CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第18話_中編

Last-modified: 2007-11-10 (土) 18:17:11

 アークエンジェルの甲板上でνガンダムはストライクと共に片膝を着き佇んでいた。その様な状態にあっても、νガンダムの持つアグニは常に戦場へと向けられ、いつでも発射は可能な状態であった。
 νガンダムのコックピットでアムロは目を瞑り、ハルバートンからの通信を待っていたが、やがて、モニターにアークエンジェルを介して、映像が送られて来た。
 モニターに映る地球連合軍の制服を着た男性が口を開くと、スピーカーから声が響く。

「――私が第八艦隊司令、デュエイン・ハルバートンだ。今までストライクとアークエンジェルを守ってくれた。礼を言う」
「いいえ。私は、たまたま通信を傍受し、結果的にそうなっただけの事です」
「だとしても、君が我が軍の最新兵器を守ってくれた事には変わりない。心から感謝する」
「恐縮です」

 ハルバートンからの礼に、アムロは慎重かつ丁寧に答えた。
 何と言っても、相手は艦隊を指揮する人間なのだ。ましてや、アムロは、ここでは何の身分を証明する事が出来ない。
 ハルバートンの機嫌を損ねぬ様に、話を続けるのが得策と判断する。

「それでだが、君の名前は?」
「名乗るのが遅れまして申し訳ありません。アムロ・レイと言います」
「いや、構わん。そのストライクに似た機体の形状からして、君はモルゲンレーテの者なのだろう?ヘリオポリスがあの様な事になり、私としても甚だ遺憾である。
 地球連合軍を代表し、モルゲンレーテの開発協力に感謝の言葉と、オーブ国家に対し、ヘリオポリスでの被害に遭われた方々の速やかな回復と被災からの復興を祈念する」
「いえ、私は――」

 アムロはオーブの人間では無いのにも関わらず、その様な言葉を贈られた事に戸惑い、思わず言葉を詰まらせた。
 そして、ナタルの言った事を思い出す。
『――提督はνガンダムがモルゲンレーテの物だと思っておいでです』
 ハルバートンの話す姿を見る限り、アムロの事をオーブの人間だと勘違いをしているのは明らかだった。それなら、その勘違いに乗るのも手ではある。
 アムロはハルバートンに対して、慎重な面持ちで口を開く。

「……それは、私ではなく、国の方にお伝え頂けますでしょうか」
「うむ。そうさせてもらうつもりだ。今回の件では、君個人にも感謝している」
「いいえ。私としても、あの様な状況でアークエンジェルに乗せて頂き、感謝しています」
「いや、構わぬ。時に君は、ストライクに乗っているキラ・ヤマト君と同じコーディネイターなのかね?」

 ハルバートンの勘違いに乗る事にしたアムロは丁寧に受け答えをしつつも、ハルバートンからの問いに、この世界のナチュラルとコーディネイターと言う対立がここまで激しい物なのだと実感した。

 アムロは、一瞬、ストライクに目を向けると考える。
 ――モルゲンレーテは、ナチュラル用にストライクを造ったはずだ。それなら、νガンダムがナチュラル用だと思っていても可笑しくはないか……。
 アムロは、再びハルバートンの映るモニターへと顔を向ける。

「……私は――。……ナチュラルですが……」
「――そうか!モルゲンレーテは良い物を造ってくれた!これで我々はプラントに対して、兵器的にも対抗出来ると言う物だ。君達の尽力に心から感謝する!」
「……ありがとうございます」

 アムロの言葉を聞いたハルバートンの喜びようは、真面目な表情をしながらも興奮を見て取れる程、異様とも言えた。
 それ程、ナチュラルがモビルスーツを動かせると言う事実は、この世界では重要な事だった。
 ハルバートンの姿を見たアムロは「それ程の事なのか」と、戸惑いを憶えつつも一応として礼で答えた。
 すると、ハルバートンは表情を硬くすると口を開く。

「それでだが、アークエンジェルは地球に降りる事となる」
「……地球に!?」
「そうだ。そこでだが、引き続きアークエンジェルの警護をお願いしたい。ちなみに君は軍籍を持っているのかね?」

 ハルバートンの申し出はアムロに取って、都合の良い物で、受けるつもりではいたが、軍籍の事まで問われるとは思わなかった。
 この世界では通用こそしないが、地球連邦軍の軍籍を持っているのも事実で、軍証も持っている。

「ええ。まあ、一応……ですが……」

 地球連合に入る事は今でなくとも可能だと考えたアムロは、今は下手に拘束を受けるよりも、今後の選択肢を増やす為の選択を選んだ。
 アムロの返事を聞いたハルバートンは、残念そうな表情を浮かべた。

「そうか……。勿論、君がオーブの軍人である以上、強制は出来ん。君自身が決める事だが、どうかね?私としても、恩を仇で返すつもりは無い。勿論、都合が悪ければ離艦は認めるつもりだ」
「……ありがとうございます。私はアークエンジェルと共に地球に降りようと思っています。その間は今まで同様に協力させていただきます」
「――そうか!それはありがたい!これを機にオーブと協力関係を結べれば、我々としては有り難いのだがな」
「それは、一個人では何とも言えません。私としては先程言った通り、船を下りるまでは協力させていただいきます。そこでお願いがあります。
 現在、アークエンジェルでの立場なのですが、私は地球軍大尉と言う事になっています。一時的な措置とは言え、それをお認め頂きたい」

 アムロは、アークエンジェルの警護の見返りに条件を出した。それは、この先、もしも地球連合に所属する事になった場合、少しでも実績が有れば良い条件で入隊する事が出来る。
 それ以外にも、ハルバートンにはオーブの軍人と思われてはいるが、それは嘘でしかなく、この世界での自分の身分を証明する物が無い。それを作るチャンスでもあった。
 ハルバートンは、一瞬、考え込む様な素振りを見せ、アムロを見据える。

「……ほう。その理由は?」
「……ラミアス、フラガ両大尉と話し合い、その様な事となりました。……乗組員は私の事を地球軍の人間だと思っています。
 事が事だけに、私の正体がばれますと、この様な戦局では艦内の士気にも影響すると思われます。それを防ぐ為にも、出来れば艦内で私の身分を証明する物を頂きたいのですが……」

 言った以上、アムロも引き下がる訳にはいかない。これ程のチャンスは無い。口から出任せではあるが、冷静に理由を口にした。
 それを聞いたハルバートンは、モニターから目線を外し、腕組みをすると少し考え込んだ。

「……なるほどな。……分かった、認めよう。少年達の物も作らねばならぬからな。特別措置として、君が我が軍の者であると言う証明出来る物を、至急、作らせるようにラミアス大尉に伝えておく。
 私としては、そのまま地球軍に籍を置いて欲しいくらいだがな。どうかな?」

 ハルバートンは頷くと、目線をモニターに戻してアムロの出した要求を飲む事を了承した。
 アムロは、その言葉に安心した表情を浮かべ、ハルバートンに向かって頭を下げる。

「ありがとうございます。軍籍の事は考えさせていただきます」
「――はっはは!そうか!それでは引き続きアークエンジェルを頼んだぞ、アムロ・レイ大尉!」
「――了解しました」

 返答を聞いたハルバートンは、社交辞令的な言葉と分かっていながらも嬉しそうに笑い、仮初めではあるが、地球連合軍の階級でアムロの名を口にした。
 アムロは頷き、ハルバートンに向かって敬礼をした後にモニターを切った。

「……慣れない事をすると疲れるな……。とにかく上手く行ったと言う事だな」
 
 アムロは、シートに体重を預けると大きく息を吐いた。そして、ヘルメットを被り直す。
 身分を証明する物が手に入るとは言え、まだ戦場に居るのだ。アークエンジェルが沈んでしまっては何の意味も無くってしまう。
 ヘルメットのバイザーを下ろすと、閃光が瞬く場所へと目を向けた。

 地球軍プトレマイオス基地ドック内では、戦艦の爆破作業に入っていたザフト軍モビルスーツ達が、戦艦の残った砲塔から攻撃を受ける事態が起こっていた。
 勿論、それ以外にもバズーカなどの兵器を使う地球軍将兵からの攻撃を受けている。

 一機のジンが、戦艦からの攻撃を巧みに避けながら砲塔へと距離を詰める。

「――ナチュラルが――!」

 ジンのパイロットは叫ぶと、一気に砲塔へと降り立ち、サーベルを突き立てた。
 砲塔は小爆発を起こすと沈黙する。
 そこに、ブリッツに乗るイザークからの通信が入る。

「そっちは済んだか?」
「――ああ。これでデカイ攻撃は来ないはずだ」
「残りの作業はどうなっている?」

 砲塔を潰したジンのパイロットが辺りを確認しながら返事をすると、スピーカーから再び、イザークの声が響く。
 恐らく、爆破作業を行っている他の機体に作業の進行状況を聞いているのだろう。

「――現在、進行中!間もなく終了する!」
「早く済ませろ!」

 スピーカーから爆破作業を行っているパイロットの声が響くと、イザークの怒鳴り声が再び響く。
 赤服と呼ばれるエリート達は、年齢が下であろうが立場は上だった。多くの中から選ばれた一握りの人間なのだから、当たり前なのだ。
 勿論、全ての赤服がそうではないが、それでも、ブリッツのパイロットの物の言い方は、どうにか成らない物かと感じる。
 同じ隊の者には悪いが、つくづく、ブリッツに乗るパイロットと同じ隊に所属していなくて良かったと彼は思った。
 気を取り直すと、湧いて出て来る地球軍兵士をどうするか考える。奴らは、バズーカやらを抱えて出て来るのだ。流石にモビルスーツと言えど、生身の人間相手に重装備の機体では対処はしにくい。
 彼は作戦の都合上、爆薬の誘爆を避けなければならず、今は地球軍兵士をミサイルやビームの大型火器で吹き飛ばす訳にもいかない。かと言って、このまま何もしない訳にも行かないのだ。
 その事で頭を悩ませながらも、彼は攻撃して来る地球軍兵士の対処を始めるのだった。

 眼前に地球軍プトレマイオス基地を見ながら、自軍のモビルスーツと敵であるモビルアーマーの戦闘が行われている。光が瞬いては、爆発が起こり、また一つの命が散って行く。
 ザフト軍の攻撃は、ブリッツの基地内部への突入を皮切りに、一部予想外の事があったとは言え、予想よりも順調と言える。
 作戦の指揮を執るクルーゼは、プトレマイオス基地攻撃艦隊の旗艦であるヴェサリウスのブリッジで戦況を静かに見守って居た。
 その中、プトレマイオス基地の外で戦うディアッカから通信が入る。

「――ヴェサリウス、状況を教えてくれ!中に突入したイザークはどうしてる!?」
「――現在確認中だ!気にせず、ディアッカは予定通りに敵を倒せ!」
「――ちっ!分かったよ!」

 通信を受けた男性のオペレーターは、プトレマイオス基地に突入した部隊の確認作業に追われている為か、余分な作業を増やすなとばかりにディアッカをあしらう。
 それを耳にしたディアッカは、舌打ちをすると怒鳴って通信を切った。
 クルーゼは、オペレーターの口からディアッカの名が出た為、何事かと声を掛ける。

「ん?バスターがどうしたのか?」
「あ、いえ。ブリッツはどうしたのかと通信が入りまして……」
「そうか。ならば、私に回線をまわせ」
「了解しました」

 指示に頷いたオペレーターは、回線をクルーゼへと回すと、再び確認作業へと入った。
 クルーゼは椅子の肘掛の所にあるパネルのスイッチを押すと、バスターへの回線が開く。
 するとディアッカは、先程のオペレーターからの通信だと思ったのか、怒鳴り声が響いた。 

「――言われた通り、やってんのに何だよ!?」
「ディアッカ、そう、カリカリするな」
「――隊長!?済みません!」
「フフッ……。構わんよ。イザークなら、今頃、中で指揮を執ってるはずだ。それは知っているだろう。少しは信じてやれ」
「……分かりましたよ。了解!」

 クルーゼからの通信だと思わず、怒鳴り声を上げたディアッカは、恐縮する様に謝罪の言葉を口にするが、その様子を察してか、クルーゼは鼻で軽く笑い、人の上に立つ者らしい言葉をディアッカに掛けた。
 声を掛けられたディアッカは、クルーゼのらしくない言葉に毒気を抜かれたのか、答えると直ぐに通信を切る。
 それを皮肉るかの様に、クルーゼは再び軽く鼻で笑う。

「――フッ。人とは面白い物だな」
「――は?」
「いや、なんでもない。中の状況は、どうなっている?」

 クルーゼの言葉を聞いたアデスが不思議そうに聞き返したが、当のクルーゼは軽い苦笑を浮かべ、オペレーターに基地内部の報告を求めた。
 すると、突入部隊の確認作業をしたいた男性オペレーターが、一瞬、クルーゼに顔を向けると、再びモニターへと目線を向け、淡々と報告を始める。

「はい。……どうやら、基地中枢に繋がる隔壁を閉じられたようです。それから、突入した部隊の数機が反撃に遭い、撃墜されている様です」
「そうか」

 クルーゼは報告を受けると、納得した様に頷いた。
 アデスも同様らしいが、クルーゼよりも若干厳しい表情でモニターを見詰めながら口を開く。
 
「やはり敵基地だけあって、一筋縄では行きませんな」
「それは始めから分かっていた事だ。しかし、最低限の仕事をこなしさえすれば、ザラ委員長閣下の面目も立つと言う物だろう?」

 クルーゼは、マスクの下に冷笑を称えながらアデスに向かって答える。
 本当の真意など知らないアデスは、「本当にそれでいいのか?」と言わんばかりの表情でクルーゼに目を向ける。

「……まあ、それはそうですが、現状では隊長のお考えが遂行されませんが……」
「欲を掻いた所で、我々がやられてしまっては笑い者になるだけだからな。作戦の立案者でもある手前、最低限の仕事が出来ればかまわんよ。今の所、隔壁を下ろされた事意外は、巧く行っているのだからな」

 クルーゼは苦笑いを浮かべると、淡々と基地を見据えながら答えた。
 本来ならこの作戦は、アークエンジェルの帰艦するべき基地を破壊するのが目的だったにも関わらず、タイミング的にラクス・クラインの弔い合戦としての意味合いが強く成り過ぎた為でもあった。
 それは言わば、自ら提案した作戦がいつの間にか、パトリック・ザラの支持集めの為の報復攻撃へと変貌していたと言う事だった。
 クルーゼ自身、その可能性は十分に有りうる事だと提案時に納得はしていた。尻込みするクライン派が、地球軍基地に直接攻撃など、早々掛ける訳も無い。
 タイミングを上手く利用し、攻撃を仕掛けると匂わせたパトリックの面目を立たせるだけならば、攻撃した事実さえあれば、それでプラントの人達は十分納得する。
 それはクルーゼに取っても、失敗さえしなければ決してマイナスには成らない。だからこそ、この作戦を進めたのだ。
 自ら目指す物の為には、若干の予定を変える事も時には必要と成るのだ。

 地球衛星軌道上での戦闘で、ザフト、地球、両軍の激突は続いていた。
 しかし、その戦いも両軍が徐々にだが引き始めた為か、会戦当初に比べれば激しさは納まりつつあった。
 互いの先鋒がぶつかり合う宙域でもそれは変わらないが、悩みを抱え、それが原因で動きを鈍らしていたアスランに取っては、攻撃が薄くなった分だけ幸運な事ではあった。
 そこに、支援の為に遣って来たデュエルから通信が入り、イージスのコックピットにニコルの声が響いた。

「――アスラン!無事ですか!?」
「――ああ!新型艦は!?」
「……逃がしてしまいました。それに……僕を残して全機……やられてしまいました」
「……そうか」

 ニコルは、アークエンジェルを逃してしまった事と、共に攻撃に参加したジンが全滅したのを悔しそうに告げるとアスランは複雑そうな表情を見せた。
 アスランは戦闘宙域外から現れたアークエンジェルに早々、護衛機が着くとは思えず、戦力がヘリオポリス当時と変わって無いのならば、脅威に成り得る機体はGATシリーズに似た機体のみだったと記憶していた。
 そのGATシリーズに似た機体にしても、確かにパイロットの腕は素晴らしい物だが、たった一機で組織的に戦う相手に戦艦を守りながら戦える物なのかと思う。
 それに、PS装甲を持たないモビルアーマー相手なら、アークエンジェルを簡単に取り逃がす事は無い。あの大きなアークエンジェルを守るには、それなりに数が必要と言う考えに至った。
 ――ニコルや他のパイロットが新型艦を攻撃に行って取り逃がしたと言う事は、キラがモビルスーツで出て来たと言う事なのか……?
 アスランは頭の中で湧いて来た疑問を確かめる為に、ニコルへと問いかけた。

「……ニコル……お前、もしかしてキラと逢ったのか?」
「……」
「ニコル、どうなんだ!?答えろ!」
「……アスラン、必要以上の交戦は避けろと指示が出ています。もうすぐ、この戦闘も終わります。僕達も引きましょう」
「――ニコル!キラと逢ったのか教えてくれ!どうなんだ!?」

 アスランは、答えようとしないニコルに怒鳴るように問いただした。
 ニコルは、キラへの未練が断ち切れないアスランに怒りを覚えたのか、捲くし立てる様に怒鳴り声を上げる。

「アスラン!いい加減、目を覚ましてください!あの人は敵なんですよ!味方が犠牲になっているんです!あなたが、いくら信じても駄目なんですよ!僕は聞いたんですから!」
「――ニコル!お前、一体――」
「――だから、キラさんに直接聞いたと言っているんです!あの人は、もう、あなたの友達なんかじゃ無いんです!諦めてください!」
「――!……そ、そんなの事……あのキラに限って……あるはずが――!」

 ニコルの口から出て来る言葉に、アスランは息を飲み、首を振りながら呻くように言葉が漏れる。
 アスランは、そのまま操縦桿を握り直すとイージスを敵の本体方向へと向け、敵の後方に控えるアークエンジェルへとバーニア噴かしていた。

「――アスラン!?」

 ニコルは、アスランの行動に驚き、声を上げるが、その声はアスランの耳には届いてはいなかった。
 アスランは呟きながら、敵先鋒艦隊の突破を計ろうとするが、メビウスが邪魔をする。

「……キラは……、キラは、そんな奴じゃないんだ!――ちっぃ!邪魔だ!」

 アスランはスロットルを全開に開き、メビウスを振り切ろうとするが、直線移動ならば圧倒的にモビルアーマーに分があった。メビウスはイージスの後方に取り付くと、イージスを追いかける。
 それを見たニコルは、すぐにスロットルを全開にし、メビウス同様にイージスを追った。
 そうしながらもデュエルは、イージスに攻撃を加えようとするメビウスに後方から狙いを着け、アサルトシュラウド右肩部装甲に搭載された一一五ミリレールガン"シヴァ" を数発、発射する。
 後方からの攻撃に、メビウスは呆気無い程簡単に爆発を起こすが、ニコルは撃墜よりもアスランの方が気になり、視線をすぐにイージスへと向けた。

「――アスラン、戻ってください!」

 ニコルは、小さく見えるイージスに向かって大声で叫ぶが、イージスは引き返して来る素振りなどは全く見えない。
 デュエルは、地球軍の攻撃を切り抜けながら、再びバーニアを噴かすとイージスの後を追い始めた。