00-W_水曜日氏_11

Last-modified: 2008-12-09 (火) 21:02:24
 

【注意!】
 今回のSSは18禁&女性向けな内容が含まれています。
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~前回までのあらすじ~
 秘密裏に作られたOZのMS工場がある、との情報を得たプリベンター達。
 そこで洞窟の中を探索する事になったが、なんと途中に分かれ道が!
 三手に分かれて調査したところ、ヒイロ・デュオ・コーラサワーのチームはハズレ。
 しかもプリベンター以外にもどうやら洞窟の中に人がいる様子。
 果たして彼等の運命は!?

 

 

「ちっ…ハズレか」

 

 五飛は自分の目の前の石壁を睨みながら舌打ちした。

 

「な、なにぎゃ『ハズレか』だ。こここ、こっちはし、死にきゃけたんだぞ!」

 

 五飛の足元でへばっているジョシュア。
 先程『先に行って見てこい』と五飛に投げ飛ばされてそのまま石壁に激突。
 歯を何本か折ったらしく口元を押さえている。
 あっちの世界では雑魚キャラAだが、こっちの世界では彼も驚異の生命力を得る。
 これも全てコーラサワーさんのお陰なのだろうか。

 

「そうと分かれば後はカトル達だな。アタリか今回の情報自体が空振りか……おい、プリベンター・マヌケ。さっさとヒイロ達と合流するぞ」

 

 そういうと五飛は踵を返し歩き始めた。

 

「おりゃは、マヌケじゃにゃいぃぃ」

 

 ジョシュアも立ち上がり五飛の後を追う。
 歯は折ったものの、後はかすり傷一つ無いようだ。
 人間、健康第一。

 

「……しかし、何故カトル達に通信出来ないんだ」

 

 五飛は呟いた。

 

          *          *          *

 

 ―五飛の独白から遡ること数十分前―

 

「おかしいなぁ。デュオ達に定期連絡をいれようとしたのに繋がらないんです……」

 

 カトルは通信機をいじりながら、前方を歩くトロワとグラハムに話かけた。

 

「電波の状態が悪いんじゃないのか?」

 

 グラハムが何て事のないような顔で答える。

 

「まだ分かれてそんなにたってませんし、それは無いと思うんですけど」
「カトル、貸してみろ」
「あ、うん」

 

 カトルから通信機を受け取りいじり始めるトロワ。

 

「……カトル……」

 

 少し呆れた声でトロワは言った。

 

「何?トロワ」
「お前はちゃんと通信機のチェックをしたのか」
「して…な…い」

 

 最後は消え入るような声で答えた。
 ヒイロ達には注意をしておいて、自分は通信機のチェックを忘れていたのだから無理もない。

 

「この通信機自体が壊れている。次からは気を付けろ」

 

 そう言うとトロワはカトルに無線機を返してまた歩きだした。

 

「前髪君、その言い方は無いんじゃないか」

 

 年長者としてトロワを注意しようとしたグラハムを、カトルは制した。

 

「良いんですグラハムさん。悪いのは僕ですから…… それに、トロワは言い方は素っ気ないかもしれませんけど、本当はとても良い人ですし」

 

 カトルは笑ってみせたが、明らかに落ち込んでいるであろう笑みは見ている側としてはとても痛々しい。
 その場の雰囲気も何となく悪くなり、そんな状況を打開しようとグラハムは話題を変える事にした。

 

「まぁ、ミスは誰にでもある。私がユニオンにいた頃に、ハワードという人物がいてな……」

 

 その時、洞窟の中でドーンと大きな音がした。

 

「な、なんでしょう、今のは?」
「きっとコーラサワーが悪さをして洞窟に穴でも開けたんだろう。で、さっきの話の続きだが」

 

 特に気に止める事も無く3人はまた歩き始めた。
 前の方でアメリカンジョークならぬユニオンジョークをかますグラハムと、それを聞くカトル。
 そしてトロワはというと、グラハム達の後ろを歩きながら先程のカトルとのやり取りを脳内で悶々と後悔していた。
 最も顔は持ち前のポーカーフェイスのお陰で、仏頂面のままだったが。

 

(グラハムに言われたように、先程俺はカトルに冷たく言ってしまったのだろうか…… 俺は特に責めた訳ではないのだが。しかし、カトルはこうして落ち込んでいる。ここは励ましの言葉をかけるべきなのだろう、例えば何だ『ミスは誰にでもある』いや、これはグラハムがさっき言っていたな…。『問題は結果じゃない、プロセスが大切なんだ』これもなにか違うな…。『次から頑張れば良いんだ』、『べ、別に怒って言った訳じゃないんだ
から』『ドンマイだにゃん』いや、流石にこれはないな。もう普通に『カトル、さっきはキツイ言い方をして悪かった』でいいか…しかし、そもそもどんな顔で言えばいい?)

 

 その時トロワは、キャスリンの言葉を思いだした。

 

『トロワ。笑顔笑顔!』

 

(笑顔、そう何事も笑顔が肝心だと何かの本に書いてあったな。こう、いや、こうか。口角はこれくらい上げるべきか。目尻はどうすべきか)

 

 真顔で何回も笑顔百面相をするトロワ。
 第三者がみたら相当シュールというか、寧ろ気持ち悪い。
 前では、カトルがグラハムの努力で少しずつ元気を取り戻しつつある。
 勿論トロワの脳内談義には気付いていない。
 というか、気付いてたら凄い。

 

「………髪、おい、前髪。おい、前髪!」
「な、なんだ」

 

 あまりに笑顔作りに集中していたせいで、トロワはグラハムに呼ばれていることに気付かなかった。
 幸い、カトル達と数メートル程距離が離れていて、顔を懐中電灯で照らされ無かったので、トロワの百面相がカトル達に見られる事は無かった。

 

「トロワどうしたの?何時もの君なら呼ばれたらすぐに反応するのに。もしかして、具合が悪いの?」

 

 トロワの顔色を伺うようにカトル達はトロワのもとに戻って来た。

 

「いや、平気だ」

 

 言うなら今だ、このタイミングを逃したら後は無い。と思い、トロワは口を開いた。

 

「カトル、さっきはキツイ言い方をして悪かった」

 

 カトルは目を見開いてとても驚いた顔をした。
 ついでにグラハムも口をあんぐりと開けて驚いていた。

 

「……何か、変な事を言ったか?」

 

 心配になって聞いてみる。
 言われて2人はハッと我にかえった。

 

「私は君の笑顔を初めて見た」
「そうそう。トロワって滅多に笑顔を見せてくれないから、驚いちゃったんだ。うん、有り難う。僕はもう平気だから。それでね、トロワ。グラハムさんが話があるんだって」

 

 そう言われると、グラハムはエヘンと咳払いをしてカトルとトロワを手招きし、自分の近くに寄せると小声で話始めた。

 

「私達の後ろを誰かがついてきているようだ」
「えっ!?」

 

 カトルが声に出して驚く。トロワも声に出しはしなかったが目を見開いた。

 

「確証はある。耳をすましてみたまえ」

 

 そう言うとグラハムは、タンタンタンとその場で足踏みをしてみた。
 数秒後、タンタンタンと同じような音が聞こえてくる。

 

「なんだ、こだまじゃないですか」

 

 カトルはホッとしたが、トロワにはカトルの声は聞こえていなかった。

 

(侵入者が居たのに気付かなかったとは。 狙いは何だ? この工場の管理者がプリベンターの命を狙って…いや、しかし今回の任務は一応世間には極秘の筈だ。だとしたら…洞窟、もしかして―)

 

 彼の脳裏には先週デュオから借りて観たDVDBOX『ぼ○ぼの』第37話が思い出されていた。

 

(し○っちゃう○じさんが!?)

 

 しまっ○ゃうおじさ○。
 その名の通り、悪い子を石で出来た押し入れ的な建造物の中にしまっちゃう、ピンク色の豹のようなおじさん。
 『はいはい、悪い子はどんどんしまっちゃおうねぇ』と、カミーユ=ビダンの良い声で囁くのが特徴的。
 ファンも多いが、同時に子供の頃のトラウマとなっている人も多い。

 

(いやまさかそんな筈は、あれは物語だ。だがしかし、本当にしま○ちゃうおじ○んが居ないとも言い切れない…… 本当にしまっ○ゃうおじさ○が実在するなら、俺に勝ち目は無い……)

 

 その時トロワはさっきまでその場に居た筈のカトルとグラハムが居ない事に気が付いた。

 

「カトル…グラハム?」

 

 呼んでみても返答は無い。

 

(まさか、2人は既にしまっち○う○じさんの魔の手に!?)

 

 そんな訳は無い。
 実際は、トロワが悶々と立ち止まって妄想している事に気が付かず、置いて行っちゃったのが正解。
 置いてけぼりにされちゃってる事にも気が付かず、トロワのスーパー妄想タイムは続く。

 

(非力なカトルならともかく、グラハムまで捕まるとは……はっ!もしかして、無線が繋がらないから分からないが、ヒイロ達もしまっちゃ○おじ○んにしまわれてしまったんじゃないか? 可能性は無くはない。何しろ相手は○まっちゃう○じさんだ。だとしたら、やっぱり俺もしまわれてしまうんだ)

 

 トロワはその場でガクリと膝をついた。
 すると自分達が来た道からダカダカと足音が近付いてくるではないか。
 しかも複数。
 トロワは銃を構えるのも忘れて頭を抱えた。

 

(嗚呼、し○っちゃうお○さんが来る……しまわれる)

 

 駆け足で近付いてきたしま○ちゃうおじ○ん(仮)は、そのままうずくまっていたトロワに気が付かず、彼にぶつかった。
 ドンという音とともに地面に頭をぶつけたトロワは、怖々相手の顔を見てみると、なんとそれは自分自身だった。

 

「な、しまっ○ゃうおじ○んは……俺?」

 

 頭をぶつけた痛みと目の前のドッペルゲンガーに、トロワの頭はパニックに陥った。
 視界がグラグラと歪む。
 トロワはそのまま気絶してしまった。

 

 そしてもう一人のトロワはというと、

 

「しまった。今ので足を挫いてしまって動けない……奴が、奴が来る」

 

 もう一人のトロワに遅れて到着したのは……カトルだった。

 

「んふ、駄目だなぁトロワ。世界を越えて逃げても無駄なんだよぅ。 さぁ、僕達の世界に帰って今夜はいっぱい愛しあおう」
「ま、待て。持ち帰るならそこで寝ているトロワを持ち帰れば良いだろう!?」

 

 焦ったトロワは目の前で気絶しているトロワを指差す。
 端から見たら相当奇妙な光景だろう。

 

「只のトロワに僕は興味なんて無いんだ。 第一忘れたのかい?君の初期の日記帳には君の方から僕を襲った事が書いてある。 僕はね、普段は嫌がってるけど、本当は君も僕を欲してるって事を分かってるのさ。 僕達は相思相愛。さぁ、トロワ、僕達の愛の巣へ帰ろう」

 

 そういうと、カトルはトロワの足首をガシッと掴み引きずり始めた。

 

「離せホ○!!俺はあんな世界に帰りたくなんかない。ここなら、俺はミンチにもされないし、人権も保証されている。ん、なんだ、俺の涙か…。でも、ぷにぱんの同人誌は読めなくなるのは困るな…だとしても、嫌だぁぁぁぁ」
「もう、トロワったらツンデレなんだからぁ。うふふ、そんな所も大好きだよぉ~」
「い、嫌だ。助けてくれぇぇぇぇ!前髪君も何故こんな時に発動しないんだぁぁぁぁ」

 

 こうして、トロワとカトルの世界を越えたリアル鬼ごっこは、カトルの勝利で終わった。
 そしてカトル達は洞窟内に突然出来た次元の狭間へ消えていったのだった…
 この後2人がどうなったかは誰も知らない。
 トロワが日記に書かなければの話だが。

 

          *          *          *

 

 ―――明かりが眩しい。外に出たのか?いや、これは蛍光灯か。しかし俺は、そうだ、『俺』を見て―――

 

「トロワ、気が付いたみたいだね」

 

 トロワが重い瞼を開けてみると、そこにはニッコリと微笑んでいるカトルがいた。

 

「カトル?無事だったのか!? MS工場は? 俺は、○まっちゃう○じさんだった俺は!?」
「トロワ、落ち着いて。順番に説明するから」

 

 ベッドから起き上がろうとしたトロワを制して、カトルはゆっくりと語り始めた。

 

「MS工場だけど、僕達の道がアタリのルートだったんだ。で、MS工場を発見した時に、僕達は君とはぐれてしまった事に気が付いた。取りあえず君と合流しようと戻ったら君が気絶していて、君をグラハムさんに運んでもらって、ヒイロ達と合流したんだ」

 

 そこから先はカトルの後ろにいたデュオが説明した。

 

「で、MS工場の破壊をしないといけないから、何故か気絶してるお前と歯を折ってたジョシュアはサリィの所、つまりここまで戻らせて、後は一人張り切ってたコーラサワーが爆弾持って、一気にドーンとやったわけだ」
「コーラサワーさんは爆発に巻き込まれて洞窟に生き埋めにされたんだけどね、今はそこで元気に寝てるよ」

 

 カトルの指差す方向には、包帯でグルグル巻きにされたコーラサワーがベッドの上でいびきをかいて眠っていた。

 

「だいたいの内容は分かった。だが…俺の見たもの…幻覚だと笑われるかもしれないが、もう一人の俺は何だったんだ?」
「それはTトロワだ」

 

 事後処理を終えて戻ってきたヒイロが言った。

 

「Tトロワ?」
「そうだ。この世界には、平行して存在する世界が幾つかある。その内の1つ、数ある世界の最底辺に属している世界のトロワにお前は会ったんだ。まぁ、一緒にその世界のカトルもいたから、そいつが無事に元の世界まで連れ帰っただろう」
「へぇ、もう一人の僕かぁ…会ってみたかったなぁ」

 

 カトルが夢見がちに呟く。

 

「いや、カトルは会わない方が良いと思うぞ。というか、俺もあっちの俺には会いたく無い」

 

 ヒイロと共に戻ってきた五飛が言う。

 

「なにせ、歩くソーラレイだもんなぁ」

 

 デュオが腹を抱えて笑う。
 その後、五飛に投げ飛ばされたのは言うまでもない。

 

「でも、どうしてヒイロ達はその『平行世界』の存在を知ってるんだい?」

 

 カトルの質問に、デュオが投げ飛ばされて戻ってきながら答える。

 

「いてて。それは、俺達も向こうのぷにぱ…ヒイロの同人誌目当てに、よく出掛けてるからな」
「同人誌…?」
「本だ!」

 

 カトルの問いに五飛とヒイロが即答する。
 何故か2人とも顔が赤い。

 

「へぇ。じゃあ向こうの世界ではヒイロは作家をしてるんだね」
「あ、ああ。…もうこの話はやめよう」

 

 ヒイロは視線をそらして頷いた。
 どうやらこれ以上の会話は厳禁のようだ。

 

「まぁともかく、今回の任務は一件落着よ。皆お疲れ様」

 

 サリィとヒルデがコーヒーを運んできてくれた。
 今回の任務は危険が伴うので、2人はずっと外のトレーラーで待機していたのだ。
 コーヒーを一口飲んだカトルが呟く。

 

「ねぇ、トロワ。○まっちゃう○じさんて何?」
「それは…」

 

 トロワは罰の悪そうな顔をした。
 DVDを貸したデュオは、ニヤニヤと笑っている。
 トロワはデュオの腹に一発、姉譲りの鉄拳パンチを加えた後「何でもない」と言うとコーヒーを口に含んだ。

 

(…でも僕、同人誌もし○っちゃうお○さんも何のことだか知ってるんだよねぇ)

 

 カトルは誰にも見られない所でクスリと笑った。

 
 

 ――今日も地球は馬鹿を除いて平和でありましたとさ。

 

 

【あとがき】
 私、普段はトロワスレを拝見しておりまして、アホ可愛いTトロワをどうしてもこっちに登場させたいがためにこんな長編になってしまいました。こんにちは。
 今回、Tトロワとの対比も兼ねて未だ真人間だったこっちのトロワのキャラ崩しに挑戦したんですが、ヒイロ以上にキャラに隙が無く、かなり無理矢理な展開になってしまいました。
 一応、反省はしてるけど後悔はしてないぜ!って事でここは一つ広い心で読んで下さい。
 コーラスレとTスレの連中はとても相性が良い気がするので、また機会があったら、性懲りもなく他のTスレの連中とも絡ませてやりたいなぁと企んでおります(『本スレが過疎る』とか怒られそうですがw)。
 では。

 
 

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