CCA_507 ◆Bm82Mk3J2Y氏_第1話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 18:12:33

U・C 0093年 
1年戦争以来延々と続くジオン残党の抵抗。そのジオンの血統を受け継ぐ歴史上最後の組織「再興ネオ・ジオン」は 地球連邦軍に対し宣戦を布告した。
戦いは激烈を極めたが、小惑星アクシズを地球に落下させる作戦を連邦軍のエース「アムロ・レイ」によって阻止される。MSが小惑星であるアクシズを押し返したのだ。
それを担ったνガンダムは今、まさに大気圏に突入しようとしていた。
「―その暖かさが地球さえ潰す・・・それが分かるんだよ、アムロ!!」
νガンダムの腕に掴まれた脱出ポッドからシャア・アズナブルの声が響く。
「だったら、人々に心の希望の光を見せなくてはならないんだろう!」
アムロはシャアの声に答えた。彼はシャアと違い、腐敗した連邦政府には呆れてはいたもの、人類そのものの可能性に失望していなかった。だからシャアとは違い、希望を見出せたのかもしれない。
「黙れ!ララアは私の母になってくれるかもしれぬ女性だったのだぞ!!それを殺した貴様に言えたことか!」
シャアは憎しみを込めた声でアムロに言い放った。
「お母さん・・・?ララアが・・・?」
ここでアムロは一年戦争からシャアの悲しみはまったく癒されていないことに気がついた。
その時、不意にνガンダムが激しく揺れた。アムロの意識はそこで途切れた。
―アムロ・レイ大尉、戦闘中行方不明。(後に戦死認定がなされる)と後の歴史に記録されるとおり、U・Cでのアムロの戦いはここで終わりを告げた。
それに続くように「地球連邦軍第13独立部隊 ロンド・ベル」は、νガンダムに組み込まれていたサイコフレームが引き起こした原因不明の光に包まれ、消息を絶った。

 
 

0093年での史実と別の経過を辿ったU・C0088
この年の前年のグリプス戦役から続く戦乱も収束に向かっていた。
ハマーン・カーンは弱体化した地球連邦を打ち滅ぼすべく、戦力をコア3に結集させる。地球連邦もエゥーゴとカラバの双方の組織を吸収し、勢力を盛り返すと、実働部隊の全てを動員してそれに対抗した。
決戦の最中、その主力を担った旗艦「ネェルアーガマ」はその艦載機を乗せたまま消息不明になった。この2つの部隊は宇宙世紀とは別の歴史を辿った世界に召喚されることになる。そこで彼らは自分らとは違う、
―人類のもう一つの可能性を見ることになる―

 
 

第1話「未知との遭遇」

 

C・E73年 ある空域

 

「う・・・。気絶していたのか?」
愛機―νガンダムのコックピットでアムロ・レイは目覚め、辺りを見回し、すかさずアムロは自分の位置とνガンダムの状態を確認した。
「地球から離れている・・・?あの光で吹き飛ばされたのか?」
幸いにも機体はほぼ無傷だったが、予備のサーベルと頭部バルカン砲以外の武装が尽きてほぼ丸裸同然だった。
「サーベル一本とバルカンか。・・・きついな。ラー・カイラムまで持つか・・・?」
いつまでもその場に留まるわけにはいかないので、アムロは機体のスラスターを吹かして機体を移動させる。
次の瞬間、レーダーが何かに反応した。
「レーダーに反応?こ、これは・・・馬鹿な!?」
アムロは驚愕した。
レーダーに写っているそれは彼がよく知っている機体だったからだ。
「ゼータガンダム・・・!あんなものが何故!?」
―Zガンダム。
それはグリプス紛争、第一次ネオ・ジオン戦争の2つの戦乱を通してエゥーゴの象徴として活躍したガンダムである。
アムロもその時機に同機の3号機のパイロットを務めていたので、Zのことはよく知っている。
シャアとの戦いが始まる前、彼が欲していたガンダムもこのゼータであった。
「この感覚、よく知っている…。カミーユ・・・・いやジュドーか?」
アムロはゼータに懐かしい感覚を覚えた。一応所属の確認のために通信回線を開く。
「ゼータ、聞こえるか?こちら地球連邦軍第13独立部隊所属、アムロ・レイ。」
返事はすぐに返ってきた。
「こちらジュドー・アーシタ。アムロさん、久しぶりですね。」
ミノフスキー粒子が薄いのか、無線の音声の音質は比較的クリアだった。
「ああ。久しぶりだな。それにしてもジュドー、君が何故ここに?」
「それはこっちが聞きたいくらいですよ。ハマーンの近衛部隊と戦ってたはずなのに、気がついたらこの空域にいたんですからね。」
ここでアムロはジュドーの言葉のある点に気付いた。
―ん?ハマーン・カーンだと?・・・奴はたしか5年前に戦死したはず・・・。
そう。たしかにハマーンは(アムロから見れば)5年前に戦死している。しかしジュドーの口調はまるで今まで戦っていたかのようである。
アムロは思い切ってジュドーに日付を尋ねてみた。
「ジュドー、今日は何年だ?」
「アムロさん、何を突然…。0088年だけど?」
アムロはこの言葉でジュドーが自分よりも過去の人間であることに気が付いた。
だが、仮にここが0088年にしてもおかしい点がある。
辺りにミノフスキー粒子がほとんど存在しないのだ。その上、地球を初めとする全ての地域への通信ができない。
「通信はどこも反応なしか・・・・。」
反応を示さない無線を切ると、アムロはゼータが地球のほうを向いているのを見た。
「どうした、ジュドー?」
「あ、アムロさん、アレを見てくれ!」
ジュドーはゼータの指を地球に向ける。
「何!?」
次の瞬間、2人は驚くべき光景を見る。Zが指を向けている先に見えるオーストラリア大陸の地形が往年のままの姿だったからだ。
宇宙世紀の歴史では、オーストラリアはコロニー落としの影響で一部が水没したはずである。
それがどうだ。眼前に広がる地球には一年戦争以来の戦乱の残痕が見当たらない。
「どういうことなんでしょう・・・?」
「・・・わからん。少なくとも俺たちの知る地球じゃないことは確かだ。・・・取りあえず俺の母艦を探す。ジュドー、Zを変形させてくれ。」
「了解。」
νガンダムがウェイブライダーの上に乗る。ウェイブライダーはνガンダムを乗せて、加速してゆく。そんな2機を遠くから監視する「目」があった。

 
 
 

「あの機体・・・どこの所属なのでしょう?」
「さあ・・・?地球軍のでも、オーブのでもないな。とにかく監視を続けろ。・・・我が軍の領域に入った場合は攻撃を開始する。もしかすると先ほど確認された国籍不明艦の艦載機かも知れぬからな。」
「了解。」
2機を監視しているのは、ザフト軍の長距離強行偵察型ジンだった。
この時機、ザフト軍は地球側との決戦に備え、メサイヤに戦力を結集し始めていた。
決戦前に戦力の消耗を何としても避けたいザフトとしては、たとえ未確認の機体であっても監視だけに留めていた。
だが、メサイヤにこれ以上接近されるのを見過ごすわけにもいかない。
「司令部からの次の命令です。『未確認機をポイントD―01に追い込み次第、鹵獲する。なお、増援にはミネルバを送る』とのことです。」
「なに、ミネルバだと?たった2機くらいにあの部隊を動員するのか?」
「ハッ、どうやらそのようです。上の連中は確実に鹵獲したいのでしょう。戦力は多いにこしたことはないですから。」
「戦力か、なら他でもいいだろう。仮にもミネルバは最前線の要だぞ。それをどこのとも分からない機体の調査に向かわせるとは、上の連中は何を考えている?」
パイロットの1人が部下に愚痴をこぼす。その口調はどこか不満げだ。
「さあ?あの部隊なら確実に成功させられるからじゃないですか?」
彼らの言う「ミネルバ」とは、ザフト最強の部隊であると同時に議長が最も信頼している艦の名だ。
ガンダムタイプも配備されているのが特徴で、作戦の成功率も他の部隊よりも遥かに高い。
そのため、彼らの働きは上層部にも高く評価されている。
「議長はミネルバに頼りにしておられる。だがそれが命取りにならなければいいが・・・。」
このパイロットはミネルバに頼りきりな上層部を憂慮していた。
この時の上層部の選択が後にザフトの運命を大きく変えることになることになるとは誰が予想したのだろうか。

 
 
 

20分後  ミネルバ艦内 格納庫

 
 

「鹵獲?」
「ああ、なんでも未確認の機体が接近中らしい。それを調査し、出来れば捕獲してほしいと議長から命令が下った。」
「何で俺たちにそんな任務がきたんだろう?」
「未確認機がインパルスのようなタイプだった場合、量産機では対応できんからだろう。その点、俺たちなら不測の事態にも迅速に対応できる。」
ミネルバのMS隊のまとめ役の「レイ・ザ・バレル」が通信で任務の詳細を説明する。
「そうだな、こんな任務さっさと終わらせる。それでフリーダムへの対策でも考えるか。」
通信に答えた彼、シン・アスカはザフト軍最強のMS「デスティニー」のパイロットである。
シンはテロまがいの独自行動で戦場を混乱させる「アーク・エンジェル」とエターナルを率いる「ラクス・クライン」、そして、恋人である「ステラ・ルーシェ」を殺しかけたMS「フリーダム」に対して激しい憎悪を燃やしていた。
決戦となると当然、彼らも介入するだろう。
―今度こそ俺がこの手でアイツを・・・!
彼が望むのはフリーダムとの決着。それだけだった。これから調査に当たる機体のことなど歯牙にもかけていなかった。
だが、シンは後に思い知る事になる。人の真の革新が何であるか、そして人の心の強さを。

 
 

ミネルバから「レジェント」、「デスティニー」が発進してゆく。
2機のプレッシャーを感じ取ったアムロたちはそれぞれの機体を戦闘体制に入らせる。
「ジュドー、感じたか?」
「ええ、ばっちり。このどす黒い憎しみのプレッシャー・・・、ハマーンに似ている・・・。」
ジュドーは高いニュータイプ能力を有しているため、人の思念を敏感に感知できる。
シンが発した「憎しみ」のプレッシャーはハマーンのそれと類似した物であるため、ジュドーはこう言ったのだ。
「ン・・・このスピード・・・ガンダムタイプか!
ジュドー、一機でも撃破して活路を開くぞ!」
「了解!」
レーダーに映ったMSがガンダムであることを知ったアムロは一機でも落とすという選択をとった。
ガンダム同士の戦闘は歴史上、デラーズ紛争以来となる。
だが、2人は敵を侮らない。
過去のガンダム6号機「マドロック」に代表されるように、ガンダムが落とされた実例はいくつか存在するし、大昔の孫子の兵法にも「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と記されている。
それに加え、今までの戦いで培ったカンのようなものがアムロたちの戦術を決める。
現在、2機の武器は残弾少ないバルカン砲と2本(νは一本)のサーベル、グレネードランチャーのみ。
これで完全武装しているMSに挑むのは、いかに二人が卓越した操縦技術を持っていようとも無謀と言うほかない。
幸い相手のガンダムも2機のようなので、アムロは戦いようによっては油断を誘って逃げ切れるとふんだようだ。
二人は機体を反転させ、腕にサーベルを持たせる。
「来るか・・・来るならこい。俺が薙ぎ払ってやる!!」
シンは憎しみを露にしてデスティニーに対艦刀を構えさせる。
レイもこれに続く。
―νガンダムとZガンダム、デスティニー、レジェント。

 
 

それぞれ違う世界のガンダムの対決。

 
 

―アムロたちのC・Eでの初陣が今、始まる―