CCA-Seed_◆wjA9YKZn62 氏_第13話

Last-modified: 2012-09-12 (水) 16:28:35
 

~アークエンジェル格納庫~

 

「アムロ大尉!お疲れ様です!!いやぁ、やっぱスゲぇや!
 最新鋭のGを相手に被弾無しとは!」
「運が良かっただけさ。すまないがバーニアの調整をしておいてくれ。
 何かあればラー・カイラムのヘレンに聞けばいい。」
「了解です、お!?フラガ大尉!!」

 

ザフトとの戦闘を終えたアークエンジェルのカタパルトにはアムロらが着艦してきていた。
マードックはアムロの戦闘を見ていて圧巻の一言であったに違いない。
コックピットから降りてくるアムロ達へ労いの言葉をかける整備士達であった。

 

「お、マードック曹長。俺のネティクスも見ておいてくれ。
 ザフト艦にビームキャノンを巻きつけてパージしちまってな。」
「お安い御用です大尉。」

 

ムゥも同様にコックピットに降りるなりマードックへ整備を頼んでいた。

 

「…?」
「……あ…。」
「よ、ご苦労さんキラ。」

 

アムロはキラが降りてくるのを待っていた。
そしてアムロに気付いたキラは目を斜めに少し逸らした。
そんなキラにムゥは声をかける。
しかしアムロは俯き加減のキラに近付き淡々と話し出しす。

 

「キラ…何があった?」
「……え…?」

 

アムロはキラの感情の乱れを先の戦いで感じ取っていた。
それをキラへアムロはハッキリと聞いた。

 

「覚悟を決めて戦いに出たのではないのか?」
「……すみませんでした…」
「……。」
アムロは戦闘前に交わした言葉の真意を問いたかったが、
キラからは歯切れの悪い言葉ばかりが出てきてしまう。
その2人の様子をムゥ黙って見ている。

 

「キラ…ではハッキリ言おう…
 …君の感情の乱れはあの赤いガンダム、イージスと接触した時だったぞ。」
「!!…何故…それを!?」
「…アムロ、それもニュータイプの力…ってヤツか?」

 

アムロの質問は、最早キラにとって内にしまい込み黙っていられるような事ではなかった。
ムゥは以前νガンダムに触れた時にアムロに言われた言葉を思い出し、
ニュータイプによる力である事かを問う。

 

「…ニュータイプはエスパーじゃないさ。だが少なくとも俺にはそう感じられた。」
「なるほどねぇ…で?どうなのよ?キラ・ヤマト?
 アムロに隠し事は無意味な気がするぜ?洗いざらい話しちまった方が楽になるんじゃないの?」
「………分かりました…正直に…お話しします。」

 
 

~ヴェサリウス艦内・ブリッジ~

 

「クルーゼ隊長へ、本国からであります。」
「ふんっ。」
「評議会からの出頭命令ですか!…そんな、あれをここまで追っておきながら…」

 

ヴェサリウスのブリッジにプラント本国からの電文が入り
クルーゼは気に食わないといった表情であった。
アデスもやはり同じといった感じで本国の帰還命令には不服だった。

 

「ヘリオポリス崩壊の件で議会は今頃、てんやわんやといったところだろう。まぁ仕方ない。
 ガモフも思いのほか消耗しているようだしな…。」
「は!」

 

しかし、艦の状況などを鑑みればいた仕方なしといった状況なだけにクルーゼは帰国の途に就く事となった。

 

「アスランを呼べ!修理が終わり次第、我々は本国へ向かう。
  (しかし、あのアムロ・レイという男…底が知れん…私達にとっては驚異そのものか。)」

 
 

~ラー・カイラム艦内・ブリッジ~

 

「状況は?」
「ザフト艦、2隻共に宙域より離脱を確認しました。
 アークエンジェルからはこの先約6時間後の宙域は連合軍月基地本部の警戒宙域だと電文が入っています。」
「分かった。では警戒体制を解除、各自は持ち回りで休憩を入れろ。」
「了解です。」

 

ブライトは宙域からザフト軍の離脱を確認すると各員に指示を送った。

 

「メラン、ラミアス大尉と話をする。月基地本部での我々の立ち回り方も考えなければいけないからな…
 それに連合軍の詳しい情勢を知る必要がある。
 1時間後、アークエンジェルのブリーフィングルームに行く。ゲタの準備をさせておいてくれ。
 それまで私は少し休む。」
「了解しました。司令。」

 

ブライトはそういうとブリッジを出て自室に戻る。
ソファに腰を掛け考え込むブライトにはある懸念があった。

 

地球連合軍第8艦隊デュエイン・ハルバートン准将は話の分かる人間だとして
連合軍内にどれ程影響力を持った人物なのか、そして連合軍内部の実状はどうなのかと…

 

一年戦争時代の連邦軍、ジオン、グリプス戦役のティターンズ、エゥーゴ、ネオ・ジオン、など
主立った軍や内部組織に限らずその他様々な情報や主張を耳にしてきたブライトにとっては
双方の主張を聞かなければ何も変わらないのかもしれないと考えた。

 

そしてこちらでブルーコスモスと呼ばれる強硬派団体の話を聞く限りでは
ティターンズを彷彿とさせるものであり、連合軍内部の強硬派と密接な関わりがあるとされる組織が
ある以上は、連合軍も一枚岩ではないと考えていた。
そしてハマーン・カーンやパプテマス・シロッコ、シャア・アズナブルを台頭させてしまった
グリプス戦役の事が頭を過り、自分達が連合軍に良いように利用されれば、いたずらに争いの種をまき、
新たな脅威を台頭させるだけとなるのではとも、危惧していた。

 

「…とにかく時間をかけてでも、ハルバートン准将と話をする必要があるか…」

 
 

~アークエンジェル艦内~

 

「…そうか…よく話してくれたな…キラ。」
「そんな重大な事ならもっと早く言ってくれりゃあな…
 こっちがまいっちまうからあんま考えたくないが、戦争てのは惨いな…。」
「……うぅ…」

 

キラはアスラン・ザラとの関係を全て話した。
アムロやムゥは戦争という恐ろしさを改めて噛み締めていた。
キラはよほど辛かったのか、床に崩れ落ち膝を付き体を震わせながら涙を流し続けていた。
格納庫にいたマードック達も心配そうに見ている。

 

「キラ、月に着くまでゆっくり休むといい…。」
「そうだな……とりあえず、医務室に運ぼう。医者も今はいる事だしな…。」
「ぅうう…アス…ラン……」

 

自ら立てず放心状態となったキラはアムロとムゥに抱えられ医務室へと向かった。

 
 

キラを抱えアムロとムゥは医務室まで行く途中にサイとフレイに会った。
彼らは心配そうにキラを見ておりサイはキラへ声を掛けるがキラは俯き、
アスランの名前を小さく呟き続けていた。
医務室へ到着しキラを寝かせると扉の前にサイとフレイ、
話を聞き駆けつけたトール、カズイ、ミリアリアが待っていた。

 

「あ…あの!アムロ大尉…キラ、どうかしたんですか?」
「……戦闘で疲れたみたいだ…今は鎮静剤で眠っている。半日もすれば落ち着くだろう。」

 

キラを心配したサイはアムロへキラの様子を伺うが、アムロはあえて何も言わず状態だけを話していた。

 

「…でも…あれは普通じゃなかったです。何かあったんですよね?」
「………とにかく今は騒ぐべきじゃない。戦闘が終わったばかりだ。君達も休んだ方がいい。」

 

アムロは食い下がるサイを突き放すように話を切り、サイ達の前からムゥと共に去っていった。

 

「……」
「…大人ってのは損な役回りだよなぁアムロ?しかも大尉は嘘が下手ときたモンだ。」

 

ノーマルスーツを着たままのアムロとムゥは更衣室へ向かっていたが、
無口になったアムロをチラリと見ながらムゥは口を開くと、重苦しい空気を払うかのように話しかける。

 

「…?はは…そうだな…
 だが、彼等に話すと士気に影響しそうでな…彼等は本当にキラを大事に思っているから。」
「…そうだよな…あいつら、キラをコーディネイターだって知ってたから
 今までずっと守ってきたんだろうな。
 …戦争がなくならなきゃこういう事が繰り返される。だから早く終わらせなきゃいけない…てな感じ?」

 

アムロなりに考えた事ではあったがそれはムゥとて分かっていた。
ムゥがぼやくとアムロとムゥは顔を見合わせながら少し微笑んでいた。
アムロ達はノーマルスーツを脱ぎシャワーを浴びるがアムロはキラの事を考えていた。
ムゥは先に着替えを終えると更衣室を出たがアムロは着替えながら深く考えていた。

 

「……。(ララァを殺してしまった俺やカミーユの二の舞いにはさせてはならない…
  次代を担う若き可能性を潰す事は二度と…。)」

 

アムロはやはりキラを自分やカミーユに重ねていた。

 

「…入れ込み過ぎか…?」

 

アムロがそう思った瞬間突然扉が開く。

 

「!!!!」
「?バジルール少尉。どうしたんだ?」

 

扉が開くとナタルがいたがナタルは目を点にし固まっている。
アムロは何食わぬ顔でナタルへ用件を聞くが次第にナタルの顔が紅潮する。

 

「………し…失礼しました!」
「…?」

 

ナタルは大きな声で謝ると壁に隠れ扉が閉まる。
アムロは何だったのかと思い扉を開けナタルへ質問する。

 

「少尉、どうした?何かあったのか?」
「…あ!!?…か、か…艦長が大尉をお呼びです…!
 と…とにかく早くお済ませ下さい!こちらで待っております!」
「?…じゃあ2分だけ待っててくれ。」

 

ナタルは顔を真っ赤にしながらアムロに用件を伝えるとアムロは何事もないかのように扉を閉めたが、
なぜかナタルは以外にも筋肉質なアムロの体から目を完全に背けられなかった。

 

そしてしばらくしてアムロは着替えを終え、ナタルと共にブリーフィングルームに向かう。

 

「はははは!すまなかったな少尉。君は軍人だから慣れていると思ったが。」
「そ、その……し…士官学校以来だったもので……軍人でありながら
 お見苦しい所をお見せして申し訳ありません。」

 

アムロはナタルが動揺していた為、聞いてみたところ実にピュアな返事に笑ってしまったが
ナタルは未だに顔が赤くなったままだった。

 

「いや、こちらこそすまない。少尉が謝るよりも俺が先に謝るべきだったな…
 君のような純粋な女性に対してはもっとデリケートに扱うべきだな。」
「!?…は…はぁ…。」

 

アムロの言葉に、さらに動揺してしまうナタルだったがやがてブリーフィングルームへ到着する。
中には、ナタルの真っ赤な顔に不思議そうな顔をするラミアスと、
ニヤけた顔でナタルを見るムゥが椅子に腰を掛けていた。
そしてラー・カイラムをシーサーに任せたブライトとメラン、そしてベアードが数分後に入って来た。

 

「大佐、お話とは何でしょうか?」

 
 
 

~オーブ首長連合国~
とある一室

 

「では、あなたは我々の活動に協力すると?」
「…はい。…この不毛な争いは何の意味も成し得ません。
 ならば戦わずに広がった戦火を消す事に専念すべきと。」」

 

オーブ首長連合国の元首長ウズミ・ナラ・アスハは
寡黙な印象をうける日本人の中年の男と話し合いをしていた。

 

「……しかし、それではあのMSと大型艦を欲しがるサハク家に渡る可能性もあるぞ?それでも良いのかね?」
「奪おうとする者が現れたなら、その時は私の手でデータなど取れぬよう爆破します。
 もとよりあれは私のいた世界で、14年も前に破壊した筈の因縁の機体なのですから。」

 

ウズミの質問にも自らの意志を発する男の目は嘘をついているようには見えなかった。
そして男は続けて口を開ける。

 

「ウズミ様…サハク家の圧力が掛かったとはいえ、オーブ防衛の為に私が提供した技術を
 連合軍が知れば黙っていないでしょう。
 そうなれば、選択を迫られる事にもなりかねません。」
「……分かった。
 本意ではないとはいえ、兵器開発に関わってしまった君の償いと受け止めるしかないな…。
 決着は戦場ではなく対話によるものを望む…我々としてもそれを貫くべきか。」

 
 

~アークエンジェル・ブリーフィングルーム~

 

「ラミアス大尉達に集まってもらったのは、連合軍内部の現状把握の為、
 それとザフトの情勢について分かる範囲での情報が欲しい。」
「現状把握?以前ヘリオポリスでお話した程度では情報が足りないと言う事でしょうか?」

 

ブライト達は、ヘリオポリスでラミアスらと話をした事により世界情勢、
そして連合軍がどういった理由で戦争が勃発したかという程度のものであった。
ブライトも当初はネオ・ジオンが関わっている可能性を鑑み戦って来たが、
それ以降の戦いにおいて、ネオ・ジオン系MS部隊が再三こちらを追って来ていたクルーゼ隊に対して、
あまり協力的ではないと感じていた。

 

「あの時は我々の話ばかりで、この世界の事も触り程度しか聞いていなかったしな…
 それに我々の戦闘介入はネオ・ジオン軍が関わっていると感じていたからだったが
 ネオ・ジオンのMS部隊もクルーゼという男に対して引き際を考えればそこまで、
 協力的には見えなかったしな…。」
「…お話は分かりました。 ですが我々としても准将にお会いするまでは、
 あまり情報を漏らす訳にはいかないと考えているのですが。」

 

ブライトの言葉にラミアスは理解をしながらも、
簡単に軍内部の情報を漏らす事にはやはり躊躇しているようだった。

 

「そもそも、軍の中でもアークエンジェルやGの存在自体が極秘事項であるのは分かるが、
 それが今軍内部に明るみに出て問題になる事などあるのか?
 認識コードが無いのは理解しているが、ユーラシア連合との接触だけには神経質になっていただろう?」

 

歯切れの悪い答えが返って来ると、ブライトに続きメランがさらに追及する。
ラミアスはその問いに、誤魔化しは効かないと判断したのか、一つ息を吐いてゆっくりと話し出した。

 

「…やはり…軍は一枚岩では無かったか…。」

 

ラミアスの説明にブライトは納得したように言葉を発した。
ラミアスの説明によるとこうだ。

 

アークエンジェル及びXナンバーズは転移者の技術提供により生まれた切り札だった。
しかし、連合軍には当初MS開発のノウハウなど無かった。
ザフトのMSを鹵獲しようにも状況は劣勢。
ようやくジンを鹵獲し、それをベースに開発を考えていた。
当時、大西洋連邦とユーラシア連邦は連合軍の一大プロジェクトとして互いに協力しあっていたが、
ある日突然、計画は頓挫し棚上げとなった。
理由はいくつかあるが、
ユーラシア連邦内部での分裂を恐れ上層部の刷新が行われた事。
計画段階にて転移者からの技術提供が突然行なわれた事。
この2つが大きな原因と言われた。
同時にユーラシア連邦の上層部刷新に伴い、超穏健派の姿勢は対話での解決を訴えており、
計画が頓挫したもののユーラシア連邦が転移者の技術提供とはいえ、
戦争に参加させようとした事を強く批判し、今後のMS開発を一切行わないとした。

 

その後、ザフトの勢いが一層高まった事により危機感の欠如と揶揄された超穏健派
弾き出される形でまたも上層部は刷新が行なわれた。
こういった混乱が原因で密接な関係を保って来た大西洋連邦はユーラシア連邦の体制批判をし、
極秘での新たなXナンバーズ開発にこぎ着けたという。

 

「お恥ずかしい限りですが…現在はザフト打倒という共通意識の下、両者の間では和解をしております。」
「ですがこの艦とMSを私達がハルバートン准将の下に届ける前に
 ユーラシア連邦に知られた場合の混乱を懸念しています。」
「そうなればユーラシア連邦は大西洋連邦に代わり主権を握り、艦もMSもどうなるか分からない…
 という事を我々は危惧しております。」

 

ラミアスはブライトへそう説明すると、ムゥやナタルも続いたが
ブライト達には充分過ぎるほどの説明であった。

 

ブライトは続いてブルーコスモスという環境保護団体についても質問をした。
環境保護団体とは名ばかりの過激派と知られる組織は軍上層部から連なる強硬派との
密接な関係が噂されており、ブライトはブルーコスモスや連合軍強硬派の思想が、
地球至上主義を唱えスペースノイドを弾圧し残党狩りと銘打ち
非道な殺戮をし続けたティターンズと重なる事を伝えた。

 

ラミアス達にとってもブルーコスモスの存在は知っていても黒い噂がある程度くらいの認識しかなかった。
だが、地球至上主義を貫いたティターンズの話を聞き、そのような組織は許せないといった感覚で、
ティターンズが行ったコロニーへのG3ガスによる虐殺と農業用コロニーであったユニウスセブンへの
核攻撃とが重なるようでやるせない表情だった。
ブライトが懸念するのはユニウスセブンへの核攻撃にブルーコスモスが関わっているのでは?
という噂だったが、真相が分からない以上はラミアス達へこれ以上聞いても
何も分からないという感じであった。

 

ザフトの情勢に関しては、やはりハルバートン准将に会ってからという事になり
ブライトはもしハルバートン准将であってもロンド・ベルへの対処が不当なものであった場合は
協力をしないとした上で、そのブライトの意志にラミアスは必ず准将を納得させると約束し、
両者による話し合いは終わりいよいよ月基地警戒宙域へと入り、新たな流れが起きるのであった。

 
 
 

~プラント・ザフト基地~

 

「大佐。やはり護衛艦を出すべきでは無いでしょうか?」
「慰霊祭にそんな物騒な物を持ち出すのはいかんだろう?
 ラクス・クラインは民間人である事には変わりはない…安心しろグラム。
 私もライデンもいるのだから、SPとして不足はなかろう?」
「はぁ…」
「留守はたのんだぞ?グラム小隊長。アクシズをくれぐれも頼む。」

 
 

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