プリベンターは統一政府の内閣直属の組織である。
さらに言えば、時の大統領のみが、この組織に対しての全責任を持つ。
尤も、その活動においては、プリベンターのリーダーが全権を持っているが。
組織そのものは、統一政府が成立直後に設立され、働きかけたのは旧OZのメンバーで、トレーズ・クシュリナーダの腹心とも言われたレディ・アンという若い女性である。
MS(モビルスーツ)という機動兵器が全面廃止され、さらに軍隊という武力集団が一端解体、治安維持と警備にその活動目的を変えた今、おそらく単純な戦闘力においては、構成メンバーから見ても、最強の公的武力組織であると言える。
戦争という解決手段を放棄する、という選択をした人類にすれば、ある意味、無意味で不必要な組織に思える。
だが実際、統一政府は成立直後であり、未だ紛争の火種が世界各地で完全に鎮火していない以上、発火の前に、また延焼拡大を速やかに防ぐために、どうしても『強力な武力』を備えた集団は必ず要るのだった。
プリベンターの長であるレディ・アン曰く、「ドブさらいの組織」。
現場のリーダーであるサリィ・ポォ曰く、「昔の日本のジダイゲキ風に言えば、隠密同心みたいなものね」。
とにもかくにも、プリベンターは昨日も、今日も、そして明日も、世界の平和を裏から守るために、奮闘をしている。
戦闘力と、そして個性に溢れた面子でもって。
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パトリック・コーラサワー。
年齢は推定29~35歳。
出身はAEUフランス、元AEU軍MS部隊のエースパイロット。
二つ名は「不死身のコーラサワー」、もしくは「幸せのコーラサワー」。
プリベンターにおいては唯一の既婚者で、妻は軍時代の元上司、天才の異名を取ったカティ・マネキン。
結婚後は公式にはそれぞれ別姓を使っている。
コードネームはプリベンター・バカ。
もちろん本人未公認である。
性格は簡単に言えば、ポジティブな自己中心男。
自らを天才と断じて憚らず、己の行動に一切の疑問な悩みを持たない。
操縦テクニックの才能は豊かで、AEU軍時代は模擬戦で2000回も不敗という前人未到の記録を打ち立て、新型MS(モビルスーツ)のテストパイロットに選ばれたこともある、エリートと呼ぶに十分な実績を残している。
正月早々に川で寒中水泳をしたり、入院中に散りゆく雲の数を数えたりと奇行が時折目立つ。
全身に自信が満ち溢れているが、その出所は不明。
AEU軍解体により退役したが、当時の階級は少尉。
活躍の割に階級が低いと言われることがあり、様々な揉め事を起こして、昇進と降格を交互に繰り返してきたからだと噂されているが、これは正しくはない。
確かに、軍の上層部に比べて人格面で覚えが良くなかったのはレッキとした事実だが、実際は寄せ集め感の強かったAEU軍(と、言うよりAEUそのもの)のバランス人事と、士官学校卒ではないのが最大の理由である。
なお、OZが勢力を各方面に拡大中、スカウトの話も持ち上がったのだが、性格に難ありとして見送られている。
また、コーラサワー自身もOZを快く思っていなかった、という情報もある(ソースは当時の彼女、ちなみに複数の証言有り)。
パイロットとしての特徴は、直観的でありながら、動きそのものは理に反していないという点にある。
テストパイロットに度々選ばれたというのは、そういうところを評価されてのことである。
射撃、格闘、ともに技術水準は高く、小隊指揮の能力にはいささかの疑問符がつくものの、作戦の実行役としては(本人の意図は別にして)優れており、火急速やかなる判断が求められる土壇場においては、スタンドプレイからの華麗な爆走ドリブルを決めて大逆転、という奇跡を度々起こしている。
強運から幸運、悪運、様々な女神の寵愛を受けているとさえ言われるが、本人はあくまで実力であると強弁している。
プリベンターにはレディ・アンの誘いで、サリィ・ポォと張五飛の後に加入。
レディ・アンとどういう繋がりがあったかは一切合財不明である。
ちなみに、レディ・アンは彼の妻であるカティ・マネキンをはじめ、数多くの知人がいる。
彼女も実に謎である。
人間関係は単純にして複雑。
とにかく慕われているということもなく、嫌われているわけでもない。
二十近く歳の離れたガンダムパイロット達からは何かにつけ皮肉られたり「コイツダメだ認定」されているが、心の底から馬鹿にされているということはない。
プリベンター内でよく言葉を交わすのはデュオ・マックスウェルであり、コーラサワーのボケ(本人は真面目)とデュオのツッコミ(本人は半ば嫌々)はプリベンターの日常茶飯事となっている。
レディ・アンの現在の秘書であるミレイナ・ヴァスティの格好のおもち……遊び相手であり、張五飛には事件解決の手段として中国拳法の秘中の秘儀である「人間核弾頭」の弾として(無理矢理)使われている。
サリィ・ポォにとってはグラハム・エーカーと並ぶ頭痛の種で、ヒルデ・シュバイカーの必殺技であるフライパンアタックの最大の犠牲者でもある。
グラハム・エーカーとはプリベンター内のライバルで、
競馬場のターフでがっぷり四つに組みつつ見えないロープに振りあってるかの如き迷勝負を勝手に繰り広げている。
また、他人を自らつけたあだ名で呼ぶことが多く、デュオは「みつあみおさげ」、ヒイロは「ちんちくりん」、カトルは「坊ちゃん」、グラハムは「ナルハム野郎」、ジョシュアは「アラスカ野」、サリィは「オデコ娘一号」、ヒルデは「オデコ娘二号」、ミレイナは「オデコ娘三号」等々。
かつては数多くの彼女というか愛人がおり、その全ての名前を記憶しているというトンデモな異性関係を誇っていたが、プリベンターに入ってからは自重(自己申告)しており、カティと結婚が決まってからは一切他者に手を出してはいない。
なお、プリベンターの女子連には加入当時からまったく食指を動かしていなかったが、これは彼曰く「好みというわけではない」とのこと。
どうやらキャラデザインの違いがポイントうわらばばばばば。
AEU時代の乗機はイナクト、ジンクス等。
プリベンターメンバーとなってからは、MS(ミカンスーツ)のネーブルバレンシアを経て、ビリー・カタギリが組み上げた専用機のMS(ミカンスーツ)「シークヮサー」となっている。
とにかく、プリベンター内の問題児。
三十代でも問題児。
功績は実は大きいものの、やっぱりそれでも問題児。
それがパトリック・コーラサワー、この物語の主人公……である。
【あとがき】
コンバンハ。
この設定はあくまで当物語におけるもので、謂わばパロディであり、各キャラクター、ガンダムの世界観を馬鹿にしているわけではないことを申告しておきます。
では次回はグラハム達ということでサヨウナラ。