バンパンと手を鳴らしてプリベンター達の注目を集めると、サリィがコホンと咳払いをして口を開いた。
「皆聞いて、プリベンターにスポンサーが付くことになったわ」
「とうとう私達を認める団体がふごふぁっ」
「アラスカ野お前は黙ってろよ。やっぱり俺様のスペシャルな活躍のお陰だろ!!スポンサーって事はロゴ入りユニフォームとか、TV出演とかあるんだよな!」
コーラーサワーが目をキラキラ輝かせながらサリィの話に食い付いた。
「残念ながら違うと思うわ、何でも個人の申し出らしいの。シーリンから送られた資料によると、『昔仕えてた貧乏姫が、最近セレブになって言い出した戯言。国も無いから適当に搾り取るだけ搾り取っちゃいなさい』ですって…もうすぐ挨拶に来るそうよ」
手元にある資料を見ながらサリィは説明する。どうやらサリィもどんな人物か知らないようだ。それにしてもシーリン、ドSである。
「どんな形であれスポンサーが付くということは資金が入るという事。これで私のネーブルバレンシアにフラッグの様な魔改造を施せるということだ」
「何!?俺のネーブルにも羽を装備出来るという事か」
「そういう事になるな」
グラハムとヒイロ、2人仲良くガッツポーズ。
この2人、部分的には気が合うらしい。
「兎に角、一応地球圏統一国家が出来て国が無くなったとしても、相手は元お姫様。失礼の無いようにね」
ふぅ、とサリィは頭に手を置き溜め息を着いた。
もう、真剣に転職考えようかしら…そんな事を考えていると、コンコンとドアがノックされた。
どうやら待ち人が来たようだ。
一番近くにいたトロワがドアを開けた。
そこには黒髪の東洋、いや、中東美人が立っていた。
ブランド物のバッグに服、いかにもお金持ちといった感じに、思わずヒュウッとデュオが口笛を吹く。
「初めまして。私、マリナ=イスマイールと申します」
こうしてプリベンター達とマリナは出会ってしまった…
* * *
「で、どうしてウチのスポンサーに?」
マリナをソファに促しヒルデが出してくれたお茶を勧めながらサリィが聞いた。
この場の全員が知りたい事である。
こんな利益のない組織に出資するなんて、よっぽどの物好きか(みかん博士とか)何か裏がある以外に考えられないからだ。
「それは…」
マリナは辺りを見回し、カトルと目が合うとガシッとその手を掴んだ。
「貴方様のお陰です!」
「は、はい?」
そしてマリナは熱く語りだした。
面倒臭いので簡単に説明すると…
A.C.195年当時、貧困に喘いでいた中東のアザディスタン王国。
姫マリナは、ダメ元で中東諸国でも財力のあるウィナー家に資金援助を頼んだ所、あっさりOK。
それからというもの、国の財政も潤い経済も右肩上がりに上昇。
統一国家が出来た今、マリナの姫としての勤めも終わり、自身も事業を展開して、それも大成功。
貧乏姫から一躍トップセレブに大変身!というのを1時間に渡りマリナは大演説した。
「そして、ウィナー家、いえカトル様に恩返ししたいと思っていた所、プリベンターに所属しているのをシーリンから聞きまして、是非資金援助をさせていただきたく訪れたのです」
「は、はぁ…(父上が亡くなった時、自暴自棄であちこちに援助とか投資とか適当にしまくってたなんて、流石に初対面の人には言えないよねぇ…)」
一時間手を握られっぱなしのカトルは取りあえず笑ってみたが、ぎこちない笑みになってしまった。
「理由はわかりました、マリナ嬢。では、資金等の具体的な内容を…」
グラハムがニッコリ笑って差し出した手を、マリナはバシッと片手で払い除けた(片手はカトルの手を握ったまま)。
「触るな無礼者!成人以上が私の近くに寄るな!視界に入るな!」
「え?…ぐはぁっ!」
マリナは懐から護身用スタンガンを取り出し、グラハムに食らわせた。
バタリと倒れるグラハム。
折角まともに振る舞えたのに、哀れグラハム。
「おいおいお姉さーん、そんな物騒なもの使うなよっぐひゃあ」
「だから、その成熟仕切った筋肉を近付けないで!」
続けてスタンガンを食らうコーラーサワー。バタリと倒れ…
「い、いてぇじゃねぇか!!」
スタンガン位じゃ気絶しなかった、コーラーサワー。マリナに食ってかかる。
「そんな、嘘。私のスタンガンで気絶しないなんて、笑えない冗談だわ!」
「ぐひゃぁ!」
もう一度スタンガン攻撃。
流石に2度はきついのか、コーラーサワー撃沈。
「あ、あのぉ、援助は…」
アラスカ野=ジョシュアが恐る恐る声を挙げた……が、
「だから、誰が貴方達成人男性に援助するなんて言った―――――!!!」
スタンガン攻撃を食らい、アラスカ野も呆気なくダウン。
凍り付くガンダムパイロット達と、床で倒れる馬鹿3人。ハッと我に返ったマリナがニッコリと微笑む。
「勿論、貴方達のような可愛らし、いえ素敵なガンダムパイロットの皆さんには沢山出資致しますので安心して下さいね。それにしても…」
カトルの手をスリスリと擦りながら、うっとりとした目でマリナは話し始めた。
「スベスベのお肌に、発達仕切っていない筋肉、あどけない瞳……そこの緑のタンクトップの貴方!『俺がガンダムだ』って言ってみて」
カトルから手を離し、ヒイロに向かって指を指すマリナ。
やっと手を離して貰ったカトルは霧吹きタイプのエタノールを手に吹き掛け、丁寧に拭いた。
「な、何故俺が…」
突然のご指名にうろたえるヒイロ。
「早く!」
周りの『言わないとあの馬鹿達と同じ目に遭うぞ』という無言の圧力を感じ渋々ヒイロは口を開いた。
「お、お、俺が、ガンダムだ」
「あぁぁん、その無愛想で生意気な思春期特有の言い方、たまらないわぁ。 カトル様が守ってあげたい弟君タイプなら、タンクトップ君は無愛想だけどそこが可愛い少年タイプ! 様々なジャンルをカバーしあう完璧な5人組!!本当、貴方達みたいな美味しそうな子達の為ならお姉さん何でもしてあげちゃう!」
マリナ、完璧に別次元に飛んでいる。
ガンダムパイロット達はゾクリとした生命の危機を感じた。
戦場で感じるスリルに近い危機ではなく、とって食われるような、オカズにされちゃうような危機。
「成る程、スポンサーの真の狙いは俺達か」
「何分析してんだよ五飛。お、おい、カトル。お前沢山の姉ちゃんお陰で年上の扱いには慣れてるんだろ。お相手してやれよ」
「そ、そんな事言われたって嫌ですよ。なんか手を握られた時、気持ち悪かったし…」
「なら、トロワ」
「嫌だ、無理だ」
「何故、何がガンダムなんだ…ゼロ、教えてくれ…」
真っ青な顔でカタカタと震えるガンダムパイロット達とそれに迫るマリナ。
双方の様子を見ていたサリィは、チラリと資料に目を落とした。
良く見ると資料の一番下の方に小さく文字が書いてある。
『ただ、マリナ様は10代以上の男性を極度に嫌い、10代の少年が大好物なので注意して下さい』
要はショタコンという訳だ。しかも重度の。
今更言ってもしょうがないし、取りあえずスポンサーにはなってくれるようなので、サリィは自分の読み落としを見過ごす事にした。
(それに、たまには皆私を困らせる罰を受けるべきなのよ)
サリィは勝手に納得する事に決めた。
マリナ=イスマイール。
新たな変態にして、ガンダムパイロット達最大の敵をスポンサーに迎え、プリベンターは更に発展して行くのであった。
今日も地球はバカを除いて平和でありましたとさ。
【あとがき】
どうも毎週水曜日の人です。
今回はネタの都合上カトルが黒く無いですね。
マリナこんな性格にして良かったのかなぁ…でも20過ぎて10代の少年好きになるって絶対、ショタコ(ry
では。