CCA-Seed_373 ◆lnWmmDoCR.氏_第17話

Last-modified: 2008-06-17 (火) 23:16:42

甚大な被害を受けたミネルヴァはマルマラ海の港へと停泊する。
補給物資や資材はディオキアから回してもらえるとのことだった。…壊れたものは直せばいい。しかしタンホイザーの爆発に巻き込まれ死んで行った
仲間たちは帰ってこない。黒い袋に入れられて艦から降りる仲間達をシン、レイ、ルナマリアはじっと見ている。シンは怒りを露にした。

 

「くっそ…なんなんだよ…これ…なんであいつらが…またアスハが俺から大事なものを奪っていきやがる…」

 

そう言うシンにレイやルナマリアがかけてやれる言葉は無かった。
アスランは命令違反から修正部屋にしばらく入ることとなり、ハイネの部屋はアムロの提言からそのままにされることとなった。
アムロはMSデッキで修理が殆ど終わったプロトセイバーの微調整を行っていた。繊細な動きが重要になってくる腕部のため調整は念入りに
行われている。そこにアーサーから呼び出しがかかった。作戦室へ行くと、アーサーが慎重な面持ちで待っていた。

 

「お疲れ様です。整備中に申し訳ありません。」
「いや、殆ど終わっていた。どうしたんだ?副長。」
「先ほど作戦司令本部から命令が届きましたんでお伝えします。この先のロドニアという地域住民から情報提供がありました。
その地域には地球軍の施設があったようですが以前は航空機や車両、MSまで出入りしていたようですが最近静かになっている。と」
「と言うことはそこに行ってくればいい訳か?」
「そうです。明朝に、ですが。一応地球軍の施設と言うこともありますので何が起こるかわかりません、武装勢力が立てこもっていると言うことも考えられますので…」
「わかった。気をつける。」

 

明朝、アムロ、シン、レイはそれぞれの機体でそのロドニアという地域へと向かった。
地域住民からもらった情報に従い山間部へと進むとかなり大規模な施設が見えてきた。明かりは見えないし人がいる雰囲気でもなかった。
MSを着陸させ施設の周辺を一通り見回ったところ誰かいる様子ではない。もしいたとしたら施設に接近した時点で何らかの迎撃でもあったはずだが。
施設への入り口を銃を構えながら蹴り破る。あたりを静寂とこの世のものとは思えないほどの異臭が漂う。
ライトのスイッチを見つけONにするとあたりに異様な光景が広がった。血の海と死体の山。しかも何日も経過している。
シン、アムロはそれを見て吐きそうな気分になるがレイは違った。呼吸が荒くなり急に体に力が入らなくなりがくっと膝が折れた。

 
 

「レイ。レイ!どうした!」

 

そう叫ぶシンの声を聞いたアムロが振り返るとレイの様子がおかしい。有毒ガスでも発生しているのかもしれない。
ガスマスクでも持ってくれば良かったが後悔してももう遅い。シンとアムロはレイをつれて急いで施設を出るとミネルヴァに連絡を入れた。
しばらくするとまだ修理中のはずのミネルヴァが到着した。専門の調査チームをつれて。
アムロとシンは医師から診断を受けていた。レイがああいう状態になったのだ、当然のことだろう。
その間に中へと入ったタリアとアーサーが戻ってきた。アーサーはまさに顔面蒼白といった顔をしている。
アムロは服を着ながらタリアに聞いた。

 

「どうでした?艦長。結局この施設は何なんなんです?」

 

艦長は厳しい顔で話始めた。

 

「連合軍がコーディネーターの先天的優位性に対抗するために作った施設よ…。」
「対抗…?まさか!」
「そう。薬物、精神操作など遺伝子操作以外のあらゆる技術をもってして作り上げる戦争用の人間、その製造工場といったところよ。」
「強化人間…!どこの世界でも行き着く先は一緒と言うことか…」
「と言うことはあなたがいた世界でもいた、と言うわけね…悲しいことね…」

 

そう言うとタリアはミネルヴァへと戻っていった。アムロミネルヴァへと戻りレイの元へと向かう。医務室へと向かうとレイはもうベッドから起き上がろうとしていた。

 

「レイ、もう大丈夫なのか?」
「ええ。ご心配お掛けして申し訳ありません。もうなんともありませんので。」
「そうか何とも無ければいいんだ。それにしてもどうしたんだ?急に。」
「自分でもわかりませんが…」
「まあ、あの凄惨な光景を見たら仕方が無いさ。今日はゆっくり休め。無理してでも休めるときに休まないとパイロットは勤まらないぞ。」

 

そう言うとレイは少し微笑んでから

 

「はい。申し訳ありません。」

 

そういって出かけたベッドへと戻ったのを見ると医務室を出ようとした。その時だった。タリアから艦内に放送が流れた。

 

「アムロ!現在この施設にMSと思われる熱源が接近中です。レイは今出せる状態じゃないからシンと二人で迎撃に出て!」

 

それを聞いたアムロはMSデッキに走り修理が終わったばかりのプロトセイバーに乗り込んだ。するとメイリンから通信が入る。

 

「隊長、接近中のMSがわかりました!強奪されたガイアです!しかし単機のようです!何かあるのかも知れません。注意して下さい!」
「了解した!プロトセイバー、発進する!」

 

発進したプロトセイバーはフォースインパルスと共にガイアの迎撃に出た。それが運命を変える出撃とはシンはまだ知らなかった。
すぐにMA形態に変形したガイアが確認できる。本当に一機で来たようだ。周りに機影は見えない。

 

「シン。敵は本当に一機のようだ。こんなところに一機で来るとは普通ではありえない。何かあるはずだ。なるべく捕獲するぞ。」

 

「ええ?捕獲ですか?そんなことせずに一気にやっちゃえば良いじゃないですか。」
「爆薬でも積んでたらどうするんだ?そんなに巻き込まれたいのか?」
「うっ…わかりましたよ。でも”出来たら”でしか出来ないですよ。」

 

そう言うとガイアへとビームを放ち牽制する。避けるガイアにプロトセイバーがサーベルで斬りかかる。いつもはコックピットを狙えば終わるが今回はそうはいかない。まず足を止めるためにガイアの四肢を狙う。アムロはそのときなんともいえない嫌悪感に襲われた。
その嫌悪感の正体はすぐにわかった。あの羽付きだ。あいつがやっていたことを今自分がやろうとしている。しかしこれは仕方の無いことだと自分に言い聞かせた。シンの牽制のため回避行動をとったガイアの左足を軽々と斬り飛ばす。着地にうまくいかないガイアに更に機体をぶつける。
吹っ飛んだガイアにインパルスのビームサーベルがコックピット部分の装甲を吹き飛ばしガイアを行動不能に陥れた。シンはガイアのパイロットを確認しようとする。そこにいたのは…ステラだった。

 

シンはインパルスを着地させガイアへと走る。

 

「シン!何をするつもりだ!」

 

アムロの声はシンには届いていない。シンはガイアのコックピットからパイロットを担ぎ出すとそのままインパルスへ乗り込みミネルヴァへと帰っていく。
ミネルヴァのデッキに着艦すると機体はほったらかしにしてパイロットを担いで医務室へと走る。その様子を見ているヨウランとヴィーノ、彼らはそのパイロット知っていた。

 

「ステラちゃん!?」

 

その呼びかけはシンにもステラにも届かない。二人はシンが走って行くのをただ見ているしか出来なかった。

 
 

医務室に運び込まれたステラは暴れだし軍医に飛び掛る。騒ぎを聞いた兵士たちにやっとのことで抑えられたステラは精神安定剤を打たれ意識を失った。
シンはタリアにに呼ばれ強く言い聞かせられたが、シンは自分の行動が正しいことだと頑として譲ることは無く、反抗的な目でタリアを見ているだけだった。

 

「…いまあなたのやったことについて何を言っても無駄なようね…あなたは人命救助したつもりかもしれないけど、検査の結果あの娘は、エクステンデッドらしい、という話よ。あなたはこの艦に対してどれほど危険なことをしたか良く考えなさい。」

 

そう言うとシンを艦長室から開放した。シンは呆然としながら医務室へと向かう。ステラがエクステンデッドという事実は彼にはあまりにも重くのしかかっていた。シンはステラにしてあげられることは見守ることしかなかった。ステラが意識を取り戻すとステラはシンに笑顔を見せる。
シンも笑顔を見せるがそれは笑顔になっていなかった。シンはほぼ一日中ステラに付きっきりなった。が、
日をおうごとにステラは目に見えて衰えていく。意識を無くしたり取り戻したりを繰り返すようになった。シンは意識が回復するたびに手を握りステラに顔をみせる。意識がなくなると医務室からでて廊下に一人うずくまり座っていた。ステラとシンの気持ちなど知るはずも無く、戦いの足音は静かに近づいていた。