CCA-Seed_◆wjA9YKZn62 氏_第12話_後編

Last-modified: 2012-09-12 (水) 16:07:57
 
 
 

「キラ!」
「アスラン!」

 

キラとアスランは互いの存在に気付くと動揺が走る。

 

「やめろ!剣を引け!キラ!僕達は敵じゃない、そうだろ!?何故僕達が戦わなくちゃならない!」
「…アスラン!」
「同じコーディネイターのお前が…何故僕達と戦わなくちゃならないんだ!?」
「…っ……。」

 

アスランはクルーゼに誓ったように自ら全ての想いをぶつけキラを説得する。
キラは覚悟を決め戦場に出たが
アスランの言葉に感情に乱れが生じる。

 

「…!?キラ!何をしている!?集中するんだ!今は戦闘中だぞ!!」
「くっ!!」

 

ストライクとイージスは撃ち合う事をせず、動き回るだけだった。
アムロはその動きではなく、
ニュータイプとしてキラの感情の大きな乱れを感じ取っていた。

 

ストライクを執拗に追うだけのイージスに
アムロはビームライフルを放ちイージスとストライクを引き離す。

 

「くそっ!邪魔を…!」
「アスラン!!援護します!」

 

アスランはνガンダムの攻撃をギリギリでかわすとνガンダムへビームライフルを放つ。
ニコルの乗るブリッツも援護に回りνガンダムへ右腕のレーザーライフルを撃つ。

 

「2機同時か!?だが、そんな攻撃では!」

 

アムロはνガンダムをまるで自分の体の一部かのように操る。
イージスとブリッツの攻撃を悠々と回避するとバーニアを吹かし、
緩急の付いた動きでビームライフルを連射する。

 

「ちっ!」
「~~っ!!」

 

アスランとニコルは反撃をしようにも
アムロの操縦が的を絞らせない絶妙な動きも相まり回避がやっとで手出しを出来ずにいる。

 

「イザークとディアッカを援護しろ!!Gは2人に任せあの戦艦を狙え!」

 

デュエルとバスターがブロッサムとの戦闘に集中出来るよう
ガモフの艦長、ゼルマンは標的をラー・カイラムに絞り攻撃を始める。

 

「艦首単装砲発射しろ!!」

 

ガモフはゼルマンの合図と共に艦首より単装砲を撃つ。

 

「艦長!ザフト艦より熱源発射です!!」
「回避!!こちらも応戦だ!サブメガ粒子砲放て!!」

 

ラー・カイラムはガモフの攻撃を回避するとブライトに火が着いたのか艦艇戦に真っ向から挑む。

 

「おらおら!!」
「ちぃ!!」

 

ベアードはバスターとデュエル相手に一歩も引かない戦いを繰り広げていた。
MS操縦ではイザークやディアッカに比べればベアードは一日の長だったが
単発の一撃を持つブロッサムに対してバスターは火力にモノを言わせ乱射を繰り返す。

 

「……ん!?ディアッカ!ニコルから打電だ!」
「なんだぁ!?こんな忙しい時に!」

 

イザークとディアッカは撃ち合いながらもイライラが募っていた。
そんな中アムロを相手にしているニコルから打電が入る。

 

「ニコルとアスランがMS1機に手こずってるらしい!援護要請だ!!俺が行く!」
「おいおい、こっちもそんな楽な相手じゃないんだぜ!?」

 

イザークはニコルの電文の内容をディアッカに伝えるとさらにディアッカの機嫌が悪くなる。

 

「文句はなしだディアッカ。Gが相手なんだ、最高の獲物だろ?」
「ちっ、分かったよ!!こいつは俺がなんとかやるさ!」

 

イザークがディアッカを宥め無理矢理納得させ、
ストライクとνガンダムのいる場所までイザークはデュエルを走らせる。

 

「!?アイツ!アークエンジェルに向かう気か!?」

 

ベアードがデュエルに気付くとビームライフルを構える。

 

「やらせないって!!」

 

「くそっ!」

 

ディアッカはブロッサムのデュエルに対する攻撃を
94mm高エネルギー収束火線ライフルを放ち
ブロッサムにビームライフルを撃たせなかった。

 

「後方よりデュエル接近!!ロックされています!」
「何んですって!?…防御!!イーゲルシュテルン、バリアント!」
「落ちろ足付きぃ!」

 

アークエンジェルに接近したデュエルはビームライフルとビームライフルに付属するグレネードで狙い撃つ。

 

「イーゲルシュテルン!バリアント!てぇ!」
「ちぃっ!」

 

ナタルはラミアスの指示を聞くと即座に防御弾幕を張り難を逃れる。

 

「イザーク!?」
「貴様らグズグズ何をやっている!!」

 

ニコルがイザークに気付くとイザークは激昂しながら、アークエンジェルから離れνガンダムに向かって行く。

 

「アークエンジェルが!」
「止めろ!キラ!」

 

アークエンジェルが攻撃されるとνガンダムに向かうデュエルにビームライフルを構えるが、νガンダムから距離を取り、ストライクの近くにいたアスランに静止される。

 

「アスラン!」
「お前が何故地球軍に居る!?
何故ナチュラルの味方をするんだ!?」
「……僕は地球軍じゃない!」

 

アスランは尚もキラの説得にかかり声を荒げ
キラに詰め寄るが、キラはアスランの言葉に対して反論を始める。

 

「…!?」
「…けどあの船には仲間が…友達が乗ってるんだ!君こそ!なんでザフトになんか!?
なんで戦争したりするんだ!」
「…!」

 

キラはアスランの言葉に自分の想いを爆発させる。
アスランは驚きながらもその言葉に耳を傾ける。

 

「戦争なんか嫌だって、君だって言ってたじゃないか!その君がどうしてヘリオポリスを…!」
「状況も分からぬナチュラル共が…こんなものを造るから…」

 

キラの言葉を聞いていたアスランだが、込み上げる怒りの感情を抑えながら答える。

 

「ヘリオポリスは中立だ!僕だって!…なのに……ぅあっ!」

 

「何をモタモタやっている!アスラン!」

 

νガンダムへ向かっていたイザークはアスランに動きが無いと気付き
ストライクへ攻撃をし、アスランとキラの間に割って入る。

 

「…キラ!?させるか!」

 

アムロはストライクがデュエルに襲われているのを確認するとバズーカをデュエルに向けて発射する。

 

「させません!!」

 

ニコルはランサーダートを放ちアムロの攻撃を邪魔する。

 

「ちっ、諦めが悪い!敵わないと分かっててなぜ現れる!!」
「ぼ、僕だって…!!」

 

アムロはアスランやニコルに力の差を見せつけていたが、
ニコルは仲間をやらせまいと恐怖を抑えながら再びアムロと相対する。

 

「敵、戦艦、距離740に接近!ガモフより入電。
本艦においても確認される敵戦力は、MS3機のみとのことです。」
「あのネティクスというMSはまだ出ていないという事か?」
「機体に問題があり出ていないと考えてよいのでは?」
「フム……。」

 

ヴェサリウスのブリッジではクルーゼが4機いるはずのMSが
3機しかいない事に疑問を抱いていたが、アデスが自らの見解を伝えると
腑に落ちない点がありながらもクルーゼは納得していた。

 

「くそー!!くそー!!くそーぉー!」
「そんな戦い方で!」

 

キラを執拗につけ狙うデュエルに対し、キラはビームライフルを必死に撃ち続けるが、
焦るキラの攻撃をイザークはかわし続ける。
お返しと言わんばかりにイザークはビームライフルを見舞う。

 

「うあっ!!」
「キラ!!しっかりしろ!!戦えないなら下がるんだ!」

 

キラは辛うじてデュエルの攻撃を防ぐが、
当たらない攻撃とPS装甲によるエネルギー消費が焦りを呼びアムロの声が頭に入らなくなっていた。

 

「弾幕張れ!!敵艦は無理に落とすな!牽制して分断させておけば良い!!」

 

ブライトはガモフとヴェサリウスの距離を離したままにし、なるべく挟撃の脅威を減らす事に専念していた。

 

「くそ!あの戦艦はガモフを本気で落とさずにこれ以上近づかせないつもりかよ!
これじゃいつまで経ってもラチがあかないぜ!」

 

「余所見してる場合か!!」
「っつあ!」

 

バスターがガモフに気を取られている隙にベアードが接近し、
ビームサーベルで攻勢に出るがバスターがなんとか躱してガンランチャーで応戦する。

 

「くそっ、イザーク達は何やってんの!?
向こうは2機だけだろ!!」

 

ディアッカは硬直した局面を打開する為、ブロッサムを無視してイザーク達の下へ向かって行く。

 

「あいつも逃げるか!?落としてやるさ!」
「ジャック!!補給が先だ!
機体に無理をさせ過ぎだぞ!?」
「えっ!?…あ!!…くそっ…
了解!戻ります!」

 

ベアードがバスターを追撃しようとすると、ブライトはベアードに追わずに、エネルギー消費の激しいブロッサムの補給を急がせる。
ベアードも集中し過ぎていたせいかエネルギー残量が少ない事に気付き、ラー・カイラムに引き上げる。

 
 

「敵戦艦、距離630に接近!間もなく本艦の有効射程距離圏内に入ります!」
「こちらからも砲撃開始だ。」
「モビルスーツが展開中です!主砲の発射は…」
「友軍の艦砲に当たるような間抜けは居ないさ。向こうは撃ってくるぞ?」

 

クルーゼはアークエンジェルとの距離を確認すると迎撃命令を出す。
しかしアデスアスランやイザークに当たる可能性を懸念していた。
そんなアデスの心配をよそにクルーゼは、コーディネイターの能力を信頼しており砲撃を指示する。

 

「……了解です。主砲、発射準備!照準、敵戦艦!」
「主砲、発射準備!照準、敵戦艦!」

 

クルーゼの言葉にアデスは従い、
攻撃態勢に入るようにクルーへ指示する。

 
 

「!?(…捕まえた!)」

 

ムゥはヴェサリウスの側面を突く為に暗礁地帯に紛れ、回り込みとうとうヴェサリウスを捕捉する。

 
 

「何やってるんだ!アスラン、イザーク!とっとと頭を抑えろ!」
「ディアッカ!?」
「ちっ、4機が揃ったか!?」

 

ディアッカがアスラン達の下へ到着するとモタついている3人へ声を上げる。
アムロはキラの行動に疑問を感じつつも、次の対処を考えていた。

 
 

「……(ネティクスか…ムゥ・ラ・フラガ……何故出てこない?
私と戦った時は異常などなかったはず…ヘリオポリスが爆発した時はすでに足つきへ撤収していた……)」

 

クルーゼはアークエンジェルとの距離が縮まったならアークエンジェルのピンチでもある。
しかしそういう時に無理をしてまで出てくる筈のムゥが出てこない事が気になっていた。

 

「うおりゃああああ!!」

 

「!!(これは…まさか!?)機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!」
「は!?」

 

クルーゼの疑念は感となった瞬間だった。
ムゥの気配に気付き、ヴェサリウスに回避行動の指示を送り出し、アデスは何事かと反応する。

 

「本艦底部より接近する熱源、MSです!」
「っ!?ええい…CU作動!機関最大!艦首下げ、ピッチ角60!」

 

アデスはクルーからの報告を聞くと慌ててクルーゼと同様の指示を送るが遅かった。
ムゥはネティクスの有線式ビームキャノンでヴェサリウスの甲板部を撃つ。
そして有線をヴェサリウスの艦体に巻き付け右腕に仕込まれているダブルビームライフルて艦首を撃ち抜く。

 

「うわあぁぁぁぁ!」
「いーよっしゃぁぁ!!ビームキャノンバージ!待ってろよアークエンジェル!」

 

ヴェサリウスのブリッジにはザフト兵達の慌てる声が響き、
ムゥは一人コックピットの中で歓喜の声を上げ、有線式ビームキャノンを切り離し離脱態勢に入る。

 

「機関損傷大!艦の推力低下!」
「敵MS離脱!」
「撃ち落とせぇぇ!!」

 

アデスに上がってくる報告はまさに危機的状況であり戦闘続行は不可能な状態であった。

 

「第5ナトリウム壁損傷、火災発生、ダメージコントロール、隔壁閉鎖!」
「(…ムウめぇ!)離脱する!アデス!ガモフに打電!」

 

クルーゼも仮面の下からも伝わるような苦渋の表情であったが
ヴェサリウスはここまでと判断し離脱を告げる。

 
 

「フラガ大尉より入電、作戦成功、これより帰投する!」
「「「おお~!」」」

 

トノムラがムゥの作戦成功の報を読み上げるとブリッジからも歓喜の声が上がる。

 

「…。機を逃さず、前方ナスカ級を討ちます!」
「ローエングリン、1番2番、斉射用意!」

 

ラミアスが一つ息をホッと吐き、顔を上げるとヴェサリウスへ波状攻撃をかけるよう指示を出し、
ナタルは作戦通りにローエングリンのスタンバイを指示する。

 

「フラガ大尉に空域離脱を打電!ストライクにも射線上から離れるように言って!」
「陽電子バンクチェンバー臨界!マズルチョーク安定しました!発射口、開放!」

 

アークエンジェルは左右カタパルト下からせり出したローエングリンをヴェサリウスに発射する。

 
 

「当たれ!!」
「うわっ!!」

 

アムロはブリッツへビームライフルを放つと
ブリッツは辛うじて右腕で防いだが右腕のユニットが失われる。

 

「ニコル!?チッ!頼むから足引っ張んなよ!!」
「ディアッカ!!」

 

ニコルにディアッカは舌打ちをし文句を言いながらも、ミサイルランチャーを放ち援護射撃を行う。

 

「甘い!!」

 

アムロはバーニアを吹かしミサイルの雨を掻い潜ると
一気に距離を詰めバスターへシールドを突き出し正面からぶつける。

 

「うわあ!?」
「まだだ!!」

 

ディアッカはシールドに突き飛ばされ機体全体が大きな衝撃を受ける。
追い打ちをかけるようにνガンダムで蹴りを喰らわせる。

 

「くそっ!MSで格闘なんて無茶苦茶なやり方だ!!」
「ディアッカ!多分、ライデン少佐がやられたMSってコレですよ!!」

 

ディアッカはアムロの全く無駄の無い動きと距離を詰めれば
バスターが不利になる戦いをしてくるアムロに放浪されていた。
ニコルはアムロと戦っていてライデンが追い込まれた相手だと予想し、慌てた様子でディアッカに伝える。

 

「マジかよ…そりゃ強えぇワケだチクショウ!!」
「下手したら僕らここで死ぬかもしれないですよ…!」
「くそ!自分で言っちまうが赤服が聞いて呆れちまうな!!」

 

アムロの強さにディアッカもニコルも恐怖すら感じていた。
ザフトでもエリートとして扱われる赤服が
転移者であるアムロやライデンにこうも敵わないとなると
自分達の力の無さを感じていた。

 
 

ーーーー…!?
「ヴェサリウスが被弾!?」
「何故!?」
「俺達に撤退命令!?」

 

アムロに手こずり、キラを仕留めきれずにいるアスラン達に突如撤退命令が送られ、動きが止まる。
そしてその瞬間、アークエンジェルより発射された2本の巨大なエネルギー帯がヴェサリウスへ向かって行く。

 

「しまった!」
「うひょーーー!」

 

イザークはローエングリンの射線上からヴェサリウスに放たれたと察知し、声をあげ。
射線上を外れアークエンジェルに向かうムゥはその光の帯を見て興奮していた。

 

「熱源接近!方位000、着弾まで3秒!」
「右舷スラスター最大!躱せっ!」

 

ヴェサリウスはクルーゼの指示により艦体を回避させるようにするがローエングリンは左舷部分を掠めた。
しかし、膨大なエネルギーを誇る陽電子エネルギーは掠めただけでも甚大な損傷を与えた。

 

「うぉぉぉ!」
「えええーーい!」

 

再びヴェサリウスのブリッジは騒然とし、クルーゼも声を荒げた。

 
 

「ナスカ級、本艦進路上より離脱!」
「各機へ帰還信号を!アークエンジェルはこのまま最大戦速で、月へ向け戦闘宙域を離脱します!」

 

チャンドラがヴェサリウスの撤退を報告するとラミアスは迅速に各機へ帰還命令を出させ、帰還信号弾の合図を出す。

 

「!…」
「帰還信号!?させるかよ!こいつだけでもっ!」

 

漆黒の空間に緑と赤の信号弾が辺りを照らすとキラも気付くが、
イザークは逃がすまいとストライクへ追い込みをかける。

 

「イザーク!撤退命令だぞ!」
「うるさい!!腰抜け!」

 

アスランはイザークを止めるが、
仕留めきれなかった苛立ちを
アスランとキラへ向け、ストライクへ襲いかかる。

 

「くっそー!これじゃあ…」

 

常に後手に回り執拗に追い回すイザークの攻撃を躱し、
防御するのが精一杯のキラは間違いなく戦闘を行うに値しなかった。

 

「キラ!」
「挟まれてます!これではっ!」

 

ミリアリアはキラが危険な状態である事を確認すると思わず声を出す。
トノムラはストライクがイージスとデュエルに挟まれた状態に危機感を感じていた。

 

「援護して!」
「この混戦では無理です!」
「ストライクとの距離、開きます!」
「キラ…」

 

アークエンジェルのブリッジでははラミアスやナタルがなんとかキラを援護しようと模索するが
解決の糸口が見つからない状態にトールの顔が不安に包まれる。

 

「…ストライクのパワー残量が心配です!!」
「分かってるわ!フラガ大尉とアムロ大尉に援護するように打電して!!」

 
 

「戻れない?チィ!あのバカ!」
「……!!」

 

「あっ!?ニコル!ヤツを追うぞ!!ストライクを援護するつもりだ!」
「はい!」

 

アークエンジェルより送られて来た電文に目を通すと
ムゥは舌打ちをし全速でキラの下へ向かい、
アムロは何も言わずにキラの援護に向かう。
νガンダムがストライクの援護に向かうと帰還命令に気を取られていたディアッカが慌ててνガンダムの後を追う。

 

「うわわあぁぁぁ!!」
「でやぁぁぁ!!」

 

デュエルの攻撃がストライクに当たると、機体がみるみるうちに灰色へと変化する。

 

「……パワー切れ!?しまった!装甲が!」
「もらったぁ!!」

 

キラはPS装甲がダウンし襲いかかるデュエルの攻撃を受ける直前となる。

 

「「?!…」」
「うっ……!?」

 

キラがコックピットで目を瞑り、何も起きないと思い静かに目を開ける。
目を開けモニターを確認すると目の前にはνガンダムの背中が見え、デュエルは距離を取っていた。

 

「ア…アムロさん…。」
「……。」
「くそっ!またキサマか!!」

 

キラはアムロに助けられたと感じていたが
アムロはキラに声も掛けずデュエルを前に立ち塞がる。
イザークは絶好のチャンスを逃した事により怒りは頂点に達していた。

 

「!?回線?オープン!?」
「ラミアス艦長!アムロ大尉がオープン回線を使用しています!」
「えっ!?」

 

アスラン達やラミアス達は突如、νガンダムから回線がオープンで来た事に驚く。

 

「ガンダムのバイロット達、そこまでだ。
お前達の旗艦は戦闘など出来ない。今すぐ剣を引いて帰るんだ。」
「!?」

 

アムロは回線を使用したが、単に戦闘を中止させようとする内容であった。

 

「ブライト艦長!!アムロは一体何を!?」
「分からん…だが何か考えがあっての事かもしれない。」

 

ラー・カイラムにも回線は届いており、メランは慌てた様子だったがブライトは静かに見守っている。

 

「ふざけるな!!そんな事を言う為にわざわざ!」
「?随分と若いバイロットだな…
だがこれ以上戦うのならば君達が乗っているガンダムを全て破壊させてもらう。
その若い命を無駄にしたくないのなら引くんだ。」

 

イザークは激昂し、アムロに喰ってかかる。
アムロはモニターに映るイザークを見てキラとたいして変わらない年齢のバイロットと感じていた。

 

「脅しのつもりか!?」
「おいおい…破壊って…まさかさっきから本気じゃないとでも言うのかよ!」

 

イザークに続きディアッカがアムロに突っかかる。
ディアッカにとっては余程気に障ったようだった。

 

「だったらやってやる!!」
「調子に乗るなぁ!」
「イザーク!!ディアッカ!?」
「ち…馬鹿なことを…!!」

 

ディアッカはアムロに再び戦いを挑み、イザークも続くようにアムロへ突進する。

 

「調子に乗るなよオッサン!!」
「落ちろ!!」

 

バスターは両手に持ったライフルを連結させ超高インパルス長射程狙撃ライフルを放ち、
その横からデュエルはビームライフルを連射する。

 

「そんなビームは効かない!」

 

νガンダムの背中からフィン・ファンネルが展開され
νガンダムを覆うように出来たビームのピラミッド、Iフィールドがバスターとデュエルの攻撃をかき消す。

 

「な!?デュエルのビームならまだしもバスターのビームが!!」
「なんだあのMSは!?」

 

ディアッカとイザークはアムロがまだ彼らに使っていない兵器を見せつけられ驚く。

 

「くっ…あれじゃディアッカもイザークもやられる!!アスラン!援護しましょう!」
「……ああ…!!(くそっ!キラ…どうすれば…)」

 

撤退命令を受けたアスラン達だったが
イザークがキラを追い込んだ事により結果として自分達のピンチを招いてしまった。
ニコルやアスランは無理をするよりも引く事を考えたが、イザーク達の劣勢に援護せざるをえなかった。

 

「ん?今度は4機全てが来るか!?」

 

アムロはアスランとニコルのアムロに対する殺気をいち早く感じるとさらに集中力を高める。

 

「イザーク!ディアッカ!牽制を俺達がしている間にニコルが背後から捕まえる!
そしたら一斉に撃つぞ!!」

 

アスランはイザークとディアッカへ攻撃の指示を送る。
アムロの四方を囲む陣形を取りながらアムロへライフルを放つ。

 

「見えている!!その程度では!」

 

「!?…今だ!」

 

アムロは難なく3機の攻撃を躱すがその隙を狙ったニコルがブリッツの左腕にあるグレイプニールをνガンダムの足を目掛けて放つ。

 

「!?っ!」

 

アムロは背後の殺気を感じると機体を反転させビームサーベルを右手にグレイプニールを切り払う体制に入る。

 

「えっ!?」

 

ニコルはタイミングに手応えを感じていたが、νガンダムの早過ぎる反応に驚愕する。

 

「おりゃあ!!」
「!!?」

 

その一瞬だった。
ムゥがアムロの下へ到着し、ブリッツの左手の肘から下を切り落とす。

 

「うわっ!!」

 

それと同時にグレイプニールはアムロにより破壊され小破する。

 

「アムロ!!あんたやっぱり怪物だぜ!いいトコ持っていくな!?」
「ムゥ!!」

 

ムゥがアムロをベタ褒めしながら、アムロの側に寄る。

 

「ちっ援軍か!」
「ヤツがヴェサリウスをやったみたいだ!」

 

ディアッカ達に焦りが生まれる。しかし、イザークは違った。
はらわたが煮え繰り返りアムロへ異様なまでの殺気を放つ。

 

「あいつら~…!!図に乗るんじゃない!!やるぞディアッカ!」
「!?はいよ!」

 

イザークはディアッカと共にアムロへ再び仕掛ける。

 

「殺しはしないが引かせるなら!!」

 

アムロは一気にペダルを踏み全開でバーニアを吹かし突貫する。

 

「来たぞ!」
「ヤロー!!」

 

バスターとデュエルはνガンダムを迎え撃つが2機の攻撃を軽やかに躱すと
背後に素早く付くとデュエルに対しニューハイパーバズーカを背中に叩き込む。

 

「ぐぅっ!!だが実弾などは!」
「うっとぉしいっての!!」

 

近づいたνガンダムへ対装甲散弾砲を放つがアムロはすぐさまダミーバルーンを
バスターの目の前に2体展開し離脱を図る。
バルーンに散弾砲は直撃しバスターの目の前でバルーンは爆発し散弾砲の火薬と誘爆し激しく機体が揺れる。

 

「つぅ!?PS装甲が無けりゃ死んでるぜ!!」
「ちょこまかとぉ!!」
「甘いさ!!」

 

ディアッカはアムロの強さに危機を感じながらも応戦する。
イザークもグレネードを放つがバズーカで撃ち落とされる。

 
 

「当たれ!!」
「!!」

 

ムゥはイージスに対して右腕の2連ビームガンを放ちながら動き回る。
しかし、それを難なく躱し、ライフルで撃ち合いムゥの横に回り込みMA形態に変形しスキュラを放つ。

 

「ヤバい!!」

 

「隊長!」
「!?」

 

ネティクスはスキュラに被弾する瞬間にベアードがロングレンジビームキャノンで相殺する。

 

「ち!!もう厳しいか!?」
「サンキュー!ベアード!」

 

アスランは攻撃を防がれると表情が完全に曇る。
ムゥは危機を救ったベアードに礼を言い、優位な状況に立つ。

 

アムロは尚もバスターやデュエルの攻撃を躱してビームライフルの雨を浴びせる。
高速に動くνガンダムから放たれるビームライフルをデュエルはシールドで防ぎ、バスターはなんとか回避をする
そして回避に手を焼く2機に再びハイパーバズーカを当てた。

 

「実弾は効かな……なっ、これ!?」
「…くそっ!!」

 

ディアッカとイザークは動きが止まった。
バスターとデュエルはストライク同様にPSダウンを起こす

 

「勝負あったな。」
「う……うわあああ!!」

 

νガンダムはデュエルの右腕を斬り落とした。

 

「さあ…引くんだ。」
「う………うぅ…。」
「悪魔だ…なんて強さだ……アスラン、ディアッカ、イザーク!引きましょう!!」

 

アムロはビームサーベルをデュエルのコックピットに向け再び回線で引くように言う。
イザークはショックなのか恐怖なのか分からず、体を震わせていた。
その場にいたニコルはアムロの強さに脱帽し全員に撤退を促し。敵わないと感じた2人も引き上げる。

 

「アスラン!!」
「キラ、俺は血のバレンタインで母親を亡くした…だから戦う…。」

 

引き際にアスランはそう一言言うと引き上げていった。

 

「アスラン……。」

 

引き上げるアスランを見ていたキラは結局、何も出来ないままだった。

 
 

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