CCA-Seed_◆wjA9YKZn62 氏_第10話

Last-modified: 2012-09-12 (水) 16:04:16
 
 
 

ヘリオポリスコロニーにて2度に渡る戦闘を行ったアークエンジェルとザフトのクルーゼ隊。
転移してきたアムロとブライトの力を借りたアークエンジェルだったが、
ヘリオポリス崩壊という憂き目にあってしまった。
宇宙空間に投げ出されたキラ・ヤマトだが1隻の救命ポッドを回収し両親の安否を心配しながらも、
なんとかアークエンジェルに帰頭していた。

 

「ラミアス大尉、こちらでも救命ポッドを確認したが幸い推進部はやられていなかった。」
「そうですか…そちらはしばらくすれば救助隊が来ると思いますので救助隊に任せたいと思います。」

 

アークエンジェルとラー・カイラムは避難民の確認作業に追われていたが、
避難民の受け入れはアークエンジェルでの収容のみに留まっていた。

 

「大尉、頼みがあるんだが、キラ君に話がある。 通信だとザフトに補足されるかもしれない。
そちらにアムロと共に行きたいのだが、乗艦許可を貰えるか?」
「分かりました。 では、1番カタパルトでの乗艦をお願いします。」

 

ブライトとアムロはラー・カイラムをメランに任せ
ベースジャバーに乗りアークエンジェルへと移った。

 

「お待ちしてました。ではブリッジまでご案内致します。」
「忙しい中すまないな、バジルール少尉。」

 

ブライトとアムロを迎えたのはナタルだった。
互いに敬礼をし挨拶もそこそこにブリッジへと向かった。
アークエンジェル艦内は避難民の受け入れ作業に勤しんでいた。
やがてブリッジに到着するとそこにはキラ、ムゥ、ラミアスが待っていた。

 

「お待ちしておりました大佐。」
「突然すまない。忙しい中、押しかける形になった事を許してくれ。」
「いえ…キラ君をお呼びしましたが。」
「ああ、すまない。」

 

ブリッジにいるキラへアムロとブライトを視線を向けるが、すぐにラミアスへ目をやり直す。

 

「こちらに出向いたのはそれもあるが、もう一つ頼みがあってな。」
「頼み?何でしょうか?」

 

ブライトの言葉にラミアスは何の話をするのかという表情をする。

 

「単刀直入に言えば、俺たちを正式な地球軍として迎えて欲しいという事だ。」
「!?………よろしいのですか?
判断はハルバートン准将とお会いになられてからでも遅くは無いと思うのですが…。」
「俺たちは大助かりですが…
アークエンジェルは正式に地球軍に登録はされてないせいで識別コードが無いんです。
同じ地球軍のユーラシア連邦に見つかったら拘束も有り得ますが?」

 

ラミアスはブライトやアムロ達が今後も協力してくれるのは助かると思いながらも、
ムゥが言うようにユーラシア連邦などの地球軍でも直属の部隊ではない以上
見つかった場合のリスクを懸念していた。
ましてや、転移者の処遇は連合議会の判断と、
転移者側の話し合いにより決定されるものであり
転移者と一部隊員のみの決定では軍法違反になる可能性もあるというものだった。

 

「それではユーラシア連邦に接触しなければその後はなんとかなると?」
「はい…おそらくとしか言えませんが…
私達が所属する大西洋連邦宇宙軍艦隊にデュエイン・ハルバートン准将がおります。
提督にお会いになれば、正規軍への加入も比較的スムーズになるかと思いますが…。」

 

ラミアスはブライトへ、ハルバートンにまず会ってからという事を強調し、
なるべく事を丸く収めたい意思が見えていた。

 

「ブライト大佐、我々が慎重になるのはお許しください。
大佐のような左官クラスの方のような転移者は連合軍としても初めてなのです。
今までは左官クラスの転移者などいなかったものですから。」
「…それは初耳だな。」
「先にお話すれば良かったのですが…
それに転移者全てに対しては連合軍も丁重に扱うようにされていますから、
連合軍内でも転移者といえど大佐に強く出れる人間も限られてくるはずです。」

 

ムゥがラミアスの慎重な姿勢の理由を話すと、
アムロは呟きラミアスはその言葉に対して政治的な理由もある事を明らかにした。

 

「……ちょっと待ってくれ、
ではベアード少尉のようにあちらの世界での階級はそのままにしているのは、
連合軍議会との話し合いで決まった事という事か?」
「はい。ムゥ大尉の部隊に編入される前は、
連合軍もあちらの世界同様に小隊隊長を任せていました。」
「なるほどな…では権限もある程度は考慮される…
という風に考えてもいいと言う事になるのか?」

 

ブライトが連合議会が定めた規定に穴があると感じ、
ラミアスに確認するとブライトの勘はほぼ的中していたと言って良かった。

 

「ブライト、どうやら転移現象は継続的にしかも不定期に起きているみたいだな。
連合議会も原因が分からない現象に決め事もまだ曖昧と言えるな。
状況もその都度違うだろうし、なおさらかもしれない。」

 

アムロの言葉にブライトは頷き、
仮に面倒な状況になろうともブライトやメランのような左官クラスの人間が交渉の席につけば
どうにかなるかもしれないと考えた。
アムロとブライトの会話を聞いていたラミアスは規定ギリギリのやり方をすれば可能性は広がると考えた。
ラミアスはその場でムゥやナタルにブライト達を正規軍として扱っても良いか確認をした。

 

「俺は議会の規定云々よりも、
劣勢をひっくり返せる方法なら卑怯な手を使わなければ何でもやるべきだと思うぜ?」
「…私も今の話を聞く限りでは、議会の規定の穴を潜り規定に触れなければ問題無いと思います。」

 

2人の言い回しに個性が滲み出ていたが賛成という流れになった。
ブライト達は緊急処置的に連合軍の一員として改めて迎い入れられた。

 

「ではキラ君の件についてですが…ブライト大佐、キラ君にお話とは?」
「ああ、それはアムロから話をしてもらいたい。
彼が先にキラ君と話をしたいと言い出したものだからな。」

 

ラミアスがブライトに話を振ると、ブライトもバトンタッチのような形でアムロへと話が渡る。

 

「キラ君、余計な話を聞かせた上に待たせて悪かったな。」
「…い、いえ。」

 

アムロはいつものように落ち着いた口調でキラへ話しかける。

 

「…それで話ってなんですか?」
「今の話を聞いた通り俺たちは地球軍としてザフトと戦う。
君はどうする?」
「えっ…?」

 

アムロはキラの問いにストレートな質問を返すとキラの表情が固まり、少し俯き加減になる。

 

「君は先程の戦闘で強引に出撃したみたいだが、何故そうしようと思った?」
「…僕は…本当は戦いたくなんかありません…でも最初の時も…
さっきも…友達や住み慣れたヘリオポリスを守りたいと思ったから…。」

 

アムロがキラへ質問を続けキラからは悲壮感が垣間見えたが
確かにその場では決意を持ってガンダムに乗ったという意思が伝わった。

 

「では今はもう出撃しなくても皆が助かると思っているか?」

 

アムロはなおも質問を続けると、キラは顔を上げアムロの顔を見て答え出した。

 

「それは…しょうがないと思って2度目も乗りました…
でも、僕は軍人でもなんでもないんですから!」

 

キラは顔を上げるなり、アムロに対して声を荒げる。

 

「じゃあ、いずれまた戦闘が始まった時、今度は乗らずにそう言いながら死んでくか?」

 

キラの言葉に対し、さらに厳しい言葉をキラに向けたのはムゥだった。

 

「今この艦を守れるのは俺やベアード、それにお前だけなんだ。
転移者のアムロやブライト大佐が協力してくれると言っても
ラー・カイラムだって守らなきゃならないし、ましてやベアードだって転移者なんだ。
俺たちが起きた世界の戦いに上手い事言って巻き込んでるだけだ。
俺たちの世界の事はこの世界の人間全員で解決しなくちゃいけないんじゃないか?」
「っ!!」
「君は、出来るだけの力を持っているだろ?なら、出来ることをやれよ。
そう時間はないぞ。悩んでる時間もな。」

 

ムゥが悩むキラへ決定的な言葉をかける。
アムロやブライトはキラへ言おうとした言葉を代弁したムゥへ立派な軍人だと感心していたのだった。

 

「後はキラ君次第だな。 戦闘が始まるまでしっかり考えればいい。
ラミアス大尉、アムロをここに預ける。キラ君がもし戦おうと決心した時の為に力になってくれる。」
「よろしいのですか?」
「俺がそうしたいんだよ大尉。
昔の俺やある少年に似ているからな…。」
「分かりました。ではベアード少尉をそちらに編入いたしますがよろしいですか?」
「すまないな…我儘ばかりで。」

 

アムロの強い希望でアムロとνガンダムはアークエンジェルへ配備となり、
ベアードとブロッサムはラー・カイラムへ入れ替わる形で配備となった。

 

「ではブライト大佐。これより大佐は連合軍という立場になりますので
指揮権は大佐にお預け致します。それと軍服を用意させます。」
「良いのか?」
「もちろんです。私やバジルール少尉がブライト大佐やメラン少佐達に指示を出すわけにはいきません。」
「私もそれが宜しいかと思います。
それに大佐のような歴戦の将について行くのは私としても下士官達にも良い勉強になります。」

 

こうしてラー・カイラムの面々は緊急処置的に地球連合軍の一員となり、
両艦は月へと航行していくのだった。

 
 
 

~ヴェサリウス艦内~

 

「隊長。熱源反応です!
この方向は…奴等はアルテミスへ向かうつもりです!!」
「慌てるな…それはおそらくフェイクだ。反応が1つしかないだろう?
奴等はすでに合流している筈…必ず月へ向かうだろう。
まずはこのデブリ帯を利用して先回りする。
ガモフには反応のあったポイントからデブリ帯の中で追尾するよう伝えろ。」

 

アークエンジェルとラー・カイラムは途中で
ユーラシア連邦の誇る小惑星でできた宇宙要塞アルテミスへ向かうか、
月へ向かうか決めかねたが、転移者問題の兼ね合いにより月までギリギリの航行を選択していた。
当初、ヴェサリウスの艦長アデスも連合軍はアルテミスに逃げ込むと踏んだが、
クルーゼの判断により月へのルートを選択していた。

 

「隊長、こちらにはMSはありません。本当に追うのですか?
ムサカもズサを失うのを恐れて撤退しましたし…。」

 

アデスは現時点の余剰戦力が皆無の為に
クルーゼの追撃を行う作戦に躊躇していた。

 

「あるじゃないか。地球軍から奪ったのが4機も。」
「あれを投入されると?」

 

クルーゼはヘリオポリスで奪ったMS4機を全て投入するつもりでおり
アデスが聞き返すと冷徹な笑みを浮かべ頷く。

 

「しかし…。」
「データを取ればもうかまわん、
後はシャアがなんとかするだろうさ…。
遠慮なく使わせてもらう。宙域図を出してくれ。
引き続きガモフにも索敵を怠らぬように打電だ。」

 

クルーゼはこの気を逃すまいと、執拗にアークエンジェル達を追いかける形となる。

 
 
 

~ムサカ艦内~

 

「ロック隊長。クルーゼ隊の援護は続けなくて宜しかったのですか?」
「大佐の命令はあくまでもクルーゼ隊長の監視だ。
大佐は何を考えているかは知らんが、
大局的に事を進めろと言われている以上は深追いはできまい。
とにかく、本国へ行き大佐へ報告だ。」
「了解しました。」

 

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