SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_『先生』救出作戦 Part-1

Last-modified: 2009-03-19 (木) 13:09:59

「何か、私達に言う事はありませんか?」

 

灰色のツーピースを着てブロンドを揺らす少女にそう問われ、私は当惑した風を装い首を傾げた。
ダイアモンドテクノロジー本社ビル最上階に設けられたCEOのオフィスは眺めが良い事で有名だが、
今日は灰色の空と雨しか見えない。

 

此処から逃げ出したい。

 

「は……『逆シン』も25を越え27スレ目に到達し、1スレ目から拙作を投稿してきた身としては
 喜ばしいといいますか、肩の荷が下りて安堵しているというか……」
『そういう問題ではない』

 

立体プロジェクターに投影された人物が、苛立たしげに私の話を遮った。
190超の長身を揺るがさずに佇む女性が、黒髪のロングストレートにほっそりとした指を這わせる。
黒装はボディラインを細く見せる効果があるが、男1人を片腕で持ち上げる彼女には余り意味がない。

 

プロジェクターを通しても、発達した筋肉、骨格は誤魔化しようがないのだ。

 

『古株を気取る貴様の怠惰により、よからぬ風潮が野放しになっているのだ』
「特に私に関する中傷は看過できません。
 提供して頂いたイラストを見ても、そのような事実はありませんし。どうするつもりなのです?」
「……まあ、流石に抉れ胸とかノッポマッチョというのは酷いなと思わないでもありませんが、
 他のむっちり、ないし隠れボインの方々と比べると戦力差はいかんともし難く、
 かく言う私も巨乳が」

 

全身を電撃が駆け抜け、私は床に転がった。

 

言葉にならない声を上げてのたうつ私に暴徒鎮圧用のテーザーガンを手にした少女が歩み寄る。
銃先端と自分の身体を繋ぐ2本のワイヤーが涙で霞んだ。すぐ傍に膝を突き、少女が微笑む。

 

「巨乳が、なんです?」
きっ、巨乳なんてのは嫌いで、あんな美しさの欠片もない、卑猥なだけの汚らしい脂肪組織に
 群がる男達の気が知れないと申し上げようとしたのです……
「あらあら、随分手厳しいご意見をお持ちなのですね。では、それを行動で示されてはいかがでしょう」

 

  目の焦点が定まらない
       自分の呼吸音が擦り切れたテープのように聞こえている
    先程 のショックで喘息が悪化したかもしれない。
うつ伏せになり、激しく咳きこんだ。

 

執務机に戻った少女が、インターフォンのスイッチを入れる。
「警備部、『先生』が体調を崩されたようです。医務室までお連れして下さい」
『これ以上、余を失望させるな。いいな』
 傾いた視界の中で立体映像が消えていく。ひとまずこれで勘弁してやるという事だろう。

 

明日から私は胸が可哀想な人達を讃え、胸が夢一杯な人達を貶める話を書かねばならない。

 

それでも……

 

 書類にサインしている少女に聞こえないよう、転がった私は唇だけ動かす。

 

それでも……巨乳、最高……っ

 

 震える瞼を閉じた私には、机から顔を上げた少女の視線を感じ取ることが出来なかった。