魔動戦記ガンダムRF_01話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:45:25

ある“種”の名を冠する物語

 

昔々ある世界に、遺伝子を調整して自身の能力を高めた「コーディネイター」と、そうでない者「ナチュラル」が暮らす世界がありました。
ナチュラルは自分たちより能力の高いコーディネイターを妬み、逆にコーディネイター達は自分達より能力の劣るナチュラルを見下していました。

 

ある時ナチュラル達はコーディネイターがたくさん住むコロニー「ユニウス・セブン」に核爆弾を打ち込み、沢山の人を殺してしまいました。
コーディネイターは仕返しとばかりに、地球に「ニュートロンジャマー」を打ち込み、地上のエネルギーを奪い取って沢山の人を死なせました。
度重なる殺し合いで、ついにナチュラルとコーディネイターは戦争を始めてしまいました。

 

戦争はさらに沢山の命を奪っていきました。
あるものは敵である者に呪いの言葉を掛けながら体に無数の銃弾を浴びて、
あるものは大切な人の名を叫びながら爆弾で体を吹き飛ばされ、
あるものは何も言えず、何も考えられずに体を光の剣に貫かれ蒸発し、
あるものは戦争の道具として心を失った人形にされてしまいました。

 

やがて…自分を生み出した世界に復讐しようとしたある男の“神意”により、世界は滅びようとしていました。
ですがその時、彼方から“明日(未来)”を望む“自由の翼”“正義の剣”“暁の獅子”“永遠の歌姫”とその仲間達が現れ、激戦の末その男の野望を打ち破り、世界を一時の平和に導きました。

 

そして…。

 

C,E73.8月、オーブの海岸沿いにある孤児院、そこに栗毛の青年と、桃色の長いウエーブのかかった髪をした少女が、孤児院の子供たちと遊んでいた。
「キラー、キラー。」
「ラクスー、絵本読んでー。」
「はいはい、ちょっと待ってね。」
「今日はどんなお話をしましょう…。」
子供達は少年と少女…キラとラクスの事をとても慕っており、今日も二人の周りに集まっていた。そこに、
「キラ~!いる~?」
少し紫の掛った黒髪の中年の女性が二人に話しかけてきた。
「どうしたの?母さん?」
「どうしたのじゃないわよ、アスラン君とカガリちゃんが来てるわよ。」
すると、彼女の後ろに黒髪の少年…アスランと、金髪の少女…カガリがやってきた。」
「あー!アスランとカガリだー!」
「遊んで遊んでー!」
子供達はすぐさまアスランとカガリに駆け寄った。
「ははは、わかったわかった。」
「こら、服を引っ張るな…。」
「アスラン、カガリ、もう仕事は終わったの?」
「ああ…私達がすべきことは今のところ終わっている、あとは明日を待つだけだ。今は休憩時間だ。」
「そうですの…ちょうど今から海岸をお散歩しようと思ってましたの、アスランとカガリさんもいかがです?」
「そうだな…じゃあごいっしょさせてもらおうか。」

 

そしてキラ達四人は子供達を連れて海岸へ散歩に出かけた。
「夕飯までには帰ってくるのよー。」
四人を見送ったキラの母カリダは、一人自室に戻り、飾ってあった写真立てを見る。その中には栗毛と金髪の赤ちゃんを抱いた優しそうな栗毛の女性が映し出されていた。
(ヴィア姉さん…キラとカガリちゃんは立派に育っています。大変な事もあったけど…私はもうちょっとだけ、彼等を見守って行こうと思います。だから…天国で見守っててください…。)
カリダは写真立てを持ちながら、遠くへ行ってしまった姉を思っていた。

 

「あー、カニさんだー。」
「かわいいねー。」
「こら、あんまり遠くに行っちゃだめだぞ。」
海岸を歩くキラ達は、無邪気に遊ぶ子供達を見守りながらあることについて語り合っていた。
「いよいよ明日だっけ?世界合同会議…。」
「ああ、プラントのデュランダル議長もいらっしゃる、イザーク達ジュール隊や、新鋭艦のミネルバもこのオーブにやってくるんだ。」
「イザークにディアッカか、あいつらも偉くなったな…ディアッカは降格されたらしいが…。」
「時間があればお会いすることもできるでしょうか…。」
「どうだろうな、あいつらも忙しいしな…何より俺は『ザフトに戻って来い!』って言われるだろうが…。」
「ははは、そうだね…。」
「連合のほうも政府の高官や、各界のお偉いさんが来るそうだ、やっぱりみんな…あんな事があったらナチュラルやらコーディネイターって言っている場合じゃないからな。」
「うん…。」
そう言ってキラは空を見上げる、その先にはかつてユニウスセブンが浮かんでいた位置だった、だが先日の怪奇現象で影も形も残さず消え去ってしまったのだ。
「いったい誰がこんなことを…。」

 

「………。」
「ラクスお姉ちゃん、顔が怖いよ?お腹痛いの?」
ふと、子供達のうちの一人が、様子のおかしいラクスの顔を覗き込む。
「あ…なんでもございませんわ。ねえピンクちゃん♪」
『らくす、ゲンキ、ゲンキ。』
ラクスのお供のペットロボ、ピンクハロはそう言いながら彼女の周りをピョンピョン飛び回った。
「なあラクス…前から聞きたかったんだが、俺が誕生日にあげたソイツになんか改良を加えたか?」
「えっ!?そ、そんなことありませんわよ!」
「そうか…?なんかインプットした覚えのない言葉まで喋っている気が…。」
「あ、あんまり細かいこと気にしているとさらにハゲますわよ。」
「そうだよアスラン。これ以上侵攻したら数年以内にウナトさんみたいになっちゃうよ。」
「お前等!人をもう禿げているみたいに言うな!!」
「二人とも…アスランをこれ以上責めないでくれ、こいつも夜な夜な毛生え薬を…」
「カガリー!?」
どっとあたりに笑いが起こる。
(ふう…危なかったですわ…。)
「そういえばウナトさんで思い出したけど、今回の世界合同会議の提案をだしたの…あの人なんだよね。」
「うん…『この非常時、人類一丸となって立ち向かうべきだ。』とな…あんな熱い彼を見たのは初めてだ、ユウナも見習ってくれれば…。」
「コープランド大統領も地球圏の統一を目指しているお方です。だからウナト様の提案を受け入れてくれたのでしょう。」
「これを機に、ナチュラルとコーディネイターの溝が少しでも埋まればいいんだが…。」

 

とその時、キラ達より前を歩いていた子供達は、砂浜に打ち上げられていたあるものを見つける。
「あれー?こんなところでお昼寝してる人がいるー。」
「ワンちゃんもいっしょー、びちゃびちゃだー、風邪引くよー?」
「「「「えっ!?」」」」
キラ達は慌てて子供達の方に駆け寄る。そこには黄緑色のローブのような服を着た金髪の女性の襟首をくわえたまま気絶した大型の狼が倒れていた。
「ちょ、ちょっと大丈夫ですか!?」
「脈はある、とにかく病院へ…。」
キラ達は女性と狼の息を確かめる、すると狼が少量の水を吐き、目を開いてキラ達の方を見た。
「か…噛みついたりしないよね、このワンちゃん。」
子供達は一斉にキラ達の後ろに隠れる。と、その時、

 

「ここは…どこだ?」

 

狼の方から声が聞こえた。
「今のアスラン?」
「いや…カガリじゃないか?」
「バカ言え!私にこんな低い声だせるか!」
「え、それじゃあ今の声は…。」
「………。」
ラクスを除き、キラ達は錆びた鉄のようにギギギと首を動かし狼に視線を向ける。
「うわ~!このワンちゃん喋った~!」
「犬ではない、守護獣だ。」
「「「犬がしゃべった~!!?」」」
キラとアスランとカガリは、ひっくり返りそうになるくらい驚いた。
「なぜ驚く…?ここはミッドでは…?」
「ここはオーブですわよ、守護獣さん。」
「オーブ…!?」
ラクスの言葉に目を見開いて驚く狼。すると、
「がはっ!げほぁ!」
倒れていた金髪の女性が、口から海水と小魚を吐き出して目を覚ました。
「こっちのお姉ちゃんも気が付いた~。」
「こ、ここは……あ!!」
金髪の女性は何かを思い立ったように立ち上がり、海の方へ歩みをすすめた。
「ど、どこいくんですか!?」
「そっちは海ですわよ!」
「お、落ち着けシャマル!」
狼は女性の服を咥えて引き留める。
「離してザフィーラ!早くはやてちゃん達を助けに行かないと…!
「人の話を聞け!ここではどうする事も出来ん!ここは…オーブなんだ!」
「え…!?」
狼…ザフィーラの言葉を聞いて、女性…シャマルは動きを止める。
「オ、オーブ!?なんで私達コズミックイラにいるの!?」
「俺が知るか!」
そしてシャマルはへたり込む。
「そんな…それじゃ私たち、どうしたら…どうしたら…。」
シャマルは目に涙を浮かべ、泣き出してしまった。
「……とりあえず僕達の屋敷に来ませんか?ずぶ濡れじゃ風邪ひきますよ。」
「……わかった、恩に着る。」
「うっ…うっ…!」
そしてキラ達は、ザフィーラとシャマルを連れて屋敷へと戻って行った…。

 

屋敷に着いたとたん、シャマルは糸が切れたように眠ってしまい、寝室に連れていかれた。
「ぐっすり眠ってしまったよ、そうとう疲れていたんだねえ。」
「ありがとうございますバルトフェルトさん、マリュ-さん。」
キラは倒れたシャマルを運ぶのを手伝ってくれた屋敷の住人であるバルトフェルトとマリュ-に礼を言う。
「いいのよ別に…ところでその…この犬は…?」
「犬ではない、守護じゅえ」
「ワンちゃんびろーん!」
「きゃはは、変な顔~!」
ザフィーラの言葉は子供達に頬を引っ張られたことにより中断した。
「こらっ!向こうに行ってなさい!」
「「「は~い」」」
マリュ-の言葉で部屋を出ていく子供たち。
「す、すいません、ええっと、ザフィーラさん?」
「ああ、なんだ?」
「貴方はその…なんで喋れるんですか?」
「それは…。」
ザフィーラは少しためらうように俯いてしまった。
「よければなにがあったか私たちにお話いただけませんか?私達はどんなお話だろうと決して笑ったりはいたしません。」
「………わかった、どうせ我々だけでは何もできないしな。」
そしてザフィーラはぽつりぽつりと語り始めた…。

 

俺達は数多なる世界の危険を管理するミッドチルダという世界にある『時空管理局』に所属する魔導士だ。
「“マドウシ”ってなんだ?」
「カガリさん…話は最後まで聞きましょうよ。」

 

魔導士とは、魔力の源、“リンカーコア”を所有する、いわば選ばれた魔法使いである。

 

「答えてくれた…。」
「お茶目ですねザフィーラさん。」
「話長くなるかい?なんならコーヒー淹れてくるけど?」
「あ、私砂糖三つで。」

 

コホン、そして我々は主はやてとその友と共にとある任務に就いていた、あの任務は…我々にとって特別なものだった…。

 

新暦72年、とある管理外世界にある古びた研究所、そこに管理局に所属する魔導士高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、そしてヴォルケンリッターはとある調査のためやってきた。

 

(シャマル、そっちはどうや?)
「ええ、今のところ順調に目的地に近付いています。」
(そうか、なら引き続き捜査を続けてえな。)
「わかりましたー♪」
念話を切るとシャマル達ヴォルケンリッターは研究所の奥に歩を進めた。
「別ルートの主達も問題なさそうだな。」
「でも久し振りだよなー、アタシ達が揃って任務に就くなんて…、まあリイン姉妹は別の任務でいないけど…。」
ヴィータはぶんぶんとアイゼンを振り回しながらシグナムに話しかける。
「情報を得たリンディ提督が手を回してくれたらしいからな、なにせ今回の件は…我々にしかできない。」
そしてヴォルケンリッターは大きな電源の入っていない転送装置が置かれている研究室にやってきた。
「これか…!コズミックイラに繋がる転移装置は!」
「やっぱりここはプレシア・テスタロッサの研究所なのね…。」

 

一方、別ルートで研究所を探索していたなのは、フェイト、はやても、目的地に着いていた。
「シャマル達も目的のもの見つけたそうや。」
「こっちもだよね、フェイトちゃん…。」
「うん…。」
三人の眼前には、空になった人一人入れそうなカプセルがいくつも並んでいた。
「プロジェクトFの研究…ここで行われてたんやな。」
「………。」
フェイトはカプセルの一つに近づく、そこには「エリオ・モンディアル」という名前が記されていた。
「エリオ君を攫って研究していた組織を一つ一つ潰して…ようやく辿り着いたね。」
「フェイトちゃん…大丈夫か?ウチ…なんて言ったらいいかわからん…。」
昔の事を思い出して少し暗い雰囲気のフェイトを、なのはとはやては気を遣う。
「私は…平気だよ、でもこれでわかるんだね、なんでプレシア母さんがシンを巻き込んだのか…。」
その時、なのはは床に落ちていた書類を拾い上げた。
「なんだろ、コレ…?」
なのははその書類のとある文章に注目する。
「“プロジェクトフォーチュン”?なにこれ…?」

 

ビー!ビー!

 

その時、辺りにけたたましく警報が鳴り響き、入り口にシャッターが閉まる。
「な、なになに!?ここは無人のはずじゃ…!?」
「まさか…罠!?」
そして通気口のようなところから、紫色のガスが噴き出し、なのは達を包み込んだ。
「あ、あかん!なのはちゃん!」
「おっけー!」
はやての合図と共に入口のシャッターを破壊しようとレイジングハートを構えるなのは、だが…。
「あ、あれ…?力…が…入らな…?」
なのははレイジングハートを落とし、その場に倒れてしまう。
「なのはちゃん!?」
「まさかこのガスが!?…うっ」
そしてフェイトとはやても力が入らずその場に倒れてしまう。
「な、なんで…?バリアジャケットが効かない…?」
「母さん…お兄ちゃん…。」
フェイトは薄れゆく意識の中、誰かが近づいてくるのを感じていた。
(だ、誰…?)
「…………。」
その人物は何も言わず、三人を担いで何処かへと去って行った…。

 

「どうしよう…!はやてちゃん達になにかあったんだ…!」
数分後、連絡が取れなくなったはやて達を心配してヴォルケンリッターの皆は狼狽していた。
「すぐに救援に向かおう、シャマルは助けを呼んで…。」
と、そのとき彼女達の眼の前の転移装置に電源が入り動き出した。
「なんだ!?」
「誰か転移してくる!?」
とっさに身構えるヴォルケンリッター、そして装置の中からサングラスに黒いコートを着た金髪の16歳程の少女が現れた。
「………。」
「な、何者だ貴様!」
シグナムはレヴァンティンを構える。
「…やめてよね。そんな物騒な物、私に向けないでよ。」
「…!?」
その瞬間風が吹いたかと思うと、その場から少女の姿が消えた。
「「「「……!?」」」」
ヴォルケンリッターは辺りを見回す、そのとき、
「後ろがガラ空きね。」
突如少女はヴィータの背後に現れ、彼女を思いっきり蹴り飛ばしてしまう。
「ぐえっ!?」
はるか遠くまで吹き飛ばされ、壁にぶつかり昏倒するヴィータ。
「お、おのれ!!」
ザフィーラ(人型)はすぐさま少女に殴りかかるが、少女はまたも消えてしまい、ザフィーラの頭上に現れた。
「………。(ニヤリ)」
少女は不敵に笑うと、ザフィーラの脳天を両足で何度も踏みつけた。
「ぐおぉ!!」
ザフィーラはなんとか耐えていたが、少女は突如飛び上り、空中でフィギュアスケートの選手のように体をぐるぐると回転させ、スピンをかけてザフィーラの頭を踏みつけた。
「がああ!!」
頭を踏まれたまま倒れるザフィーラ。
「その足をどけなさい!」
すぐさまシャマルは少女にバインドを掛けるが、
「遅い遅い♪」
少女のいた場所に気絶したザフィーラが現れ、彼にバインドが掛る。
「ええい!テスタロッサみたいにすばしっこい奴め!!」
「フェイト…?」
すると少女はシグナムの目の前に現れた。
「なっ…!?」
「あんなものと…。」
少女はシグナムの鳩尾に拳を叩きこむ。
「うぐっ…!?」
「いっしょにすんじゃないわよ…!!」
少女はそのまま目にもとまらぬ速さでシグナムを殴り続けた。
「う…ぐあ…!」
シグナムは剣を振るう暇も与えられず、ただただ殴られ続け、ついに倒れてしまう。
「この…!この…!!!」
少女は倒れているシグナムの体を何度も何度も力いっぱい踏んづけた。
「や…やめてぇ!」
シャマルはその少女を止めようと再びバインドを掛けようとするがまたも外れ、一瞬で距離を詰められ少女に襟首を掴みあげられた。
「う…あ…。」
「大したことないじゃない、ヴォルケンリッターも…。」
そして少女は、そのままシャマルを頭から地面に叩きつけた。
「あぐっ!!」
「はあ…弱すぎ、なんかムカついてきた。」
その時、少女の右腕から1mはある銀色の爪が生え、その刃がシャマルの首筋に突き立てられようとしていた。
(や、やられる!)
シャマルはとっさにギュッと目を閉じる。
だがその爪がシャマルに突き立てられることはなかった。
「おやめください。」
突如現れた黒いローブを着た仮面をつけた11歳ぐらいの少年に腕を掴まれた少女は、不満そうに爪をしまう。その瞬間、シャマルは気絶してしまった。
「彼等に死なれたら“彼”の協力を得られません。」
「あんな根暗いらないでしょ、私とあんたで十分じゃない。」
「“候補者”の彼の力は必要不可欠です。それに…。」
「わかったわかった、鬱陶しい。」
そして少女はシャマルとザフィーラを担ぎあげ、転移装置に二人を詰め込む。
「何を…?」
「どーせこいつら戦力外だし…そこのガキ共が残っていればアイツは逆らえないわよ。」
「………。」

 

「な、何を…!?」
ザフィーラはダメージで動かない体を必死に動かしながら抵抗する。
「あれ?起きてるんだ?頑丈ね……なんてことはない、あんた達生ゴミを、海に不法投棄するだけよ。」
「なんだと…!?」
「バイバーイ♪」そして少女は装置を作動させ、ザフィーラ達を何処かへ転移させてしまった…。

 

(………!?)
ザフィーラが目を覚ますと、そこは海の中だった。
(い、いかん…!早く上がらねば…!!)
ザフィーラは狼型になり隣で漂っていたシャマルを咥え、海上にあがった。
「がは!……ここは…?」
ぐるぐるとあたりを見回すザフィーラ、ふと彼は、遠くに陸地を見つける。
「と、とにかくあそこへ…!しっかりしろシャマル…!」
そしてザフィーラは、目を覚まさないシャマルを銜えて、陸地を目指し最後の力を振り絞って泳ぎ出した…。

 

「それで…陸地に着いたザフィーラさんは僕達に発見されたんですね。」
「その通りだ…。」
ザフィーラはバルトフェルトから出された牛乳多めのコーヒーをぺろぺろ舐めながらキラ達にすべてを話した。
「ザフィーラさん、これからどうするのです?」
「…いつまでもここで世話になる訳にはいかない。シャマルが目覚め次第出発して時空管理局と連絡を取る方法を探すつもりだ。」
「そうですか…、とりあえず今日はもう遅いですし、今夜はここで休んでいったらどうです?シャマルさんもお疲れのようですし…。」
「だ、だが…。」
「僕達はいいですよ、子供達も喜ぶでしょうし…いいですよねマリュ-さん、バルトフェルトさん。」
「ええ。」
「僕等は構わんよ。」
「…すまない、恩に着る。」
ザフィーラはキラとラクスの提案を受け入れ、寝室に案内されていった。
そして部屋を出る間際に
「ありがとう…コズミックイラの人間は皆優しいのだな。」
お礼の言葉を言い残した。

 

「喋る犬に異世界に時空管理局、魔法にプロジェクトF…か、なんか突拍子のない話ばかりだったな。」
「でも彼の言っていることが本当なら、ユニウスセブンが消えた理由もわかるかもしれない、早速明日聞いてみよう、会議に出す資料を一から作り直しだなこれは…。」
カガリは明日こなさねばならない仕事の量を思いながら、深いため息をついた。
「「………。」」
「キラ…、彼が言っていたプロジェクトFって…。」
アスランはかつて共に闘い、敵対したかつての部隊長を、
そしてキラは守りたかった人の命を奪った、世界に復讐しようとした仮面の男を思い出していた。
「どうしてどの世界でも人は同じ過ちを犯すんだ…!なんで…!」
「キラ…。」
ラクスは怒りで打ち震えるキラの手を優しく握り締めた。
「……僕は大丈夫だよ、ラクス。」
「私達は出来る限りザフィーラさん達を助けてあげましょう、お二方の協力があれば今回の事件、解決の糸口が見えるはずです。」
「そうだね…。」
「はいはい、とにかく細かいことは明日だ。アスラン、カガリ、明日は忙しいんだろ?」
「あ…はい。」
「それじゃ私達はもう行く。また今度な。」
そう言って、アスランとカガリは自分たちの屋敷に帰って行った。
「私達も休みましょう。なんか色々ありすぎて頭が…。」
「はははっ、確かにね、じゃあまた明日だ。」
マリュ-とバルトフェルトも自分の寝室に戻って行った。
「ラクス、僕等も…。」
「私、ちょっと夜風に当たってきますわ、キラは先に休んでいてください。」
「え?う、うんわかった。」
キラはいつもと様子の違うラクスに戸惑いながらも、彼女の言葉に従い自分の寝室に戻って行った。
「………。」

 

庭に出たラクスはピンクハロと共に星を見ていた。
「魔法…ですか、まさかこんな形でキラ達に知られるなんて思いもよりませんでしたわ…。」
(どうするんです?主ラクス)
(キラ達に…僕達のこと教えるの?)
「……いえ、できればもう少しだけ秘密にしておきます」
(でも…。)
「わたくしは…キラに嫌われたくないのです…。」
(……わかりました。)
(もー、どうなってもしらないよ。)
ラクスは軽く微笑みながら、再び星空を見上げた。
「ルナ…ティーダさん…もしかしたら6年前の出会いは、このためにあったのかもしれませんね…。」

 

そして、波乱に満ちた一日が終わり、それ以上の波乱が待ち受ける明日が始まろうとしていた……。

 

次の日、オーブにある巨大なサミット会場に各国の高官達が続々と集まっていた。
「いや~これはこれはデュランダル議長!遠路はるばるご苦労様です!」
その高官達を巨大な会議室でオーブの高官であるユウナ・ロマ・セイランは極上の営業スマイルで出迎えた。
「今回はお願いしますよ、ところで父君とカガリ代表の姿が見えないですが…。」
「ああ、カガ…アスハ代表はなにか急用が出来たとかで…父は打ち合わせ中ですよ。」
「よほど張り切っておられるのですね、貴公の国の姫君は…。」
そんな雑談をしている二人を、遠目で見ている高級そうなスーツを着た男達が見ていた。
「まったく、我々がコーディネイターと同じ席に座ることになるとは…。」
「盟主殿も酔狂な事を言いますしね…大丈夫なのでしょうか…。」
「仕方あるまい、我々は表向きはプラントを含めた地球圏統一を進めているのだからな、出席せねばなるまい。」

 

その男達の様子を、デュランダルの後ろで護衛の任に就いていたザフト兵達は見ていた。
(イザーク、あいつら…。)
(ああ、大西洋連邦のコープランド大統領だ…。)
(こんな形で議長とナチュラルの高官達が肩を並べる事になるなんてな…これも羽クジラのお陰かねえ?)
(貴様は羽クジラ派か…まあ小惑星が丸々消えるなんて人のなせる技じゃないのは確かだ、“人”…ではな。)
(……?)

 

「アイザック君、ハーフネンス君、会議の時間までどのくらいかね?」
「は、はい議長!あと30分ほどです!」
「そうか…なら早めに会場に入るか。ミネルバは引き続き港で待機するよう伝えてくれ。」
「了解しました。」
そう言ってデュランダル議長と護衛の四人のザフト兵…ジュール隊は一足先に会議場に歩みを進めた…。

 

その頃、屋敷で目を覚ましたシャマルとザフィーラは、キラとラクスにパソコンを借りてこの世界のことを調べていた。
「血のバレンタイン…エイプリルフールクライシス…ヤキン・ドゥーエ戦役…そしてユニウスセブン消失事件…コズミックイラがそんなことになっていたなんて…。」
「スウェンとノワールとシンは大丈夫なのか…!?このオーブも一度焼かれているそうだが…。」
「ごめんなさい、なんか心配の種を余計に増やしちゃったみたいですね…。」
深刻な顔をするザフィーラとシャマルにキラは謝罪する。
「まあ…あいつ等はしぶといから大丈夫だとは思うが…。」
「な、なんかもう次から次へと問題がふりかかってきてもう訳わからないわ…。」
眉間を軽く押さえるシャマル。
「お二人はこれからどうしますの?ご協力できることがあれば言ってくださいまし。」
「いや…我々はすぐにミッドにもどらなければならない、我々と主が得た情報をすぐに本局に届けて調べなければならないんだ。なにせ7年間追い求めたあの事件の真実がわかるかもしれないんだ。」
「できればスウェンとノワールとシン君に会いたいですけど…そんな場合じゃないですしね。」
「そうですか…名残惜しいですね。」
「子供達も貴方方のこと、すごく気に入っていたんですよ…。」
「ははは…まあまた来るようなことがあれば、ここにも立ち寄りますよ。」

 

(ねえザフィーラ、なにか…おかしくない?)
キラ達との雑談が一段落した時、シグナムは念話でザフィーラに語りかける。
(おかしい?何がだ?)
(コズミックイラってPT事件で起きた時空震の影響で航行が困難だったはずよね、修復にも何十年も掛るって…。)
(提督は数年かもしれないと言っていたはずだぞ、たまたまじゃないか?)
(そうなのかな?なにか嫌な予感がするんだけど…。)
シャマルは言い知れぬ不安に苛まれていた。
その様子を、ラクスは横眼で見ながら、自身もなにやら考え事をしていた。と、その時バルトフェルトがキラ達のいる部屋に駆け込んできた。
「た、大変だ二人とも!」
「ど、どうしたんですかバルトフェルトさん?そんなに慌てて…。」
「か、会議場が…代表達がいる会場が占拠された…!」
「「「「…!!?」」」」
バルトフェルトの只ならぬ雰囲気に、その場の空気は凍りついた…。

 

一時間前、世界会議会場、何憶もの資金をつぎ込んで作った会場には各国の政治家達が集まっていた。

 

「もうすぐ始まるって言うのに!カガリは一体何をしているんだ!?」
その片隅で、ユウナはいまだに到着しないカガリをイライラしながら待ち続けていた。
「焦るなよユウナ、さっきの連絡では、カガリ様は交通渋滞に巻き込まれて遅れているらしい。」
「そうは言ってもですね!国の代表が会議に遅れたなんてことになったらオーブは世界中の笑い物だ!」
ユウナはヒステリー気味に地団駄を踏む。
「やむをえまい。始めるか…。」
その時、椅子に腰かけていたユウナの父ウナトはすくっと立ち上がり、会義室の方へ歩みを進めた。
「え?父上?まだ時間では…?」
ユウナもウナトの後に続いていった。

 

ザワザワと騒がしい広大な会議室の中心に立つウナト。
『皆さん!本日は遠路はるばるお越しいただきありがとうございます!』
突然のウナトのマイクによるスピーチに、会場にいた高官達は一斉に彼に注目する。
「ち、父上、一体何を…?こんな事予定には…。」
そう言ってユウナはウナトの肩を掴んだ。次の瞬間、ウナトは突然前のめりに倒れた。
「へっ?父上?」
だがユウナの手にはまだ誰かを掴んでいる感触があった。
ユウナは恐る恐る倒れた父から自分が肩を掴んでいる人物に目線を向ける、そこには16歳ぐらいの白髪のメガネを掛けたエメラルドグリーンの瞳をした少年が立っていた。
「う、うわぁ!?」
思わずユウナは尻もちをついた。
「なんだ今のは…!」
「ウナト氏の体の中から出てきたぞ…!?」
突然のことに辺りはざわついていた。

 

「えー皆さん、こんにちは。突然このようなことをして驚かせてしまい大変申し訳ございません、そして大変恐縮なのですが…。」
そのとき、どこからともなく床や壁に魔方陣のようなものが現れ、そこから騎士甲冑のようなものに身を纏った少年や少女達が現れた。
「な、何だこいつら!?」
「兵達は何をやっている!?こいつらをどうにかせんか!」
「はっ!」
すると一人の連合軍の軍人が、腰に付けていた銃を手に取り、少年達に発砲しようとしていた。
「まあまあ、落ち着いて。」
するとメガネの少年はその軍人に手を掲げる。すると銃を持つ軍人の両手に緑色の光の輪が巻きつく。
「うわっ!」
「い、今のはなんだ!?どこかの軍の新兵器か!?」
辺りが騒然とする中、デュランダルだけは冷静にその少年に話しかけた。
「君は何者だい?目的は…。」
少年はメガネをクイッっと人差し指で上げて、デュランダルの問いに答えた。
「僕達は“時の箱舟”の魔導士、目的は…貴方達を誘拐することです。」

 

「なんだと!?それは本当なのか!?」
一方、会場に向かうため車を走らせていたアスランとカガリは現地にいた兵士から先ほどの出来事の報告を受けていた。
『は、はい!“時の方舟”と名乗る一団は高官達を人質に会場に立て篭もり、メッセンジャーとして取材に来ていたマスコミの一人を開放しました。なんでもその人の話によると、立て篭もり犯達は“魔法”を使うというのですが…。』
「カガリ。」
運転席のアスランは電話で話していたカガリの様子をうかがう。
「まさか遅刻したおかげで私は無事だとはな…とにかく急ぐぞ!」
「ああ!」
そし二人を乗せた車は会場に向かって加速した…。

 

「おーおー、集まってますねえ。」
謎の武装集団と共に会議場を占領したメガネの少年は、モニター越しに外の様子を見ていた。
「お、お前らこんな事をしてタダで済むとおもうのか!!ここにはオーブ軍のMSだけでなく連合のダガーやザフトの新型も来ているんだぞ!」
光の輪で簀巻きにされた高官の一人が少年に怒鳴りつける。
「うるさいなあ。」
メガネの少年はうざったそうに男の口に光の輪を掛けた。
「モガッ!?」
「うわ!またなにか出したぞ!」
「いったいなんだあれは!?」
少年の不思議な力を目の当たりにし、辺りの人間達は狼狽する。
「だが彼の言うことはもっともだと思うが?いずれここにも我々を救出するため特殊部隊が突入するだろう、その力がどんなものかわからんが、それでどうにかできるほど軍は甘くはないぞ?」
デュランダルは冷静に少年に話しかけた。
「だから投降しろとでも?残念ですがそれは無理な話です。何故なら…。」
その時、光の輪で縛られていた高官達が突如床に現れた魔方陣のようなものに、沈むように取り込まれていった。
「うわっ!」
「なんだこれは!?」
辺りに悲鳴と怒号が鳴り響く。
「これは…。」
「言ったでしょう?我々はあなた方を誘拐するって。貴方がたは我々の崇高なる目的のための礎になっていただきます。」
「何だと…?」

 

一方、会議場を包囲しているオーブ軍と、高官達を護衛しに来ていたザフト軍と連合軍は、今だに動きのない“時の方舟”と名乗る誘拐犯グループにイライラしていた。
「奴らから応答はないのか!?」
「人質を一人解放しただけでそれ以降は…。」
「トダカ一佐!突入準備整いました!」
「了解した。ただし慎重にいけよ、あそこにはユウナ様やウナト様、デュランダル議長をはじめとした多くの人達がいるのだから…。」
すると作戦会議をしている彼等の元にカガリとアスランがやってくる。
「皆!遅れてすまない!」
「代表!無事でございましたか!」
トダカ他カガリの姿を見たオーブ軍人たちは喜びの声をあげる。
「状況はいったいどうなっています?」
「今ザフトと連合と共に救出作戦を進めています。もうしばらくお待ちを。」
「気を付けろよ…相手は未知の力を使うんだ。何が起きても…。」
その時、一人の連合兵が空を指差し叫んだ。
「お、おい!あれはなんだ!?」
その声を聞いた辺りの人間も、連合兵が指さす方向を見る。そこには今にも雷が落ちそうな曇り空に、禍々しい黒い淀みが広がっていた。
「あれは…!?」

 

一方、キラの屋敷にいたシャマルとザフィーラは突然強烈な嫌悪感に襲われていた。
「嘘…嘘でしょ…!」
「バカな…ありえるはずが…!あれは7年前に破壊したはずだ!!」
「ど、どうしたんですか?二人とも顔が真っ青ですよ?」
「キラ…、わたくしも何か嫌な予感がします、念のため格納庫に行きましょう。」
「ラクス…?」
「なんで…なんで…!」

 

その黒い淀みの中からこの世の物とは思えない声が聞こえてきた。

 

アアアアアアアアアアアアアアァァァァァ………

 

「い、今の声は…?」
「黒いのから何か出てくるぞ!!」

 

そして黒い淀みから、戦艦数隻分の大きさもある、なんとも形容しがたい、まるでファンタジーの世界にいるいくつもの触手や怪物の頭をうねらせたモンスターが現れた。

 

「なんで…闇の書の暴走プログラムが…!」

 

一瞬の静寂、そして

 

「ば、化け物だあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

どこかの誰かの悲鳴と共に、この世の物とは思えない物を目にしてパニックになったもの達が一斉にその場から逃げ出した。

 

「こ、これは…!?」
その様子をデュランダルはモニター越しに見ていた。
「物語の開幕に、これほどふさわしいものはないでしょう、さあ僕についてきてください。」
そしてデュランダルの足元に魔方陣が現れる。
「私をどうする気かね?」
「貴方達を招待するのですよ、我が“時の箱舟”に。」

 

「アアアアアアアアアアアアアア………。」
その化け物は手当たり次第触手や砲撃でオーブ軍らや建物に攻撃を仕掛けた。
「う…撃て!攻撃しろー!!」
司令官の一言で配備されていたオーブ軍のMS“ムラサメ”や連合軍の“ダガー”、そしてザフト軍の“ゲイツ”は慌ててその化け物にビームライフルやマシンガンで攻撃する、が、シールドのような光の壁に阻まれてしまう。
「う、うわあ!!」
そしてMSは怪物の触手に払われてしまう。
「い、一体どうすれば…!?」
その時、逃げ遅れた一機のダガーが触手につかまる。
「わわ!!!」
触手の締め付けでコックピットがメキメキと潰れていく。
「た、隊長助けてくれー!!」
と、その時天空から四本のビーム砲が降り注ぎ、触手にからまれたダガーを開放した。
「あ、あれは…!」
助け出されたパイロットを始め、その場に居た者達はビーム砲が来た方角を見る。そこには蒼い翼を纏った白と黒のMSが羽を広げていた。
「フ……フリーダム!!」

 

「こ、これって一体…!?」
フリーダムののコックピットで操縦していたキラは、眼下にいる化け物をみて驚いていた。」
「あれは闇の書の闇…あれを放っておけばこの世界は終わりだぞ。」
「ええ~!?」
キラの肩に乗っかっていたザフィーラ(こいぬフォーム)は子犬独特の愛らしい顔とは裏腹にとても深刻な雰囲気を纏っていた。
「えっと、頼まれてここまで連れてきちゃいましたけど…ザフィーラさんあれの事知っているんですか?」
「当然だ、なにせあれは…。」
と、その時、フリーダムに向かって化け物…闇の書の闇についていた怪物の牙が
襲いかかってきた。
『危ない!!』
だがそれは突如現れたムラサメのミサイルで防がれた。
『余所見をするなキラ!!』
「アスラン?そのムラサメアスランが乗っているの!?」
『ああ、借りてきた、カガリもルージュで出ている。それにしてもこれは一体…!?』
アスランの視点の先には、闇の書の闇に攻撃が通らず四苦八苦しているオーブ軍らがいた。
「あれには何層もの魔力シールドと自己修復機能が付いているはずだ、並みの攻撃は通らんぞ。」
『ザフィーラさん…!?なんか小さくなってないですか!?』
「これも魔法なんだって。それでザフィーラさん、あれの退け方、知っていますか?このままじゃ…。」
「知っているが…ここには…。」
かつてザフィーラが闇の書の闇と対峙した時、彼の仲間達が全力の魔法を出し切ったから倒せたのだ。だが今ここにはその仲間達はいない。
「絶望的だな、これは…。」
ザフィーラは絶望に苛まれ半分諦めかけていた。その時。

 

「……?この魔力は…?」
ザフィーラはふと、なんだか懐かしい魔力反応を感じ、その方角を見た。
『あれは…!ザフトの新型!』
「えっ!」
彼等の視線の先には、3機の小型戦闘機が飛翔していた。

 

「メイリン、ソードシルエットを!」
戦闘機の一機、コアスプレンダーに乗るザフトのパイロットはオペレーターに指示を出す。
その間、コアスプレンダーは他の二機…レッグフライヤーとチェストフライヤーとドッキングし、一機のMSとなった。
『ソードシルエット発進しました。』
『シン!本当に大丈夫なの!?』
「大丈夫です、ミネルバは海上で待機していてください。」
パイロットはそう言って、彼方から飛来した戦闘機…ソードシルエットとドッキングする。

 

その光景を、地上から一人のザフト兵が目撃していた。
「あれは…インパルス!ソードインパルスか!」

 

ソードインパルスは地上に降り立ち、装備されていた二対の大剣エクスリカバーを振い、触手を次々と薙ぎ払っていった。そしてパイロットは、コックピットの中で、闇の書の闇と、それを放ったこの場にはもういない“時の箱舟”に向けて声の限り叫んだ。

 

「なんで…なんでこんな…、また戦争がしたいのか!!アンタ達は!!」