魔動戦記ガンダムRF_26話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 23:10:59

それはシン達がミッドチルダに転移する12時間前の事、管理局本部の指令室は突然現れたユニウスセブンの対応に追われていた。
「な……なんだあのバカでかい隕石は!?あんな質量が地上に直撃したら……!」
「早く次元航行部隊を向かわせて事態を把握しませんと、最悪このまま破壊アルカンシェルを使って破壊しなければ……!」

 

そして数時間後、管理局の次元航行部隊は艦隊を率いてミッドチルダに向かって落下して行くユニウスセブンに接近していた。
「指令!全艦目標の位置に着きました!」
「よし!主砲開け!目標、前方の隕石群……!」
そう言って旗艦に乗っていた司令官は全艦に号令を下す、だがその時、オペレーターの一人が何かに気付いて司令官に報告する。
「指令!こちらになにか接

 

次の瞬間、ブリッジは爆炎に包まれていた。

 

『目標撃破完了、次の行動に移ります。』
ケンプファーに乗るマリアージュ達は次の目標を定め、ショットガンの引き金を引く。
次元航行部隊はマリアージュ部隊が駆るMS、MA部隊によって手も足も出ない状態で壊滅させられていた。
そしてその光景を、ユニウスセブンの中心に配置されている戦艦“時の方舟”のブリッジに設置されたモニターで見ていたアリューゼは愉快そうにほくそ笑んでいた。
「久しぶりだな、人を殺めるのは。」
「なんてひどい事を……!」
そしてその隣ではイクスが死んでいく管理局の戦艦のクルー達を想いながら涙を流していた。
「私は彼等の犠牲を絶対に無駄にはしない、だからこそこの作戦は絶対に成功させなければならない、イクスヴェリア……アナタはその後の世界の王となっていただく。」
「そんな恐ろしい事を……!もうやめてください!」
アリューゼはイクスの必死の懇願にも耳を貸さず、管理局本部の司令部に向かって通信を開いた。
「聞こえていますかミッドチルダの方々、私の名はアリューゼ・ハンスブルグ、かつて君達の同僚の愚かな欲望によって地獄と化してしまったコズミックイラの人間だ。」

 

「指令!あの隕石の中から……いえ!あの隕石に取りついている戦艦から通信が!」
「なんだと……!?」
管理局本部で航行部隊壊滅が壊滅する光景を目の当たりにしていた局員達は、突如送信された時の方舟からの通信に戸惑っていた。
『私の故郷はフクザワという管理局員の醜い欲望によって、二つの種族が憎しみ合う地獄のような世界となってしまった、だがこれはフクザワだけじゃない、君達時空管理局の職務怠慢が招いた悲劇なのだ。』
その時、指令部にある巨大スクリーンにミッドチルダに向かって落ちる半壊したユニウスセブンが映し出されていた。
『フクザワの陰謀で命を散らした我が故郷の同胞20万人が眠るユニウスセブン……これは今から48時間以内に首都クラナガンに落下する予定だ、落下すればどこだろうと関係なく地上にいる生物は死に絶えるな、だが安心したまえ……君達を浄解した後はこの冥王イクスヴェリアが地上の王として君臨する、君達は安心して地獄への引っ越し準備を進めたまえ、それでは。』

 

通信が切られた後、司令部にいたオペレーター達は一斉に最高司令官に詰め寄った。
「どういう事なのですか“フクザワ少将”……?先程のアリューゼと名乗る人物、アナタを名指ししていたようですが……?」
そう言ってオペレーターの一人が、パトリックのやり取りで得た財産で管理局本部の少将にまで上り詰めたフクザワに迫る。
「お……お前達!テロリストの口車に乗せられるんじゃない!それより早く市民の避難を急がせろ!あのユニ……隕石を破壊する部隊の編成もだ!」
「……はい……。」

 

そして時間はシン達がミッドチルダにやって来た所まで戻る……。

 

「リンディさん、地上と連絡は……。」
「うーん、クロノとエイミィが必死にコンタクトをとろうとしているのですが……どうやら向こうは回線が混乱しているみたいです……。」
「そうですか……せめ地上がどうなっているか確認したかったのですが……。」
するとアークエンジェルのブリッジにミネルバにいるメイリンから通信が入ってきた。
『アスハ指令!ラミアス艦長!リンディ提督!ユニウスセブンの落下予定時刻と予想被害の計算ができました!ユニウスセブンはあと29時間以内にクラナガンに直撃、その余波でミッドチルダ全域の生物は死滅するかと思われます……!』
「そう……やっぱりそうなるわよね、あれだけの質量が地上に直撃すれば……。」
「とにかく時間もない!急いでユニウスセブンを追いかけて破壊しなければ……!タンホイザーやローエングリンの火力があればなんとか出来る筈……。」
その時、カガリ達の話を聞いていたタリアが少々悲観的な意見を洩らす。
『そううまく行くでしょうか?先程見た管理局の戦艦の残骸も気になるところですし……。』
『そ、そうですよ!もしかしたら時の方舟は何か秘密兵器を所有しているかもしれないんですよ!?』
『それでもやるしかありませんわ、ミッドチルダに住む方々の運命は私達に掛かっているのですから……。』
そして三隻はミッドチルダに向かうユニウスセブンを追ってエンジンを吹かした……。

 

10時間後、ミッドチルダの首都クラナガンでは管理局員が必死に市民達を避難場所まで誘導いていた。しかし状況は好ましくなかった……。
「みなさん落ちついて!局員の指示に従って移動を……!」
「ねえ、本当に管理局の言う事を聞いて大丈夫なの?あの隕石が落ちるのってあの少将のせいなんじゃ……。」
「ていうかここで生き延びられてもコズミックイラと戦争になるんじゃねえか!?そうなったら俺達……!」

 

「ナカジマ三佐!住民たちが状況を説明しろとここまで押し寄せてきています!」
「くそっ!今はそんな事をしている場合じゃないだろうに……!アリューゼ・ハンスブルグ、意外と策士だな……!」
アリューゼは先ほどの管理局本部と自分とのやり取りを、あろうことかミッドチルダ中の放送機関をジャックして住民達に流していたのだ、おまけにコズミックイラから持ってきたヤキンドゥーエ戦役時の映像も流し、住民達に管理局への不信感を煽らせ避難を遅らせていた。
「地上本部前では暴動も起こっているようです、このままでは……。」
「それに三佐の家族はポートフォールに……。」
「……今は目先の事に専念しろ、ギンガやスバルは大丈夫だ……!」

 

~ミッドチルダ西部エルセア地方、ポートフォールメモリアルガーデン~

 

エルセア地方にある墓地、そこに三人の若い少女達が墓前に花を添えていた。
「ギン姉……隕石が落ちたら母さんが眠るここも吹き飛ばされちゃうのかな……?」
「そうね、でもいつまでもここに居られないわ、早く私達も脱出しましょう。」
(お兄ちゃん……お願い、皆を守って……!)

 

~ミッドチルダ東部、スカリエッティのラボ~

 

「ドクター、第三世界への転移の準備、完了いたしました。」
「御苦労だったねウーノ、それじゃ我々もさっさと脱出しようか。」
「それにしてもフェイトお嬢様のお父様、ホントメンドクサイ事してくれましたよねー!お陰で引っ越しの準備に手間取ったわ!」
「楽観的だねクアットロ、遅かれ早かれ我々も消されるかもしれないよ?我々も彼の怒りを買うようなことをしてきたのだからね……。」
「そ、そんな……あんなMSなんていうキ■■イ兵器持ちだされたら私達なんて……。」

 

~ミッドチルダ北部、ベルカ自治区~

 

ユニウスセブンが地上から視認できる程まで接近していた頃、聖王教会にいたカリムやシャッハ、そしてヴェロッサは本部と連絡を取り合いながら現状を確認していた。
「では……避難状況は芳しくないのですね?」
『はい、一部地域では暴動が起こっているところも、このままでは……。』
「あんな質量の隕石が落ちたらどこに居ようとひとたまりもないだろうけどね、ミッドもしばらく生き物の住めない世界になるだろう……。」
『と……とりあえず我々は住民の他の次元世界への避難を急がせます、少将達も早く避難を!』

 

「義姉さんの予言……当たってしまいましたね。」
本部との通信を終え、ヴェロッサは皮肉そうに笑いながらカリムの横顔を見る。
「そうね……さしずめ魔王とはアリューゼ・ハンスブルグという訳ですか、彼の故郷を穢した我々は一人残らず滅ぼされる訳ね……。」
「き、騎士カリム……。」
その時、カリムの通信機に一通の通信が入った。
『カリムさん聞こえる!?カリムさん!』
「その声は……リンディ提督!?」
『母さ……提督!聖王教会と連絡が取れたのか!?』
「これは驚いた……!クロノもいるのかい!?今までどこへ!?」
『ああ、話せば長くなるんだが……。』

 

そしてカリム達はアークエンジェルから通信を入れてきたリンディ達から事情を聞いて目を見開いていた。
「まさか……アースラが次元空間から消えたと聞いた時はどうしたものかと思っていましたがまさかコズミックイラに飛ばされていたなんて……。」
「ということはそこにクロノ君が言っていたシン君やスウェン君もいるってことなのかい?それも次元航行部隊を壊滅させたモビ、モビ……。」
『モビルスーツだ、現在僕達はコズミックイラの戦艦に乗って君達の言う隕石……ユニウスセブンの破壊に向かっている、とにかく君達は支援のほうを頼む。』
「大丈夫なのですか?彼等に任せても……?」
不安そうなシャッハに、リンディは自身満々に答える。
「大丈夫ですよ、だって彼等、とても強いんですから。」

 

―――ミッドチルダ滅亡まで後19時間―――

 

ミネルバブリーフィングルーム、そこでシン達ザフト組はモニターでリンディ達から作戦内容を聞いていた。
「じゃあ俺達はユニウスセブンを壊せばいい訳ですね、当たり前ですけど……。」
「問題はどうやって壊すかってことですよね、そこん所のプランは出来ているんですか?」
『うーん、至近距離からの艦主砲を行えばなんぼか削ることはできるけど……被害を最小限に抑えることしか出来ないわねえ。』
『せめて核でもあればアレを粉々に出来るんだが……生憎持ち合わせていないしな、おまけに……。』
エターナルに乗船していたバルドフェルドは今現在のユニウスセブンの映像を皆に見せる、そこには巨大な戦艦時の方舟とそれに守られている幾つものMSの姿が映し出されていた。
「ケンプファー、アプサラス、イフリート……時の方舟のMS勢ぞろいですね、でもザフトや連合から奪ったMSは見えませんね……。」
『いや、コレを見ろ。』
アークエンジェルに乗っていたネオは時の方舟の近くに複数設置されていたあるMAを皆に見せる。
「な……何あの黒いMA!?デカすぎない!?」
『ありゃ連合で作られていたデストロイだ、一機だけでも都市一つ壊滅させることができる代物だ。』
「それが1、2……7機もあるな、アレと戦わなきゃいけないのか……。」
『いや、何もアレを態々全部壊さなくてもいいの、シン君達にはね……フェイト達をあの戦艦の中まで運んでほしいの。』
そのリンディの話を聞いて、レイはある事に気付く。
「もしやアリューゼを確保するつもりなのですか?確かに指揮官を抑えればユニウスセブンの破壊に専念出来ますが……。」
『そうね、アナタ達軍人からしたら甘いかもしれないけど……私達は管理局員なのよ、アナタ達の世界を混乱に陥れた次元犯罪者を捕らえる為のね。』
「我々MS隊の任務は敵MSの数を減らしつつ八神二等陸佐達を敵戦艦に送り込み、彼女達が敵指揮官を確保した後に艦主砲の一斉掃射でユニウスセブンを破壊します。とにかくスピードが勝負よ、コレをとちったらミッドチルダは壊滅、私達は英雄になれなかった無能者として後世に名を残すことになるわね……。」
『だからこそワタクシ達は必ず勝たなければならないのです。あの星には沢山の人達が生きている……私達の世界のようにする訳にはいかないのです。』
ラクスの演説に、皆は一斉に頷く、そして各自ユニウスセブンを破壊する為に持ち場に向かって行った……。

 

ミネルバのロッカールーム、そこでフェイトとクロノ、アルフ、はやて、ヴォルケンズはMSに乗る為パイロットスーツを着用していた。
「す、すまない、このスーツは私に合わないようだ。」
「私も……。」
「シグナムさんもリインフォースも胸デカイですからねー、フェイトは大丈夫?」
「うん、ルナのパイロットスーツ……ぴったり着れたよ。」
「おい!もっと小さいのねえのかよ!ブカブカだぞ!」
「リインはどこに入ったらいいのですか~?」
「アタシも入りたいんだけど……。」
「さすがに子供用やユニゾンデバイスのパイロットスーツは無いわね……っていうかアギトも来るの?」
「おう!私もステラやスウェンの力になるんだ!」

 

その時、ロッカールームにメイリンからの艦内放送が流れてきた。
『もうすぐ作戦開始時刻です、MSパイロットは速やかに準備してください!』
「もうすぐ時間ですね、それじゃ皆、私について来てください。」
「うん!よろしく頼むなルナちゃん!」

 

数分後、ミネルバからデスティニー、レジェンド、スラッシュザクファントム、ガナーザクウォーリア、セイバー、そしてオレンジ色のデスティニーがミッドチルダに接近するユニウスセブンに向かって出撃していた。
「どうだハイネ?デスティニーの乗り心地は?」
『すっげえなこの機体……いままで乗ったMSの中でもトップクラスに入るぜ!』
『でも驚きだな、ザフトがもう一機デスティニーを作っていたとは……。』
『議長がもしものときの為にフェイスであるハイネの為に作っておいたそうなのです、俺も最近知りました……。』

 

そんなシン達のやり取りを、アスラン達ザラ隊の面々は羨ましそうに見ていた。
『いいねえ、Gに乗れている奴等は……俺達は量産機をチューンナップしただけの機体なのに……。』
『文句言うなディアッカ!機体が貰えただけでもありがたいと思え!』
(俺もそろそろ新しい機体が欲しい……インフィニットジャスティスさえ取り戻せば……。)

 

その時、ユニウスセブンの方から50機近いMSが出撃してきた。
『出てきたな方舟……各自散開して撃破を……。』
『いや、その必要はない……キラがやってくれる。』

 

その頃エターナルでは、出撃したフリーダムに対してある行動を起こしていた。
「ミーティア、リフトオフ!」
艦長であるラクスの号令と共にエターナルに付属していた核エンジン搭載型MSの補助兵装……ミーティアを射出する。
そしてフリーダムはミーティアとドッキングし、キラはコックピットでマルチロックオンシステムを起動する。
『マルチロック完了だね~。』
『よし……いっけえー!!』
その瞬間、フリーダムとドッキングしたミーティアに搭載されたすべての火器が射出され、一瞬の内に時の方舟のMS隊を吹き飛ばしてしまった。

 

『グレイトォ!相変わらずスゲエ兵器だな!』
『ああ、心底敵じゃなくて良かったと思う……。』
『イザーク!ディアッカ!油断するな!どうやら本命が来たようだぞ……!』
アスランの視線の先には、後から出撃してきた七機のデストロイガンダムとインフィニットジャスティスの姿があった。
『うひょー!肉眼で見るとまた大迫力だな!』
『一筋縄ではいきませんね……でもこちらだって負けていません、』
そう言ってレイは背後からやって来るストライクノワール、ブルデュエル、ヴェルデバスター、アカツキ、カオス、アビス、ガイアを一瞥する。
「役者は揃いましたね、主……。」
「ああ……行くぞみんな!」

 

その頃ミネルバのカタパルトでは、ルナマリアの乗るインパルスがフェイト達魔導師が乗る小型艇を戦艦時の方舟に向かって運ぼうとしていた。
「それじゃみんな!出発するわよ!」
『ああ、よろしく頼む……。』

 

その光景をなのはとユーノとキャロ、そしてマユ、アリシア、リニスはアークエンジェルのブリーフィングルームにあるモニターで見ていた。
「ユーノ君……皆大丈夫だよね?」
「ああ、僕らは彼等の帰りを信じて待とう?」
「フェイトさん……。」
「キャロちゃん、皆はきっと大丈夫だよ、だからね?そんな顔しちゃ駄目だよ。」
「キュクル~……。」

 

「父さん……フェリシア……。」
(プレシア、どうかフェイト達を守ってあげてください……!)

 

その頃時の方舟のブリッジでは、アリューゼがゲイザーから報告を受けていた。
「先程のミーティアの攻撃で我が軍の二割が一気に撃破されてしまいました、ですが何も問題はありません、カシェル様とアリシア様が迎撃に向かっています。」
「本当にそうかなあ?コレを見たまえ。」
そう言ってアリューゼはモニターに映っているインパルスと小型艇をゲイザーに見せる。
「これは……。」
「あの中には魔導師達が乗っているのだろうな、恐らくこの艦に送り込み中から制圧するつもりなのだろう。」
「いけませんね、周辺の警備を強化させましょう。」
「うん、そうしてくれ……。」
そしてアリューゼはモニターに映っているシンのデスティニーを見つめた。
「さて……来れる者なら来てみなさい、私の思い……誰にも邪魔はさせない。」

 

―――ミッドチルダ崩壊まで後15時間―――

 

ミッドチルダに向かって落下して行くユニウスセブン上では、今まさにシン達コズミックイラの部隊と時の方舟のMS隊による激しい戦闘が繰り広げられていた。
『スティング!アウル!ステラ!お前達は右の2機を仕留めるぞ!スウェン達はもう2機!アスラン達も二機!シンとキラ、ハイネとレイは……!』
『見付けたぞシン・アスカ!キラ・ヤマト!』
『お父さんの邪魔はさせない……!』
フェリシアの乗るデストロイとカシェルの乗るインフィニットジャスティスがデスティニー二機とレジェンドとフリーダムに襲いかかる。
「レイ!ハイネ!あのデストロイには多分……!」
『解っている……!アレは俺達に任せろ、お前達はジャスティスを!』

 

『デストロイ隊!一斉掃射!』
カシェルの号令と共に6機のデストロイからスーパースキュラが発射される。
『来るぞ!各自散開!』
その攻撃はネオによる号令で当たらずに済み、シン達はそのまま反撃を始めた。

 

『でええええい!』
ステラの乗るガイアガンダムはMA形態のままデストロイの足もとに突撃し、ビームブレイドで足を斬りつけ怯ませる。
『よくやったステラ!』
『後は俺達に任せろ!』
そう言ってスティングとアウルは怯んだデストロイにありったけの砲撃を加え、三人のコンビネーションで見事撃破に成功する。
『やったぜ!シャマルさん見てくれた!?俺カッコよかったでしょ!?』
『あ!バカ余所見したら……!』
その時、もう一機のデストロイがアビスに向かって腕からシュトゥルムファストを発射する。
『おっと!させるかよ!』
ビーム砲はアビスへの直撃コースだったが、アカツキが射出したビーム砲塔システムのシールドによってガードされた。
『アウル~!もうちょっと集中しようぜ!』
『わ、悪い……。』
『もう一機来る……もっと壊してアギト達の道を拓かないと……。』

 

『うおおおおお!!!』
一方スウェンの乗るストライクノワールはワイヤーを使ってデストロイの動きを封じる。
そのスキにブルデュエルとヴェルデバスターは一斉砲撃でデストロイを破壊した。
『一機撃破!ありがとうスウェン!』
『油断するな……もう一機来ている!』
そう言ってスウェンは新たにやって来たデストロイに目を向ける。
『ああんもう!こいつら鬱陶しいわね!』
『みんなミューディーとよろしくやりたいんじゃねえの?』
『オイラもやりたいッス。』
『コントはそれまでにしておけ、とっとと片付けるぞ。』

 

『アスラン!セイバーで二機を撹乱しろ!俺が仕留める!』
『ああ、任せろ!』
『元クルーゼ隊の実力、アイツ等に見せてやろうぜ!』

 

各々がデストロイ隊と激しい戦闘を繰り広げる中、レイとハイネはフェリシアの乗るデストロイと戦っていた。
『フェリシア……!投降するんだ!お前はこんなことをしちゃいけない!』
『ごめんね……でも私はお父さんを守りたいの!』
そう言ってフェリシアはデストロイに装備されたツォーンを使ってレイ達を追い払う。
『うわっと!あぶねえな……どうするレイ!?』
『俺がドラグーンで援護します。ハイネはそのスキに懐に飛び込んでパルマフィオキーナを……!』
『わかった!』
そしてハイネの乗るオレンジ色のデスティニーはレイのレジェンドの援護を受けながらエクストリームブラストを駆使してデストロイに接近する。
『うおおお……!』
しかし慣れない機体の制御に四苦八苦していたハイネは何発かデストロイの攻撃を受けてしまった。
『慣れない機体で私に挑もうなんて!』
『それでもやるしかねえんだよ!後輩ばっかりにいい格好させるか!』
そう言ってハイネは背中にあったアロンダイトを右手に持たせ、そのままそれをデストロイの首辺りに突き刺す。
『やったわね……!この蚊トンボが!』
怒ったフェリシアはそのままデスティニーの背後に腕を回してシュトゥルムファストで反撃する。
『わああああ!!!』
『ハイネ!』
ブースターを破壊され制御できなくなったハイネのデスティニーはそのままユニウスセブンの地表に落下していった。
『くっ!こっちも制御できない!こうなったら……!』
フェリシアは悔しそうにコンソールをガンッ!と叩くとさっさと機体から脱出してしまった。その光景を目撃していたレイは急いで彼女を追いかけようとした。
『まってくれ!フェリシア!』
「……ごめんね、レイ……。」
次の瞬間、フェリシアの乗っていたデストロイは至る所で爆発を起こし、それに気付いたレイはとっさにレジェンドごと近くに漂っていたデブリで身を隠した。
それと同時にデストロイは大爆発を起こし、周辺は強烈な爆風に襲われた。

 

『おいハイネ、生きているか?』
一分後、落ち着きを取り戻したレイは墜落したハイネのデスティニーに通信を入れる。するとデスティニーから呑気な返事が返ってきた。
『生きてるぞ~、まったく……折角の新品がもうスクラップだぜ。もう動きそうにないなこりゃ。』
『ふっ……ハイネが生きているだけでもよかった。』
そう言ってレイは動かなくなったハイネのデスティニーを抱えてミネルバに戻って行った。
その途中、インパルスに護衛されているフェイト達の小型艇とすれ違った。
(頼むぞみんな……フェリシアを救ってやってくれ。)

 

『デストロイは大分減っている……突破するなら今ね!』
ルナは損害を受けた時の方舟の部隊のスキを突き、戦艦時の方舟に向けて一気にブースターを吹かし、小型艇の道を開く。そして……。
『あそこがカタパルト……行け!』
MSが射出されるカタパルトを発見したルナはそこにビームライフルのビームを撃ち込んで小型艇が侵入出来そうな穴を作った。
『今です!入って!』
『ありがとうなルナちゃん!皆行くで!』
そしてフェイト達を乗せた小型艇は戦艦時の方舟の中に侵入して行った……。

 

「みんな!準備はええな!」
戦艦時の方舟の内部に侵入したフェイト達は空気のある格納庫でバリアジャケットを装着する。
「外ではアウル君達が戦っているのね……早くアリューゼさんを確保して戦闘を止めさせないと。」
「だな、でも一筋縄では行かないみたいだ。」
皆はヴィータが見ている方角を一斉に見る、そこでは数十体のマリアージュ達がこちらに向かっていた。
「目標発見、排除します。」
「排除します。」

 

「うわ……なんちゅう数や。」
「マリアージュは死体から作りだす兵士……恐らくユニウスセブンに眠っていたコーディネイター達を……。」
「いや、ユニウス戦役で死んだ者達も使っているのだろう、やりにくいだろうが……それでも僕達は戦うしかない、生きている者達の為に!」
そう言ってクロノはデュランダルを持ってマリアージュの部隊に突撃しようとした……が、はやてに手で制される。
「クロノ君、フェイトちゃん、アルフ……三人はアリューゼさんの所に行って、ここは私達に任せて。」
「はやて!」
「安心し!私達家族が揃えば負けるなんてありえへん!だから……きっちり話つけてくるんやで!」
「……!わかった!ありがとう皆!」
話が終わるとリインフォースはマリアージュの大群に向かって手をかざす。
「スターライト……ブレイカ―!」
次の瞬間、リインフォースの手から桃色の光線が放たれ、大半のマリアージュを飲み込む。
「行くぞ二人とも!」
「うん!」
「ああ!ここは頼んだよザフィーラ!」
そして爆炎にまぎれてフェイト、クロノ、アルフはアリューゼがいるであろう戦艦の奥の方へ駆けて行った。
「排除します。」
「排除します。」
「排除します。」
「うわー、またウジャウジャ沸いてきたな……リイン!ユニゾンするで!」
「はいです!」
そう言ってはやてはリインⅡを自分の体の中に取り込み、髪の毛の色をミルク色に変化させる。そしてヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ、リインフォース、アギトも構える。

 

「さあ行くで!ミッドチルダは私達が守る!」

 

一方外ではスウェン達が二機目のデストロイを破壊し、アークエンジェルのミリアリアに状況を確認していた。
『オペレーター!状況は!?』
『デストロイは残り二機だけど……向こうが新しいMS隊を投入して来ている!早くしないと破砕作業が間に合わない!』
『うわー!ケンプファーの部隊がコッチに来てるッス!』
『こりゃ休んでいる暇ねえな……気合入れなおすぞ!』
『そう言えばシンとキラはどうしたの!?』
『アイツ等は……。』

 

「はあああああ!!!」
『たあああああ!!!』
一方カシェルの駆るインフィニットジャスティスと死闘を繰り広げていたフデスティニーとフリーダムは舌戦を絡めながら激しい鍔競り合いを繰り広げていた。
『どうして君はこんな事をするんだ!!?アリューゼさんがやっている事は間違っているのに気付いていないのか!!?』
『俺は……あの人が間違っているなんてこれっぽっちも思っていない!プレシアを……母さんをあそこまで追い詰めた奴等が今ものうのうと生を享受している……そんな事許しておけると思うか!!』
「だからって無関係の人間を巻き込むなよ!」
『関係ない!?ハッ!お笑いだな!』
シンの発言を鼻で笑いながらカシェルはインフィニットジャスティスでフリーダムを蹴り飛ばし、デスティニーに格闘攻撃を連続して繰り出す。
『うわっ!!?』
「こ……この!!!」
『関係ない筈があるか……!ミッドの奴等はフクザワや母さんと姉さん達を陥れた奴等、スカリエッティや管理局のクソ共の存在を許した!こんな奴等に世界を管理させるなんて出来る筈がない!だから……だから俺達はあの世界を消し飛ばす!そしてマリアージュを王として新しい世界を治めさせる!腐って枯れ果てた花なんて吹き飛ばし新しく植え直せばいいんだよ!』
『…………!!!!』
キラはユニウスセブンに落下して行くフリーダムの中で、先程のカシェルの言葉を思い出していた。
(新しく植え直せか……もしかしたら僕も、彼と同じ考えだったのかもしれない、でも……!)
「ふざけんな……!あそこにはミゼットさんやレティさん、それにチンクだっているんだ!色んな人が今を一生懸命に生きているんだ!フクザワのようなクズ達と一緒にすんじゃねえ!」
シンはかつてミッドで暮らしていた時にお世話になった人達や出会った人達の顔を思い出していた。その人達との思い出があったからこそ、シンはこの激しい戦いの中でも怯むことなく勇敢に戦えているのだ。
『それでももう遅いんだよ!あの人は何十年も苦しんで苦しんで苦しみぬいて……いまやっとゴールが見えて来ているんだ!それに到達しなきゃあの人は次に進めない!進めないんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
対してカシェルも、血縁的に父親にあたるアリューゼに対して深い愛情を向けていた、そして父親や家族を苦しめた総てに対し激しい憎悪を抱き、それを力に変えてシンやキラ相手に互角以上に渡り合っていた。

 

(きっと彼はクルーゼと同じなんだ、総てを破壊しても有り余る憎しみを……癒す事ができないでいるんだ、なら……!)
次の瞬間、キラの脳内に種が割れるイメージが浮かび上がる、そしてフリーダムは背中から蒼い粒子をばら撒きながら再び飛び上がった。
『ご主人さま!まだ行けるの!!?』
『うん!彼は僕達が止める!終わらせるんだこんな事は!』
そしてそのままインフィニットジャスティスに突撃する、それに気付いたカシェルは背中に装備していたファトゥム01をフリーダムに向けて発射した!
『だああああああ!!!!』
ファトゥム01の先端はフリーダムのコックピットのすぐ右隣を貫いた、しかしキラは怯むことなくファトゥム01を放り出しインフィニットジャスティスに取り付いた。
『だああああああああ!!!!』
『は……放せ!うわあああああああ!!!!?』
「キラさん!?」
「フリーダム!」
そしてフリーダムガンダムは最後の力を振り絞ってインフィニットジャスティスを捕まえたまま、ユニウスセブンの地表に激突した。

 

「キラさん!!フリーダム!!カシェル!!」
シンは地表にデスティニーガンダムを下し、機体から降りてコックピットで気絶していたキラとカシェルを救い出した。
「う……シン……彼は……?」
「大丈夫です!カシェルはまだ生きていますよ、気絶していますけど……今ドムトルーパー隊がこっちに向かっています。」
「そう、よかった……。」
キラは一安心した後、痛む体を必死に起こして再起不能になったフリーダムとジャスティスを見る。
「ありがとうフリーダム、お疲れ様……。」
「それじゃ俺、スウェンやフェイトを助けに行きます、ここは任せました。」
そう言い残してシンは再びデスティニーガンダムに乗り込み、戦場に戻って行った。

 

「頼んだよシン……。」
「う……。」
その時、キラの横で気絶していたカシェルが目を覚ました。
「目は覚めた?ごめんね、僕も必死だったから……。」
「俺は……負けたのか……。」
カシェルは自分の負けを悟り瞳から涙を流していた。
「カシェル君……僕は……花を守るよ、吹き飛ばされないように、もう枯れさせないように……それが僕の、皆の戦いなんだ。」
キラは決意に満ちた表情で自分達を迎えに来たドムトルーパーを見つめていた……。

 

その頃戦艦時の方舟内部では、はやて達がマリアージュ隊と激しい戦闘を繰り広げていた。
「轟天爆砕!ギガントシュラーク!!!」

 

ボッコオオオオオン!!!!!!

 

「ちょっとヴィータちゃん!もうちょっと加減して!」
「何かの拍子で空気が漏れたらどうするんだ!」
「わ、わりぃ……。」
「でも一向に減らへんな敵さんも……おや?」
するとはやてはマリアージュ達が後ろから来る何者かを通すように通路の両端に移動していた。そしてはやて達の目の前にバリアジャケットに身を包んだフェリシアとエール、ソード、ランチャーが現われた。
「貴様……!フェリシアか!」
「八神家勢ぞろいって訳ね……しょうがない、こうなったらIWSPモードを使うよアンタ達!」
「「「はい!!」」」
そう言ってエールら三人のユニゾンデバイスはフェリシアの体の中に入って行った。
「三体同時にユニゾンやて!?」
「そういう事が出来るようになっているのよ私の体は、お父さんの邪魔はさせない!」
そう言いながらフェリシアは右腕にガトリングガンを召喚し、銃弾をはやて達に向けて放った。
「盾。」
その攻撃をリインフォースがシールドで防ぐ。
「スウェンが使っていたアレかいな……こりゃ一筋縄では行かんな。」
「主、それでもやるしかありません。」
「うん、みんな行くで!とっとと終わらせて家に帰るんや!」
「「「「「『はい!!』」」」」」

 

その頃フェイト達三人は途中で現れるマリアージュ達を撃破しながら戦艦の奥へ奥へと進んでいた、そして……。

 

「ここが……最深部か?」
「まるでお城の中みたいだねぇ、時の庭園を思い出すよ。」
三人は豪華に装飾された王座のある大きな部屋にやって来た。
「……!誰かいる!」
その時フェイトは王座の後ろに人の気配を感じ取った。
「ほう……よく気が付いたな。」
すると王座の後ろからアリューゼが現われ、フェイト達と対峙する。
「アリューゼ・テスタロッサ……アナタを逮捕します、今自首すればアナタの罪は……。」
「これだけの事をしておいて罪が軽くなるのか?管理局の法とは穴だらけなのだな。」
「くっ……!」
クロノを完全に言いくるめた後、アリューゼはジッと自分を見つめているフェイトに視線を向ける。
「やれやれ……こういう事にならない為に手間暇かけたというのに……結局こうなってしまったか……。」
「……アリューゼさん、もうやめてください、こんな事をしたって母さんは喜んだりは……。」
「ああ、喜ばないだろうね、だって彼女は“死んでしまったから”、“あいつらが原因”で。」
アリューゼは冷たい殺気を放ちながら上着を脱ぎ捨て鍛え上げた傷だらけの上半身をフェイトに披露する。
「な……!?どういう鍛え方したらあんな風になるんだい!!!?」
「直向きさがあれば人はどこまでも強くなれるのだよ、コーディネイターやエクステンデッドじゃなくても、魔法が使えなくてもね、さあ……来たまえ!!!」
アリューゼは気合を入れる為その場で足踏みする、すると彼を中心に隕石が落ちたような衝撃が発生し、フェイト達は思わず怯む。
「気を付けろ……あの人は強いぞ!」
「ああ……行くよフェイト!」
「う……うん!」

 

この戦いがアリューゼとフェイトにとって最後の“親子喧嘩”になるのだった。

 

ミッドチルダ崩壊まで……後14時間。