~ジオン公国の光芒~_CSA ◆NXh03Plp3g氏_『先生』救出作戦 Part-2

Last-modified: 2009-03-19 (木) 14:40:44

バシャーッ

 

突然、巨塔のその先端部分が、真一文字に切断された。
文字通りにである。
ちょうど、容器の蓋を外したかのような状態で、フロアの大半を占めるその部屋が露わになった。

 

それを成したばかりの対装甲レーザーカッターの銃身を下ろしながら、青と白に塗り分けられたMSは、
まるで女性の髪のような、ピンク色の気流制御ウィングをたなびかせつつ、
その右手を切り取られたビルのフロアへと伸ばす。
その手のひらから、1人の若い、顔にあどけなさを残す女性が、床に降り立った。
癖のある長髪を後ろでまとめて縛り、かけていたゴーグルを額に上げる。

 

私設警備隊だろうか、連合のそれとは明らかに違うカラーリングと装備のウィンダムが、
突然の襲撃者であるMSに向かって攻撃を敢行しようとする。
だが、ビルに直撃する危険性があるため、射撃武器は使えない。
エールストライカーのビームサーベルを手に向かってくる。
だが、次の瞬間、ウィンダムは腕や背部スラスターを破壊され、すべて沈黙させられていた。
その周囲を、青色の遠隔機動銃──ドラグーンが舞っている。

 

床に降り立った女性は、その小柄な身体を生かした俊敏な格闘術で、2人の黒いスーツを着た男を倒すと、
その男らによって連れ出されようとしていた、半裸姿の男性に近づい た。
男性はボロボロで、自力でたって歩くことすら覚束ない。
女性は男性の腕を自分の腕にかけさせて、立ち上がらせようとする。

 

貴女は、いえ、貴女方は、一体?
 男性は唖然として、女性に訊ねる。
「戦友、かな?」
 女性にしては、男っぽい口調で、ゴーグルの彼女は答えた。

 

戦友? 私の?
 男性が理解できないと言うように、混乱した表情で聞き返すと、女性はおどけたように笑う。
「まぁ、ここでお前がいなくなると困るやつがいっぱい居るってことさ」
 女性はそう言うと、男性を担いで、モビルスーツが待っている壁へと近づく。

 

MSは腕で壁の一部を崩すと、胸部をフロアに近づけて、コクピットハッチを開いた。
「はやく、急いでください」
えっ、キラ・ヤマト……?
 そのパイロットの姿を見た男性は、始めそう呟いた。
だが、その声は鈴を鳴らすような少女のものだった。よく見れば顔つきも、女性らしく円い。
「まぁ、しょうがないですね。皆さん初対面ではそういいますから」
少女パイロットは、そう言って苦笑する。
「ちょっと荒いよ!」
ゴーグルの女性の方がそう言った。男性をコクピットのデッドスペースに押し込むと、
自分もシートを挟んで反対側に転がり込んだ。
ぐっ
「すみません、少し我慢しててください」
少女パイロットはコクピットハッチを閉じつつ、そう言った。
MSはドラグーンを回収しつつ、上昇する。
追撃してきたウィンダムを、あざ笑うようにやすやすと振り切った。

 
 

「『ギメイノウタヒメ』より『メガミノイモウト』へ、“先生”の確保に成功しました」
『了解。ご苦労様でした』
 MSの通信用ディスプレィに、仮面をつけた、妙齢の女性の姿が現れた。

 

『これで我がジオンは、あと10年は戦えますね』