00-W_土曜日氏_62

Last-modified: 2009-01-27 (火) 20:20:09
 

 プリベンターは極東の島国のとある海辺にやってきている。
 何故か、それはえーとえーと、新スレなので一応説明しておこうかと思ったけど面倒臭いのでやめておく。
 ぶっちゃけくどいし今更だし。

 

「さて、それではカタをつけるとしますかね」
「相手が生き物でないという可能性が出た以上、多少強引でも仕方ありませんね」

 

 デュオ・マックスウェルとカトル・ラバーバ・ウィナーは砂浜で、足元に打ち寄せる波を見やりつつ言葉を交わした。
 昨晩の夕食時、コーラサワーがポツリと呟いた一言がきっかけとなり、手探り状態を脱することが出来た。
 巨大カツオノエボシの直接的被害に遭った人間がいないという事実、
 これはすなわち、巨大カツオノエボシがその大きさに見合った触手を持っていない可能性があるということ。
 さらに推測すると、つまりは巨大カツオノエボシは「本当はカツオノエボシではない」ことになる。

 

「二人とも、海の具合はどう?」
「いい感じに穏やかだな。で、そっちは?」
「シーリンを通じてレディに連絡が取れたわ、すぐに手配するって」

 

 プリベンターの現場のリーダー、サリィ・ポォは昨晩決断した。
 巨大カツオノエボシが偽物であるという疑惑が浮かんだ以上、より突っ込んで解明を行わねばならないと判断したのだ。
 カツオノエボシが出るまで待ってそこを押さえるというモグラ叩き作戦を捨て、周辺海域を押さえて海中を虱潰しに当たっていく絨毯爆撃作戦に変更したわけだ。

 

「海洋警備隊を動かしたんですか?」
「さすがに私たちだけじゃ数が足りないからね」

 

 海洋警備隊とは、まぁ海の警察と思ってもらって差し支えない。
 潜水艦を含む専用の船舶と装備を持ち、「軍隊」が無くなった現在の世界に置いて「戦力」的に見れば単純に最強組織であろう。

 

「MS(ミカンスーツ)は?」
「五飛に頼んでこっちに人数分持ってきてもらうことにしたわ」
「水中用に整備は出来てるんですか?」
「カタギリ博士によると、バックパックを交換するだけで全環境に対応出来るそうだから問題ないでしょう」

 

 世紀の天才ビリー・カタギリによるMS(ミカンスーツ)はミカンエンジンで動く超スグレモノ。
 宇宙でも空でも地上でも水中でもフルに対応出来ちゃうトンデモな代物なのだ。
 正直、武器は捨てたとか何とか言ってもこういったモノがあるかないかでやり方は全く違ってくる。
 何しろプリベンターには世界中でもトップレベルの「MS(これはモビルスーツ)乗り」が集っているわけだし。

 

「時間的に見て遅くとも今日の三時ころまでにはこちらに着くと思うわ」
「よっしゃ!」

 

 パン、とデュオは掌を音高く叩き合わせた。
 顔には気合いが満ちている。
 何だかんだで方針が決まって動くとなれば、自然と活力が湧いてくるのが人というものである。

 

「五飛も加わるんですね、サリィさん」
「そうよ」
「一人使い物にならないからな」

 

 デュオが言う『一人』とは、アラスカ野ことジョシュア・エドワーズさんのこと。
 ここに来るなり調子こいて海中に突撃したはいいが、
 共に行ったグラハムのペースについていけずに体力を使い果たし、リタイアしてしまったのだ。
 まったくもってデュオの言う通り使い物にならんヤツであることよ。

 

「彼は?」
「あのバカならまだ寝てるぜ」

 

 『バカ』、それすなわちパトリック・コーラサワーさん。
 昨日夕食で腹いっぱいカニを食べたコーラさんは今、現地本部(旅館の一室)で高イビキをかいている最中。
 今は午前の10時過ぎなので完全なる朝寝坊なのだが、起こしてもうるさいだけなのでサリィはほったらかしにしている。
 世界平和を守る隠密同心とは思えぬルーズさと突っ込むなかれ、普通の出勤とはわけが違う。
 事件現地に出張ったなら出張ったなりに扱いを変えないとやってられないんだから。
 まぁコーラさんは朝はむしろ早い方なので、今回に限って言えば朝寝は彼の怠慢ではある。

 

「もう一人のバカはあそこ」
「え?」

 

 サリィはデュオの指差した方を見た。
 海岸の奥、岬状にちょっと出っ張った岩地がある。

 

「トレーニングだとか何とか言ってあそこら辺を走ってる……と思う」
「……元気ね」
「血の気が多いとかいうレベルじゃないですね」
「だからバカなんだよ」

 

 もう一人のバカ、はいご存じエーカーさんちのグラハム君である。
 体の頑丈さならコーラサワーに一歩劣っているかもしれないが、単純な体力ならグラハムの方が断然上であろう。
 沖合まで泳いでピンピンしているのだからなまじのパワーではない、さしゅがアスラ、おっと失礼さすが阿修羅。

 

「こっち管轄の海洋警備隊責任者のそろそろ来るわ、旅館に戻って具体的な作戦を練りましょう」
「りょーかい」

 

 三人は旅館へと足を向けた。
 さぁ、巨大カツオノエボシ退治はいよいよスタートラインで発走前。
 少年マンガ的にここでタコ次回もとい以下次回、あしからず。

 

 で、肝心のコーラサワーさんは。

 

「ムニャムニャ大佐ぁあ、もう食べれませんん……」

 

 朝寝で夢の中なのだった。
 はよ起きろバーロー。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――

 

 

【あとがき】
 コンバンハ。
 あれ、何時の間にオリンピック始まったんであれれサヨウナラ。

 
 

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