魔動戦記ガンダムRF_03話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:46:55

闇の書の闇との激戦から数時間後、カガリは高官達を護衛に来ていたザフト軍の司令官と連合軍の司令官をオーブの会議室に集めていた。
「“時の方舟”から何か連絡は入ったか?」
「いえ…まだなにも…。」
「くそっ…!マスコミも同席させたせいで我等の失態が全世界に報じられてしまった!」
「これも貴国の失態ですぞ!?カガリ代表!!」
連合の士官達は一斉にカガリを責め立てる。
「今は責任の擦り付け合いより、大統領達をどう御救いするかのほうが重要だと思いますが…。」
「フンッ、解っておるわ…!」
連合の士官達はコーディネイターであるミネルバの艦長タリアが同席しているのが面白くないらしく、席でふんぞり返っていた。
「とにかく相手は未知の技術を使う者達だ…我々は国に戻って対策を練らなければならない。これで失礼するぞ。」
そう言って連合の士官達は会議室を出て行った。
「す、すまないタリア艦長、色々と…。」
「いえ、お気になさらず、戦争から二年経っているとはいえ、やはり我々とナチュラルの溝は簡単には埋まらないでしょう…。」
「ああ…それで貴方達ザフトはこれからどうするのだ?」
「議長まで攫われた今、本国も大混乱ですよ、指示があるまでここに滞在するつもりです。」
「ああ、それは助かる。ちょっと会ってもらいたい人がいるんだ。」
「…?」
そして会議室に、ピンクの髪の毛の少女が入ってきた。
「あ…あなたは!?」

 

その頃別室では、シンと彼の同僚であるレイとルナマリア、そしてミネルバの副艦長のアーサーが、艦長の帰りを待っていた。
「遅いわねー艦長。」
ルナは置いてあったコーヒーを飲みながらシンに話しかけた。
「そうだな…てかもうこんな時間じゃん、朝になっちまう…。」
「シン、そんなことよりも…お前はあの化け物と犬耳の男について何か知っているのか?」
「そーそー、なんか知り合いって感じだったし…。」
「よければ…私達に話してくれないか?」
三人の質問攻めに、シンは苦笑して答える。
「えーっと、話しても皆信じないだろうって思ってて話さなかったんだけど……もうそれどころじゃないな、実は…。」
その時、4人のいる部屋にシャマルとザフィーラ(人型)が入ってきた。
「シン君!!」
「シン!!」
「あ!!ザフィーラ!!シャマル!!…てうわっ!?」
シャマルはシンの姿を見るやいなや、彼に抱きついた。
「ホントにシン君だ~♪こんなにゴツゴツになって…7年前はあんなにふにふにだったのに…。」
「ば…馬鹿!!みんな見てんだぞ!?」
その光景を、レイとアーサーは茫然と見ていた。
「あの女は一体…?」
「小さい頃家の隣に住んでいたおねえさんとかじゃないか?」
「副長、なんですかその発想。」
「ちょ…ちょっとちょっとちょっとーー!!!」
その時、ルナマリアが二人の間に割って入り二人を引き剥がす。
「あ…貴女人前でなにやってんですか!?シンが困ってるでしょう!?」
「ル…ルナ?」
「あ、あらあら?シン君ったらしばらく会わないうちに彼女作ったの?ヴィータちゃんフェイトちゃんご愁傷様。」
「な…なにいってんですかーーー!!!!?」
「ルナが彼女?ははは!!無い無い。」
その瞬間、シンの尻にルナのミドルキックが炸裂した。
「いったーーーーなにすんだ!!?」
「うっさい!!」
「うーん、鈍いのは変わっていないのね…。」
「シン…ギャルゲじゃないんだから。」
「その例えはアレですよ副長。」
「シャマル…話がずれてるぞ。」
ザフィーラははしゃぐシャマルを諌めた。
「あ…ご、ごめ「「「犬がしゃべったーーー!!!!?」」」
「狼だ!!」
「お前も落ちつけよザフィーラ、ところでさっきはやてがどうのとか言ってたけど…なにかあったのか?」
「あ、そうだった!!大変なのシン君!!どうしよう~!!」
シャマルは再び、シンに抱きついた。
「またー!!いいかげんにしてください!!」

 

「なにを騒いでいるの貴方達は!!?」
その時6人のいる部屋に、タリア、カガリ、そしてキラとアスランとラクスが入ってきた。
「も、申し訳ございませ...。」
「う、うわ!?ラクス様!?なんでこんなとこにラクス・クラインが!?」
ルナはラクスの姿を見るや否や、驚きの声を上げる。」
「……!!!」
ラクスもルナ姿を見て目を見開いて驚く。
「…?ラクス、知り合いなのか?」
「え?いいえ!初めてお会いいたしますわ!」
アスランの質問に焦りながら答えるラクス。
「そーですよ!私なんかがラクス様と知り合いなわけないじゃないですか!で、でもなんでこんな所に…?二年前から行方不明だったのに…。」
「そ、それは…。」
キラとラクスはバツが悪そうに口ごもる。
「前大戦のあとこのオーブに隠匿していたそうよ。私も驚いたわ…。」
「……?ラクスさんとキラさんって何者なんです?」
シャマルは頭に?マークを浮かべながら二人を見る。
「ああ、シャマル達は知らないのか、このラクス・クラインは前の前の前ぐらいのプラントの議長の娘で…前大戦を終結させた人なんだ。あとザフィーラが乗っていたフリーダムも前大戦のエースが乗っていた機体なんだよ。」
「な、なんと…!」
ラクスとキラの正体を知り、シャマルとザフィーラは驚く。
「すみません…隠すつもりはなくて…。」
「い、いえ、いいんですよ、私達を救ってくれたのは事実です、そんなことで嫌いになったりしないです。」
「あ、そういえば…なんでお前らコズミックイラにいるんだ?さっき聞きそびれたけど…。」
「うむ…じつは…。」
ザフィーラはこれまでの事をシンとザフトの面々に説明した。
「フェイト達が…!?」
「うむ…それで我々は海に捨てられ、そこのヤマト達に命を救ってもらったのだ。」
「そうだったのか…あの、ありがとうございます。」
「え、いや、当たり前の事をしただけだよ。」
シンに素直にお礼を言われ、キラは顔を赤くする。
「か、艦長…。」
「ちょ、ちょっとまって、色々信じられないことが起こって頭が混乱してきたわ…。」
タリアは悩ましげに頭を抱えてしまった。そんな彼女を尻目に、レイはシンに問いかける。
「シン、お前は彼等とどういう関係なのだ?随分この二人と仲がいいみたいだが…。」
「ん?ああ簡単なことだよ、実は俺、誘拐されてザフィーラ達の世界に連れてこられた事があるんだ。それでそこで魔法を覚えさせられたんだよ。」
「「「「えええええ!!!!?」」」」
シンのサラッとした発言にタリア達ザフトの4人は驚く。
「まあ管理局の言いつけでここに戻ってきてからも魔法の事は秘密にしてなきゃいけなかったんだけどな。」
「なるほど…そうだったのか。」
タリア達は妙に納得しながら頷いた。

 

「それで艦長、我々はこれからどうするのです?」
「それなんだけどね…。」
するとラクスがタリア達の一歩前にでる。
「デュランダル議長が攫われた今、プラントには指導者がいらっしゃいません…そこでワタクシが議長代理として、オーブと共に軍の指揮を執ることになりました。」
「他の氏族達やプラントの議員達もこの同盟を承認してくれたんだ。」
「「ええええ!!!!?」」
「「………!!!!」」
ザフトの面々は今日何度目かの驚きの声を上げる。
「僕はオーブ軍として、アスランはザフト軍として“時の方舟”と闘うことになったんだ、だから…よろしくね。」
「………。」
だが、シンは不満そうな顔でキラ達の顔を睨みつけた。
「シ…シン君?」
「…艦長、俺はこの同盟反対です。」
「シン!?」
「こ、こら!代表の前でなんてことを…!」
「だってそうでしょう?アスラン・ザラっていえばパトリック・ザラの息子で一度我が軍を裏切っています。オーブは奇麗事だけでやっていること無茶苦茶だし、ラクス・クラインは自分の役目も果たさずこんなとこで恋人とのほほんとしていたんですよ。」
「シン!!」
タリアのட責にシンはプイっとそっぽを向く。そんな彼の態度についにアスランが怒る。
「君…!!理由もなく突っかかるというなら俺にも考えがあるぞ!?」
「……理由もなく…だと…!!!?」
シンは鬼のような形相でアスランを睨みつける。そのとき、

 

ゴンッ!!

 

ザフィーラがシンの脳天に拳骨をお見舞いした。
「いってー!!」
「お前…冷静になれ、いくらなんでも軍隊でそれはいかんだろ。」
だがシンはザフィーラの足に蹴りを喰らわせる。
「何も知らないくせに…!勝手なこと言うな!!あいつ等のせいでマユが...俺達がどうなったかも知らないで!!」
そう言ってシンは部屋から飛び出して行った。

 

「シン!!」
「ルナマリア、追いかけてやれ。」
「わかった!」
ルナはシンの後を追って部屋を出た。
「わ、私も…。」
「待てシャマル……レイとかいったな。」
「はい…なにか?」
「お前達はシンの友なのだろう?あいつのおかしな態度に何か心当たりはないのか?」
レイは暫く考えた後、口を開いた。
「貴方達は…シンがオーブで暮らしていたことは知っているでしょう?」
「え、ええ。」
「ですがシンは二年前、連合がオーブに攻め込まれた際、避難中にフリーダムの戦闘に巻き込まれて“家族”を失ってプラントに移住したと言っていました。」
「「「「…………!!!!」」」」
「なんだと!!?」
「嘘…!」
レイの言葉にその場にいた全員が言葉を失う。
「だからあいつは奇麗事ばかり言ってみすみすオーブに戦火を招いたアスハを強く憎んでいます。それに連なるものも同様に…。」
「「「「………。」」」」
キラ、アスラン、カガリ、ラクスは何も言えず、その場に立ちすくんでいた。その時、
「うっ…!ううっ…!」
突然シャマルが泣き出してしまった。
「シャマル…。」
「そんなのひどすぎる…!シン君、マユちゃんのこととても大切にしていたのに、死に別れたなんて…!」
そんなシャマルに、ラクスがハンカチを差し出す。そしてカガリは、絞り出すように呟いた。
「あの時はお父様だって必死に悩んで決断したのに…!」
「カガリ、あの時はそういう人も出てくると言って割り切ったじゃないか、そんなに気にする事…いつまでも悲しみに囚われちゃいけないんだ。そうじゃなきゃ人は前に進めない。」
アスランの励ましの言葉に、ザフィーラとシャマルが食いつく。
「………お前達はそれでいいかもしれない、でもシンはお前達とは育ちも考え方も違う、それで納得できるタマじゃあない。」
「そりゃあ、復讐心に囚われるのはよくないですけど…自分のしたことに目を背けるのもいけないですよ。」
「「「「…………。」」」」
二人の言葉は経験があったからこそ出てきたもの。そんな彼等の言葉を、キラ達は重く受け止めていた。
「お前達の言っていることは正しい。でもシンが間違っているわけじゃない、あいつは…悲しみを受け入れそれを糧にして強くなる、そんな奴だ。」
「貴方達は…自分の考えを『納得しろ』と言って他人に強要してないですか?」

 

キラ達はザフィーラとシャマルの言葉に何も言えなかった。
「あー…なんかしんみりしちゃいましたね艦長。」
「私達おいてけぼりね…話が終わったのなら彼と話してみたらどうです?」
「グラディス艦長…。」
「か、考えが違う人と話し合うのも大切だと思いますよ僕は。」
タリアとアーサーの勧めに、キラ達は深く頷いた。

 

一方、屋上に出たシンは一人夜風に当たっていた。
「…………。」
持っていたピンク色の携帯電話を開いて、その待ち受け画面をじっと見つめるシン、そこに、
「ここにいたんだ。探したわよ…。」
後を追ってきたルナがやってきた。
「ルナか…どうしたんだよ、こんなところで…。」
「そりゃこっちのセリフよ、代表達にあんなこと言って…降格どころの話じゃないわよ。」
「………ごめん。」
「私に謝ってどうすんの。」
「うん…。」
しばらく二人の間に気まずい空気が流れる。
「ね、ねえシン…。」
空気の重苦しさに耐えかねて、ルナが口を開いた。
「なんだよ。」
「あのシャマルさんって人、アンタとどういう関係?」
「は?」
ルナの言っていることが分からずシンは頭に?マークを浮かべた。
「いや、だからその…恋人とか?」
そしてその言葉で、盛大に噴出した。
「ぶっ…ははははははは!俺がシャマルと!?それはないない!!最後に会った時俺9歳だぞ!?」
「そ、そうなの?あははは…よかった。」
ルナは笑われているのに、何かに心底安心していた。
「それにしてもいいのかよ?艦長に俺を連れて来いって言われてんだろ?」
「まあね、でも…しばらく付き合うわよ。」
ルナはそう言ってシンの隣に移動した。
「二人っきりになるの…久し振りよね。」
「え?そうだったか?そういやそんな気が…ってお前、なんか顔赤くね?」
「そ、そんなことないわよ?」
その言葉とは裏腹に、彼女の心の中はこのようになっていた。
(すごくいい雰囲気…!これはもう言うしかないわね!!)
「シ、シン!あのね!私ね…!」

 

彼女が何か言おうとしたそのときだった。
「あ!ここにいた!!」
キラがザフィーラ(こいぬフォーム)を抱いてやってきた。
「ザフィーラ?それにアンタは…。」
「まったく、熱くなりやすいのは変わっていないな。」
「うるせーやい、ところで…ザフィーラ達も俺を連れ戻しにきたのか?」
「いや…。」
キラはザフィーラを地面に下ろすと、シンに向かって深々と頭を下げた。
「…?なんですか?いきなり…。」
「僕はあの時…2年前のあの日、オーブと連合の戦いの時、フリーダムに乗って闘っていたんだ。」
「!!!」
キラの告白に驚くシン。
「謝っても許されることじゃないのは解っているよ…、でもとにかく謝らせてくれ!」
キラはそのまま四つん這いになり、土下座の態勢になる。
「お、おい……!?」
「僕のせいで君の……家族の命を奪ってしまったんだ、許してくれなんて言えないよ…。」
「………?」
「ごめんなさい……!ごめんなさい……!ごめんなさい……!」
ついにキラは地面に額を擦りつけてしまった。
「ちょ…ちょっと!さっきから何やってんですか!?」
「何って…お前の妹がフリーダムの戦闘に巻き込まれて天に召されてしまったんだろう?だからこいつはこうやって…。」
「はぁ!?なに言ってんだお前!?なに人の妹勝手に殺してんだ!?」
「「はい?」」
今度はキラとザフィーラが気の抜けた声を上げて顔を上げる。
「確かに俺達家族はエライ目にあったし、マユも大ケガしたけど…今はみんなピンピンしてんぞ?」
「なにーー!!?」

 

そう言ってシンは先ほどの携帯電話の待ち受け画面を見せる。そこにはシンの両親と妹のマユらしき人物が両手でVサインをしていた。
「日付は…先週だね。」
「だ、だがお前、家族を失ったって…。」
「ああ、それは…。」
シンは制服のポケットからひび割れた赤いビー玉を取り出した。
「これは…デスティニーか。」
「こいつが俺達家族を守ってくれたんだ。でもこいつ無茶しすぎて壊れちゃったんだよ。俺にとっちゃ家族を失ったもんだ。」
「な…ならば何故あんなにアスハに突っかかったのだ!?」
「実は戦争の後、軍縮するとかでモルゲンレーテの職員だった俺の父さんがリストラされたんだよ…。おかげで俺達家族は一時期路頭をさまよう羽目になったんだ。」
「なるほど…たしかに無茶苦茶だ。」
「だから職を探してプラントに渡って、そこでザフトにスカウトされて俺は軍人になったんだよ。今は俺が職が無い父さんに代わって家族を養ってるようなもんだ。」
「苦労しているのだな…。」
「誰だよ、マユが死んだなんて言い出した奴…。」
ザフィーラはすぐに、シンが出て行ったあとに勘違いで盛り上がって泣き出したあの湖の騎士のバカっ面を思い出した。
「二人とも…スマン。」
今度はザフィーラが地面にべったりと腹をつけて土下寝の態勢になった。
「いや…いいんです、僕が彼の家族に迷惑を掛けたのは間違いないですから…。」
「別にもういいですよ、俺も言いすぎました…デスティニーはシャマルなら直せるだろうし、憎しみで周りが見えなくなって、命を失った人を俺は知っていますから、もう何も言いませんよ。」
「君は…。」
キラは目の前にいる自分より年下の少年がとても大きく見えていた。
「強いんだね、君は…。」
「“君”じゃないです。俺はシン・アスカ、友達や仲間になるときは…名前を呼ぶんですよ。」
「わかったよシン、僕は…キラ・ヤマトだよ。」
「これからもよろしく、キラさん。」
二人は上って来た朝日をバックに、固い握手を交わした。
「うむ、一見落着か……。」
そしてザフィーラはその場を黙って去ろうとしたそのとき、思わず立ちすくんでしまった。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

彼の目の前にはすっかり存在を忘れられて鬼の形相のルナがいた。
(な、なんだこの威圧感…!いや!殺気か!)
「ワタシノコトワスレテンジャネエヨコノヤロウ…!テイウカイイフンイキノトキニジャマスンナヤ…!」
「目がこれでもかというぐらい殺意で濁っている…!おい!二人とも…!」
一方、シンとキラは…。
「あ、シン!朝日が昇って来たよ!」
「ホントだ…フェイト、絶対助けてやるからな…!まってろよ!」
「僕も手伝うよ、これまで迷惑を掛けた償いをさせてほしいんだ。」
「キラさん…ありがとうございます!」
「ところでフェイトって誰?」
ルナの状態に気付かずまだ青春ごっこしていた。
「フェイトッテダレヤネン、フェイトッテダレヤネン…!」
「………誰か助けてくれ。」
ザフィーラの助けを求める声は、誰にも届かなかった。

 

同時刻、南米フォルタレザ市街地
そこに立つ一軒のビルの屋上で、“時の方舟”に所属する仮面の少年はある人物と待ち合わせていた。
「…来たか。」
そこに、深く帽子を被った20歳程の銀髪の青年がやってきた。
「初めまして、我等の贈り物、見てもらえましたか?」
「………。」
青年は何も言わず、数枚の写真を仮面の少年の足元に投げ捨てた、そこにはカプセルの中に入ったはやて達や、体をバインドで縛られたアリサやすずか達が映し出されていた。
「単刀直入に言います。彼等の無事を確保したいのなら、我々の仲間になってもらえますか?スウェン・カル・バヤン。」
「………こいつらを人質にしてまで俺を仲間にしたいのか、俺にそんな価値はないと思うが…。」
「貴方は自分の価値がわかっていない、貴方は“候補者”なんです。そしてキラ・ヤマトやアスラン・ザラに対抗できるポテンシャルをナチュラルの貴方は持っています。我々は貴方が必要なんです。」
「チッ……。」
スウェンは不満そうに、帽子を取り仮面の少年を睨みつける。
「俺の…俺達の答えは…。」
「コレッス!!」
その瞬間、上空から仮面の少年目がけてビームの嵐が襲いかかった。
「……!?」
仮面の少年はすんでのところでそれをかわした。
「あんたら…俺の話聞いてた?」
仮面の少年の口調が威圧的なものに変わった。
「ああ、聞いていたよ、そしてこれが俺の答えだ、俺がこの世界を裏切ってお前等についたら、俺は星を目指すことができない。」
「人質がどうなってもいいのかよ?」
「皆は…はやては強い、お前達のような仮面を付けなきゃ他人と話せない奴らになんかに負けたりはしない。」
「………フン。」
仮面の男はつまらなそうに鼻を鳴らし、その場から消え去った。
「アニキ、どうします?」
するとスウェンの元に、ビームを放った体長30センチ程の色黒の少年がピュンと飛んできた。
「………シャムス達に連絡を入れるぞ、“時の方舟”の居場所を探してもらおう。」
「オイラ達はどうするんスか?」
「現地に向かって現場検証だ、うまくいけばオーブやザフトから情報が聞き出せるかも…。」
「わっかりました!!早速準備に取り掛かるッス!」
色黒の少年はビッと敬礼すると、どこかへ飛び去ってしまった。
その場に残ったスウェンは一人、近くにあった鉄製の取っ手に拳を打ち付けた。
「すまないはやて…皆…絶対助けてやるから…!」
スウェンは血が滲む拳を強く握り締めながら、悔しそうに歯ぎしりしていた。

 

今ここに三人の“機動戦士”が囚われの魔法使いを救出するため、オーブに集結しようとしていた。