「んぐんぐんぐ、……っぷはーぁ! かぁぁーっ、ポン酒のグビ飲みはやっぱキクぜぇー!」
「……いいのか、まだ病人扱いなんだろう」
「うっせ! 酒でも飲んでなきゃやってられるかってんだよ!」
ガンダニュウム合金にトラトラトラしてから約一か月、まだパトリック・コーラサワーは入院していた。
怪我はもうとっくに治っているのだが、まだ退院許可がおりていないのだ。
「あ? てめぇにわかっかよ? 話からほったらかしにされてる苦痛ってのがよ?」
「からみ酒か、お前」
「華々しくデビューしてすぐ二軍に叩き落とされた選手の気持ちがわかるかってんだよォォ」
「さらに愚痴上戸か」
「うぃーヒック、おいちんちくりん、テーブルの上のタバコ取ってくれ」
ベッドの上にあぐらをかいて、右手に日本酒一升瓶、左手にタバコのコーラサワー。
パジャマも着崩れしていてハラマキが見えてたりなんかしている上に、ヒゲも剃ってないので表情もかなりワイルドになっている。
これで耳に赤ペンでも挟めば、競馬に負けて駅前でクダまいているおっさんとまったく変わりないであろう。
「ざけんじゃねーっての、な? お前もそう思うだろちんちくりん?」
「俺はちんちくりんという名前じゃない。ヒイロ・ユイだ」
「ケッ、だから何だ、俺はパトリック・コーラサワー、スペシャルで二千回だ。うぃっく」
「お前、本当にAEUでエースだったのか」
トレーズ・クシュリナーダやゼクス・マーキスがコイツを見たら果たしてどう言うやら。
間違いなく「エレガントじゃないな」「軍人、いや男としてあるまじき姿だ」と一刀両断にされたことだろうな……とヒイロは思った。
「俺だってよぉぉぉう、活躍してぇんだよぉぉおう、ヒック」
今度はコーラサワー、ちょっと涙目。
この酒癖の悪さ、絶対に居酒屋などで隣席したくないタイプである。
「検温の時間でーす……って、何してるんですかコーラサワーさん!」
と、そこへ看護婦が病室に入ってきた。
「あ? 検便? 検尿? ひっくぅ」
「検温です! ななななんでお酒なんか、ああっタバコまで!」
「うるへうるへうるへ、とっとと退院させろよぅ、俺はもう健康だぞぉぉぉ」
「だだだ、だめです! 病院内でなんてことするんですかあ!」
マジメにコーラサワーをたしなめる看護婦さんだが、ハッキリ言って無駄な行為である。
いくら怒ろうが制止しようが、彼を押しとどめることなどできようはずがない。
「だいたいどこからお酒とタバコなんて持ってきたんですか!」
「うーるーせーい! おれはあああ、スペシャルだあああ! その身で体験してみっか、こんちしょぉぉぉ!」
「きゃああああーっ!」
「逃げるかあああぁ、こんの根性なしめぇぇ、うぃーっく」
ガバッとベッドの上に立ちあがると、コーラサワーは中○きんに君ばりに上半身裸に。
悲鳴をあげて病室から逃げだす看護婦を、誰が責められようか。
「……もしもし、五飛か」
そんな騒ぎを横眼で見ながら、ヒイロは携帯電話を取り出して五飛に連絡。
病院内で酒とタバコを楽しむコーラサワーもコーラサワーだが、携帯を堂々と使うヒイロもヒイロである。
『ヒイロか。どうだ奴は?』
「……元気だ。お前の差し入れも喜んでいる。だが」
「うぉぉぉぉ、ヒイック、俺はスペシャルなんだああ、模擬戦二千回なんだあああぁ、超エースなんだぁぁぁぁあ!」
「……退院はもう少し先に延ばしたほうがいい」
コーラサワーの社会復帰、また延期――
【あとがき】
放送日なんでコンニチワ、ワイルドコーラサワーに思いをはせつつサヨウナラ。