アザディスタンの砂漠。
そこでは今まさに、世界の隠密同心プリベンターと、世紀のいらんことしいアリー・アル・サーシェスの対決が行われているのだった。
「はははははは、うわはははははは!」
哄笑するアリー。
それはまさに戦鬼そのものだった。
◆ ◆ ◆
「ぬははははははは!」
アリーの笑いは止まらない。
そりゃさぞかし気持ち良いであろう、今までコケにされてた相手に優位に立っているのだ。
しかし『ぬはははは』って笑いは何だかヤザン・ゲーブルのようでもありますな。
ぬははははは。
「どうしたどうした、これで終いかぁ? プリベンターのミナサマガタよぉ!」
アルケーの周囲には、黄色に輝く分離小型式武装のハッサク、そしてバリヤー代わりの異臭靴下がふわふわと浮いている。
この光景だけ見るとなんともマヌケだが、実際ガンダムパイロットたちを手玉にとりまくっているのだからたまらない。
格好が悪くても強けりゃオッケー、むしろこれくらいの方が悪役として相応しいのかもしれない。
「うるせー、うるせーうるせー! このひょろひょろ赤鬼が! 偉そうにしやがって!」
「強敵! 倒すべし! このグラハム・ブシドー・エーカーが冥府に送ってやろう!」
トリモチガンを乱射するコーラ機。
その全てがクツシタシールドに阻まれるが、同時にアルケーの脚をわずかだが鈍らせることに成功した。
産まれた隙を見逃さず、電磁警棒を構えなおして突進するグラハムブシドー機。
おお、何だかんだで連携攻撃である。
個人プレーが生み出した偶然の流れだが、決まりゃ結構いい感じ。
「おらぁ! ハッサクゥ!」
「ぬうっ、この蜜柑玉めっ!」
あくまで決まりゃの話。
だがそこまでアリーも迂闊ではない。
すかさずハッサクにグラハムブシドーを攻撃させ、その間に距離を取る。
「ふふん、攻め手が無いって感じだなおい!」
「Tais-toi!(注1) その口閉じやがれ!」 注1:Tais-toi=フランス語で「うるせぇ、黙れ」とかいう意味。
コーラさん、トリモチガンを引き続き乱射。
いや、乱射と言ってもちゃんと狙ってはいるのだが、何故かコーラさんには『乱射』という表現が似合う気がするこの頃ですがどうでしょうか。
「甘いってんだよ! まだまだ靴下は腐る程あんだぜぇ!」
太陽の光を浴びて、鈍く光る靴下の脂。
ああ汚い。
花○のアタ○クで今すぐ驚きの白さにしてやりたいくらいである。
「……くそっ、いったいどれだけアイツはシールド用の靴下を持っているっていうんだ!」
コーラサワーとグラハムに加勢すべく、デュオは自機にトリモチガンを構えさせて援護に走る。
さて、ここで思い出してもらいたい。
あれはかれこれ三ヶ月程前になるだろうか、このアザディスタン不審集団編の始まりの回、丁度アニメ本編でコーラさんが二期初登場した直後の話を。
レディ・アンからの報告書には何と書かれていたか。
アザディスタンに集まりつつある怪しい連中は何を持っていたか。
「あっ、そう言えば!」
「ああカトル、あの靴下はあの男のものだけではない。いくら何でも、一人であれだけたくさん汚れさせることが出来るものか」
トロワ・バートン、寒波。
いや、看破。
湧き続けるクツシタシールドの秘密を。
「そうか、集まった連中は揃って靴下を持っていた、って」
思えば、その靴下が理由で最初に疑ったのだ。
この事件の中心にいるのがアリー・アル・サーシェスではないのか、と。
「とにかく、数は多かろうが破れない盾などない」
「ああ、そもそもただの靴下だからな」
「攻めましょう、五人で囲めばいくら強敵でも倒せるはずです!」
ババッ、とフォーメーションを組み、アルケーに向けてトリモチガンを撃ち放つデュオ、トロワ、カトルの三機。
この辺りはさすがに阿吽の呼吸、共に肩を並べて戦場を駆け抜けた者同士の息の合い方である。
即席コンボのコーラさんやグラハムとはわけが違う。
「俺達もいくぞ、五飛」
「くっ、遅れを取るとは情けない限りだが」
ハッサクの攻撃を喰らってしまったヒイロと五飛もトリモチガンで攻勢に加わる。
粘着弾の影響でMS(ミカンスーツ)の動きが鈍くなっているが、それならそれで現状で出来る最大限の攻撃手段を選ぶ。
アリーがプロの傭兵ならば、彼らもまたプロの戦闘マンである。
「わーっはははははぁ! いいぜいいぜ、ビリビリくるぜこの感触! 戦いってのはこうでなくちゃあなぁ!」
しかしアリーは怯まない。
むしろ喜々として(ある意味鬼気として)ガンダムパイロットとコーラ、グラハムの攻撃を受けて立つ構え。
やはり只者ではない、この男は。
アリー・アル・サーシェスは伊達じゃない。
MS(ミカンスーツ)のひとつやふたつ、押し返してやる。
ぎっちょーん。
「そいやさぁー! ッフー! ッフー! ッフーッ!」
「メン! ドウ! コテ! ツキィー! チェーストオオオオオッ!」
ガンダムパイロットたちがクツシタシールドとハッサクをトリモチガンで無理矢理排除していく。
数の力には数の力で対抗、理屈ではない。
そしてそこにコーラサワーとグラハムブシドーがすかさず接近戦。
即席でも何でも、これは豪華な協奏曲コンボだ。
「ところがよぉお、ほいさぁ! とうりゃ! ほうれ!」
「一対一ではないのがいささか心苦しいが、強き相手には相応の手段を! 左右から挟みうちにする、私に合わせろ!」
「うるせー! 俺に命令すんな! つーか俺に合わせろナルハム野郎!」
アリー対コーラサワー&グラハムブシドー。
おそらく、というか100%、本編でこの対決は見れまい。
見れたらBlue-Ray100枚購入する。
いや、してもいい(←逃げ腰)。
「どうやらソンナコト・アルケーの方が機体として出来がいいみたいだなぁ! プリベンターさんよぉ!」
「ああん? 機体のパワー差なんぞ関係ねえ! 性力の差がそのまま本番での成功率の差じゃないのと同じだってんだよ!」
「敵が強ければ強い程、倒すことに価値が出る! このグラハム・ブシドー・エーカー、容赦なく叩き斬らせてもらう!」
さあ、オバカ三者のガチバトルはいよいよ最終局面へ。
以下次号!
プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
【あとがき】
コンバンハ。
ラノベ風味のアレはね、視点の問題をどうしたもんかと考え中サヨウナラ。