魔動戦記ガンダムRF_08話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:51:46

どこかにある時の方舟のアジト、そこのモニター室でカシェルと白髪のエメラルドグリーンの瞳をした少年がなにやら話し合っていた。
「連合やザフトの動きはどうかな。」
「我々の要求には答えるつもりはないようです、それどころか各軍は我々の居場所を探って大規模な救出作戦を行おうとしています。さらにオーブでは先日連合軍が合流し、三軍の一時的な協力関係が築かれたようです。」
「これでコズミックイラ全部の軍が魔法とミッドチルダの存在を知った訳か、ここまでは予定通りだな……ところでアリシア様は?」
「それが先程連絡を頂いたのですが……。」
するとモニター室に至る所ボロボロなアリシアが入ってきた。
「んがー!もうありえない!なんであそこで邪魔が入るのよ!!!」
「アリシア様……!?その格好は!?預けたモビルアーマーと魔導士はどうしたのですか!?」
「いやね、途中までうまく行っていたんだけどね、現地の傭兵と黒いMSに邪魔されたのよ!!しかもコイツ!」
そう言ってアリシアはカシェルに一枚の写真を押し付けた、カシェルはその写真に写っている人物を見て歯ぎしりする。
「この男は……!」
「あんたがこの男をちゃんと引きいれないからこんな事になるんじゃない!おかげでモビルアーマーは破壊されるし!あのポニーテールの女は奪われるし!逃げだしたガキは捕まえられないしもう散々よ!」
「……申し訳ございません。」
「たくっ……これ以上私の足を引っ張らないでよね!シャワー浴びてくる!」
そう言ってアリシアはどかどかとモニター室を出て行った。
「……あの役立たず女が。」
「まあしょうがないでしょ、お姫様みたいに育ててあんな我儘な性格になっちゃたんだから。」
「……あのお方はアイツに甘すぎる、いくら作戦の為とはいえ……。」
「もう暫くの我慢ですよ、それと次の作戦なのですが……実はこのような情報を入手しました。」
白髪の少年は一枚の資料をカシェルに見せる。
「カーペンタリアか……見せしめにはちょうどいいな、うまくいけばその新型だって手に入るかもしれないし。」
「では?」
「ああ、明日の明朝にカーペンタリアを攻める。僕とアリシア様が出よう、ケンプファーとあの新型と傀儡兵の準備をしてくれ。」
「ふふ、了解しました。」
含み笑いをしながら、白髪の少年は部屋を出て行った。
「ふう…………。」
モニター室に一人残ったカシェルは、深く溜息をついた後、顔に付けていた黒い仮面を外した。
彼の素顔はまだあどけなさが残っており、黒く長い前髪の隙間から宝石のような紫色の瞳が見えていた。
「ホント、こんな世界早く無くなればいいのに……。」

 

その頃オーブ軍基地のシン達は、連合の三人組と一緒にトレーニングルームにあるマシンを使って基礎トレーニングに励んでいた。
「ふんぎぎぎぎ……!」
「ルナがんばれー。」
ベンチプレスに挑戦しているルナを隣でダンベルを上げながら応援するステラ。
「このやろぉー!」ズダダダダダ
「負けねぇー!」ズダダダダ
一方シンとアウルはランニングマシーンを使ってどちらが長距離を走れるか競い合っていた。
「あいつらまたやってるよ……。」
「まあ、我々の周りにはアウルのようなキャラはいませんからね、なんとなくウマがあうんでしょう。」
一足先に休憩していたレイとスティングはそんな二人を見て苦笑しながら話し合っていた。
「フンフンフン!まったく!皆だらしないな!」
「アスハ代表……何故貴女までここに?」
そんな彼等の元に、スポーツドリンクを持ったリインフォースとリインⅡがやってきた。
「みんな頑張っているな。」
「リイン達が飲み物持ってきましたー♪」
「あ、リインだー。」
トレーニングルームにいた全員はシャマル達の元に集まり、彼女達から飲み物を受け取った。
「ありがとう、リイン」ナデナデ
「えへへー、ほめられたですー。」
「でもびっくりだよな、アウル達が昔、リインやノワールとは違うユニゾンデバイスと出会っていたなんて……。」
シンは休憩時の暇つぶしに、アウル達と彼等と出会ったという“アギト”というユニゾンデバイスの話題を上げた。
「数年前、アギトは俺達が世話になった施設にアギトは実験動物としてやってきたんだ、まあ俺達が逃がした後はどうしているか知らないけど……。」
「なんで連合がユニゾンデバイスなんて持っていたのかしら?ネオさん達は知らないみたいだし……。」
「クロノ提督達もその話を聞いて大慌てで調べている、もしかしたらシンが時の庭園に連れて行かれたのも連合軍が絡んでいるのかもしれない。」
「うん……そうだな。」
レイの推測にシンは歯切れの悪い返事しかしなかった。

 

その数十分後、トレーニングを終えたシン達はカガリを置いて食堂に向かっていた。その途中、ステラはシンに話しかける。
「ねえ、シンって魔法使いなんだよね?」
「まあ、昔はね。」
「ステラ……魔法覚えたい、覚えてお空飛びたい。」
「ふうん、じゃあ夕飯食べ終わったらちょっと教えようか?簡単な奴しか教えられないけど……。」
「わーい♪」
その光景を、ルナは面白くなさそうに見ていた。
(なによシン!女の子相手にデレデレしちゃってさ……!)
ステラに嫉妬しながらルナは頬をプクッと膨らませた。

 

食堂に着くと、そこにはアルフ(こいぬフォーム)、シャマル、ザフィーラ(人型)、キャロ、フリードが先に夕食を終えていた。
「あ、シンさーん。」
「キュクルー♪」
フリードはシンの姿を見るや否や、羽をパタパタと羽ばたかせて彼の肩にとまった。
「シン、すっかりフリードに気に入られているな。」
「あー、この前キャロを庇ってからなんか懐かれて……。」
「しかしドラゴンって思っていたより小さいんだなー。」
そう言ってスティングはシンの肩にとまっているフリードの頭を撫でる。するとキャロがスティングの疑問に答えた。
「実はそのフリードは本当の姿じゃないんです。竜魂召喚の魔法を使えば元の姿に戻れるんですけど……その……マスターの私がこの子の事をあまりうまく制御できなくて……。」
俯いてしまったキャロの頭を、シンは優しく撫でた。
「うーん、よく事情は解らないけど……、きっとキャロなら大丈夫だよ、フリードだってキャロの事大切に思っているんだからさ。」
「は……はい……///」
キャロは真っ赤な顔をシン達に見られないよう再び下を向いてしまった。
(また……!い、いや!アレはいいわよね!キャロは子供だし……。)
その光景を見て何やら思い悩むルナ。
「………?」
その様子をアルフがテーブルの下で骨付き肉を銜えながら見ていた。
「あ…!シャマルさん!」
一方シャマルの姿を見付けたアウルは、パパパと軽く身だしなみを整え、彼女が座る隣の席に座った。
「アウル君今日も元気ねぇ~。」
「ええそりゃあもう!ところで何食べていたんですか?」
「今日は皆を労おうと思って私が特別に料理を作ったの。」
「!!!!!!」
その発言に、シンだけが目を見開いた。そしてシャマルを除くミッドチルダ組は、一斉にシン達から目をそらした。
「えー!!?マジですか!!?」
「へえ……俺も食べてみてもいいですか?」
「異世界の料理ですか……ちょっと興味ありますね。」
そう言ってレイ達は次々と席に座った。
「……持ってきたぞ。」
そこに鎮痛な面持ちでリインフォースがオボンに味噌汁などを乗せてやってきた。
「これが……!シャマルさんの作った料理!」
「ほう、日本食ですか。」
「卵入りね。」
「おいしそー。」
「早速頂こうじゃねえか。」
そしてレイ達は、シャマルの作った味噌汁を一口啜った。
シンやキャロ達に合掌されていることに気付かず……。

 

その一分後、ネオが夕食をとりにシン達のいる食堂にやってきた。
「さーって、今日のメニューは何かなー……ってうお!?」
ネオはその食堂の大惨事を見て思わず後ずさりをする。
「「ぶくぶくぶくぶく……。」」
何故かシャマルの味噌汁を飲んだレイとスティングが泡を吹いていた。
「シャマル……味噌汁作ったんだよな?」
「ええ、ちょっと途中で開発中だった薬こぼしちゃったんだけど……。」
「なんで!?そのまま!?出したんだ!!?」
ザフィーラはシャマルの頭にぐりぐりと拳を押し付けた。
「新型の調味料の開発をしていて~!!ついでにと~!」
「腕もまだまだなのになんでそんな事してんだよ……食わなくてよかった。」
「と……止めろよ……。」
「テメエ……俺達に毒味させたな……!」
「いや、止めたらシャマルが傷つくかなーって、お前等に先に食べさせて様子見ていたんだ。」
「私とステラは直前で止めてくれたから助かったけど。」
「ありがとうシン。」
「謀ったなシン……!!あ、ラウが河の向こうで手招きしている。」

 

「イヤア、シャマルサンノリョウリハオイシイデスネ。ナンカキレイナカワガミエテキマシタヨ。」
「あらー♪ありがとうアウル君♪」
「一方のアウルは根性でシャマルの料理を食べきっているねぇ。」
「というか……死にかけていませんか?大丈夫でしょうか……?」
「キュクル。」
「まあ、あいつバカだし大丈夫だろ。」
「おいおい、どうなってるんだこりゃ?」
ネオは異質な光景を目の当たりにし、その場に立ち竦んでいた。
「あれ?どうしたんですかこんなところで?」
するとネオの後ろからマリューがやってきた。
「お、噂のアークエンジェルの美人艦長さんか、どうだい一緒に食事でも?」
「うふふ、それってナンパですか?」
「ははは、まあそんなところだねえ。」

 

その二人の様子を、ステラとルナはチラリチラリと観察していた。
(ネオとあの人、とっても仲良し。)
(ステラの隊長がナンパなだけじゃない?シンとは大違いね。)

 

それから一時間後、ルナは夕食の腹ごしらえに基地の外を散歩していた。
「はあ~、最近色々な事が起こって頭こんがらがってきたわ……。」
溜息を付きながら街灯の光が照らす夜道を歩くルナ。すると、
「こらー、女の子一人でこんな時間に散歩してたら危ないじゃないか。」
こいぬフォームのアルフがルナの後ろからやって来た。
「あれ?アルフ……貴女もお散歩?」
「おう、よかったら一緒に歩こうか。」
そして横一列に並び歩くルナとアルフ。するとルナが、隣のアルフに質問してきた。
「あの……アルフ、わ、友達に聞いてくれって頼まれたんだけど……。」
「ん?なんだい?」
「シンってさ……、貴方達の中で好きな人とかいたの?」
「……シンの好きな人?」
「いやね、貴女も含めてシャマルさんとかリインフォースとか……結構綺麗な人が沢山いるじゃない?だから気になるーって私の友達がね!!」
「うーん……。」
アルフはとことこ歩きながらしばらく考え込んだ。
「シン自身は鈍いからね、誰かを好きになるとかあの時はまだよく解っていなかったと思うよ、でも……アイツに恋した女の子なら知っているよ。」
「もしかして……フェイトって子のこと?時の方舟の奴らに攫われた……。」
「うん、シンが私達の世界に連れてこられた時、最初に世話していたのがフェイトと私と……フェイトのお母さんだった人なんだ。」
そしてアルフは歩きながらルナにフェイトとシンの関係、そしてPT事件の詳細を話し始めた……。

 

「……アイツにそんな事が……。」
ルナは途中に設置してあったベンチに腰かけて、アルフの話を聞いていた。
「あの時のフェイトの心はボロボロだったんだよ……信じていた母親にひどい虐待を受けて、あまつさえ拒絶の言葉まで投げかけられて……、でもそんなフェイトの心を救ってくれたのがシンだったんだ。」
「…………。」
ルナはアルフの話を聞き終えて、少し下を向いてしまう。そんな彼女の様子を見て、アルフはある質問をする。
「ねえルナ、そのルナの友達ってさ……なんでシンに惚れたんだい?」
「へっ!?わt……その子の事?」
「うん、フェイトのライバルの事はよく知っておきたいからね。」
「そ、そう?じゃあ……どこから話そうかな?」
ルナはそう言いながら、ポツリポツリとその友人の事を話し始めた。

 

その子がシンと出会ったのは二年前……アカデミーの入学式の日だった。まだ出会ってばっかりの頃は、その子もシンも、あまり話をしなかった。でもある日……。

 

~二年前~
アカデミーの生徒達が通う学校の教室の中……そこで二人の女子生徒がある噂話をしていた。
「ねえ聞いた?この前の中間テスト……またレイ君がシン君とのトップ争いに勝ったみたいよ。」
「すごいよねー、2人とも模擬戦や戦闘訓練でもトップを競い合っているのよね、すごいわー。」
するとそこにシンに惚れているという赤髪の少女が妹と共に教室に入ってきた。
「あ、ルナさんだ……。」
「あの子の成績があまり良くないせいでクラスの平均点下がっているのよね。」
「おかげで隣のクラスに負けているのよね……妹のほうがいい結果残しているのに……。」
「正直お荷物だわ。」

 

(聞こえてんのよ……。)
「お姉ちゃん、あんまり気にしちゃダメだよ?」
「わかっているわよ。」
コーディネイターの社会は能力主義で、力のないコーディネイターは卑下の対象になっていた。無論、思ったように結果を残せない彼女もその内の一人だった。
そんな時に声を掛けて来たのがアイツ、シン・アスカだった。
「なあ、君って文系得意だろ?俺レイの奴に勝ちたくってさー、変わりに理系教えるからさ、一緒に勉強しないか?」
その子は最初は断ろうとしたけれど、彼がどんな勉強方法でテストでいい点数を取っているか気になって、要求を飲む事にしたの。
それからしばらくはシンと、その友達のヨウランとヴィーノ、そして彼女と一緒に放課後に勉強会。シンってすごいですよねー、数学と科学のテスト、常に満点を取っているんですから。それで彼のお陰でその子、いい成績を残せるようになって、クラスメイトにも影口を言われなくなったの。そのころからかなー、その子の気持ちがシンに傾きかけてきたのは……感謝の気持ちも織り交ざっているけど……。

 

「なるほど、魔導士は魔法を使う都合上、理数系が自然に身に付くからねー、なのはやフェイトも理数は常に満点だったよ。」
「それも魔法の影響だったんだ……じゃあ話をもどすね、ここからはちょっとレイの話になるんだけど……レイって昔から、体に大きなハンデを抱えているんだって。」
「ハンデ……?」

 

その子達がその事実を知ったのは、ある事件がきっかけだった。ある日その子は廊下で薬の入ったピルケースを拾ったの、なんだろうと思って首を傾げていたら……遠くから誰かの呻き声と、シンが誰かに助けを求める声が聞こえてきたの。その子が慌ててその場に駆け付けてみると……すごく苦しそうにしているレイと、彼の体をさすっているシンがいたの、彼等は慌てて医務室にレイを運んだわ、その時……レイがその子の持っていたピルケースに気付いて、それを乱暴に取り上げると中の薬をむさぼるように飲んでいたわ。

 

「事情を聞いてみたら……レイってアル・ダ・フラガって人のクローンなんだって。」
「クローン……!!!?」
「うん……でもコズミックイラのクローン技術はまだ未熟だから……レイはあんまり長く生きられないうえに、老化も早いって言っていた。」
「…………。」

 

自分の生い立ちを語ったレイは自嘲気味に笑っていた。自分は誰からも必要とされずに生まれてきた失敗作だって、だから自分は死んだラウって人になり代って、この世界を俺みたいな奴が二度と生まれない世界に変えたいって言ったの、そしたら……シンが大声でレイを怒鳴りつけたのよ。

 

“お前はレイだろ!?ラウって人になろうとすんな!”

 

アイツの怒った……いや、叱りつける顔、今でも忘れられないわ。きっとフェイトとレイを重ね合わせたのかもしれないわね。
でもレイがお前に何がわかるー!ってシンに喰いかかって喧嘩になっちゃったの。
いやーもうすごかったわ、殴るわ蹴るわの大乱闘、わた……その子もオロオロしているしかなかったわ、で、落ち着いた所でゆっくり話合って……まあ仲直りしたのよね。腹割ってぶつかり合ったお陰で、シンとレイは心からの親友同士になれたの。
シンってすごいのよね、進んで悩んでいる子の力になって……皆に信用されるようになって、それが議長に認められてインパルスを任されるようになったの。
そして彼女も……そんな彼にどんどん惹かれていったのよ。

 

「まあ、こんな感じかしらねー。」
「ふうん……シンも相変わらずなんだね……優しいところは全く変わっていないねぇ。」
「それは……ちょっと違うと思う。」
「え?」
ルナの返答に、アルフは首を傾げた。
「多分あいつが優しいのは生まれつきだろうけど……アルフの話を聞いてわかった。シンの優しさに中身ができたのは、アルフやフェイト達に出会ったおかげだと思う、フェイトの涙が……アイツを強く優しい男の子にしたんだね、きっと。」
「ルナ……。」
シンの事を嬉しそうに語るルナを見て、アルフの顔は嬉しさと複雑さが織り混じった笑顔になっていた。
「その子は……ルナはシンの事が好きなんだねぇ。」
「うん……ってちょ#$%&‘P=~#はいいい!!!?」
「はははっ、リアクションまでフェイトと一緒だなぁ。」
「ななななんでそうなるのよ~!!?私は一言もシンがす、隙、好きだなんて……!!!」
「あーはいはいわかったわかった、そろそろ寒くなってきたから帰ろうか。」
そう言ってアルフはベンチから降り、トコトコと基地のほうへ歩き出した。
「こ、こらっ!ちょっと待ちなさいよ!」
ルナは慌ててアルフの後を追いかけた……。

 

その頃ミネルバの自室に戻っていたシンとレイは、ある話をしていた。
「俺に……魔法を教えたいだと?」
「ああ、クロノの話だとレイの家系って魔力が高いらしいんだ。それでさ、魔力の出力の訓練をすれば、シャマル達みたいに老化を抑えられるらしいんだ。普通の人よりも寿命は伸びないけど……発作や老化を今よりも抑えることができるぞ。」
「俺にも……未来が貰えるのか。」
シンの提案に、レイは深く考え込む。
「なあレイ、ラウさんの分も生きてみろよ、そうしたら見えなかった何かが見えてくるかもしれないぞ。」
「見えなかったもの……か。わかった、考えておく。」
レイは小さく微笑みながら返答する、それを確認したシンは嬉しそうに立ち上がった。
「よかった……じゃあこの事、クロノ達にも伝えておくよ。一緒にがんばろうな!」
そしてシンは嬉しそうに笑いながら部屋を出て行った。
一人部屋に残されたレイは、今は亡き恩人を想いながらベッドに寝転んだ。
「ラウ……俺は貴方になれそうもありません、この世界に守り抜きたい友ができてしまいました……でも、これでいいのですよね?」
レイは幸せそうに笑いながら、まどろみの中に身を委ねた。

 

一方アースラに戻ってきたアルフは、食堂のテーブルの下で寝転んでいたザフィーラ(こいぬフォーム)の隣に寝転んだ。
「どうした?珍しく悩んでいるようだが?」
「うん……アタシはフェイトが大好きだ、でも……あの子も大好き、一体どっちを応援してあげればいいのかねぇ……。」
「??」

 

同時刻、ミネルバの自室に戻ってきたルナは、ベッドにボフンッと飛びこんだ。
(はあ……まさかシンがあんなにカッコイイことしていたなんて……もっと好きになっちゃった……フェイトが羨ましいなぁ……。)
ルナはふと、ベッドの横に飾ってあった赤い羽根ペンのようなバッジを見る。
いつの間にか自分の宝物となっていたバッジ、いつ買ったのか、もしくは拾ったのか全く覚えていないけど、とっても大事な物だという事だけは感じていた。
これを持っていると誰かが見守っていてくれるようで、自分はどこまでも頑張れるような気持ちになれるのだ。
「むにゃ……見てなさいよフェイト……負けないからね……ぐぅ。」
そしてルナマリア・ホークは、まだ見ぬ恋敵に宣戦布告しながら深い眠りについた。

 

おまけ
アースラの格納庫でキャロと共にフリードと戯れていたメイリンはこんな話をしていた。
「うわー♪フリードかわいいねー、私達も昔ティーダって名前のひよこ飼っていたからなー、また飼ってみたくなっちゃった。」
「キュクルー。」
「ひよこさんですか……どんな子だったんですか?」
「うん、オレンジ色のカラーひよこでね、お姉ちゃんがひょっこり拾って来たの、でも……ある日いなくなっちゃって、お姉ちゃんにどうしたのって聞いてみたら“なにそれ?”って言われちゃった。あとでお母さんがお姉ちゃんを病院に連れて行ったんだけど……お姉ちゃんティーダと一緒にいた三か月間の記憶をすっぽり失っちゃったみたいなの。」
「ええ!!?不思議ですねー。」
「大丈夫なのかなー、変な病気じゃなきゃいいけど……お医者さんもわからないって言っていたし……。」