~前回までのあらすじ~
「『突如宇宙からやって来たウマタロス軍団(仮)によって、次々と動物の姿に変えられてしまったプリベンター達。
絶体絶命大ピンチ!
そこに現れた正義のヒーローコーラサワー。
彼は地球の未来のため、宇宙列車バンライナーを駆ってたった一人でウマタロス軍団(仮)に立ち向か
っていくのであった……』
どう。こっちの方が面白くね?俺様のヒーロー戦記!」
コーラサワーはニッと笑った。
「な・に・が面白いだ。俺達はMS工場探してるだけだろうが」
コーラサワーの頭にデュオがチョップを入れる。
最近はデュオの突っ込みもすっかり板についている。
後にこの能力がリドリロ……というかリリーナの目にとまり、漫才指導をさせられる羽目になる事になるのだが、彼はまだ知らない。
そんな訳で、プリベンター達は今回、洞窟内にあるであろうMS工場を調査することになり、分かれ道で三手に分かれて今に至る。
「因みに三編み、おまえはモモンガでモ○タロス。タンクトップはネコガザルでネ○タロスに変身させられるからな」
「俺、参上!……って、ネコガザルってなんだよ!?無理矢理にも程があんだろ」
デュオタロス、じゃなくてデュオ、ノリ突っ込みもお手のもの。
「しっかし、なんで俺って運が無いんだろう…カトルみたいに、まともな会話が成立する相手と組みたかったなぁ」
「悪かったな…無口で」
先頭を歩くヒイロがボソッと言った。
「あら、ヒイさん聞こえてらっしゃったの。だったらなんか話そうぜ。例えばリリーナお嬢さんの話とか―」
「お前に話す事なんてない」
話したって別に減るもんじゃないのに。即答されてデュオは顔をしかめた。
「ヒイさんのいけずぅ。健全な男の子ならこういう話ってのは普通に食い付くもんなの。なぁ、コーラサワー?」
話に交ぜないのも可哀想だと思いデュオはコーラサワーにも話をふってみた。
面倒見の良い所はデュオの長所だ。
「そうそう。俺がお前等位の時はな―」
「あぁ、それは後で聞くわ。それともヒイロ。もしかして喧嘩中?隠し事があって気まずいとか?」
「別に…隠し事など…」
ヒイロはデュオから視線をそらした。
明らかに動揺している。
(ビンゴ!やっぱり例の漫才が気になってるけど、リリーナお嬢さんからは何も話されてないんだな。へへん、たまにはからかうのも良いよな)
デュオはニンマリ笑い、ヒイロの肩に腕を回した。
「そーかそーか、恋人が隠し事ねぇ。まぁよくある事だけど、それが原因で’破局’とかもあるからなぁ」
ワザと破局の二文字を強調して話しかける。
「……」
暗くてヒイロの表情は伺えないが、焦っているのは態度で分かる。
デュオは更に追い討ちをかけようとしたが、
「外務次官のリリーナ=ドーリアンていったら、結構な美人だろ。まぁ、大佐には及ばないけどな。他の男もほっとかないんじゃねぇの? ほら、好きな男に合わせて趣味変える女もいるっていうし」
コーラサワーが代わりに追い討ちをかけたご様子。
尤も、本人はその事に気付いていないが。
ヒイロは暫くうつ向いていたが、何か思いついた様に顔を上げる。
「……命なんて安いものだ。特に俺のは」
そう言い、何処に隠していたのか伝家の宝刀・自爆スイッチを取り出した。
「おい!ちょ、待てヒイロ! コーラサワー、腕おさえろ!」
「お、おう!」
花見の二の舞になりかねないので、二人でヒイロをおさえつけて何とか自爆スイッチを取り上げる。
「返せ、俺の自爆スイッチ!」
「悪かった。からかった俺が悪かったから、洞窟で自爆は止めろ。シャレになんねぇから」
デュオがそう言った直後ドーンと物凄い轟音がした。
デュオとコーラサワーは、思わずヒイロを見つめる。
「……俺はやっていない」
「じゃあ誰が―」
言い終わる前にコーラサワー達の前方からダカダカと足音が聞こえてきた。
「……誰か来る」
デュオとヒイロは銃を構えた。
数秒遅れて、コーラサワーも銃を構える。
懐中電灯でほんのりと照らされた洞窟から、だんだんと人影が近付いてくる。
一筋の汗が頬を伝い、一同に緊張がはしる。
と……
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
悲鳴を上げながら、人影は全速力で駆け抜けていってしまった。
「おい……今の……」
デュオが少し呆れた声で言う。
「……待て、まだ足音がする」
ヒイロが言った直後、また同じくタカタカと足音が近付いてきた。
「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。あ、どうもこんにちは。では、待ってぇぇぇぇぇぇぇ」
ヒイロ達の所で一度立ち止まり、ペコリと丁寧にお辞儀をすると、声の主は前方を走る影を追って走りさってしまった。
「いっちまった…」
2人の人影は嵐の様に通り過ぎてしまい、銃をかまえた3人は呆然とその場に立ち尽くしていた。
「カトル達、あいつ等に会わないといいな」
デュオの言葉にヒイロはうんうんと頷き、コーラサワーは首をかしげた。
そして3人は銃をしまい、またテクテクと歩き出した。
途中壁に大きな穴が空いていた場所を通過したが、多分先程通り過ぎた一人がぶち破った穴だろう。
轟音の理由とも辻褄が合うし、その人物の生命力を考えれば合点がいく。
「なぁ。あれ、出口の光じゃねぇか?」
コーラサワー前方でうっすらと光る出口らしきものに向かって指を差す。
自然と3人の歩調も早くなり、光もどんどん大きくなっていく、そしてとうとう3人は光の中に飛び出した。
久しぶりの太陽の光が眩しい。
そう、3人が出たのは外に繋がる出口だった。
周りは木が鬱蒼と繁る森。
「なんだよ。俺達はハズレかぁ」
デュオがその場に座りこむ。
「おい、五飛達に連絡するぞ」
ヒイロは無線を手に取った。
「ア~アア~」
そして、コーラサワーはその辺にある木に巻かれているツルにまたがり、ター○ンごっこを始めたのだった…
* * *
「…そうか、そちらはハズレだったか。こちらはもう少しかかる。カトル達とは?……そうか、繋がら無いか、こちらもだ。ああ、取りあえず元の分かれ道まで戻ってくれ。それと、さっきの轟音はなんだ?……ああ、そうか分かった。こちらに害が無いのなら問題は無い。では切るぞ」
通信を終えた五飛は、ヒイロとの内容を簡潔にジョシュアに述べた。
「じゃあ我々がアタリという可能性もあるんだな」
「そういう事だ。行くぞ」
2人は再び歩き出す。
「なぁ、五飛―」
「なんだ?」
「い、いや。何でもない」
三手に分かれてからこの会話を何度かしている2人。
ジョシュアは言いたい事があるのだが、話かける度に五飛に睨まれるのでなかなか話を切り出せないのだ。
「なぁ、五―」
「なんだ?」
「い、いや。なんでもないんだ…」
五飛の反応速度がどんどん上がるだけで進歩無し。
因みに最初は「なぁ、五飛。実は話があるんだ…」だった。
そして、話かける事数十回目。
「なぁ、う―」
「なんだ?用があるならはっきり言え」
「お、お俺は……暗い所が、苦手なんだ……」
数瞬の沈黙の後、五飛はふっと笑った。
「そうか……なら手っ取り早く終わらせよう」
「なにか良い方法でもあるのか?」
話してすっきりしたのか、ジョシュアの顔は心なしかさっきより明るい。
「ああ、こっちに来てみろ」
ひょいひょいと五飛が手招きするので近付くジョシュア。
近付いてきたジョシュアの襟をガシッと掴む五飛。
「え?まさか…」
さっきまで明るかったジョシュアの顔色はどんどん青くなっていく。
「俺も面倒臭いと思っていたからな。先に行って見てこい。心配するな、俺も後から追いかける」
これ以上なく気持の良い笑顔を向けて、五飛は【張家究極奥儀・炭酸核弾頭】の発射体勢にはいった。
「ま、待て、もうちょっと話あおうぅぅぅぅぅぅぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ジェット機の如く吹っ飛ばされたジョシュア。
悲鳴が洞窟の中をこだまする。
「男の癖に悲鳴を上げるなど、弱い証だな」
誰も聞いていない場所で独り呟くと、ジョシュアが飛ばした方向に向かって五飛は歩き出した。
(つづく…)
【あとがき】
アクセス規制で投下出来ませんでした。こんにちは。
電王映画のデュオタロスVSヒイロタロスがツボだったのでネタに使ってみました。
やっと『銃』とか任務っぽい単語を使えて、個人的に凄い楽しかったです(勿論今までの話も書いてて楽しかったけど)。
多分次で終わると思うので、それまでお付き合い下さいまし。
では。