからって…。」
バニングス家の執事である鮫島の問いに、高町家の長女美由希が答える。
「ふむ…まあリンディさんからの連絡を待つしかない。」
「みんな、お腹減ってるでしょう?何か作ってあげるわ。」
「わ~い、おばあちゃんのケーキ大好き~。」
『私モンブランで。』
「はいはーい…って」
気がついたらカウンター席に黒い仮面を付けた男が座っていた。
「だっ誰!?」
「どこから入ってきたの!?」
「今日は休業って札立てたはずですけど?」
『うーん、いいリアクション。』
士郎、恭也、美由希はどっから出したのか、日本刀をその男に向けた。
『おーこわこわ、さすがは御神流といったとこですか。』
「僕等の流派なんてどうでもいいんですよ、貴方何者です?すごい殺気なんですけど?」
『う~ん、実はですね…。』
「ママー!!」
突然雫の叫び声が聞こえ、一同は声がした方を向く。
「「雫!!」」
「「雫様!!」」
そこには赤と水色と深緑の仮面を付けた少年達が、雫を掴み上げていた。
『動かないでくださいよ、我等は子供なんて殺したくないんですから。』
「雫を話して!!さもなくばこの泡だて器…貴方達のおしりに突っ込んでスイッチいれるわよ!?」
士郎の妻桃子はそういいながら、高速回転する泡だて器を仮面の男に向けた。
『まあまあ、せっかく娘さんに会わせてあげるんですから、ちょっとは落ち着いてください。』
「!?貴方がなのはちゃん達を!?」
「みんな無事なの!?」
『ええ無事ですよ、そして貴方達の態度によっては、返してあげてもいい。』
「………なにが望みだ?」
士郎は凄味のある声で仮面の男に質問する。
『私はね…この世界に興味があるんですよ、管理外世界であるにも関わらずここには面白い“技術”が眠っている。そうでしょう?“夜の一族”の月村忍さん?あ、いまは、高町忍さんでしたね。』
「………!?」
「夜の…一族?」
仮面の男は立ち上がると、何も無い空間から大きな扉を出現させる。
『エール、ソード、ランチャー。君達はこの方々を我がアジトへお連れしろ、我が助手達がデュランダル議長達を連れてきているだろうから丁重にな。』
『『『はっ』』』
『あーそうそう、そこの執事さん、あなたはここに残って管理局の方々にこのメモをわたしてくれないですか?』
そう言って仮面の男は鮫島に一枚の紙切れを渡した。
「お嬢様…。」
「この人の言うとおりにして。」
「…かしこまりました。」

 

そして忍と鮫島を除く全員は仮面の少年達に連れられて、扉の向こうに行ってしまった。
「さて……私になんの用なんですか?」
『いえ、なんてことはない。“遺失学”に精通する貴方に、少し聞きたいことがありまして…。』
そう言って仮面の男は懐から一枚のロボットらしき設計図を取り出す。
「これ…!?」
『あの二体の自動人形を創り出した夜の一族の貴方ならこれがなにか解る筈…、私はこれのもう一枚のほう…“ガンダム”の設計図を探しています。持って…いますね?』
「………。」
忍は少し考え込み、そして口を開いた。
「いいわ…その代り、皆の安全は保障してよね。」

 

気が付くと私は、緑色の透明な液体の入った巨大なガラス張りのカプセルに一糸纏わぬ姿で入れられていた。
(私は…確かなのは達とあの研究所の調査をしていて…それで……!?)
辺りを見回すと、両隣でそれぞれなのはとはやてが同じようにカプセルに入れられていた。
(なのは!!はやて!!)
声を出そうにも出ないので念話を試みた、でも二人はうつろな瞳でまるで死んでいるかのようにカプセルの中を漂っていた。
(くっ!!)
私は目の前のガラスを叩いてみるがビクともしない。そのとき、私達のいる部屋に、金髪のサングラスを掛けた少女が入ってきた。
「無様よね、フェイト・テスタロッサ、高町なのは、八神はやて。」
(貴女は…誰!?私達をどうする気!?)
少女はフェイトを嘲笑うかのように口元に歪んだ笑みを浮かべる。
「貴女達は私達の手駒になるのよ、この子たちみたいに…。」
(……!!?)
その時私は初めて、その少女の後ろでシグナムとヴィータが診察台のようなものに磔にされているのに気が付いた。
「は、放せ!何をする気だ!?」
「くっそ!はやて!なのは!フェイトー!!」
「うるさい。」
少女はそう言って指をパチンと鳴らした、するとシグナム達が貼り付けられている診察台に電流が流れた。
「ぐわああああ!!!!!」
「うわああああ!!!!!」
ある程度電流を流され、シグナムとヴィータはぐったりしてしまった。
(シグナム!ヴィータ!)
「うふふ…。」
少女は笑いながらキチキチと蠢くムカデのような生物が二匹入ったカプセルを取り出した。
(な、何を…!?)
「さ、たんと召し上がれ♪」
少女はそう言ってヴィータの顎を持ち上げ、カプセルから出したムカデを彼女の口の中に入れた。
「む、むぐう!!!」
ヴィータは気色悪い生物が喉を通る事に嫌悪感を覚え必死に抵抗するが、ムカデはヴィータの口の中へズブズブと侵入していった。
「むぐううーーーー!!!!」
そしてヴィータは糸が切れたようにぐったりしたかと思うと、
「がああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
瞳が獣のように鋭くなり、今にも診察台を破壊せんとばかりに暴れ出した。
「いっちょあがり♪」
(ヴィータ!?どうしたのヴィータ!?)
「呼びかけても無駄、この子はただの破壊兵器になったわ、こっちの人もね。」
そう言って少女はシグナムの顎を持ち上げ、もう一匹のムカデをシグナムの口に入れた。
「むごおおお!!!!」
シグナムは必死に抵抗したが、
「があああ!!!ぐああああ!!!」
ヴィータと同じようにムカデに操られてしまった。
(シグナム…!)
「あはははは♪いい顔ねフェイト♪」
私は馬鹿にしたように笑う少女をキッと睨みつけた。
「おお怖い怖い。」
(貴女は何者なの!?何でこんな事を…!?)
すると少女の口元から笑みが消えた。
「なんでって……貴女の胸に聞いてみなさいよ。母さんを…死なせたくせに!!!!」
(かあ…さん?)
少女は掛けていたサングラスに手を掛けた。
「まだ私の事が解らない?なら…教えてあげるわ。」
そして少女はサングラスを取った。
(!!!!!!!!!!!!)
その少女の素顔は…私と同じだった、紅い瞳、金色の髪、私はまるで鏡を見ているような錯覚に囚われた。
「初めまして…じゃないわよね、なにせ一度7年前…時の庭園で会っているものね。」
(あ、貴女は…!!!)
そして私と同じ顔の少女は、高らかに自分の名を名乗った。
「私はアリシア・テスタロッサ!!貴女の…オリジナルよ!!」
(……!!!……!!!)
その瞬間、私は強烈な眠気に襲われ、辺りの景色がぼやけて見えた。
そして…そんな私にアリシアはこう言い放った。
「私は母さんを死なせた貴女達を許さない!!リンディ・ハラオウンを!クロノ・ハラオウンを!高町なのはを!シン・アスカを!そして…アンタを!だから愛しき人たちと殺し合わせて!!絶望の淵に追いやってから地獄に叩きこんでやる!!!ざまあみろ!!!あはははは!!!!あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!!!!!!!!!」
アリシアの歪んだ高笑いを聞きながら、私の意識は絶望に塗れながら深く闇に沈んで行った……。そして私は、完全に意識が途絶える間際、何故か昔出会ったあの大切な少年の名前を口にしていた。

 

「シ………ン………。」

 

私の心は、あの日母さんに否定された時のように、深い闇の中に沈んでいった。