第一次攻略作戦失敗から8日後
現在プラントでは、旧ザフトにおいて開発・運用されたネオジェネシスを対クリスタル1用の兵器に再改修されていた。
ネオジェネシス…前大戦、前々大戦において多くの命を奪った兵器である。しかし、ジェネシスは自爆し
ネオジェネシスは前大戦末期に破壊された。
そのような兵器がなぜ存在しているのか。じつは前大戦終了後、ネオジェネシスはラクス・クラインが主体となって
ジェネシス本来の目的である宇宙航行用に修復・改修をされていたのだ。
改修作業中、それを手伝うとあるジャンク屋の姿があったが、今この場においては関係がない話である。
このように、平和利用され始めたジェネシスが再び兵器として改修されているのは
クライン派の軍人達がジェネシス再改修案をごり押しして可決したからだ。
……決して弁護するわけではないが、この案にクライン派のリーダーであるラクス・クラインの意思は無い。
むしろ彼女はこの改修に反対していた。が、クリスタル1の脅威をしきりに訴える軍人達を前に
彼女以外の人間はそれに賛同し始め、結局改修案は可決された。
ジェネシス改修と並行する形で、軍人達は第二次クリスタル1攻略作戦を提案していた。
この作戦は、地上に存在する戦力の60%に、前大戦において生存が確認されたムウ・ラ・フラガの駆るアカツキとAAを中核とし
クリスタル1を数で圧倒、さらに保険として改修されたジェネシスを使用するものだった。この作戦が発案された理由は、オーブの研究機関からの報告にあった
『クリスタル1は常に多量のエネルギーを吸収していなければ、その生命を維持することが困難である』を聞いたからである。
もっともこれには『しかし、クリスタル1のエネルギー吸収法が分からない現状では、戦力増強を優先すべきである』と続きがあるのだが
軍人達はそれを無視していた。
キラ・ヤマトは夢を見ていた。最近は良く見る悪夢を。
目の前には血だらけのアスランがいる。血まみれの彼が手を伸ばしキラへ助けを求めている。
キラは彼を助けようと必死になって手を伸ばすが、その手がアスランに届く前に彼は吹き飛んだ。跡形なく、木端微塵に吹き飛んだ。
それを見てショックを受けているキラの前に巨大な影が現れる。その影はキラを囲む様に広がり…キラへと襲い掛かった。
その瞬間、キラは悪夢から覚めた。
悪夢から覚めた彼のそばには一人の女性が居た。この女性こそ、現在の地球圏の頂点に立つラクス・クラインその人だ。
ラクスは、うなされていたキラにやさしく微笑む。そして、うなされていたのか夢の内容を聞いた。
夢の内容を話したキラは、クリスタル1への恐怖に飲み込まれた自分は、もう戦えないかもしれない。とラクスに言い放った。
その言葉を聞いたラクスは、キラに『恐怖に飲み込まれても、光を見失わなければ大丈夫です。あなたはきっと、あの魔物の恐怖に打ち勝つことが出来ます』
と言い、キラを励ました。その言葉を聞いたキラは、ラクスに抱きつき子供のように泣きじゃくった。
それから数時間後、プラント最高評議会と軍上層部の人間を交え作戦会議が開かれた。その中にはラクスによって立ち直ったキラの姿も確認された
ジェネシス絡みでいくつかの意見が出てきたが、最終的にジェネシス使用を条件付で第二次攻略作戦は可決された。
なお、この作戦にキラ・ヤマトと彼の駆るストライクフリーダムが参加することになった。
プラントにおいて第二次攻略作戦が可決されてから5日後
地上における軍事的重要拠点ならびに、各国首都防衛部隊全てに改良型AFSの配備が予定以上の速さで完了していた。
これらは数日後に迫った第二次攻略作戦準備のため、配備が早まったのだ。
そのころ、オーブにおいて無数のMSの改修作業が行われていた。改修中の機体にはミナの駆るアストレイGF天(ゴールドフレーム・アマツ)も確認される。
これらは第二次攻略作戦とは関係なく進められている。もっとも、改修が終わっている機体は少ししかなく、終わっていてもパイロットがいない機体も多々ある。
そんな多々ある機体の中に背部に巨大な翼が装備され、やたらと目つきの悪い機体があった。
この機体はかつて、オーブへと攻め込んだザフトのMSであり、レクイエム・ネオジェネシスをめぐる月面戦において撃墜されたものだ。
実はこの機体、月面において撃墜された後、クライン派が極秘裏に回収していたのだが、修理が終わり動かせるようになったころにはパイロットがザフトを辞めていたのだ。
結局、この機体は二度と日の目を見ぬまま格納庫で埃を被ったままになる…はずだった。クリスタル1がオーブを去った後、ザフトから対クリスタル1用に改修するために譲り受けたものである。
そのためミナは、この機体に乗っていた機体のパイロットを探していた。それこそ、第一次攻略作戦が決行される前からだ。
第二次攻略作戦決行まで後8日
運命の歯車は大きく動き出そうとしていた……
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